白い雲トップへ  次へ   参考資料   お願い  登場鳩

2002.5.18日分  

香月は言った。
「でも・・僕も競翔を始めて、もう3年になりますが、こんな川上さんを見るのは初めてです。鳩を愛する姿勢は日頃より尊敬する所ですが、人間の管理能力にも限界があるのでは無いでしょうか。一日中観察出来る鳩舎なんて、ハンドラーを雇えるような所ならそれも可能でしょうが、あくまで、愛鳩家、個人で楽しむ競翔と言う枠内にあって、僕らは一日を鳩舎の管理に費やせる筈も無いのですから。そこにどれだけ万全の体制で臨んだとしても、やはり無理が生じます。まして、川上鳩舎は250羽も飼育されている大羽数鳩舎なんですから」
川上氏に、香月が意見らしい事を言ったのは初めてだった。それは、川上氏も笑みを浮かべ、深く頷いた。
・・確かに・・。君の言う通りだ。現在の飼育羽数は過去最多。同じ規模の高橋会長の所も、近くハンドラーを雇うらしい。私の所はそんな余裕は無いし、自分の鳩を他人に管理して貰うには、少し抵抗もあるしね。君の言う通り、今春後、少し選手鳩群を減らして見ようと思ってる所だ」
ここにも、最優秀鳩舎賞新設の影響があるのかも知れない。だが・・それには、理由が隠されていた事を香月は知らなかった。
「おっと!開函時間は8時だったね。大至急で行かないと間に合わなくなってしまう!」
 思わぬ長話になって、大慌てで、高橋会長宅へ向かう2人であった。着くと同時に開函時間が迫っている事もあり、挨拶もそこそこに2人はラジオの時報を聞き入った。「バシャーン!」やれやれ・・そんな表情で2人はやっと腰を落ち着けた。今日の記録羽数は200余りの羽数になると言う。それでは時間も掛かるだろうと言う事で、計算が終了するまで、コーヒーを飲みに行く者、帰る者、結局その場に残ったのは、数人の顔ぶれであった。そして・・そのメンバーは恐らく上位に食い込んでいる者。連合会でも強豪揃いであった。磯川が・・佐野・・水谷氏・・が。その磯川は香月に少し頭を下げただけで、隣に座っている水谷氏としきりに話をしている最中であった。佐野が例の如くノートを抱えてやってきた。もう香月のタイムはジュニアの連中に知れ渡っているらしく、ノートには、かなり早いと思われる鳩舎のタイムに☆印がついていた。それによると、8時40分までに打刻しているのは、川上鳩舎2羽、香月鳩舎3羽、佐野鳩舎1羽、高橋鳩舎2羽、水谷鳩舎1羽、渡辺鳩舎1羽、何と磯川鳩舎6羽の計15羽であった。これが香月が目撃した、先頭集団であろう。それにしても・・15羽の中に、6羽と言う磯川鳩舎の突出した記録は・・。香月も、この中のメンバーも驚いていた様子であった。
川上氏が、会長の高橋氏にしきりに話かけている。どうやら、ここへ到着するまでに車の中で、話していたハンドラーの事らしい。会話の邪魔をしては悪いので、少し香月は川上氏達から離れて座った。その様子を見て、磯川が香月の所へやって来た。佐野と3人で、鳩談義となった。
磯川は現在医大に入っているが、まだ、ジュニアの資格はある。佐野は今春高校を卒業して、家の家業である仕出屋を手伝っている。「ノート」の異名は健在で、彼に聞けば、連合会のありとあらゆるデータが取り出せる程几帳面で、情報家。無くてはならない存在でもあった。この話題の中心は磯川が導入したペパーマン系で、創始者ペパーマン氏は128連勝と言うとてつもない大記録を打ち立てた人物で、優勝鳩同士しか仔を取らない徹底した厳選主義で、磯川の理想からすれば、まさしくパーフェクトな血統であった。その磯川鳩舎には、勿論2人もハンドラーを雇っている。手強い最強のライバル復活は、その話の随所にも、自信と言う言葉として伺われた。
集計が終ったようだ。ジュニアから発表された。佐野のノートにほぼ一致していた。

ジュニア文部大臣杯レース   一般レース
1位  香月鳩舎         1位  川上鳩舎
2位  香月鳩舎         2位  川上鳩舎
3位  香月鳩舎         3位  高橋鳩舎
4位  磯川鳩舎         4位  水谷鳩舎
5位  磯川鳩舎         5位  渡辺鳩舎
6位  磯川鳩舎         6位  川上鳩舎
7位  磯川鳩舎         7位  川上鳩舎
8位  磯川鳩舎         8位  川上鳩舎
9位  佐野鳩舎         9位  川上鳩舎
10位 浦部鳩舎         10位 高橋鳩舎


となっていた。ジュニアの30位までも混戦で、
こ時点での香月鳩舎の得点が114点、磯川鳩舎が120点
今度は連合会の総合順位が発表された。
1位  香月鳩舎     11位  渡辺鳩舎
2位  香月鳩舎     12位  磯川鳩舎
3位  香月鳩舎     13位  磯川鳩舎
4位  川上鳩舎     14位  佐野鳩舎
5位  磯川鳩舎     15位  高橋鳩舎
6位  川上鳩舎     16位  川上鳩舎
7位  磯川鳩舎     17位  浦部鳩舎
8位  磯川鳩舎     18位  川上鳩舎
9位  高橋鳩舎     19位  川上鳩舎
10位 水谷鳩舎     20位  高橋鳩舎

以下、30位までが発表された。たかが、100キロレースと思う無かれ。6800羽数と言う総合レース規模。尤も多い羽数の多いスタートレースで、分、秒を争って打刻した競翔である。30位までの入賞は誇られる成績であった。
この時点での得点鳩舎順位(ジュニアはジュニアレースの分も加点される
1位  香月鳩舎  851点
2位  磯川鳩舎  636点
3位  川上鳩舎  422点
4位  佐野鳩舎  137点
5位  浦部鳩舎   84点
6位  高橋鳩舎   62点
7位  水谷鳩舎   41点
8位  渡辺鳩舎   29点
9位  北村鳩舎   18点
10位 小泉鳩舎   13点


この順位は、距離が進むにつれ、変化して行くであろう。