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半年も、休眠してました。再開します。m(_ _)m

2002年12月3日、4日分
第3編   快進撃!

 年が明け、いよいよ梅の花が咲く頃になると、一斉に競翔家達の新しいシーズンが始動する。
白川氏から分譲された種鳩群から作出された子鳩達。激しく昨年度ポイントレースを争った、恐るべきパイロン号直系群&ペパーマン系。昨年度大羽数帰還させている、会長のゴードン系。そして、いよいよその真価を発揮するか、川上氏使翔の、白川ベルランジェ系&ノーマンサウスウェル系記録鳩群。強豪が若竹の勢いで伸びる東神原連合会。中でも香月の所属する神原愛鳩倶楽部は、その中心を担う強豪が目白押しである。
 香月にとって、初めてベールを脱ぐであろう、例の子鳩。それにシューマン系。第2代の種鳩となるか、「ピン太号」「グランプリ号」この春は大きな意味を持っていた。2次鳩と昨秋の帰還鳩を合わせると、香月も過去最高の参加鳩数になるだろう。今秋の競翔を中断する香月にとって、この春は、非常に大事なシーズンでもあった・・。
 この春には、風巻連合会より移籍してきた、郡上鳩舎がいる。7年前に記録した、1100キロGCHレースで、56羽の大羽数記録は、誰にも破られていない大記録である。東神原連合会に居を移した事で、このような日本全国でも屈指の鳩舎が参加と、東神原連合会3強と言われる、川上、高橋、磯川・・他にも、水谷、渡辺鳩舎と、昨年度を上回る参加数にどの鳩舎もなるであろう事は予測されていた。香月にとっては、競翔人生最初に訪れた大きな転機であった。密かに期待をしているシューマン系&ピン太グランプリ号の組み合わせの仔鳩は、予想外の出来の良さで驚いている。早熟で、初競翔時のノーマンサウスウェル×勢山系の当たり交配より、むしろ出来が良いのでは無いかと思える程であった。この春に備えて、単羽訓練を重ねて来た。その方向判断力の素晴らしさは、確信に近い手応えを感じていた。ただ、それが即競翔結果につながるなんて想像が出来る程今年の東神原連合会は、そんな甘くは無い高レベルであろうが・・。一分一秒を争う、大羽数・・。過去香月は競翔の度に一つのテーマを設け、試して来た。今回のシーズンにおいても、例外では無く。それは、帰舎に対する徹底した呼び込み訓練である。競翔鳩は、早くに帰舎しても、なかなか鳩舎に入らないと言った事が良くある。それは近くに鳩の遊び場や、休息場所、高い建物があって、そこで羽を休める習性がある等色々・・。これは大きなロスタイムだ。まず、そこで、5分、10分帰舎が遅れたら、勿論レースには勝てない。香月は、この地味とも言える入舎訓練を徹底して行ったのだった。入舎が悪い鳩は、1日でも2日でも餌を抜いた。香月は鳩舎に居る鳩の分量だけ餌を与えた。愛鳩家と、競翔家・・その境は勿論あるだろう。だが、根本の愛情を忘れる香月では無論無い。
 そして・・いよいよ合同訓練の50キロより春のレースが始まって行く。又、例年正月に行っていた、連合会の総会が、この50キロの合同訓練の日に行われる事になったのだった。大人数を収容する為に市民会館の一室の大広間を借りて行われた。冒頭の高橋会長の挨拶から始まり、今年度からの新しい試み、叉新放鳩地2箇所の追加。新会員の紹介と会は進んで行く。会員増ともなり、懸念される開函規定の変更と、新審査委員の増員。分担して行う開函場所の選定。いつに無く細部に渡っての議案にも、高橋会長の言葉に熱が入っていた。
 続いて昨年度の、各レースの表彰となり、第一回最優秀鳩舎賞となった、川上氏には割れんばかりの拍手が沸いた。

昨年度2位の磯川鳩舎が、銀の楯。3位の高橋会長が、胴の楯。香月自身も途中まで競り合ったとは言え、この3名が、昨秋のレースをほとんど総なめにした程の大活躍だった。その香月も、グランプリ号での地区総合2位授賞には、大きな拍手が沸いた。競翔3年目を迎える、まだ若干高校2年生である彼が、並居る強豪に混じっての大金星なのだから。
 長い総会も終了し、気の合った会員達が会長宅へと向かう。磯川が居る、佐野の姿も見える。それに新加入の郡上氏も・・・。お茶が出されてから、会長がいつもの豪快な声で、笑いながら、
「ははは。とにかく今年も始まったな。年々増大する羽数には、私も喜ばしい限りだが、果たして、例年のような競り合いになるかどうか・・。白川氏の所の鳩も学生達に廻ってるし、川上君の所も白川系への入れ替え。叉ここに来て居られる郡上氏も風巻連合会の強豪中の強豪だった御仁だ。とにかく競翔が終って見ねば分からんよなあ、今年は意外な鳩舎が活躍してるかも知れんぞ」
続けて、川上氏も、
「・・全く。恐らく大荒れの混戦模様になるでしょうね。最初の100キロレースからして、合同レース並の7千数百羽の参加となるでしょうし、こればかりは、結果が出て見ないと予想もつきません。数秒の争いですから」
・・全く同感と、集まった会員達も会長も頷いている。そこへ新加入の郡上氏が、人柄の良さそうな笑顔を浮かべながら
「同感です。私等は端から短距離は諦めてますので、訓練も長距離に的を絞った自由舎外にしています。何しろ大羽数ですので、ハンドラーと私が分担しても、なかなか短距離に照準を絞った訓練等は出来そうにありません。ようやく数が整理されて来た700キロあたりから、適性に合わせた調整訓練を行っている次第です」
日本鳩界広しと言えども、この人の長距離に対する姿勢と、その突出した記録は、追随を許さない。長距離の大羽数記録で、今年の最優秀鳩舎賞をもぎとる程の、強豪加入であった。