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スプリント号のモデルを探しています。 RCP
2003.4.3日分

PCが壊れてました。それと、深夜勤務が続き、なかなか更新が遅れていました。

次の日の晩になって、川上氏と同行して、高橋会長宅で開規正をした後、時計を預けて帰る事になった香月だったが、この席に姿を見せては居るが何となく元気の無い浦部に声を掛けた。
「・・どうされました?」
「あ・・とんだ失敗したんだよ」
「何か?」
「400キロレースは難レースだっただろう?」
「ええ、今年も大変でしたね」
「俺の鳩舎も今年の春から大羽数になり、例年に無く好調で、秋こそ上位には食い込め無かったけど、まあまあの成績でこれまで来たんだ」
「秋も・・確か・・56羽スタートでしたか?」
「うん。300キロまでは、3羽落としただけで、好調なもんだから、自分も残り半分の26羽参加したんだ、400キロ」
「ええ・・。」
「難レースは知ってるから、いつもは500キロにジャンプするんだけど、今年の秋は菊花賞があるだろ?それを狙うには、400キロは外せないって思って、選んだ半分の主力組を参加させたんだよ」
「はい」
「でも、あのレースは当日1羽だけ、翌日5羽・・結局後日帰りが5羽・・散々な結果になったんだ」
「悪いですね。後日帰りが特に・・」
「結局、500キロレースは余り良くなくて、菊花賞は8羽だけの参加になったんだ」
「ええ・・」
「昨日は2羽当日戻って来て、それはまずまずだったんだけど、今日400キロの後日帰りが2羽も一緒になって、戻って来たんだよ、結局3羽戻って、8羽中5羽記録」
「悪くないじゃないですか?それなら」

香月は浦部の言葉をまだ読みきれて居なかった。
「いや・・今日戻って来た2羽の400キロ後日帰りなんだよ。真っ黒になって、可哀相な事をしてしまったと思ってね」
「分かりますが・・あの難レースですから、ある意味しょうが無いですよ。浦部さん」
「いや、それは防げた筈なんだ。今までの俺なら、無理して400キロに参加させる事は無かった筈なんだ。少し大羽数を参加させるようになって、自分は思い上がっていた気がするんだ。来春からは又少数精鋭主義に戻すよ」
「浦部さんの考えですから・・それはそれで賛成しますよ」

多くは香月は語らなかった。この姿勢は、尊敬出来る。だが、ある程度浦部程の上級者になったならば、温室だけのレースよりは、もう一段上がって見るべきだとも思った。それだけ手腕を高く評価される競翔家に、既に浦部は到達している筈だから。
そして・・この菊花賞レースは、参加180連合会、参加総数10万7千457羽数、総合5位に入賞した。遠隔地でありながら、香月鳩舎が堂々と一桁入賞したのだ。総合96位にも入った。この秋、香月は、連合会で、全レース完全優勝を達成した。恵まれているとは決して言えない、競翔鳩達の陣容の中で、手腕の成果として誇れるような見事な訓練を行い、しかもその中から突出した競翔鳩2羽を、まさに香月が創り上げたとしか形容し難い結果を生んだ。この菊花賞を実質総合優勝したのは、香月鳩舎と誰もが認めた。香月鳩舎をこれから語る時、又、香月系の全ての血統の中心となった、その名を「スプリント号」そして、短距離の銘鳩と賞される「カズエース号」を生み出して。