医は仁術                  H.12.04.13

このお話はかなり、赤裸々でお気の毒、というか、かなりバカっぽくてアレなんで、あらかじめご了承ください。
時代背景は、幻水1と2の中間です。
「医食同源」というSSの続きであります。
※ミューズで坊っちゃんと暮らすグレさんは、ホウアン先生にだまされて、坊っちゃんにスッポンスープを飲ませてしまい、超どえらい目に会いました。 その後日談です。

「先生、おはよう!!」
 朝一番、さわやかな声とともに、ホウアンの診察室に飛びこんできたのは、あのトランの坊やだった。
 片手には、あの物騒な棍棒を持っている。
 そしてもう片方の手には、逃げよう逃げようともがいている緑のマントの男。
 おお、飛んで火に入る夏の虫とはこのことか。

 ホウアンは思わず歓喜にうち震えたが、強いて冷静を装おい、メガネを直した。
「どうかしたのかい? リアム君、そんなにあわてて」
「グレミオが恥ずかしがるから、むりやり連れてきたんです。 見てやってください」
「グレミオさん?」
「実は、急にお尻からすごく出血して……」
 必死の形相で、グレミオはリアムの口を抑えて叫んだ。
「わ、わ、私は大丈夫です!!」

 リアムはその手をひねり上げて、大喝した。
「大丈夫なもんか! 昨日トイレでぶっ倒れたくせに!!」
「あ、あれはちょっとびっくりして、その、この歳で初潮を見たのかと……。ははは……(涙)」
「ばかいうな。 とにかく、はやく治さないと。 先生、お願いします。 おれ、これから仕事だから」
 人事だと思ってか、坊っちゃんはグレミオを放り出すと、足早に診察室を出ていった。

 一人残されたのは、ふるいつきたいほどゴージャスなイケニエ、もとい患者。
 縦方向に育つだけ育ったカラダが、ホウアンの好みにぴったりだ。
 さあ、どうしてくれようか。
 しかしイケニエのほうは、どうにでもしてセンセ、という心境ではもちろんないようだ。

 いきなりくるっと振り向き、ドアのほうに逃げようとした。
「朝からお騒がせしました……ではサヨナラ」
 ホウアンは逃げられないようにドアをふさいで、後ろ手に鍵をかけた。
 勝負はあった。若者の顔に恐怖が走る。

「ふふふ……グレさん。 ついに来るべきものが来ましたね。 頼ってくれて医師冥利に尽きるというものです」
「ああああ……坊っちゃん……助けてください……」

 かわいそうに、目もうつろに怯えているその耳元で、ホウアンはひそ、とささやいた。
「大丈夫、何もしませんよ。 治療するだけです……」
「そのことばに何度だまされたことか! もうだまされませんよ、先生!」
 思わず裏返ったその声も愛らしい。 もっと、泣かせてみたくなる。
「今度こそ治療ですよ。 こちらの診察台に横になって、ほら……」

 ホウアンは、カーテンに囲まれた内診台を指差した。
 グレミオはいかにも辛そうに、マントを羽織ったまま診察台に上ろうとしている。
「服を着たままでどうするんです。 下だけでいいから脱いでくださいね」

 のろのろと脱ぎ、診察台によじ登った。 うつむいているが、屈辱に涙ぐんでいても不思議ではない。
 ふつう痔の診察では、内診台を使ったりしない。
 横になってもらって、パンツを下げ、ちょっとお尻を広げるだけでことたりるものだ。 しかし今回は大サービスということで!
 脚をぴたっと閉じたままなのを、膝に力をこめてぐいと120度に開かせる。
 おお、なんというエクスタシー!  苦労して医師になってよかった……。

 それから温水と指で、念入りに、しつこく、肛門周辺と内部を洗浄する。
 まるで婦人科の診察のようだ(場所は違う)が、これも出血大サービスだ。 ただし自分への、だが。

 そして婦人科の診察はカーテンを引いて行うが、もちろんカーテンなど引いたりはしない。 もったいない。
 グレミオの、まるで苦行に耐えるような顔も、たまらなく心そそられる。
 思わず鼻息も荒くなるというものだ。

 ご丁寧に、なんの問題もない前のほうも洗浄しながら、ホウアンは愛想よく言った。
「大丈夫、傷になっていますが、きれいにして薬を塗れば治ります。 しばらく刺激物を避けて、安静にすることですね。 もちろんお尻を使ったセックスもしばらくおあずけ……」
 たまりかねたように、グレミオが声を上げた。
「先生! あの……別に前まで洗わなくても……」
「治療の一部です」

 グレミオが恨めしげにホウアンを見た。
「先生に教えていただいた、スープのレシピですけどね。 よっっく効きましたよ。 坊っちゃんはいつにもましてお元気で。 五回までは数えてたんですけど、あとはもうわからなくなりました」

「ほう、そんなに効きましたか。 さすが、若さですね……それが今回の引き金になったのかな? まったく、君は我慢しすぎですよ……」
「そんな、ひど……! い、いたい!!」
 ゼリーを塗った座薬をゆっくり入れると、グレミオは悲鳴をあげた。
「座薬と、塗り薬、それから便通をよくする飲み薬を出してあげますから、ちゃんと治療すればすぐによくなるからね。 はい、これで終わり。 服着てもいいですよ」

 ほっとしたように、グレミオはそそくさと内診台から降りて身じまいをはじめた。
「折りを見て、あの坊やには私から釘をさしてあげましょうか? ほどほどにしておきなさいってね」
「や、や、やめてください!!!」

「ところで。 よい道具を上げよう。 最新式の医療器具です」
「医療器具、ですか?」
 若者は疑わしげに医師を見つめている。
 ホウアンは医療器具を入れた箱を持ってきて、グレミオに渡した。

「お手洗いでお尻を洗うためのものです。 さっき私があなたのお尻を洗った、その小型版ですよ。 携帯もできますのでね、便利です」
「ああ、なるほど……」
「このポンプの中にぬるま湯を入れて、お手洗いで使ってください。 水量は調整してね。 お風呂に入っても同じですが、日に何度も入れないでしょう? これと薬だけで、1週間くらいで治るでしょうかね」
「……そんな、高価そうなものを……いただくなんてできません」

「いえいえ、いいんですよ。 これを私と思って使ってください」
 ホウアンの露骨なことばに、グレミオの顔はかっと紅潮した。
「なんなら毎日洗浄してあげてもいいですよ?」
 ますますグレミオは烈火のごとく怒り、ホウアンをにらんだ。
「先生、そういうの性的いやがらせっていうんですよ」
「おや、純粋に治療のお話をしているつもりですが?」

 グレミオはぐっと黙り込んだ。
 目の回りを赤くして、かわいい。
 かわいいから、よけいにいじめたくなるのだ。 でも、今日はこれくらいにしておいてあげよう、と思う。
(…………あんまりいじめると、泣いちゃうかもしれないからな)

「では、お大事に」 
 薬と洗浄器具の箱とを持って、グレミオは逃げるように帰っていった。
 薬の分量は少なめにしておいた。 なくなるとまたもらいに来るはずだからである。

 そのほっそりした後姿を見送りながら、ホウアンはふっと息をついた。
「性的いやがらせ、か……」
 いやがるとよけいにそそられる、というのを、彼は知らないのだろうか。 とにかく、しばらく楽しくなりそうだ、とホウアンは思ったことだった。

おしまい。
こら、すけべ医師。 医師会から除名されるぞ〜!
それにしても洗浄便座というものは、痔主にとってはすごくありがたいそうです。

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