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道上カイザー号のモデル RC♂を探しています
2001.4.23日分

年が明け、連合会の新年会に向かう川上氏の車中には、佐野、浦部、香月が乗り込んでいた。話の中心はやはり、磯川のペパーマン系導入であった。
「とにかく、凄いです。春には50羽くらい参加予定だと聞いてます」
佐野の言葉であった。導入は去年の春から始め、4番からの仔鳩はいずれも、ペパーマン系、一部アンダーソン系のそれも記録鳩2羽を交配用に導入してるらしい。
「今年は連合会もにぎやかになりそうだね。ところで、今年から、秋の700キロGCが復活するのと、春の1000キロのQC(クイーンカップ)、それに、300キロレース、500キロレースに10連合会合同のダービーが春、秋に追加になる。レースも分散できるようになって、盛り上がりそうだね」
川上氏が嬉しそうに言った。
「秋の700キロは・・悪天続きが重なって、放鳩地の関係で、若鳩の帰還率が悪いって中止になってたんじゃないんですか?」
大人しい、浦部が言った。彼は決して悪天のレースには鳩を参加させない。ジャンプと言う形でのレース参加をしている。彼は少羽数参加だが、長距離には、成績をあげている学生競翔家でもある。
「うむ・・その事も検討されて、今年からコースを変更するそうなんだ。来年以降は秋の西コースの1000キロレースも復活するようだね」
川上氏が答えた。
「もう一つ、僕の情報では、ポイント制導入で、連合会の優秀鳩舎賞を設定するのをこの会で謀るとか?」
情報通の佐野らしいで言葉であった。
「そうなんだ。でも、それは大羽数参加の鳩舎が有利にならないように検討しなきゃね。色々な意見は私の耳にも入っているが、少し皆の意見を聞いてからだ」
香月は終始無言であった。磯川のペパーマン系は恐らく台風の目になりそうだな・・そう思っていた。
会には、連合会のメンバー125名が全員集合していた。
高橋会長の挨拶が始まる。磯川がにこにこしながら、香月達の横に座った。
「頑張ってるね、香月君」
「とんでもないです。それより磯川さんの所、凄い血統の鳩を導入したそうですね」
「ああ、俺なりに研究したんだ。自信もある。非常に出来も良いし、スピードバードだから、まだ文部、Jrの権利が残ってる間に君と勝負したいしね」
「いえ、いえ・・とんでもないです。」
「佐野!君の情報では、佐伯さんの鳩も香月君の所に居るんだってね」

佐野を呼び捨てにする親分肌の磯川は、確かめるように聞いた。
「え・・ええ。」
「川上さん、佐伯さんと言ったら、この近辺地区の連合会では最強の人達で、その血を君が使翔すると言うのは、僕にとってもやはり警戒ナンバーワンだ。楽しみだね」

相変わらず、自分の競翔は戦い・・それだけ言って場を離れて行った。
「ねえ・・又恐い人・・帰ってきたね」
佐野がペロりと舌を出す。香月もおかしくなって下を向いて笑った。
会長の話がここで、今年の展望に移った。
「で・・今年の春には300キロレースで、10連合会合同ダービー開催。500キロレース地区ダービー開催すると言う事で、我が連合会も参加でよろしいですか?」
大きな拍手が沸いた所で、
「賛成多数と言う事でこの案件は決定しました」
水谷書記が答えた。
「次に・・今年の秋にも上記レースが追加と、秋の700キロGC・・これは仮名で、今スポンサーを募っている所です。何社か、協力したいと申し出ています。その700キロレースがコースも変更して復活します。その参加ですが」
そう高橋会長が言いかけた時に磯川が手を上げた。
「はい・・磯川君」
「その参加には、若鳩以外もOKと言う事ですね?」

会場がざわざわした。通常は秋のレースは若鳩主体で行われるからだ・・磯川の質問の真意は、次の案件を見越しての発言だったようだ。
規定は無い・・だからそれは自由です」
「分かりました」

磯川はにやりとして、座った。香月は磯川の方を見た。自信たっぷりの表情を浮かべていた。
「では、この案件も決定と言う事で次の提案事項ですが、今年からポイント制導入で、連合会の活性化と、鳩質向上のために最優秀鳩舎賞と、準最優秀鳩舎賞の提案をしたいと思います」
会場がざわついた。なるほど・・磯川はその為に選手鳩を春、秋使おうと言うのだな・・。香月はそう思った。議事進行で、高橋会長の隣に座っている、川上氏が切り出した。
「どうぞ、忌憚の無い意見をちょうだいします。案件はポイント制を導入と言う事になってますが・・・」
磯川が手を上げた。こう言う場には、理論も討論も長けている男であった。
「その場合、距離、総合、参加羽数など、どうなっていますか?」
川上氏が答えた。
「この案件では、100キロ優勝で、1〜10点。全国順位での得点は10〜100点。200キロレースでは、11〜20点。以下距離に準じて同じです。ただし、300キロダービー、500キロダービーは、総合100位までの得点を101点〜1000点として、300キロレースなら×0.3・・・500キロレースな0.5点として、プラスして行く事になります。ただし、700キロ地区Nレース、900キロQC(東神原連合会では1000キロになる)1000キロCHレース、1100キロKCレース、1100GCHレース、1200キロGNレースの総合レースの扱いですが・・?」

川上氏がそこに少し論点があるかな?と言葉に少し疑問符をつけた。
「その件でありますが」
水谷氏が、言葉を続けた。
「この方式ですと、大羽数参加の鳩舎が有利になると、先ほどから川上氏から指摘を受けました。又、鳩質向上の面からもいたずらに大羽数志向を強めると、失踪鳩問題に絡めて、射幸心だけに傾く懸念も指摘されまして、今少し検討いただきたいのです」
少し会場がざわめいた。
「必ずしもそうはならないのでは無いですか?」
磯川が言う。
「どうぞ、意見を」
水谷氏が磯川を指す。
「冒頭に言われたように、近年鳩質の向上と言う事もあるように、このポイント制導入は、各鳩舎がそれぞれに精鋭を育てると言う事になり、必ずしも大羽数参加鳩舎が有利にはならないと思います。それなら、大羽数参加となる、近距離こそ、学生にとっても有利でもあります。参加数×順位・・例えば、1000羽数参加で、2位なら1000÷2で、500点。こう言う方式に改めてはどうでしょうか?」
又会場がざわめいた。確かに・・それなら近距離参加の鳩舎でも高い得点があげられる。
「今の意見はどうでしょう?」
川上氏が聞く。賛成多数で変更された。こう言う事には抜群の才能を発揮する磯川だった。
「本件は可決されました。残る4大レースプラスQCが増えた事と、Nレースの扱いを一案として提出します。700キロレース地区Nレースは、総合順位300位まで。一位は3000点、以下10点。1000キロのQC、1100キロのKCレースは参加する連合会数も他の長距離レースと比べて少ないのですが。この順位は総合100位までで切り上げたいと思ってますが」
「それは、今後もCH、GCH、GNレースの巨大化を分散したい狙いもあり、参加羽数も増える傾向にあります。特にQCは、非常に帰還率も高い放鳩地ですし、申し込み連合会も多いと聞きます。同じ扱いでよいのではないでしょうか?」
長距離鳩を育てる事では全国的に名高い、連合会の最古参で、RCH『道上カイザー号』・・1000キロ3回、1200キロ2回優勝の使翔者道上氏が言った。なるほど・・道上氏はQC、KC、GNレースを狙っているのだな?香月はそう思った。この意見も拍手で、賛成された。連合会ではやはり若い競翔家の台等で、活性化してるように感じた香月であった。
 会が終わり、高橋会長宅での数人の座談会でもやはり、新設のQC、磯川のペパーマン系の話題が出ていた。集まったのは、川上氏、道上氏、香月、佐野、浦部、水谷氏であった。