Only You 13 2002/5/24
おれは布団をタテにまるめて、壁際に押し付けた。
「平良、これにもたれてると少しは…」
いいかけて、思わず絶句した。
「坂東さん?」
「なんでもない。……」
あまりの恥ずかしさに顔が熱くなった。これではまるで、不慣れな女の子を前に舌なめずりをする、中年のおやじそのものだ。
平良が不思議そうにおれを見上げるので、いいかけたことは最後までいわなければならない。だから言った。
「少しは、楽なんだ。 力を抜いていてな。」
平良は素直にうなずいて、おれに体をまかせた。
昔恋人だった男が、はじめておれを抱こうというとき、こうすると楽だとうそをついた。
本当にうそつきだった、その男の持ち物はあまりにも馬鹿でかく、どうしてなのか横に広がってさえいて、こっちは横になろうがうつぶせになろうが、どうしたって痛かったし、翌朝は悲惨だった。
まともにセックスできるまで何日かかっただろうか。
最初の男が一番でかかった、それ以来、そんな巨大な弁当箱にはついぞお目にかかったことがない。 なんという不幸な男遍歴だろうか。
マーフィーの法則にもできそうだ、はじめての男がたいてい一番ご立派、と。
それでも、平良の勃起したときのサイズは、あいつに負けないほど立派だ。 そしてそのときのカタチは、やつのよりずっときれいだし、いとおしい。
だから思い出すな、比べるなおれのバカ。
優しく平良を犯しながら前に手を伸ばし、立ち上がったものを自分の動きよりずっとすばやく扱いて、できればこのままいかせようと思った。入れられたままイクことができたら、平良もそれなりに納得するだろう。 おれが行くまでがんばらせるのはかわいそうだ。
平良は布団に頭を押し付け、ほとんど動かなかったが、手の中でどんどん硬度を増すのを見れば、感じているのは明らかだった。
「気持ちいい? 平良」
そういって首を舐めると、平良はかすかにうなずいた。
はじめての相手も、浅黒くて精悍なかんじで、少し平良にタイプが似てただろうか。
いい男だったが、「おれはタチ専門」とか言って、一方的におれの上で腰を振るばかりで、一度もさせてはもらえなかった。
それでも、疲れてうつぶせになっている、浅黒いやつの尻は、たまらなくいやらしくて、見てるだけでむらむらくるのだ。
隙を見て手を添えると、ばっと起き上がっておれの手首をつかんでしまう。 指を入れるのすら許してくれなかった。
力では全然かなわなかったし、無理やり犯れるような相手じゃなかった。
まったく、実にアンフェアな許しがたい男だった、さっさと別れて正解だったのだ。
だらだらと何年も付き合っておいて、「ごめん、直己」のひとことですませ、やつは女に走った。 ごめんですむなら警察はいらんぞ、田所。
しかも見合いで、できちゃった結婚だと。 もうすぐ3人目が生まれますだと!
能天気な絵葉書なんかよこしやがって。 ンなもの速攻ゴミ箱行きだ、ナマごみと一緒におさらばだ、文句あるか田所。
……なんか思い出したらムカムカしてきた。 こんなとこまで…平良とすごすベッドの中まで思い出が追いかけてくるなんてまったく。
この不景気に、のんきに阿波踊りの連長なんかしてる場合か、田所め。
今度融資とか言ってきたら、いちゃもんつけて貸し渋ってやる。
どす黒い怒りがこみ上げてきて、おれは一瞬だけ、思い切り腰を使ってしまった。
「ああっ!」
おれの下で平良が、腹に力の入らない悲鳴を上げた。 丸めた布団の端をつかんでいる、その手が白くなっている。
しまった…案外すんなり入ったので、つい。 おれはあわてて平良の手を握った。 すると平良はおれの手をつかみ、痛いほど握り返してきた。
「痛い? やめようか?」
平良は無言で首を振った。痛かったのに決まってるのに。
「急ぐことはないんだ、ちょっとずつ、ちょっとずつ慣れていけば」
「やめないで、ください…お願いだから!」
それから平良は振り向いて、こういった。
「おれなんかめちゃくちゃにしてください…やなこと、全部…わ、わすれさせてくださ…」
振り向いた平良の顔は、涙でぐちゃぐちゃだった。ずっと泣いていたのか、鼻も目も真っ赤だった。
「どうした…気分悪いのか?」
他の男の事をちらっとでも考えていたのがわかったのかと、とてつもない惧れを抱いておれは尋ねた。
平良は首を振り、笑顔を作ろうとして失敗して、泣き笑いのような妙な顔になった。
「平良。…泣かないでくれ。」
途方にくれて見つめると、平良はよけいに涙をこぼした。 何かで神経が過敏になっているのだろうが、これは尋常ではない。
「泣くな、頼む。」
泣き顔を隠すように布団に突っ伏した平良の肩を、途方にくれて抱きしめるしかなかった。
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お兄さん小説