白い雲トップへ  次へ   参考資料   お願い  登場鳩

初参加で、初優勝。それも全国杯に手が届くか・・と言う快分速。のちに香月鳩舎主流種鳩となる一流競翔鳩を、香月は次の200キロレースにも参加させた。皆を驚かせたのは、これだけでは無い。このJrレースでも香月は優勝した。磯川は2位だった。他にも3、5、6位に入賞し、300キロレースでも強豪の大人達に混ざり、3位入賞、400キロ、4位、500キロ7、9位に。たったスタート12羽の少数参加鳩舎なのに全ての参加レースに入賞を果たし、もう中堅どころか強豪と言える成績を残したのであった。川上氏は300キロ〜500キロのレースを全て優勝。300キロ、1、2位。400キロ、1、2、4、8位。500キロ1、2、3、6位と圧倒的な強さであった。まさしく川上ファミリーの独壇場とまで連合会では賞賛された。最終のレースで磯川も4位に食い込む健闘を見せたものの、香月に文部、Jrと負けたショックは大きく、この秋レースを最後にしばらく鳩レースを中断となったのである。
 12羽中香月の鳩舎には9羽の選手鳩が残った。過酷な秋のレースに6羽・・後日帰りも3羽居た。同一兄弟の中で3羽しか、失踪鳩を出さずに残ったのもは特筆すべきものだ。
 そして・・・やはり、この「ピン太号」は文部大臣杯全国優勝の初栄冠を手にした。まだまだピン太号は主力として、息の長い素晴らしいレース鳩となってゆく・・初配合の初雛・・初レース・・この巡りあわせ・・ 香月は、やはりレース鳩によって人生を大きく変える事となるのだ。

プロローグ 第3編 白川老人

 既に、高校生活は始まっていた。香月は高校生になった。香織も同じE高校に入学。香月と香織の交際も始まっていた。見違えるほど明るくなった香月は、今やクラス委員長を務め、拓さんの友達に囲まれる毎日であった。取り分け香織の存在も目立って、香月、香織のカップルは同級生もうらやむ間になってもいた。
 春のレースで、香月は早くも1000キロレースに参加。3羽記録鳩を出した。ピン太号も1000キロを記録した。
「いいかね?香月君!君の鳩は短距離、中距離ではこの4期とも素晴らしい成績なのに、700キロ、1000キロレースは入賞していない。本来はきっと中・長距離で活躍できる筈なんだ。この原因は・・」
「原因は?どこにあるんでしょう・・」
「いや・・まだ君に無理だったね。もう何年も競翔やってた子に喋ってるように、私は熱くなってた」

 川上氏は、笑った。
いえ!教えて下さい。どこに原因があるのでしょうか?」
「困ったなあ・・・まだ競翔4回の子に口が滑ったよ・・」
「是非!」

 香月の視線は、川上氏の戸惑いを拒否していた・・。
「しょうがない・・君には鳩レースを楽しんで貰う立場の私が、まるで、煽るように言って・・。君の・・レース間訓練が少し気になってたんだ。いや・・悪いと言う訳じゃない。レース間が1週間、2週間しかない現実で、500キロレースから700キロレースには、いかに早熟の血統の君の鳩でも、疲労がピークになる頃だ。その訓練はまだ生後1年の若鳩だから、必要ないとは言わないけど、そのせいかも知れないね・・まだ競翔一年と半年の君に、こんな事言う私も口が滑った。許してくれたまえ。」
「いえ!参考にさせていただきます」

 競翔を始めてまだ秋・春・秋・春・・4回のシーズン・・香月が既に、強豪と言っても過言で無い成績を残している事と、このベテラン競翔家さえここまで、言わせてしまう、非凡さが確かにあるようだ。
 又、大学受験していた磯川も無事大学の医学部へ合格したようだ。北村は進学せず家業の酒屋を継ぐそうだ。そして、これまでスクラムを組んで鳩レースをやってきた芳川も、東京の大学へ合格して、香月の周囲も大幅に変わっていた。しかし、もう、一人ぼっちの孤独な彼では無かった。競翔には学生の友人が回りを囲み、香織と言う仲良い異性の友達も出来、学校でも友人達に囲まれる毎日であった。
 そんなある日の事であった。香月はここで運命的な出会いをする。彼の将来を決定する大きな出会いであった。その前にこんな事もあった。
 この日・・いつものように、訪れた川上氏宅の前で香月は立ち止まった。