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2002年12月20日分

香月は、少し背筋を伸ばすと、一口茶を飲み、静かに喋り始めた。
その話は、この場に居る全員に人生に於いて深い関りを持つものでもあった。香月の話を語る時、作者は、非人間的理想論に偏る所がある。何故ならば、超人故に絶対達成出来ないものに挑戦し、そして、激しい心の葛藤との戦いがこれから待っているからだ。それを語る時、この場の話が基本にあった事だと、文章を加えました。
全員が静まり返った
「今更、俺と香織との事を言うより、自分自身の出会いと、運命のような点と線についてお話します。少し長い話になるんで、退屈しないで、聞いて下さい。俺は確かに中学時代は、図書室で、本を読んでるような物静かな男でした。同級生との関係より、自分が没頭出来るものがそこにあったからです。そして、俺は不思議な巡り合わせに出会う事になります。次々と。それは、誰にもそう言う運命って感じる事があるように、俺には、必然のようなものでした。俺は中学3年の時、1羽の怪我した競翔鳩に出会いました。そして、その鳩の持ち主、この香織のお父さんである、川上さん、俺が今所属している競翔連合会の副会長との出会いがありました。その娘さんである、香織との出会い、叉、川上氏を通じて、俺の生涯の目標となる研究をされていた故白川博士に出会いました。そして、その博士の所有していた、競翔界の超銘鳩、『白竜号』『ネバー・マイロード号』との出会いがあります。それは、不思議な点でありながら、一本の線となって。人が人と出会う時、その人生に於いて、心を揺り動かすような深い出会いがどれ程あろうか・・?俺は、その出会いの全てに大きく心を動かされ、色んな物を教えられ、目標と言うものが出来ました。あの1羽の鳩と出会わなかったら、俺は、目的も無く平凡な道に向かってるか、S工大受験なんて思いもよらない事に違いない。きっと近くの大学を受験してる筈です。今日、君達の出会いや、お互いの夢を聞いて、それは、やっぱり同じなんだなと思いました。人生って、今からどうだったか・・なんて追慕するような時間を経て来ては無いけど俺だけど、こうやって、色んな出会いがあって、お互いの夢を持てる仲間と空間を共有出来たら、もっと、もっと無限に広がるかも知れないよね。俺が、まず興味を持った事。そして感動した事に、白川博士がやり遂げようとした、動物生態学の中で、DNAの世界です(当時の話)その動物のDNAを解析する事です。(当時、作者は、一切書物読んでいません。自分の発想でした。現在こうやってPCに打ち込んでますと、こんな事考えていたのかとびっくりしますね。今盛んに解析が進んでいます)そうすれば、人間の病気や、寿命なんて自在に克服出来たり変える事が出来るかも知れない。その血の法則を論文化され、S工大の名誉教授もされていた、白川博士の研究を、俺なりにもっとやりたいって思ったんです。それは、他の大学では出来ません。S工大で無ければ。形あるものは、必ずその姿を変え、消滅します。無から有、有から無。悠久の歴史の中で。俺が目指すものは、形あるものをとどめたいって事なのかも知れない。けど、その形を人間の持つ、愛情、勇気、広い心、感情、英知、誇り・・色んな動物が大きな自然と闘った来た歴史で失って来たものを、俺は探って見たいと思ったんだ。出会いとは偶然なのかも知れない。けど、俺の周りで、起こったその偶然を必然に変えられるように、今からの人生を香織と共に歩んで行けたらなあって思ってます」
香月の話は、すぐには全員には分からなかった。しかし、いつしか自分達もその夢の中に引き込まれるような感覚になった。坂上が言う。
「香月のやろうとしてる事はやはり俺とも共通する部分があるようだ。それで、さっき共感してくれたんだね?」
「ああ、食料事情って事も、種の保存って事も、あるからね」
香月はそう言うと香織の肩を抱いた。他のカップルも同じようにお互いの信頼を深めるように、見詰め合った。
この日、6名のカップルにとって、本当に影響ある一日となった。最後に愛田がこう締めくくった。
「それでは、皆さん、今日のこの日は大変有意義なものだったと思います。きっと思い出に残る事でしょう。これからは社会に向かって第一歩です。それぞれに夢や目標は違いますが、この日を記念して、毎年同窓会を開きたいと提案させていただきますが、どうでしょう?」
全員が拍手した。
「じゃあ・・やはりここは、生徒会長香月君に命名して貰いましょう」
再び拍手が湧いた。
「・・えー、それでは、この春を記念して、『春想会』はどうでしょう?呼び名は当て字ですが、パスワードです」
この日の坂上とは、特にこれから大きな関係を持つ付き合いとなって行く・・。