100文字小説です。

電線の上のフィート

1.電線上のパレード

 

僕、今日死んだみたいだ。
7歳の誕生日を迎えたばっかりなのに。
「ユウくん」
パパとママが僕の名前を呼びながら泣いている。
僕も一緒になって泣いていたけど、外から楽しそうな音楽が聞こえてきて、窓を開けたんだ。

 

 

2.フィートの魔法

 

電線の上にシルクハットを被ったお兄さんがいる!

お兄さんはフィートって名乗って言ったんだ。
君を迎えに来たよって!

だけど僕パパとママを置いて行けないよ。
大丈夫。
フィートは笑って、僕に魔法の種をくれたんだ。
 

 

3.天の川を引き寄せて

 

僕が魔法の種をまくとパパとママの頭に小さな芽が出てヒラヒラ揺れた。
これは幸せの種なんだって。ずっとここにいたいけど、もう行かなくちゃ。
僕がフィートの手を取ると、フィートはステッキで天の川を引き寄せた。

 

 

4.天国の門

 

ふわふわ綿菓子みたいな天の川!

歩く度に足の下で星が光って

「えい!」

蹴ったら、流れ星になって落っこちた!

僕はフィートと途中で一緒になった人達と、歌って踊りながら天国の門を潜ったんだ。

 

 

5.フィートの宿題

 

天国にもね、宿題があるんだ。

フィートが僕に言ったのは、パパとママの頭の花を咲かすこと。

二人が泣いてたら花は咲かないんだ。

だから僕、二人の大好きな物いっぱい落としてるのに、全然気付かないで泣いてるんだ。

 

 

6.花が咲かない

 

ママの大好きなチョコは肩に跳ねて落ちて消えた。

今度は冗談を言ってみたけど、パパには聞こえないみたい。

ねぇどうしたら笑ってくれるの?

僕が泣いたら、涙は雨になって二人の芽にバラバラ当たってしんなりなった。

 

 

7.僕も遊びたいのに

 

宿題が終わらないと僕は遊べない。

他の子はみんな遊んでいるのに!

フィートは僕を抱きしめて頭を撫でてくれた。

「ユウは二人が大好きなのにね」

「うん。僕のことで泣いて欲しくないよ!」

笑ってほしいのに

どうして?
 

 

8.笑ってよ、ねぇ!

 

僕は大好きって言った。

泣かないでって何度も言った。

言葉は幾つもの輝く星粒になって、二人の芽の上でキラキラした。

でも、葉は大きくならない。

だけどあれ?

小さな女の子がいる!

モミジの手を伸ばして、笑ってる!

 

 

9.淡いピンクの花びらが

 

その子のこと、二人には見えてないみたい。

生まれる前の妹なんだって!

名前はまだないって!

二人で協力して花を育てたんだ!

そしたらどんどん大きくなって、やっと花が咲いた。

 

 

10.大好きだよ。パパ、ママ。それから僕の妹。

 

僕の宿題は終わった!

これでいっぱい遊べる!

フィートが大きなケーキを持って僕を呼んでる!

僕はもう一度二人の花を見た。

花はやがて実をつけて、幸せの素になるんだって。

良かった!

もう泣かないでね! パパ、ママ!


2010.7