剪定の極意(実践編)

剪定の極意を授かり、実践に取り組んでいる。
講習や自宅の木の剪定で、ある程度剪定にたいして自信はあった。
ところが、実際にやってみるとそう生易しいものではない。
何故かと言うと、剪定の仕事に対してお金をもらうし、自己責任で仕事をしなければならないためである。
家々により、剪定のし方も多少違ってくる。
個人個人により考え方が違うように、剪定の仕上がりによる見方も違っていると思われる。
いかに安全に、その家の人に気に入られるように仕上げるかが、ポイントである。

あれこれと注文をつける人と好きなように切ってという人がいる。
注文をつける人の方が難しいように思われるが、反対だと思う。
注文する人には、その人が言ったように切ればいいのである。
しかし、好きなように切ってという人は、自分が思っているように切ってくれることを期待しているのである。
その人の期待にかなう事が、任されたものの責任が大きいように思われる。

実践に臨んで新たな極意が分かった。
まず、其の1であるが、「装備」である。
本職の庭師さんが持っているような超高級な用具までも必要ないが、それなりのものがいる。
剪定ばさみなどは、切れないと仕事にならない。
また、切り口がきれいでないと仕上がりもきれいに見えない。
常に、手入れして磨いでおくことが重要である。
ヘルメットや安全帯の使用は、命にかかわるものであるから、必需品である。
ヘルメットは高いところから転落した時に必要というだけでなく、作業をしてる時に頭をぶつけるのを防ぐ役目が大きい。
木の枝や建物等に当たって、ヘルメットをつけていてよかったと気づく事がずいぶんとある。
命にかかわるものではないが、も一つ必要なものがある。
防塵用眼鏡である。
家の庭木を剪定していて、よく目に埃が入ったことがあった。
なかなか取れなくて眼科で取ってもらったことがあった。
簡単に取れたのだが、一応手術と言うことで、4,000円もの出費となった。
先日、老眼鏡を新調しに眼鏡ショップに行った時、防塵・花粉避け眼鏡なるものを発見した。
DYIショップで草刈用眼鏡は売ってるものの、このような眼鏡があるのは知らなかった。
即購入した。
これが、優れもののアイテムなのである。
顔にフィットするために、上を向いて剪定をしていても埃が全く入らない。
木の枝などが目に当たってもガードしてくれるので、実に安全なのである。
お薦めの必需品である。

次に、其の2であるが、「用具の使い方」である。
剪定バサミ類などはよく切れる危険なものである。
置き場所や取り扱いに注意が必要である。
両手バサミを三脚に刺していたのを忘れていて、降りる時、足を突きそうになった事や、木の枝もろとも自分の指を切りそうになった事があった。
危険な道具を使っているという認識が不可欠である。
三脚の立て方は思考力を要する。
1回で、できるだけ広い面積を剪定できる場所に、いかにすばやく設置できるかが、重要である。
足場を何回も動かせば、それだけで無駄な時間が出来るためである。
三脚のサイズによる取替えも仕事を早くするポイントである。
大は小を兼ねると言われるが、スピーディに剪定を行うためには、高さに見合った三脚で剪定作業を行うのが最も効率がいい。
また、三脚は十分に固定して使用しなくてはいけない。
乗っている台がふらつけば危なくて仕事にならない。
先輩によく注意されたが、足の開き止めと転倒防止の2つの固定を十分にしておくことである。
転倒防止の固定も一方だけでは不十分である。
2方向から固定すれば完璧であるが、そこまでやっている事はまず無い。
このように、足元をしっかりしておけば、安心して作業が進められるのである。
剪定した木の葉などを集めやすいように、シートを敷いておくことも作業効率に関係する。
市販のブルーシートを使うが、これが、新しいシートより古いもののほうが使いやすい。
使い古してぼろぼろになったシートは、しなやかになり、敷きやすいのである。
しかし、シートを敷くと下に何があったか全く分からなくなる。
庭石や池などが隠され危険な面が出てくる。
どちらがいいのか難しいところである。

次に、其の3であるが、「剪定の仕方」である。
まずは、施主の要望が変わらない限り、例年と同じ状態に剪定するのがよい。
ウバメガシやカイズカなどほとんどのものは、去年切った位置まで切り下げるのが基本である。
そこまで切らないと、だんだんと木が大きくなってくる。
2年も剪定しないと、びっくりするぐらい大きくなり、後が困る。
長く太く伸びたウバメガシなどの徒長枝は、引っ張って元の方まで切り下げておく方がいい。
来年以降に、両手バサミで刈り上げやすくするためである。
木の種類によって剪定の仕方は変わってくるが、どの木にも言えることは、刈り残しが無いことである。
また、全体的に葉や枝のバランスが取れていることが重要である。
刈った枝が絡まって残っていたり、胴ぶきやひこばえを取り除いていなかったりすることも、仕上がりの良さにすごく関係する。
せっかくきれいに剪定が出来ても、仕上げがおろそかになると台無しである。
言うまでも無いが、松の剪定は、非常に難しい。
枝ぶりやそれぞれの樹勢を考え、新しい芽が出やすいように剪定しなければならない。
実践で経験不足を痛感した。
松の剪定は、とにかく数をこなし、自分のものにする事が一番だと思った。

次に、其の4であるが、「仕事に対しての心構え」である。
当然の事ではあるが、時間をあまりかけずに出来るだけきれいに仕上げる事が最良である。
時間をかけて丁寧にすれば、きれいな仕上がりになるのは当たり前である。
しかし、そのためには、お金がかかると言うことである。
剪定をしてもらう側に立てば、安く、きれいに出来上がるのを望んでいる。
しかし、息も切らさぬぐらい一生懸命にして、剪定時間を短縮するのも、行き過ぎである。
通常のペースで一生懸命に取り組む、これが大事であると思う。

実践によりいろんな極意を得た。
剪定講習などでは、なかなかこのような事は身につかない。
しかしながら、これも先輩がいろいろと教えてくれたから、身についたのである。
先輩に感謝しつつ、安全に配慮し、丁寧・迅速な剪定業務に取り組みたいと思っている。