ラブ・クリニック H.12.03.03
これは完全にフィクションで、モデルはおりません。
このようなことが病院で起こるということも(多分)ありません。
こういうお医者さんも、多分あんまり、いないと思います。
だから安心して病気になろう。
坊っちゃんと、新同盟軍リーダーは、まだ天山の峠から戻らない。
グレミオはなんとかバナーまでは付いてきたのだが、道中、毒虫にやられて高熱を発し、同盟軍本拠地の診療所で休んでいる。
いくさはもう終わり、新たな怪我人もでない。
寝ているのも、もうグレミオ一人だ。
両手に点滴を受けながら、グレミオはうとうとしていた。
「グレミオさん、検温しますね」
ホウアンの優秀な助手、白衣の天使こと「ミューズの秀才」トウタ君の声で目を覚ます。
冷たい水銀計を脇にさしこんで数分。
「38度8分か。 薬が効き始めたみたいですね。 点滴してて、気分が悪くなったりしませんか?」
「いいえ。 でも、眠くて眠くて……」
「それは大丈夫、そういう作用があるんです」
ふと、トウタはグレミオの顔を見る。
「顔当りましょうか。さっぱりするでしょ」
「大丈夫です、それくらい、自分で……」
「でも両手に点滴してるから、大変でしょ。 ぼくは上手いんですよ」
「え? だって、トウタ君まだ……」
顔を当る必要もないだろうに。
するとトウタは言いなおした。
「ええ、ぼくのじゃないです。患者さんとか、ご遺体のひげをそるんです」
「ご、ご遺体……」
「そう、ご遺体です。 処理する人がいないときは、ぼくがやってあげるんです」
トウタ君ははきはきと言う。
「手術の前には剃毛をしますが、あれもぼくの仕事です」
「ふうん、すごいですね、トウタ君。 ところでその、テイモウって……」
「そう、毛を剃るんです。 お腹を切るなら、下半身の毛はほぼ全部剃ります。 ぼくは上手だから、剃刀負けなんて起こしません」
「………………」
「だから安心してくださいね」
どう安心しろというのかわからないが、トウタは自身たっぷりだ。
そういうそばから、もう道具を持ち出してきた。
シャボンを泡立てるための鉢、刷毛。本格的だ。
その手には、安全剃刀がきらりと光っている。
なぜかうれしそうに微笑むトウタ君。
ミューズの神童といわれた秀才である。
ホウアンの弟子だけあって、変態は双葉より芳しい。
(注:栴檀は双葉より芳し、というのが正しい)
「マイ剃刀はジレットです。 もちろん、新品です。ご遺体に使ったりしてませんからね」
(トウタ君、プロっぽいというより、なんだか怖い)と思ったが、グレミオは口には出さなかった。
戸惑うグレミオの横で、トウタはシャボンを泡立て始めた。
忙しいだろうに、ずいぶん念入りに泡立てるらしい。
その軽い音を聞いているうちに、グレミオはまた眠くなってしまった。
顔にシャボンが塗りつけられているあいだも、どうしても眠くて目を開けていることができない。
自慢するだけあって、トウタはひげを剃るのがとても上手だった。
朝寝ぼけていたりすると、つい深剃りして肌を痛めたりするものだが、その心配もなさそうだ。
傷のある左の頬も器用に当り、それからあごを終えると、今度はのどの当りにシャボンを塗りつけはじめた。
軽くあごを持ち上げられながら、のど元に刷毛でシャボンを塗られると、実はそこは非常にヨワイところなのだ。
のど仏の回りもヨワくて、そのあと優しく剃刀で剃られると、もう悶絶しそうになる。
かといって「そこはやめて」とも言えず、ひたすら耐えるしかない。
それなのに、トウタ君は床屋並に念入りだ。 完璧主義なのだろうか。
耳の下も剃ってくれるのだが、その部分も、輪をかけて感じやすいところだ。
やっと終わって、熱いタオルで拭かれると、グレミオはほっと息をついた。
「何なら全身剃ってさしあげましょうか」
「……?!」
驚いて目を開けると、そこには妙に真剣な顔の、ホウアン医師がいた。
「ト、トウタ君だとばかり……」
「……トウタ君はちょっとばかり忙しくてね。気の毒だから替わってあげました。というか、おいしい仕事を替わってもらったというか……」
「先生のほうがお忙しいはずでしょう!!」
「確かにお忙しいです。 お忙しすぎて……めまいがしそうです。 午後は臨時休診です」
そういいながら、ホウアンは銀縁メガネを外した。
いつもの微笑みはない。
「ここで犯らずにおくものか」という意思がみなぎって、怖いくらいだ。
「セ、センセ…………あのっ」
「グレミオさん、私はもう限界です……そんな悩ましい寝巻き姿を見てるとねえ」
「…………!!」
ホウアンは、点滴の管につながれたグレミオの両腕をつかんだ。
ベッドの上に飛び乗る、ホウアンの動きの速いこと。
まるで豹のようだ。
「わかってください、あなたを欲しいんです」
「は、放してください!」
「グレミオさん、あなたのために手術を受けたというのに、つれなくしないでください」
「手術……わ、私のためって……何ですか、そりゃあ」
「包茎手術ですよ。あなたを満足させられるように、あれからすぐに治したんです」
「!!!!!」
「少しですが、ムスコも成長しました。 これで、なんとかご満足いただけると思います。こんな私を哀れと思し召して、一度でいいんです、グレミオさん」
そこまでコタエていたのか。 グレミオは必死に謝った。
「……あれは、言いすぎました、すみません、バカにしたわけじゃないんです。許してください!」
「いいえ、本当のことですから。 でもあれから、誰ともしてないんです。一人えっちをするときも目に浮かぶのは、グレミオさんの姿ばかり」
「ひっ」
耳元に息を吹きかけられて、グレミオは思わずのけぞった。
薬のためか熱のためか、抵抗するにも全く力が入らない。
下半身はホウアンの脚にはさまれて、身動き一つとれないのだった。
そんなにホウアンの体が重いはずがないのだが。
「思いを遂げたあかつきには、あなたの斧でこの首落とされてもかまいません!」
「く、首なんて……いりません、だからやめて、くださ……いっ!」
「死んでもいいから、いまここであなたとやりたい。がんがん、やりたいっ」
「ホウアン先生、お気を確かに……!」
「一度だけでいいんです、一度だけ、許してください、お願いです」
ほとんど泣き落としに近い。
拝み倒して、やらせてもらうつもりなのか。
「ホウアン先生、おかしいですよっ」
「あなたのことを思うと、おかしくなるんです」
「すみません……正直、あなたは、タイプじゃないんです(筋肉ついてないし)」
「何ていわれても平気です。あなたは私のオナペットだ」
「…………い、やです、ホウアン先生……」
「筆おろしをさせてください(?)そしたらもうあきらめます」
「……って、もう……さわりまくってるじゃないですかっ……!」
診療所で貸してくれた寝巻きは、わきの下が開いている。
その下からホウアンは手を差し込んで、胸といわず腹といわず、淫らに手を這わせているのに、グレミオは点滴が気になって、手を動かせないのだった。
「ああ、グレミオさん……夢に見たグレミオさんのうなじだ……べろべろさせてっ」
「う……んっ! もう、大声だしますよっ! いいんですかっ」
「うれしいです、感じてくれてるんですね……わかりますよ。グレミオさん。思いきり声を出してください……」
「ひ、人を呼びますよっ」
するとホウアンは、グレミオの帯をほどいて前をはだけさせた。
「お願いですっ、ぱっくんさせてください、ぱっくんっ!ほら、パックンっ」
「……うあっ……」
「この色あい、カタチ、まさに絶品だ。もう、こんなに。 この私が勃たせたんです。自分で自分を誉めてあげたい!」
抵抗しなければと思うが、あまりといえばあまりのことに力が抜けて、体に力が入らない。
ホウアンはすばやく帯を解いて投げ捨てた。
楽しげに着物を脱いでいくのを、グレミオは茫然と眺めていた。
襦袢と紐イロイロを床に脱ぎ散らかし、その下のパンツがまた、派手だった。
まさに目をむくような極彩色で、昇り龍が描かれているのだった。
以外に派手好みらしい。
なぜ抵抗しないのだろうか、自分でもわからない。
ホウアンがグレミオの脚を広げようとする。
それにも抵抗しないのは、どういうことなのか。
鳥の世界では、求愛ダンスをする種類がある。
オスはメスの前で奇抜なダンスを披露し、気に入ってもらえたら、晴れて交尾させてもらえる。
人間の目には、「オスが狂態を演じ、メスを煙に巻いて、そのスキにちゃっかり交尾する」ふうにも見える。
今のグレミオも(オスだが)いってみれば煙に巻かれた状態なのだが、同時に、
「なんだかかわいそうだから、いっぺんくらいなら、いいかな?」という「ほだされた」状態でもあった。
「グレミオさんっ、いざ!」
「あの、先生、せめて……何か塗るとかしてほしいんだけど。」
「はいはい、お薬ですね。 ささ、塗り塗り」
ホウアンは、用意してきた「お薬」をたっぷり塗った指を、そろそろとグレミオの中におさめていった。
「……あっ……」
「はうっ……鍛え抜かれたグレミオさんのピーに、私の指が!!!」
「……(鍛え抜かれたって、ちょっとひどいかも)」
「あああっ、すっばらしいいいっ」
「先生、さあ早く……(とっととやらんかい)」
グレミオは、そっとホウアンの「治療済、未使用」に指を這わせてやった。
それがいけなかったのだろう。 思いやりがあだになることもある。
「だあああっ」
騒々しく叫んで、ホウアンは入り口で自爆した。
がっくりと肩を落とすホウアンに、グレミオは声も掛けられない。
「ううう…………無念。…………」
「……先生。 何といったらいいのか……」
早漏は、手術では治らないのだ。
それとも興奮しすぎたのか。
「哀れと思うなら、何も言わないでください」
「は、はい、先生」
「…………」
「わかりますよ。 だからそんなに落ち込まないで。 誰にでもあることですよ」
ここで間違っても笑ったりしないのが、礼儀というものなのだ。
「ありがとう。 やさしいんですね、グレミオさん」
「だから、その。 このシーツと寝巻きをなんとかしませんと。それから窓を開けて空気をいれたほうが」
「……そうですね」
ホウアンは急いで着替えとシーツ、何枚か清拭用のタオルを持ってきた。
グレミオのくしゃくしゃになってしまった寝巻きの袖に、点滴の容器をくぐらせて、器用に脱がせていく。
それから神妙な顔をして、グレミオの体を拭き始めた。
ふつう医師はこういうことはしないはずだが。
「私はミューズ出身で、子供のころから医師を目指していました。 今のトウタ君と同じですね。 日々、勉学に明け暮れ、色事にかまける暇などなかった」
ひとりごとのように、ホウアンは言う。
「面白みがない男ですからね。 やはり、どこか欠けているのでしょう、私には。惚れた相手を振り向かせることもできない……あなたのことですよ、グレミオさん」
「でもあなたはお医者さんで、たくさんの患者を救うでしょう。 それは誰にもまねのできないことです」
「ありがとう。 でも、あだな慰めは酷ですよ」
「…………」
「すっかりきれいになった。 これでよし、と」
それから、糊の効いた寝巻きを、点滴の管に通しながら着せ掛けてくれる。
「もうすぐ元気になって、坊やが戻ってきたら、またあなたはトランに帰って……もう二度と会えないんでしょうね」
「…………」
「こんなことをして、二度とここには来てくれないでしょうね」
「ホウアン先生」
「グレミオさんにそんな目で見られると、どうしたらいいか……」
グレミオは、悲しそうなホウアンの顔を、両手でそっとはさみつけた。
ほんの気まぐれの続きだ。
「こうすればいいんですよ」
そして、そっとくちびるを吸った。
驚いたようにホウアンは目を見開いた。
「ね?……キスは百薬の長っていうでしょう?」(酒は百薬の長、が正しい)
「グ、グレミオさん。 それはちょっと、ちが……」
「簡単でしょう。 ごはんを食べるみたいに、キスすればいいんです」
そう言って、またホウアンにキスをした。
ホウアンは目をつぶり、グレミオの肩にすがっている。
これくらいにしておかないと。
そうグレミオが思ったときだった。
がちゃがちゃ、と診察室のドアノブが動いた。
かぎを掛けているはずだが、誰かがそれを開けようとしている。
「ただいまっ先生!! グレミオさん、イチゴ買ってきたよ!」
トウタ君がお使いから帰ってきたのだった。
グレミオは寝巻きをしどけなくはだけ、先生はド派手なパンツ一丁。
ベッドの上である。
トウタの顔に、貼りついたままの微笑み。
「………………………」
ことばもなく見詰め合う三人だった。
END
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書いた人も、ことばもありません。
ホウアン×グレの続きはこちらです……vv