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2002年6月7日分

10羽の内、1羽でも優秀な仔鳩が出来たら、まず、その交配は成功したと言える。それほど鳩の交配は難しいし、当り交配なんて言うのは、偶然の産物、所詮人間の思惑通りには行かぬものである。
500キロレースに投入した川上氏使翔、短距離のエース、「アイ・ブルー号」と言えど、鳩レースに絶対などあり得ない事なのだ。
深夜の2時頃まで受験勉強の為に起きている香月に、毎夜、12時に香織から電話コールが鳴る、現在なら携帯電話だが、当時の状況で執筆してますので。500キロのレース結果について、何度も電話を掛けようかと思った香月であったが、とうとう恐くて聞けなかった。「チリン・・」電話が鳴った、香織からだ。すぐ香月は持ち上げた。
「もしもし」
「今晩は早かったわね。ベルの音鳴った?」
「勿論!チ・・リンっだったかな?はは」
「ふふ・で?今日の調子は?」
「まあまあって所かな?可も無し、不可も無し・・」
「私も一区切りついた所・・もうすぐ寝るわ」
「あ・・」
「うん?何?」
「いや・・別に」
「ふふ・・鳩の事でしょ?」
「えっ・・はは・・まあ・・」
「結果でしょ?言いかけて止めた事」
「君のお見通し・・。電話が無い所を見たら・・やっぱり?」
「私より、鳩なのね、今は・・」
「止してくれよ・・いじめないで」
「きゃはは。じゃ、プレゼントあげるわ」
「えっ!じゃあ!」
「図星よ!本日の結果お知らせします。川上真二所有の
「アイ・ブルー号」15連合会、10034羽中見事総合優勝に輝きました模様であります」
「う・・うおおおお!やった!でもそれなら何で電話を?」
「お父さんがね、年甲斐も無く興奮しちゃって、11時頃帰ってきて、飲めないお酒飲んで、香月君に知らせておいてくれって。もう、子供のようにはしゃいじゃってね。顔が真っ赤っ赤になってて・・。あんなに嬉しそうなお父さん、初めて見るわ」
「そう!そうなの!やったねえ・・やっぱり
「アイ・ブルー号」だよ。凄い鳩だよ。君のお父さんね・・。その鳩に今までの競翔人生全てを賭けてた・・そう言って過言では無いレースだったんだよ。新しい事に挑戦するには、玉砕か成功の2文字しかない。けど、君のお父さんは経験と言う自分の勇気と信念を守ったんだよ。僕には凄く分かるんだ」
「私にはその意味が良く分からないけど・・貴方も勇気を貰ったって解釈で良いの?その喜びは」
「ああ!最高のプレゼントだよ」
「貴方に元気が戻って良かったわ、お休み、香月君」
「ああ、お休み。一言・・お父さんに明朝・・僕が信念を貰ったって、伝えておいてくれる」
「・・はい」

その翌週の事であった。ついに・・例の交配の仔鳩が誕生する・・本編は、今から長い過酷な道を辿って行く事になるかも知れない・・ただ、作者は自分本位で憧れの競翔鳩を追求したいので、この話も7回、原稿にして4000枚を何度も書き直しました。筆を入れる度に話の筋も変わっています。この後もアップした文章が変わるかも知れません、思考錯誤の中で、ちっぽけな人間の思惑など千変万化する自然の中では、木の葉のように翻弄されるものでしかないと・・痛感しています。