第60回 丸亀マラソン大会

〜 Qちゃんのジョギング教室 〜



2006年2月5日(日)第60回香川丸亀ハーフマラソン大会が開催されました。

(石材店)「ちょっと、ちょっとぉ。いつの話ですか。もう4月に入っちゃいましたよ。いくらなんでも2ヵ月もサボるなんてひどいですよ」
(幹事長)「いやあ、本当にすまんことです。冬は色々と忙しくて。スノボーとか薫製作りとか・・・」
(石材店)「でも満濃動物リレーの記事は僅か1週間でアップされましたよ」
(幹事長)「あれは次なる丸亀マラソンが控えていたから焦って書いたけど、次回は5月末のオリーブマラソンだから油断しちゃって」
(石材店)「2ヵ月も前の事なんて、もう忘れちゃったんじゃないですか?」

確かに、最近、アルツハイマー症状の進行が著しく、2ヵ月も前の事なんて、ほとんど覚えてない。なので、印象に残っている事だけを書く。

今回の丸亀マラソンの目玉は、当日のレースではなくて、前日のジョギング教室。実は、昨年の大会も前日のジョギング教室は目玉だった。野口みずき選手がジョギング教室に来たのだ。当然、ペンギンズ随一のマラソンオタクである石材店が、その絶好の機会を逃すはずがなく、かぶりつきでジョギング教室に参加したのは記憶に新しい。
(幹事長)「新聞に証拠写真が載ったもんな」
(石材店)「いやあ、それほどでもぅ」

ただ、去年の野口選手の場合は、当初はジョギング教室がメインで、当日のレースは小学生の部で一緒に1kmを走るだけとなっていたが、それではどうしても我慢できず、当日になって急遽、ハーフマラソンに出場したため、そっちの方が大きな話題になってしまった。だってアテネオリンピックで金メダルを獲った後の初レースになったからだ。

しかし、今年は違う。今年のジョギング教室はQちゃんこと高橋尚子選手が来るのだが、彼女の場合は当日のレースには絶対に出ないことが明らかだった。なぜなら、当日のレースには、去年に引き続き野口みずき選手が出るからだ。Qちゃんと野口選手がガチンコで勝負するレースなんて、こら大変な話で、そうやすやすとはあり得ない。勝った方はいいけど負けた方はかなり大きなダメージを受けてしまうからだ。オリンピックに二人が揃って出場した場合くらいしかありえない。いくら丸亀マラソンがオリンピックの次にランクされる世界有数の有名レースに成り上がったとは言え、彼女たちが敢えて自分の商品価値を落とすリスクを取る可能性は無い。なので、Qちゃんは前日のジョギング教室だけのためにやってくるのだ。
なので、今年は前日のジョギング教室は当日のレース以上に大きな価値のあるイベントなのだ!

(石材店)「えらく力説してますが、要するにQちゃんファンの幹事長は、今年のジョギング教室には参加したいってことですね」
(幹事長)「ジョギング教室に参加できるのは何人かなあ?」
(石材店)「去年と同じ300人ですねえ。当日、現地の受付で先着順です」
(幹事長)「去年は希望者はみんな参加できた?」
(石材店)「参加希望者がほぼ300人くらいだったから全員参加できましたね」
ううむ。300人っていう枠が多いのか少ない分からない。少ないって事はあり得ないだろうけど、どれくらいの競争率だろう。
(幹事長)「アテネオリンピック後の初レースの野口みずきと、復活したQちゃんと、どっちの人気が高いと思う?」
(石材店)「そらやっぱりQちゃんでしょう」
(幹事長)「そうかあ。受付はいつからなの?」
(石材店)「ジョギング教室の1時間前からです」
(幹事長)「1時間前に行けば大丈夫かなあ?」
(石材店)「微妙なところですねえ」

こら悩むところだ。娘と同様、並ぶのが大嫌いというか、何もしないでぼうっと列に並ぶという価値観が無い僕としては、1時間も前から並ぶという行為自体が生理的に受け入れられないのだけど、しかし、Qちゃんと間近に触れ合える機会なんて滅多に無い。悩みに悩んだ結果、ちょっと早めに家を出る。
(石材店)「て言うか、悩んでる暇があったら、さっさと来てください」

結局、1時間半くらい前に丸亀スタジアムに到着した。で、びっくり。早くも長蛇の列なのよ。ほんと、びっくり。しかも、どう見ても普段はジョギングしているとは思えないようなオバハンやガキどもがわんさかいる。おいおい、お前ら、単にQちゃん目当てに来てるだけやないかっ!
(石材店)「幹事長だって似たようなものですよ」
さすがに石材店は気合いが入っていて、既にかなり前の方に並んでいる。あれなら300人の枠に当選確実だろう。僕が並んだポジションは極めて微妙なところだ。これでダメだったら悲しいよなあ、なんて思っている間にも、後ろにはどんどん列が延びていく。僕よりも考えが甘い人がこんなにいるのかと思うと、少しは自分も成長して大人になったような気分だ。

天気は良かったけど、ものすごく寒い日で、時折、雪が散らついたりしている。じっと待っていると身体の芯から凍えそう。1時間前になって受付が始まり、列が少しずつ動き出すが、入れるかどうか、なかなか分からない。寒さが心にしみる。そのうち、係の人がやってきて、僕より少し後ろの方の人に対して「みなさんはたぶん、もうダメです。ダメだった場合でも、スタンドから見学はできますからスタンドに上がってください」なんて言っている。それを聞いて早々に諦める人も多い。どうせスタンドへ行くのなら、早めに言って前の方の席を確保した方が得策だからだ。しかし、僕のいるポジションは、相変わらず微妙だ。頭数だけでいけば無理っぽいけど、小学校5年生以上という年令制限や、ジョギングできる靴と服装という制限もあるため、せっかく並んでいても失格になる人もいるからだ。だんだん近づいてくるが、同時に係員が「あともう少しでおしまいです」なんて言う声も大きくなる。最後まで冷や冷やさせられたが、結局なんとか最後には潜り込むことができた。なんてラッキーなの!

受付も終了してブラブラしてたら、突然声を掛けてくる女性がいる。なんと、中学校の時の同級生の田Oさんだ。
(石材店)「田OさんのOって、マルですか、それともアルファベットのオーですか?」
(幹事長)「アルファベットのオーだよ」
(石材店)「じゃ、ほとんど伏せ字になってませんよ」

中学校の時の同級生なんて、30年以上も会ってないので普通は分かるはずないんだけど、実は今年のお正月に30年ぶりくらいに同窓会が開かれて、奇跡の再会を果たしたのだった。
(幹事長)「あれ?何してんの?こんなとこで」
(田O)「高橋尚子選手のジョギング教室に来たんやないの。受付どこか知らん?」
(幹事長)「甘いっ、甘いぞっ、甘いでっ、甘すぎるっ!甘いの四段活用! もう、とっくの昔に受付終了したで」
(田O)「ええっ!?遅かったん?がっかりやなあ。あんたは参加するん?」
(幹事長)「僕は気合いの入れ方が違うからね。1時間以上前に来たで」
(石材店)「自分もギリギリだったじゃないですか!」

田Oさんは普段からジョギングなんてしたこともないし、完全にQちゃん見たさにミーハー気分で来ただけみたい。Qちゃんの動員力はすごいなあ。

ジョギング教室参加者300人の内訳は、まさに老若男女そろい踏み状態。子供、学生から始まり、どう見てもマラソンとは縁の無さそうなオバハンから、マラソンオタクのオッサンまで、各種取り揃われている。開始まで少し時間があったが、みんな最前列のポジションを確保しようと必死になっている。ただし、Qちゃんがどこに来るか分からないので、あんまり意味は無い。しかも、結局、主催者により、年令と経験で4グループに分けられた。僕は素直に「マラソン経験のある中高年」の部に入った。石材店は「マラソン経験のある若手」の部に入ろうかどうしようか迷っていたが、結局、人数的に同じくらいだったので、僕と同じグループに入った。

(幹事長)「去年のジョギング教室は、どんなんだったの?」
(石材店)「野口みずきの監督が野口みずきをモデルにトレーニング方法とか色々と教えてくれましたよ」
(幹事長)「Qちゃんは小出監督から独立したから、自分で解説してくれるんかなあ」


急にざわついたと思うと、QちゃんがチームQのメンバーと共に総勢4人で登場した。なんと、今日のQちゃんは、すごく可愛いっ!今までQちゃんを直接見たのは、シドニーオリンピックの翌年に丸亀マラソンで走った時だから、5年前の2001年2月だ。その時は僕も走りながらすれ違いながら見たのだが、彼女も走っていたので真剣な顔つきだった。また、最近テレビで見たのは、奇跡の復活優勝を遂げた去年の東京国際女子マラソンだけど、やはり真剣な顔つきだったし、そもそもレースに出る時は身体を絞っているので、ちょっと細すぎる印象がある。しかし、今日のQちゃんは、今まで見てきたQちゃんと大違いで、顔つきもふっくらして、本当に可愛い。

めっちゃ可愛いQちゃん


(幹事長)「うわあっ!めっちゃんこ可愛いでないのっ!なあっ!」
(石材店)「それについては、コメントを控えさせていただきます」
(幹事長)「ま、まさか、お前、村主章枝と同じように、Qちゃんもブサイクと言うんじゃないだろうなっ!」

驚いたことに石材店の一家では、家族全員そろって村主章枝さまのことをブサイクな女とけなしているのだそうだ。あんなに美しくて色っぽい村主章枝さまに対して何て事を言うのだろう!
(石材店)「村主と違って、Qちゃんは悪くはないと思いますが、幹事長ほどはしゃぐ気にはなれませんねえ」


とにかく僕はQちゃんの可愛さに圧倒されて、ジョギング教室どころではない。これは僕だけではなく、参加している大半のオッサン達が同じ様な態度だった。ジョギングについて何か解説しているけど、そんなもの誰も聞いてなくて、なんとか間近で顔を見ようと必死なのだ。係員が「写真は撮らないで下さい!」って叫んでいたので、最初はみんなこっそり隠し撮りしてたけど、そのうちだんだん大胆に堂々と撮り始めた。300人が堂々と撮り始めれば、いくら係員が叫んだって無力だ。完全に「芸能人とファンの集い」だ。

この騒ぎはQちゃん側も予想していたというか、馴れているので、当然のことと受け止めているような感じだ。ジョギング教室と言いながら、実は、ほとんど解説らしきものはない。そんなもの最初から誰も求めていない。走る前に準備運動なんてのもやるんだけど、ラジオ体操の方がまだマシと思えるほど手を抜いた実にいい加減なものだった。それでもオッサン達は嬉々として一緒に体操する。それから、4グループ別にQちゃんと一緒にスタジアム内をジョギングするんだけど、特にアドバイスも何も無く、単に一緒にキャピキャピ走るだけだ。それでも、一緒に走れるというだけでオッサンどもは大はしゃぎ。なんとかしてQちゃんと話しようと群がって収拾がつかない状態。

当然、僕もなんとか話そうと思って人をかき分けながら最前列中央を走るQちゃんに近づいていったんだけど、あと少しってことろで、急にQちゃんが後ろの方へ行ってしまい、話せなかった。くやしーっ!
1つのグループが走っている間は、他の3グループはボウッと見ているだけ。

一緒に走るQちゃんとわたくし


4グループが順番に走り終わると、今度は質問コーナー。適当に準備運動やって、ちょこっと走っただけで、いきなり最後の質問コーナーというのも、実に安易で手抜きだけど、チームQは他のメニューは用意してなかったみたい。それやったら、なにもチームQ4人全員で来る必要はなく、Qちゃん一人で来ても同じだと思う。
しかし、何でもいいからQちゃんと一緒に過ごしたいだけのオッサン連中は、それで十分だ。みんな我がちに手を挙げる。「レースの時の給水所のコップ水は飲みにくいけど、どうすればいいのか」なんていう、たわいもない質問から、走る時の足の踏みだし方のような専門的な質問まで、バラエティに富んでいた。結構、時間があったので、かなり延々と質問コーナーが続いたが、誰も飽きることなく最後まで熱心に聞き入っていた、というか、Qちゃんを見続けていた。そして、最後は大拍手でおしまいとなった。

おしまいとなってからが最後のチャンスだ。当然、みんなダッシュして群がる。僕も今度は強引に最前列に割って入り、両手でQちゃんと握手して「頑張ってね!」と力強く励ました。あまりに大声だったのでQちゃんは、はっきり言って、ちょっと驚いた表情だった。
(石材店)「ヨン様に群がるおばちゃんみたいでしたよ」
とか何とか言いながら、Qちゃんと一緒に写真を撮るチャンスを逃した石材店は、チームQの栄養士の佐藤直子さんと一緒に写真を撮った。
(幹事長)「この佐藤さんって有名なの?」
(石材店)「いえ。今日まで知りませんでした」


以上、今年の丸亀マラソン大会の記録でした。おしまい。



(石材店)「こらーっ!前日のジョギング教室の記事だけじゃないですかっ!当日のレースについても書いてくださいよっ!」
(幹事長)「もう、ほとんど覚えてないよう」


毎年、ペンギンズの初レースは満濃動物リレーだけど、マジなレースとしては丸亀マラソンである。ここのコースは日本陸上競技連盟公認コースで、平坦で記録が出やすく、最近、国際マラソン・ロードレース協会にも公認された。ただし、そのため参加者のレベルは高く、かなりペースは速い。我々としても気合いの入るレースである。

今年も参加メンバーは精鋭が揃った。石材店のほか、中山選手(元ダイエー、現ジュビロ)、永遠のライバル高松支部長、満濃リレーマラソンでペンギンズを裏切った笹谷選手、ペンギンズのニューアイドルペンギン中村くん。そしてそして、なんとサル1号だあっ!丸亀マラソンは、ペンギンズの公式レースとしては一番ペースが速くてシビアな大会ということもあり、これまで女子部員の参加は無かったのだが、なんと今年は遂にサル1号が参加してくれたのだっ!
(幹事長)「すごいなあ。この厳しいレースに自発的に参加するなんて、偉いっ!」
(サル1)「えっ?石材店さんが楽なレースだって言ってたから来たんですけど・・・」
(幹事長)「えっ?」
(石材店)「いや、まあまあ、コースは平坦で楽じゃないですか。それに今日はええ天気ですねえっ!」

レース当日も前日に続いて天気は良かったし、寒さは前日よりだいぶマシだった。ま、これならサル1号も楽しく走れるだろう。
(サル1)「ねえねえっ、厳しいって、どういう意味ですかっ!?」

(幹事長)「ところでピッグ増田選手はどうしたの?」
(石材店)「彼も出るんですけど、実は彼、恥ずかしながら5kmの部に出るんですよ」
(幹事長)「それは恥ずかしいっ!それで姿が見えないのか」

5kmの部と言えば、昨年はF川選手が出て、みんなからコテンパンにバカにされた記憶があたらしい。ピッグ増田選手はF川ほどは体力は衰えてないはずだけが、去年の四国カルストマラソンの疲れがまだ癒えてないのだろうか。

ピッグ増田がハーフマラソンに出ないのは惜しいが、代わりに野口みずきに加えて、なんと福士加代子も出るのだ
(石材店)「福士加代子はピッグ増田の代わりですか」
福士加代子と言えば、3000mや5000mの日本記録を持つ日本を代表する長距離ランナーだ。ワコールのエースとして駅伝でも有名だ。ハーフマラソンに出るのは初めてだが、大いに期待できる。
一方、野口みずきの方は、去年のレースは、アテネオリンピック後、ずっと休養していたうえ、当日になって急遽参加したため、記録的にはさっぱりだったが、今年は準備万端で望んでおり、こちらも大いに期待できる。
Qちゃんと野口みずきの一騎打ちは実現しなかったが、それに劣らぬ豪華メンバーとなったのだ。
(石材店)「僕らにはあんまり関係ないですけどね」
(幹事長)「でも、彼女らが出場するおかげで沿道の観客が増えて、走っている僕らも盛り上がるぞ」

5年前にQちゃんが出た時が同じ様な状況だった。沿道には途切れることなく観客が並び、僕らにも声援を送り続けてくれた。

(幹事長)「ところで中山選手は、なんで昨日のジョギング教室に来なかったの?」
(中山)「いやあ、雪が降ってましたんで」
(幹事長)「君のQちゃんに対する思いって、そんなものだったのね」
(石材店)「幹事長とは違いますって」

しかしQちゃんにかける思いは薄くても、中山選手のレースにかける思いはあなどれない。調子が悪い時は、僕の敵ではないのだが、調子が良い時は、僕が敵ではなくなる。
その意味で、常に好敵手なのは支部長だ。
(幹事長)「練習はどう?」
(支部長)「土日にも結構仕事が入って、なかなか練習できんのですわ」

とは言え、仕事じゃないけど、練習をサボりまくっている点では僕も同じだ。やはり油断はできない。

スタートが近づいてきて、早い者順に並ぶ。以前は、後ろの方からスタートすると、スタート時の混雑でスタートラインにたどり着くまでに時間がかかり、タイムロスが大きかったので、無理してでも前の方に並んでいた。しかし、去年からシューズに付けている計測チップにより各人がスタートラインを越えた時からのネットタイムが計測されるようになったため、無理して前の方に並ぶ必要はなくなった。
(石材店)「とは言え、後ろの方は混雑して密集してるから、なかなか早く走れないので、やっぱり前の方がいいですよ」
(幹事長)「前の方からスタートすると、速い人たちにつられてオーバーペースになってしまうから、
       今年は後ろの方からスタートするわ」

で、僕は中山選手や支部長らと後ろの方からスタートする。

それにしても、前日の寒さも和らいで、風も弱く、だいぶ走りやすくなった。これなら好記録が出るかもしれない。いつもそうだけど、実はこういう日が一番、難しい。僕の目標は基本的に「大会自己ベスト」&「新居浜支部長と中山選手に勝つこと」の2本柱である。しかし、これがなかなか両立しにくい。普通に無難に走ればライバルには勝てるかもしれないけど、記録は平凡に終わってしまう。新記録にチャレンジして積極的に飛ばすと、うまくいけば良いけど失敗すると終盤に潰れてしまって惨敗してしまう。最近、前半を調子に乗って飛ばしすぎて後半に潰れてしまって後悔するレースが多いので、後半に潰れないギリギリの線で前半を飛ばさなければならない。でも、それって、非常に難しい。つい先日も名古屋国際女子マラソンにおいて、序盤から記録を狙ってハイペースで飛ばした渋井陽子が、終盤になってガクンとペースダウンしてしまい、残り1kmというところで弘山晴美に抜かれて2位になった。コース条件だけでなく、その日の気象条件や体調でも変わってくるので、本当に難しい。
(支部長)「私ら失うものも無いし、そんなんゴチャゴチャ考えんと走りましょうよ」
(幹事長)「去年も聞いたセリフやけど、確かにそうやな」

あんまり考えずに、取りあえず中山選手と一緒に走っていく。

最初の方は適当に走っていたが、タイムはそれほど良くない。記録を狙うには、もっとペースアップするべきかなあ、なんて悩んでいると、中山選手が徐々にペースアップ。ところが、それについていくのが、なんとなくだんだんしんどくなる。ここは自重した方がいいのかも。終盤の勝負をにらんで、取りあえず無理してついていくのはやめて、マイペースで走る。5kmのタイムは、まあまあって感じ。このペースでいければ自己ベストも不可能ではない。

8km辺りからトップ選手が折り返してくるのとすれ違い始める。男子選手が現れて、しばらくすると女子選手も現れる。大声援に迎えられて女子の先頭を走るのは、野口ではなく福士だ。ハーフマラソンは初出場だけど、なんのためらいもなくガンガン飛ばしている。後半にバテるかどうかなんて心配もせず、積極的な走りだ。初出場だからこそ怖さを知らずに走っているとも言える。それに比べて経験豊富な野口選手はペース配分を考えて走っているため、福士とはだいぶ差がある。
我々は、と言うと、中山選手はガンガン飛ばし、はるかかなたに去ってしまった。彼が終盤で歩かない限り、逆転はどう考えても不可能な差になってしまった。去年に引き続き、中山選手には惨敗か。支部長も後先を考えない飛ばしっぷりで、相当な差を付けられている。ただし、彼の場合は、終盤で確実にバテるので挽回は可能だ。僕さえしっかり走れば。

15km辺りまでは、なんとかそこそこのペースを維持した。このペースで行けば、自己ベストは微妙なところだけど、ラストのスパートを頑張れば不可能ではない。なーんて甘い計算をしていたんだけど、終盤に来て一気に足が重くなる。1kmごとにぐんぐんペースが落ちていく。前半そんなに飛ばした訳でもないのに、これは一体どういうこと?
遠くに支部長の後ろ姿を捉え始めたんだけど、なかなか追いつけない。彼は例によって歩くのに等しいくらいペースダウンしているようだけど、それなのになかなか追いつけない。あと少し余力が残っていれば軽く追い抜けそうなのに。
結局、支部長に追いつくこともできず、ものすごく情けないタイムでゴールイン。
(石材店)「いつものことですけど、たまには最後まで真面目に走ってくださいよ。いつも写真を撮ってる僕の方を意識してるでしょ」
(幹事長)「せっかく撮ってくれてるんだもーん」

好記録が出そうなら最後まで頑張るけど、頑張っても意味無いもんなあ。

先にゴールして地面に倒れ込んでいる支部長に声をかける。
(幹事長)「あと少しやったんやけど、追いつけなかったなあ」
(支部長)「は、はあ?ほれろれ・・?」
(幹事長)「ん?なんやら疲れ切っとるなあ。大丈夫?」
(支部長)「ほ、ほや?ほんにゃら?」

あかん。支部長、完全に脳死状態になっている。しばらく休んで、ようやく意識が戻った。
(支部長)「スタジアムに入るぐらいから意識がほとんど無かったですわ。ほとんど覚えてない」
まるで、ゴール前にフラフラと蛇行しながらゴールしたロサンゼルスオリンピックのアンデルセン選手のようだ。

ところが、アンデルセン状態になりながら、支部長は野口選手とすれ違う時に、持っていた携帯電話で写真を撮ってたのだ。本番のレースで携帯電話をポケットに入れて走るというのも考えられないが、それで写真を撮った根性も見上げたものだ。

二人でとぼとぼ歩いていくと、絶好調の中山選手に会う。余裕綽々の笑顔だ。
(幹事長)「去年末のタートルマラソンでは圧勝したけど、今回は話にならないくらいの惨敗やったなあ。
       僕がベスト状態でも到底かなわないペースや。どこにそんな底力があるの?」
(中山)「そらもうエッチが元気の源ですよ!」
(幹事長)「石材店はどうやったん?」
(石材店)「やりましたよ。自己ベストです。この1年、このレースで自己ベストを出そうと長期計画でトレーニングしてきましたから、
       その成果が出て本当に嬉しい」

そう言えば、彼は最近、異常なまでの練習量だった。毎朝、早朝に起きて10kmくらい走ってから出勤していた。趣味で走っているとは思えない熱心さだ。
(幹事長)「その熱意を、もう少し別のところで発揮してくれたら・・・」
(石材店)「言うな!それ以上!」

ペンギン中村くんや笹谷選手も相変わらず好記録だった。
しかし、それより何より、おサル1号の快記録にびっくり!初めてハーフマラソンを走ったとは思えない好記録
(石材店)「すごい!すごすぎるっ!」
(サル1号)「ええ〜ん?そうですかあ〜ん?」

と甘い声で余裕をかますサル1号だが、本当にすごかった。
(幹事長)「これが若さというものなのか」

なんてボヤボヤしてたら、うどんが無くなりかけている。この寒空のもと、暖かいうどんを食べねば凍死してしまう。慌てて長蛇の列の後ろに並ぶが、ありつけるかどうか分からない。前日のジョギング教室の受付みたい。そして今回も、ギリギリでありつけた。ちょうど僕らまでだった。なんてラッキーな。
(中山)「記録も良かったし、幹事長には圧勝したし、うどんも食べたし、幸せな気分」
(石材店)「自己ベストを達成できて本当に大満足」
(サル1号)「初めて出たけど軽いもんだったわ」
(支部長)「頭、真っ白だけど、幹事長に勝ったとのことなので、とりあえず満足」
(幹事長)「えーんえーんえーん」

けだるい倦怠感の残るレースであった。

みんなハッピーよ


ところで注目の招待選手だが、なんと福士がそのまま突っ走って優勝してしまった。しかも日本新記録だ。ハーフマラソン初出場で日本新記録で優勝だなんて、すごい。さらに惜しくも2位になった野口選手も日本新記録だった。野口は中盤、福士にかなり離されていたが、さすがに経験豊富で、福士が終盤ペースダウンしたのに対し、最後まで同じペースを保ち、差をどんどん詰めていった。一時は1分以上離されていたのに、最後は僅か17秒差だった。もう少し長ければ、逆転していただろう。しかし、ここはやはり後先を考えずに日本新記録を狙ってガンガン飛ばした福士選手を褒め称えよう。本当に素晴らしい意気込みだった。Qちゃんといい、野口といい、福士といい、こういう積極的なランナーが魅力的だなあ。
(中山)「幹事長も、もっと積極的に走ってくださいよ」
(幹事長)「彼女たちは豊富な練習が裏付けにあるのよねえ」


福士選手の走りに、というか、その意気込みに反省させられたレースであった。
(幹事長)「以上、おしまい。これでいい?」
(石材店)「やれば思い出せるじゃないですか。よい子よい子」



それから1ヵ月後。丸亀市民である石材店が丸亀市の広報を持ってきた。

(石材店)「広報丸亀に幹事長の勇姿が載ってますぜ」
(幹事長)「ん?またかい?ほんと、有名人は引っ張りだこで困っちゃう。どこどこ?」
(石材店)「困ってる割には嬉しそうですね。ここです」
(幹事長)「えっ?どこって?」
(石材店)「ここですってば」
(幹事長)「えっ?これ?これなの?これが僕なの?」
(石材店)「これ、そうでしょう?僕はそうだと思いますよ」
(幹事長)「ううむ。確かに、僕だな、これ。しかし、よく見つけたなあ」
(石材店)「気合い入れて全員確認しましたからね」


石材店の根性には、はっきり言って脱帽です。


〜おしまい〜




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