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2002.5.18日分  

続く週に行われた、ジュニア杯でも香月が1位、2位、5位。磯川が3、4、6、8、10位であった。総合連合会順位においては、川上鳩舎が1、2位。香月鳩舎が3、4位。磯川鳩舎が5、6位。高橋鳩舎が7、8位。川上鳩舎が9位、磯川鳩舎が10位となった。
 レースは徐々に距離を延ばし、やがて700キロのグランプリレースを迎える。この時点で、得点順位は大きく変動を見せる。
1位  川上鳩舎  3684点
2位  高橋鳩舎  3140点
3位  磯川鳩舎  2960点
4位  香月鳩舎  2826点
5位  水谷鳩舎  1643点
6位  渡辺鳩舎  1426点
7位  細川鳩舎  1326点
8位  桐生鳩舎  1282点
9位  須藤鳩舎  1186点
10位  加地鳩舎  1010点

流石に連合会のベテラン会員は、徐々に中盤から上位に食い込んで来た。その中で、磯川と香月のジュニア勢の上位ポイント獲得は立派なものであった。この700キロレース以降は、合同の総合レースとなり、その総合順位の得点は加算がある事から、下位の得点順位の者でも、充分に今から逆転はあり得る訳で、一気にトップも可能なのだ。このGPレースは、参加連合会150連合会。4ブロックに分けられ、その合計羽数が8万羽になる巨大レースだ。香月達、東神原連合会はAブロックで、総羽数3万羽と言う、4ブロックの中でも特に大きいレースであった。その他ブロック順位を更に総合する事は無いが、名実共に、日本一のAブロックが最大で、権威あるレースと言える。
各鳩舎は、2週間後に迫るAブロックのグランプリレースの調整に余念が無かった。香月鳩舎では、100キロレースに22羽スタートして、ここまで14羽。失踪鳩8羽、のち4羽後日帰還と、過去最高の参加が出来そうであった。ちなみに川上鳩舎は120羽スタートで、現在78羽ストックと、今春は100キロレース以降は上天気に恵まれて、各鳩舎ともかなりの選手鳩をキープしており、それも、各鳩舎が鳩質向上と、飼育管理に近年勤めてきた成果でもあろう・・川上氏の企画が成功しつつある事を窺わせた。
ただ、磯川は、この春季レースは全て生後一年以内の若鳩。700キロレース終了後、どの程度の鳩をいかに早熟のペパーマン系と言えど、参加になるかは未知数だ。この700キロレース如何に掛かっていると言って、過言ではない。まして、1000キロCHは、非常に難コースとして知られ、最終の稚内GNレースへの登竜門として位置つけられている重要なレースだ。ここを経験している鳩と、回避して参加させた、1000キロのGCレース経験鳩との帰還率を比しても圧倒的な違いがあると言う。そのコースを少し視点を変えて見直そうと言う動きもあって、急速に協会の方で検討中と言う話だ。そのビッグイベントを前に、巨大レースの幕開けが、GPであった。誰もが最終地、最高の日本競翔界のあこがれとして夢見る、1000キロ以上の記録鳩しか参加資格を得ない、GNレースは、このGPが第一の登竜門として位置つけられる。使翔歴30年の川上氏でさえ、昨年はGNに3羽参加、唯一羽連合会翌日記録と言うレースなのだから・・。
香月は、今春そのGNへの参加資格を持っていた。
昨年香月はGPで、連合会10位に入賞した。それまでの600キロレースまでは順調に来ていた彼も、そのGPの難しさと厳しさを知っている、それは、レース間訓練の回数の多さと言う指摘を恩師川上氏から受けて、今春には修正している。叉、このレースは巨大連合会参加故に、コンマ数秒単位での順位が争われ、その中で遠隔地にある東神原連合会は不利と言われている。鳩レースは「見えないレース」なのだ。鳩が帰舎するまで、ひたすら飼い主は待ちわびる。だからこそ、その鳩達に最善の管理するのは、競翔家の手腕一つと言っても過言では無い。
レース鳩は帰還するまでの、自然の脅威、外敵の脅威と戦わねばならない。厚い雲は視界をさえぎり、強風、気圧は、コース変更を余儀なくさせる。空腹、体力、知力・・鳩達の懸命な姿を想像出来てこそ、やっと、競翔家であると言える・・川上氏はいつも香月に、そう言う。あの・・初参加の初帰還の100キロレースの感動を忘れまい・・香月は胸に誓っていたのだった。南北に長く、気候の変化が大きく、高い山脈が連なり、何度も海を越えるような地形の日本。その中で、何十年と築かれてきた鳩レース、そして競翔鳩の英知は、在来系と言う適した血によって飛躍的に改良され、その優秀さも証明されている。だが、それも近年のスピードバードの台頭によって、徐々に変わりつつあるのも現状だ。
 そして・・700キロGPの開催日がやって来た。この日の為に調整を重ねられた鳩群。どの鳩も素晴らしく見える。香月の参加は14羽。調整も万全だ。東神原連合会の参加鳩数は3100羽。このレースまで天候に恵まれて、好調な帰還率であった為に、過去に無い大羽数参加となった。今年は、持ち回りの連合会が、風巻連合会となっていて、学生である香月は持ち寄り場所へは時間の都合もあり、同行出来なかったが、今年のAブロック参加鳩数は、3万6千457羽と言うかつて無い大羽数と言う事だ。余りの数なので、このAブロックでの総合順位の他に、近隣単位連合会の地区Nと言う集計を設置したと言う。新たな総合レースがもう一つ生まれたのだ。そのブロックD地区に神原連合会があって、中でもやはり最大羽数の1万1432羽の地区N優勝も掛かっていた。ひょっとしたら、1000キロレース以降の順位、得点よりも、GPレースで、決まってしまう可能性もある最優秀鳩舎賞であった。