野ばら 6 2002/7/8
クージはぼくの肩に手をかけ、「怖がらなくていい、アウチ」とささやいてきた。
わけもなく身の危険を感じて、タマが身体の中にめり込むのではないか、と思われるほどだ。
やつの顔までの距離は、ほぼ30センチ。 いや、20センチだろうか。 恋人たちにふさわしい距離であって、ぼくら他人は何もここまで近づく必要はない。 尿をかけるだけなのだから。
なぜここまで雰囲気を出さねばならないのだ。
しかもやつは微妙に鼻息を荒くしている。 なんだかこのまま、本当に犯されそうな気がしてくる…。
近寄りすぎて今は見えないが、やつの持ち物がギンギンに勃起しているのをぼくは知っている。 生まれてはじめて目にしてしまった、他人の勃起が、写真のように目の中に焼き付いてしまった。
自分のがいかにも粗末に思えてくるサイズで、二重の精神的ショックもいいとこだ。
その硬いやつが、意味もなくピタピタとぼくの股間に触れた。 瞬間、昏倒しそうになり、ぼくは懸命に脚を踏ん張った。
「早く、頼む…いい子にしてくれ…小便を掛けて助けてくれるだけ、だろ? それだけ、だよな?」
哀れに震えるぼくの声が、遠くに聞こえる。
「すまん、おれ、興奮しすぎで小便が出にくい。 ちょっと待て」
「もう、いいよ、クージ…自分で掛けるからいい。」
しかしこのときに及んで、小便が出ないのだ。
ぼくの、申し訳なさそうに縮み上がったイチモツは、どうしたわけか尿意を覚えるのを拒んでいた。
この際、この変態敵国青年に助けてもらうしかないのだ。 やつの家伝の宝刀が、黄色い聖水を撒き散らしてくれるまで。
別のことを考えようとして、やつの肩越しに、自分が枝に掛けたズボンを見ていた。 ごく濃い茶色の軍服の上に、木漏れ日が揺れている。
「う、催した、やっと」
やつの声から微妙に遅れて、熱い聖水が、音を立ててぼくの股間を狙い撃ちした。
それは脚を伝って、下に落ちていく。 しばらくして、やつの放尿は終わった。ご丁寧にも終わるまで、やつはぼくを放さなかった。
いっそ死んだほうがいいほど屈辱的な感覚であった…。
やはり生まれた日がいけないのか。 なんだか鼻の奥が痛くなってくる…ぼくは泣いてしまうかもしれなかった。
「アウチ、お前……めちゃ可愛い」
変態青年のあえぐような声に、ぼくは耐えきれず、涙をこぼした。
二度も兵隊に取られた上に、こんなホモ野郎に目をつけられて、あまつさえ股間をハチに刺され、こんなやつに身体を汚されるなんて。…
小便を掛けられてしまった。 尺八された。 女性の唇で触れてもらったことすらないというのに…ぼくの可愛そうな、小さなアウチ…。
「泣くなよ。 んな可愛い顔で泣かれると、おれ、歯止めが」
「あ、このやろっ」
不意に身体が浮いて、目の前にやつの頑丈そうな尻が見えた。
クージはぼくを無礼にも肩に担いで走ったのだ。 そして、また家の中に駆け込んだ。
その間、数秒だっただろうか。 台所のテーブルの上にぼくを放り出し、「後生だからちょっとだけ、股開いておいてくれ。3分でいいっ」と叫んだ。
「いやだっ」
「痛いことはしない、約束する」
「くそ、おれをどうしようって言うんだ」
「もいっかいよく見せてくれ」
「み、見せてどうしようって…」
ぼくの股間にやつの目が絡み付いて、やつの手はむき出しになった自分のイチモツへ伸びていた。
「きみのをご鑑賞しつつ、オナニーでガマン…」
「死ね、この変態っ」
「いいじゃないか、見せるだけで減るもんじゃないしっ」
「これ以上減らされてたまるかっ」
「頼むよ、アウチ。 テント張った状態で帰れない。 外へいけないじゃないか……お前をちょっと見せてくれたらいいんだ、それ以上のことはナニもしない」
クージの緑の目が潤んで見えた。
哀れっっぽいものいいに、ついにぼくはひざを屈した。
見せてくれというから、ひざを割ったのに。
クージの指はぼくのイチモツを裏返しにして、あちこち調べつつ、右手は忙しく自分の物を扱いている。 はじめてみる、他人の自家発電だった。 しかもぼくの身体をおかずにして、どでかいオナニーをやらかそうというのだ。
「ああ、やっぱり…見間違いじゃなかった。 こんなところに助平ほくろが!」
クージの太い指が微妙な具合に、ぼくの亀頭を撫でる。
「うっ」
思わず声を漏らしていた。
今までに知った女性は、ぼくの前をこんなふうに触ってくれたりはしなかった…触ってくれてもこんなに上手ではなかった。 その刺激に、無情にもぼくの息子は、膨張した。
「…少し固くなったみたいだが、気持ちいいようだな、 アウチ」
「こ、こらっ。 触るからだ、見るだけだって言っただろっ」
やつは、ゆっくりと首を振った。
「ごめん…アウチ。おれ我慢できない。もちょっとレベルを上げた行為をしたいと思うんだが」
「お、お前の言葉がよく理解できない。人間語でしゃべれ」
「ちょい、痛いかも」
「な、約束が違うぞ。 何もしないってさっき」
「きみにも悪い話じゃない」
「な、なんだ」
「いい汗かいたら、毒も早く分解される、きっと。多分。…おそらくは。」
「や、やめてくれ。」
ぼくは冷たい汗をかきながら首を振った。 しかしクージは執拗にぼくを追い、口をふさいでしまったのだった。
覚えておれ、クージ…。
野ばら 7
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