Home Sweet Home  3     01/02/27

 崎田はおれの胸の上で、ゆっくり首を振る。子供がいやいやをするように。
 ナイロンみたいに固い髪が広がって揺れている・・・まるでライオンのたてがみみたいだ。

 髪は固いのに唇は柔らかくて気持ちがいい。 
 このまま舐められていたら、おれはイってしまうんじゃないか、とばかなことを考えたくらいだった。
 
 甘やかすように、優しくおれの胸を愛撫していた崎田は、ふと顔を上げてささやいた。

「もう体温あがってますよ、小川さん」
「……」
「小川さん。素肌にワイシャツ着るでしょ」
「ランニングくらい着てるよ」
「たまに着てなかったですよ」

 そうだったかな。そうかもしれない。
 真夏だった、汗をかいたんで、ロッカールームでタンクトップだけ脱いでしまったんだ。
 でもポリエステルの生地が背中に貼りついて、かえって気になってしまった。
「そんなこともあったな」

 おれがうなづくと、納得したのか崎田はまた動き始めた。
「小川さんの背中を見てた。透けてた。それから胸も、全部透けてた。 ……小川さんすぐ背広脱ぐでしょ。 冬でも脱ぐじゃないですか。 冬は冬でランニングがくっきりだし。 おれそのたびにどきどきして……席、となりだもんな」
「そんなこと……言っても……肩、凝るんだからしかたな……」
「触りたかった……小川さんの背中、胸、それから全部。こうやって。 こうやって」

 力任せにねじ上げる。 崎田の力は強かった。
「崎田……痛い……よ……」
「苦しかったです、わかりますか? わかんないでしょうねえ、おがわさん」
「……言って……くれないんだから……わかるもんか?」

 崎田の広い肩がおれの目の前にある。 動くたびに筋肉が盛り上がり、血色のいい皮膚に汗が浮いているのが見える。
 隙間無く抱きすくめ、崎田がおれの脚を広げて持ち上げる……。 いきなり全部やるつもりなのか。 
 そのでかいのを、しかも一発抜く前のがちがちに固いのを、ジェルなしで突っ込むつもりなのか? 慣れてるおれでもマジ痛いかもしれない、とふと思った。 ぞくっとする期待感だ。
 ばかなことに、おれは痛いのがけっこう好きだったりする。

 壁の薄いビジネスホテルでこんなことをはじめて、隣の部屋に筒抜けだ、どうしてくれるんだ? おれもおれだ、腰を浮かせて何してるんだ。

 声をこらえられない、どうしてくれるんだよ?

 いいや。これは本能だから止められないんだ……。


「おがわさん、ねえ、言ってください、きもちいい? きもちいいいって、ねえ。小川さん」

 崎田はおれの顔の上に、肩を押し付けた。
 しょっぱい味がした……。 もしかしたら歯を立てたのかもしれない。 崎田の肩の骨を覆う、滑らかな皮膚に。

 おれを抱きしめて、おれの顔を埋めさせてくれて、そして圧倒的に支配してくれる、広くて強い肩が必要なんだ。
 何も考えられないようにしてほしい。

 おれの上に遠慮無く体重をかけてくる、どれくらい目方があるのかしらないが、とにかく重い。 これだけで何も考えられなくなりそうだ……。
 
 どれくらいやつに犯されてたか。


「おがわさん……おがわさんは、どうして、そんなに…………」
 
 崎田はうめいて、動くのを止めた。 何かに耐えるようにうつむいていたが、しばらくしてつぶやいた。

「ごめんなさ……もう、おれ持たない……いっていいですか?」
 おれがうなづくと、崎田はピッチをあげて、獰猛に腰を振りたくリはじめた。
 こういうときの無防備さが、おれは愛しいと思う。 相手が誰であれ愛しいと思えてくる。
 崎田のイク顔を見たいと思って見上げたが、汗でてらてら光る、厚みのある肩しか見えなかった。
 しばらく崎田は腰を打ちつけてきて、ようやく動くのを止めた。



 それから崎田がどいてくれて、おれは横向きになろうとしたが、開かれてめいっぱい体重をかけられていた股関節は容易に閉じてくれなかった。

 こんなところで股関節脱臼なんて……洒落にならない。

「どうしました」
「……なんでもないよ」
「大丈夫ですか? つったんですか?」
「いや……収まってきた」
「無理しちゃだめですよう。 トシなんだから」
「そのトシよりに無理させたの誰だよ」
 くすくす笑いながら、崎田がおれの腰をさする。
「この辺かなあ? 大丈夫?」
 といいながら。

 身体を離したあと、崎田はおれをじっと見詰めた。 
「小川さん……少しは気分いいですか?」
 おれは満足な返答もできないでいた。 崎田はとても優しくて、身体は満足していたけれど、波が収まってしまうと……また辛いことを考えてしまう。
「まだダメみたいですね」
「な、なん……おい、もう……」
「さっきは興奮しすぎて早かったですけど、回数なら誰にも負けませんからっ。 真っ白に燃え尽きたぜ、真っ白によ〜、って感じになるまでやりましょ、小川さん」
「だからなんだよそれ……」
「あしたのジョーじゃないですか。 知らないの?」

 よいしょ、とオタクな崎田は、おれの脚を無理に広げ、まともにのしかかってくる。
「お、重い……」
「重いでしょ。 つぶしてあげます」
 まじで重い。 さっきのは加減していたのか。 だめだ、死ぬ。 息が吸いこめない。

「し、死ぬ……崎田、助けてくれえ……」
「死にたくないって思うでしょ?」
「さき……たあっ……きさまっ……」

 死にたいなんて思わなくしてやるって、こういう意味だったのか?
 
「おがわさん、生きててよかったと思わせてあげますからね。おれこのペースで5回はいきますからっ」
 うれしそうな崎田の声だった。
 その前に、セックスで死にたくない、と思うおれだった。


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