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Candy Kiss 3
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友達なんかいない、と白瀬は職員室で叫んだ。
ぼくも友達なんかじゃないんだろうか。
私立の受験まえに、足をいためて休んでたとき、白瀬は自転車で、片道一時間も走って合格祈願のお守りを買ってきてくれた。
真っ暗になってから、白瀬はうちにやってきて、だまってお守りを差し出した。 冷たい風に手も顔も、真っ赤にかじかんでいた。
そのお守りをポケットに入れて、ぼくは受験した。 ポケットはカイロを入れてるみたいに温かく感じた……。
やっぱり、ぼくも友達じゃないのかな?
ちょっと、というか、かなりショックだった。 でもやっぱり、白瀬はぼくの大切な友達だ。
絶対傷ついてるはずなんだ。
もしかしたら一人で泣いてるかもしれない、そばについててやるんだ。
白瀬が行きそうな場所はだいたいわかっていた。本が好きなやつだから、図書室。
本はあんまりたくさんはないけど、ここにいたら落ち着くのだと言っていたから。
授業中に逃げ込める場所はそんなに多くはない。 一人になれる場所を探して、白瀬はきっとそこにいると思った。
冷え冷えとした廊下を歩いて、ベニヤ張りのドアを開けると、書架の前にやっぱりやつはいた。こちらに背を向けていたので顔は見えなかった。
「白瀬」
本を選んでいたのだろう。
ぼくが声をかけると、わずかに肩をこわばらせたように見えた。
「なんの用だ」
「もう授業始まるよ、白瀬」
白瀬の手は大きくて、指が長くて、どういうわけか節くれだっていた。
その手で本を書架に戻した。 でもそこから動こうとはしなかった。
ぼくは白瀬の顔を見ないようにして、隣に立ち、本を手にとった。どれも痛んでいて、しかも古いのばかりだ。
「お前なら、きっと余裕で受ったと思う、公立」
白瀬は固い声で答えた。
「もう受けない。どうせ行けないんだ。だから勉強もしない・・」
「そうか」
「就職するまで遊び倒してやるんだ」
思わず顔を見上げた。白瀬は背が高くて、どうしても見上げるような感じになってしまう。
「遊ぶったって、何して遊ぶんだ?」
酒のんだりタバコ吸ったりしたら、見つかったら就職だめになるんじゃないか? ボーリングとか映画とか。そんなとこか。
白瀬は首を振った。
「酒もタバコも興味ない」
そういって、白瀬はぼくの手首を掴んだ。そしてそのまま書架に押し付けた。
「な、なんだよ。けんか売る気・・・」
それ以上は言葉にならなかった。 白瀬がぼくの口にキスしてる。 ぼくの唇を、舐めてる……く、唇を噛むな。舌を入れるな! ツバがつく、汚いじゃないか!
なにか考えるまえに身体が動いてしまった。
やつを突き飛ばしてしまったんだ。
なぜかというと、変な気持ちに……なってしまいそうだったから。 変な気持ちというのはその、なんというか。
胸が苦しい。 こいつのひどい悪ふざけのせいだ。
口汚く罵ろうとするんだが、舌がもつれてアワアワいうだけだった。
白瀬はにやっとした。
「冗談に決まってるだろ」
「白瀬の変態、ボケナス! お前のかあちゃん出べそ! 車に敷かれてベッチャンコっ」
にやにや笑ってる白瀬を残して、ぼくは図書室を飛び出した。
その日は苦しくて、給食がほとんど食べられなかった。 白瀬の唇の感触とか、いろいろ思い出して、それだけでお腹がいっぱいになってしまった。
残してると、となりの席のやつが「くれ」と言って、全部食べてくれた。
昼休み、女子が「バレンタインのチョコ」をみんなで買いに行く話をしていた。 どこどこのスーパーに買い出しに行くんだと。
好きな男の子にチョコレートをあげるのに、どうしてみんなで買いに行くかなあ。
帰り道、ふとケーキ屋を覗いた。 バレンタインチョコ、と旗が立っていたから、ふらふらと入っていってしまった。
小さな店の真中には、赤い包装紙に包んだトリュフチョコレートを、山積みにしていた。
8個入りで600円。 中坊には高い買い物だ。
ぼくは、そのときばかなことをしてしまった。
それをひとつ掴んで、レジに持っていってしまったのだ。今思い出しても恥ずかしい。
何を考えていたんだかまったく。
ちょっと、というか、めちゃくちゃ変だけど、ぼくはそれを買って帰った。
4(やっぱり続く小川の回想シーン)
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