医食同源              H.12.02.17
 毎日の食事づくりは、まず献立を考えるのが大変だ。
 主婦ならぬ主夫、付き人グレミオにとっても、それは同じである。

「坊っちゃんは道場でいっぱい運動するから、体によいものを」
 そう心をくだき、工夫するかいあってか、坊っちゃんは健康そのものだ。
 棒術を教えはじめて数ヶ月、すべて順調なのだが。

 そんなグレミオにも悩みがある。
 たいした悩みではないのだが、本人には切実なものだ。

 ときおり見かけるグレミオのストーカー、もといホウアン先生
 こいつもけっこう悩みの種なのだが、最近は(付き人を犯すのは)あきらめたようで、
「おはよう、グレミオさん。お元気ですか」
 などと和やかにあいさつをするだけになっていた。
 
 その日、偶然かどうかしらないが、道端であった先生はふと眉をひそめた。
「どうしたんですか、グレミオさん。 顔色が悪いですね」
「そ、そうですか?」
坊やの夜のお相手は大変です
 思わずグレミオは「ええ、まあ」と相槌を打ってしまいそうになる。

「へ、変なこといわないでくださいよ、先生」
「顔を見ればわかりますよ。 過ぎたるは及ばざるがごとし、ですな」

 そんなふうに見えるのだろうか。
 グレミオは顔に血が昇るのを感じながら、黙りこくった。

 すると先生は、気の毒そうに言った。
「医師の私から、よい助言をいたしましょう」
「助言?」
精力を抑えるような、特別のスープのつくりかたを教えてあげよう」
「先生、坊っちゃんは毎日大変なんですから、元気がでる食事が必要……」
「性欲を押さえ、なおかつ元気がつく食べ物です。 医食同源。 食べ物こそ、薬なのです」
 先生は自信ありげに笑った。
「診療所にいらっしゃい。 レシピをあげましょう」

 もらったレシピには、耳慣れない食材の名前が並んでいた。
 薬草らしきものは、ホウアン先生のところで手に入った。
 そしてメインの食材は、紹介された高級食材店で買った。

 しかしそれは、見るからに不気味なシロモノであった。
「ううっ、気持ちが悪い……」
 しかしホウアン先生によると、非常に健康によいものだという。
 食材店で教わったように内臓を取り、脂肪を取り去って、下茹でして煮込むこと二時間。
 意外にも、おいしいスープに仕上がったのだった。


 坊っちゃんはくたくたになって帰ってきた。
 魚料理に添えて、苦心のスープを出すと、坊っちゃんは喜んで何倍もおかわりした。
(……精力を抑える料理を出すなんて)
 良心がとがめたが、ひとまずグレミオはほっとしたのだった。
 グレミオも少しは飲んだが、材料を知っているだけに、どうしてものどを通らなかった。

 ところが、グレミオの思惑どおりには運ばなかった……

 
 髪を乱して突っ伏しているグレミオのむきだしの肩に、坊っちゃんは優しくふれて、ささやいた。

もう一回、いってみよう!
「ぼ、坊っちゃん。 さっきので、四回……」
 仏の顔も、二度、三度、どころか四度。
みんな いくぞ!!!」 (……みんなって誰なんだ?)

 いうがはやいか、グレミオの腰を抱え込み、もう第五ラウンドをはじめてしまう坊っちゃんは、戦場と同じく、こんなところでも突撃タイプだった。
「う……あっ……ぼ、ぼっちゃ……ん……どう……して……なぜっ!?」
「そうか。 泣くほどイイか。 おれもすごく、イイぞっ」
「あっ……ちょっとまっ……たいっ……いた……い……ですっ……ああっ!!」
「うおおおっ、グレミオっ。 愛してるよおおっ」(←聞いちゃいない)
 いつにもまして元気な坊っちゃんに好き放題されながら、グレミオは痛恨の涙をこぼした。
(だましたんですねっ、 ホウアン先生っ!!)


 そのころホウアン先生は、日記をしたためていた。
「今日のグレさん。 夜が恐いようす。 気の毒だったので、特製スッポンのスープの作り方を教えてあげた……」
 そして日記から顔を上げて、つぶやいた。
「ふっ……よいことをしたあとは気分がよい

終わり。 そしてこの後日談はこちら。

坊グレの部屋へ戻る
トップページへ。

おやじご用達、スッポンスープの作り方。
1.スッポンの首をきり、血抜きをする。
2.甲羅を取り、中の内臓と脂肪を取る。
3.下湯でしてから、薄皮をむく。
4.くこの実、しょうが、ねぎ、八角などの香味野菜と、干した山芋、味出しの豚肉と煮こむ
5.塩、こしょう、しょうゆで味を整えてできあがり。
 ※すっぽん、山芋、ねぎは、全て精力増強に役立ちます。