Only You 12 2002/4/20

 平良は目を軽く閉じて、おれのを口に含んだ。 平良の舌と唇がおれの装備品を柔らかく包む。
 ほんの少しひやっとするので「水飲んできたの?」と聞くと、平良はコクンとうなずいた。
 ああ、こんなことを誰かに言ったような気がする…。

 今は柴犬を外で飼ってるが、昔、家の中で犬を飼ってたことがある。 小さい白いやつだ。居間の隅っこでごろごろしている老犬で、客が来ても吠えもせず、じっと座って話を聞いていた。
 夜は居間の隅っこでやっぱり寝ているが、朝になるとやってきて、弟とおれの顔を順番に舐めて、起こしてくれた。 しかし直前に水を飲んでくるものだから、口の周りの金色の毛が濡れて、こっちの顔もべちょべちょに濡れてしまう。
 顔を捕まえて、こら、水飲んできたのか? と聞くと、うれしそうに尻尾を振って、でもやっぱりワンとも言わないのだ。
 

 かすかにクセがある前髪を震わせて、平良はその行為に夢中になってしまう。髪を撫でるとほんの少し動きが止まるが、しばらくするとまた熱心に「仕事」を始める。
 そのうち唇で感じすぎたのか、がんばりすぎて酸素が足りなくなったか、すっかり目がとろんとなっていたりする。

 ほっとくとおれがイクまで続けるので、とちゅうでやめさせてキスしたり、こちらが舐めてやったりするのだが、今日の平良は少し違った。
「坂東さん…坂東さん」
 甘えを含んだ声で、繰り返しおれの名前を呼びながら、平良はおれに体を預けてきた。
 かすかに布団が動き、お互いの肌の匂いや、平良の使っているデオドラント、おれのコロンの香りが混じった、暖かい空気がおれの顔にかかった。
「しかたないなあ…疲れてるからあと一回だけだぞ?」
 しかし平良の暖かい体に抱きしめられた瞬間、その疲れは蒸発してしまった。
 こいつのためなら何でもしてやれる…などという甘い感傷がわきあがった、次の瞬間、平良はおれの上に体を落としてきた。静止する間もなかった。
 おれは肝をつぶした。それより何より、息子がトラブってる。

「は、は、はいっ…た? 入ってます?」
「はいってないよ、てか角度が違う。」
 平良はおれの上に尻を落として、入れようと思ったらしい。 しかし目測が狂って、単におれの息子をプリンプリンした尻でなぎ倒し、そのなぎ倒したサオもろとも、タマの上に80キロの体重をかけただけだったのだ。 これはまじで、痛い。
「めちゃ痛いんだけど…」
「ご、ごめんなさいっ」
 あわてふためいて、顔を真っ赤にして、平良は腰を浮かせた。それで懲りない平良は、今度はきっちりおれのを握って、自分の尻にあてがい、決死の覚悟のほどを宣言した。
「今度は大丈夫です。」
「おい、ひょっとして、お前が受ける気か?」
「だめですか?」
「慣れてないんだから、無理だって。無茶だよ」
 平良はまだぐちぐちとつぶやいていた。
「………坂東さん、すげえ簡単そうにやってたし、今日疲れてそうだったし、おれがしたほうがいいのかな、って…」
「簡単そうって…言うほど簡単じゃないよ。せめて何回か、普通に受けてみてから」
「そんなに難しいんですか?」
「いや、全然…」
「じゃ、簡単なんだ。おれにもできる」
「ちゃんと話を聞けって!」
 自分の体を大事にしないのも気に入らないし、自分のムスコを痛めつけられた怒りも手伝って、つい荒い声で叱り飛ばした。
「切れるだろ中が! 切れたらマジで痛いんだぞっ」
 すると平良は涙ぐんでしまった。気が弱いやつだが、しらふで泣かれるのははじめてだった。

 どうしてかわからないが、突然やられたくなったらしいのだ。
 だいたい平良は、自分では認めたがらないがセックスが怖いし、無類の不器用者だ。そんなやつに、いきなり騎上位でネコなんかできるはずがない。
 体の上でジャンプすれば挿入できるとさえ思っていたらしいとは、なんという無知なのか。

「坂東さんは、おれがキライですか?」
 本当に涙声になっている。何も泣くことはないんだ…。 涙は女の武器と言ったのは誰だっけ? 男の武器にもなるのだろうか。
「泣くな、バカ」
 もうちょっとましな言葉をかけられたらよかったが、やっとつぶやいた言葉がこれだった。


 はじめてのときにおれは平良に無体なことを強いたので、それがひどい恐怖感を植え付けたのではないだろうか、と頭のすみにいつもひっかかっていた。
 だから二度目からは反省して、少なくとも痛がるようなことは避けてきた。
 
 平良は昨日、「坂東さんがはじめてじゃないけど、嫌いにならないでね」と口走っていた。
 それを言葉どおりにとると、平良はおれがはじめてではなかった。
 平良は、いまだに慣れないし、どこかでおれを怖がっている。 今日は何をされるんだろうと、期待半分、怖さ半分でおれを見てるようなやつなのだ。

 ふと、こんな可愛い平良を誰にも渡したくない、という気になってしまった。
 怖がる平良を、脅したりすかしたり、なだめたりして、男にした。 いや、あのときは実にタイヘンだったが、平良の味は実に美味で、苦労の甲斐もあったというものだった。
 それはそれでいいが、いつか本当にその気になって‥‥おれのためにすすんで尻を差し出し、もとい体を開いて(同じことか)体の中まで明け渡してくれたらうれしい、とも思っていた。平良の尻の、締まった筋肉と来たら。 本人に自覚はないようだが、スーツを着ていてもジーンズをはいていても、モコッ!と出ていてまったくもって、男なら誰でもつかみたくなる尻だ。 おれのような男なら、ってことだが。

 それを立証しているのが、あるスーパー銭湯でのちょっとした事件だ。 さもありなん、と思ったことだった。
 そんな頼りないやつが、今おれのために思いつめた目をして、おれにからだのすべてを預けようとしている。
 惧れで、平良に触れる指が震えてしまいそうだ。

 傷つけないように、びっくりさせないように‥‥いやになってしまわないように。 平良が、自分のことを汚れてしまったと思わないように。

 何かに祈るような気持ちで、おれは平良に触れた。


 しかし、おれは、おれたちは、天土のいずれの神に祈ればいいのか。
 互いの高すぎる体温、激しすぎる熱い血の流れに押されて、祈る言葉も見つからない…




ぬうおおお〜〜意味不明〜〜〜。


おまけ。
平良のスーパー銭湯体験記。 平良の要領を得ない訴えをまとめたもの。

「アパートのお風呂が壊れちゃって、スーパー銭湯ってやつに行ってみたんです。 なかなかキレイでしたよ。小さいけど露天風呂まであって。
 何種類もジャクージがあって、お湯もきれいでたっぷりしてて、それで300円なんだから安いですよ。
 夜も遅かったから、もう人はそんなにいなかったです。おれと、中年くらいの男と二人だけだった。

 気持ちよくお風呂に入ってたら、なんだかなあ。へんな感じがしたんです。粘りつくような視線っていうか。
 目を上げると、その中年がじとっとおれを眺めてる。 怖い。
 とりあえず頭を洗い終わって、そそくさとシャワー浴びて、逃げるように浴室を出ました。二人っきりじゃ気持ち悪いし。
 更衣室も一人っきりでした。
 必死で体拭いて、とりあえずパンツはいたとこで、あいつが出てきてしまった。 前もかくさず歩いてくる。そんな背は高くないけど、妙に筋肉ムキムキなんです、そいつ。
 そして舐めるようにおれを見ました。上から、下まで、舐め回すようなかんじでした。
 やつは立ち上がった堂々たるソレを突き出し、おれの前で振って見せたんです。
 うりうり、ってかんじで。 ゆさゆさ、って。 おれ完全に固まってて、なんかもう、だめってかんじ?
 そしておれの方を向いたまま、堂々と黒いパンツをはきはじめた。しっかり見てるおれもバカだけど、つい目が放せなくて…。
 どうやって逃げ出したか、あんまり覚えてません、おれ。
 怖かった〜。 世の中にはいろんな人がいるもんですよね」

坂東さんのセンパイとしてのアドバイス
「そのスーパー銭湯、ハッテンバだそうだよ(いい男いないけどな、そこ)。 その辺の海岸も実はハッテンバ。 よかったね〜なんもなくて。 (そういや随分行ってないんだなあ…) 平良くんはいい尻してるから、狙われるのは無理ないよ。その気がないならあんまり近づかないほうがいいよ? ところでそいつ、どれくらいのサイズだった? 太さは? カタチは?」
平良「………」

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