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2002年12月18日分

小料理屋の2階には、既に10人の学友達が集まっていた。愛田慎二と言う、中柄の眉毛の太い男が送別会の幹事を引き受けていた。到着した2人を大きな声で、迎えた。
「おーい、皆、今日のヒーロー、ヒロインのお出ましだ!拍手、拍手!」
2人を待っていたのは、香月君!香織ちゃん!そんな黄色い声だった。照れながら2人は並んで奥に座った。
「えー、それでは、皆さんがお待ちかねの我が校一の秀才で美男、スポーツマンの香月一男君と、これ叉、我が校一の美女で、人も羨むカップルの登場です。今日は高校生活最後の日と言う事で、思う存分、今までの事や、両名に好意を寄せながらも、失恋に終った惨めな諸君の恨み事の一つでもこの2人に浴びせて、残念会及び、送別会を開催したいと思います。ちなみに、今日の司会を勤めさせていただくのは、演劇部の愛田慎二と申します。今日は、男子6名、女子6名と、員数が揃ってる訳ですが、ご紹介方々、楽しくやりたいと思います」
「おい、おい・・」

香月が少し顔を赤らめた。全員が笑っていた。親しかった仲間達であった。
「えーー・・それでは、皆さんも良くご存知だとは思いますが、これからの進路や、自己紹介をお願いします。その後は雑談に移らせていただきますので、よろしく!では香月君から時計回りにお願いします。」
香月「えーー、香月一男です。まだ受験前なので、偉そうには言えないのですが、S工大獣医学部を目指しています。」
きゃー、香月さん、素敵!天才!もう、無茶苦茶な声援が飛び交う。香月は香織を見て照れ笑いを浮かべた。
幸田弘之「新聞部の部長をやってました幸田です。前のスーパーマンの後で紹介し辛いのですが、N大法学部を受験します。」
木村かずみ「放送部の木村かずみです。音楽大学へ行きます。香月さんの事ばかりになって、可哀相ですが、一度、放送室のスイッチをONにして、『好きです!香月さん♪』と言って見たかったです。御免なさい、川上さん。そんな恐い顔しないでね」
一同大爆笑となった。
南田洋次「押忍!空手部主将の南田です。家業の八百屋を継ぎます。あの・・今日の集まりは、やっぱり、主役の2人を惜しむ会だから、だから言います。3年間片思いの川上さん。思い切って言います。卒業後は・・俺の・・俺の八百屋を是非御贔屓に!」
「きゃはは」香織は笑い転げた。涙を出して笑っている。
持田美樹「あはは。合唱部のマドンナ事、持田美樹です。私も音楽大学へ進みます。将来はテレビ関係の仕事をしたいと思ってます。一つ言わせて貰います。自分で言うのも何だけど・・私をあっさり振った香月さんの心を射止めた、川上さんの魅力は一体どこから発散してるのでしょうか。」
持田美樹は、芸能プロダクションからもスカウトされた、学校一あでやかな美人である。色々入学時は香月達ともあったものだ・・。
そこへ、愛田が彼らしいジョークを飛ばす。
「いえいえ、持田嬢も我が校ナンバーワンの美女であります。僕のような、男前をあっさり振るんですから。どうですか?今から僕とよりを戻しませんか?」
持田「あら・・川上さんにもアタックしたって聞いたけど、貴方は2兎を追うタイプなのね?じゃ、無理ね。1兎も得ずだわ、それじゃ」
叉全員が笑った。
そこへ、勝浦元国「無理、無理。だって持田嬢はアイドルさ。俺だって何度もアタックしたけど、彼女はアイドルで一人のものじゃないよ。川上さんは、もう入学当時から香月の彼女だったしさ・・申し遅れました。体操部の花形、勝浦です。Y大体育学部に入学が決まっています。将来はオリンピックに出るのが夢です。」
咲田瑞枝「園芸部の咲田です。姉の花屋さんを卒業したら手伝います。皆さん、香月さんや、川上さんの事ばかり話題にしてますが、私は愛田さんのように、愉快な人がクラスに居て、本当に楽しかったです」
おーっ!、いいぞと盛大に拍手が湧く。そう言えば、いつも教室に綺麗な花が飾ってあったのは咲田さんのお陰である。
村上和美「村上和美です。良く男性に間違えられるけど、本当は心優しい少女でーす。S大の教育学部を受験します。先生になるのが夢です。この中では唯一香月さんと同じ中学出身で、剣道3段の香月さんにいつも憧れてました。最後の試合になった、木村さんとの決戦一生忘れません。私も女剣士を目指して頑張ります」
おーいいぞ、いいぞと拍手が湧いた、彼女もインターハイ出場選手だ。
坂上嘉朗「坂上です。O大農学部を受験します。将来はブラジルへ渡って、広大な大地を切り開きたい。以上です」
橋本京子「橋本です。川上さん、いえ、カオリンとは、入学以来からの一番の仲良しで、同じN短大に決まりました。私も将来保母さんになりたいと思ってます。あ、ごめんなさい、カオリンの夢も話ちゃって」
川上香織「川上です。全部京子に言われましたので、喋る事が無いですが、将来は獣医さんの奥さんになるのが夢です」
おー−っと言う声で、全員が盛り上がった。香織は全員の前ではっきり宣言したのだ。香月と結婚すると。香月の顔は真っ赤に染まった。
愛田「えーー今、大胆な川上嬢の発言がありまして、落胆なさった方も大勢居られると思いますが、当の香月君は、赤面する事しきり。早くも尻に敷かれてるかな?と言った所でしょうか。私、愛田慎二ですが、地元の新聞社に就職が決まってまして、しかし・・この発言どう思われますか?皆さん。本当にいじめて見たくないですかあ?」
香月「ち、ちょっと待った。その前にどうも、癪だなあ、少し提案させてくれよ」
愛田「何か?こんな美女に結婚承諾されて不服かな?香月君」
香月「違うんだ、皆もひどいなあ。今から提案するけど、全員目をつぶってくれないか?少しゲームをするよ、いいかい?その前に愛田、咲田さん、君達付き合ってるだろ?告白したまえ」
愛田「ああ、全くなんて奴だ。にこやかな顔してて、どうして、分かったの?付き合ってるって」
香月「ふふふ。じゃあ、皆目をつむってくれ、今から5組のカップルを作る」
幸田「参ったな、香月、君って奴は、全く・・。でも・・分かるかな?ふふふ」