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カズエース号のモデルになるRC♂は、 2005/5/29 中山鳩舎が御提供下さいました 有難う御座いました。
2003年2月6・7日分

帰りの道中、川上氏が言った。
「今晩は、君の意見を有り難く聞かせて貰ったよ。一つ、一つ、競翔が幕を開けるにつれ、君の訓練の結果が成果を示して来る。私も大羽数参加の安心感からか、どこか、詰めを誤っていたようだ。叉、磯川君にしても、少数精鋭主義と聞いていたのだが、まさか、大羽数を秋に持って来るとは思わなかった。競翔の駆け引きと言うのも、段々と皆がやって来るようになったね。」
香月は答えた。
「この前、自鳩舎の血統を整理してて・・近親交配は難しい面が多々あり、今更ながら難しいなあって再認識しました。特に磯川さんの鳩舎は、ペパーマン系のパイロン号直系が主力ですから、その前に導入していたそれ以外のペパーマン系にしても、源鳩が何重にもなる近親となります。前年のダービー総合優勝の鳩を見ても分かりますように、アンダーソン系の交配が成功してます。これから何分の一かでも新血統を入れて行かないと、最初の当たり配合のような結果は、そうそう望めそうも無い事でしょう。小数精鋭主義を目指していたが、とことん出来なかったのは筋力訓練をした事を見ても分かりますように、少し出来、不出来のばらつきが生じたと見ます。そこで、300キロまでの短距離は分散して参加して見て、能力を見極めた上で、400キロで一気に確かめようとしたのでしょう。」
「君は、毎度の事ながら鋭い分析をするねえ。じゃ・・今日戻って来た12羽は要注意・・かな?」
「はい。厳選された主流でしょう。磯川さんは、400キロを狙ってなんか居なかったんでしょう。狙うは菊花賞だけだと思います、今秋は。そして、それは来春の有力候補鳩です。大レースの」
「うむう・・確かに・・。で?君は今秋に成果を上げた理由として訓練だけではないね。どこに資質に違いがあったのかね?」
「特に、今秋に限りますと、
ピン太×マロンの子鳩が300キロ総合優勝しましたけど、100キロから300キロを4連勝しました。ヒロ号と、ムーン号の交配の子鳩・・こちらが今回、400キロ優勝しました。共に、源鳩の孫であり、曾孫です。」
「うむ」
「そして今秋は、
グランプリ×リリーの子にピン太を交配した子鳩の活躍しています。それぞれ近親ですが、ノーマンサウスウェル、勢山、シューマンの血が3対3対2の割合で混ざるような交配です。」
「うむ・・それで?」
「それぞれにシューマン系の血も混じる交配なんですが、非常にシューマン系の血は濃くて、特徴を受け継いでおります」
「成る程。確かオペル系もそう言った、孫、曾孫の交配だね。参考にしたのかね?」
「ええ、その組み合わせが成功してるんじゃないかと思うんです。」
「良い交配だった訳だね、血の混じりあいと言うか」

「はい。今後更に研究を進める上で、大学で研究室の掛川さんが、非常に協力的で、色々手伝ってくれてます。聞けば、吉川さんの高校の大先輩らしいですし、不思議ですね、縁って」
「そうか、吉川君か・・初めて私の家に来た時の顔を思い出すね」

この夜の会話は、秋レースを戦い抜く強豪競翔家達の各自の手腕を垣間見る思いがした。そして次週の高松宮杯レースは好天の追い風に恵まれて、素晴らしい記録が続出した。香月は16羽を参加させた。14羽を帰舎させ、またもや優勝、2位を占め、連合会会員を騒然とさせた。香月はこの時、100キロ、200キロ、300キロ、300キロ、500キロと5連続優勝を飾ったこの鳩を、将来の短距離のエースとなる事を期待して「カズ・エース号」と名付けた。この鳩は香月鳩舎を代表する、短距離エース選手鳩として、これから益々華々しい成績を重ねて行く事となる。叉、悪天の400キロレースはその後帰還鳩が相次ぎ、連合会でも2100羽が帰舎したようで、会員も安堵したようだ。そして、香月の開幕6連勝で来た秋季レースも、いよいよ大レースの菊花賞を迎える事となった、参加連合会180連合会。参加羽数10万8000羽の途方も無い大レースとなった。春のGPをも凌ぐこのレースは、協会が力を入れて来た成果でもあったが、国際鳩舎と言う海外参加もあった。700キロレースではあるが、500キロから、1000キロまで距離は多彩。その中で、630キロから740キロまでの鳩舎が700キロ菊花賞レースの資格となる。他の距離でもそれぞれ、菊花賞、500キロ、600キロ、800キロ、900キロ、1000キロレースとなる総合レースだ。その中で、圧倒的に多い参加がやはり700キロ菊花賞。総参加羽数6万4700羽と言う空前絶後のレースとなっていた。
鳩舎の前で香月も送り出した10羽の帰舎を待っていた・・。