剪定の極意(実践編U)

本格的に剪定業務を始めて2年目になった。
同じ場所も2回目となると、去年の経験からよりスムースに仕事が出来る。
初めての場合は、要領がわからないので戸惑う分、時間がかかる。
経験により、業務の効率化が図れているのである。
また、経験を積む中で新たな極意が見つかった。

その1であるが、剪定の仕方である。
段造りのウバメガシを剪定していた時、先輩から
見付(みつけ)から剪定をしないといかんぞと言われた。
見付ってなんとなく意味は分かったものの、あまり聞かない言葉である。
調べてみたら、正面から向かいに見える所の事を言う。
庭木を見る一番いい場所に面した部分から剪定することが基本という事である。
これまでは、特に考えずに、脚立を立てた方向から刈り上げていた。
お椀状に刈り上げる場合、、刈り上げ始めた場所が刈り上げの基準位置となる。
後ろや横から刈り上げて行った場合、正面からの姿が見栄えが悪い形になる場合がある。
修正できればいいが、うまく出来ないと台無しとなる。
以後、見付から見ての剪定に心掛けている。


その2であるが、
枝抜きである。
先輩からよく言われていたが、あまり気に留めていなった。
枝抜きは、木の樹勢を保つため適時する方がいいのだが、これまでの通りという「事勿れ主義」が邪魔をする。
また、手間がかかる分、時間がかかるので、施主の理解を得てする必要がある。
枝抜きは、考えて抜かないといけない。
抜く枝の基本は、忌枝である。
しかし、忌枝でも取り除いたら、ぽっかりと大きな穴が開いてしまうことがある。
切った後、しまったーと思ったことが何度かある。
カイズカイブキは、詰んだ部分で結構大きな枝を抜いても、周りの枝が寄って来てあまり目立たない。
しかし、松やサツキツツジなどはすぐには穴が埋まらない。
抜く場合は、枝の広がりの影響範囲や全体のバランス、また、樹種を考えて切らなければならない。


一番難しいと言われている
松の剪定の極意も授かった。
3年目から本格的に松の剪定もやらしてもらえるようになった。
これまでは、先輩が松を剪定しているのを見て、うまいことするなーという思いで見ていた。
実際にやらせてもらえるようになると、まず、どのように切ったらいいのか悩む。
研修で一応の事は教えてもらったが、実際にするのとは全く違う。
この枝(芽)はいるのか、残したらいいのか、残すならどこまで残したらいいのか、迷いだすと仕上がりが不安になる。
また、悩むという事は、時間がかかるという事である。
しかし、そんな悠長なことはしておれない。
パチパチと手際よく不要な枝を取り除いていかなければならない。

時間をあまりかけず、見栄えがいい仕上がりに剪定するポイント(極意)が何点かある。
その一つが先に枝の剪定をして古葉を取り除いていくことである。
古葉を除けてから不要な枝を切る方法もあるが、そうすると切り取ってしまう枝の古葉取りが無駄になる。
無駄な時間を無くすためには、枝切りを先にする方がいい。

枝の剪定は、忌枝的な枝は切り、バランスよく枝が配置されるようするが、この時、枝を上に持ち上げていらない枝を切るようにするといい。
持ち上げると切ったらいい枝がよく見えるからである。
また、剪定するときの目線もポイントである。
出来るだけ真横か少し下から見上げた目線で剪定していくといい。
と言っても足場や奥行などの関係から上から剪定しなければならないことがある。
下から見た姿を考えて剪定しなければならないが、でこぼこがないよう枝をそろえていくことがポイントである。

仕上げも一つのポイントである。
松は、葉が上を向いて立っているのが見栄えがいい。
剪定をした後、手を広げて下から掬い上げるように葉を上向きにしてやると見栄えが良くなる。
取り除いた葉が幹や小枝などに絡んでいるのも見栄えが良くない。
きれいに取り除いておくことも大事である。

黒松では、間延びした枝は中芽で切ることがある。
しかし、五葉松は中芽で切ったらいけない。
黒松では、新芽が出てくるが、五葉松では、ほとんど出てこないようである。

松ほど、家々によって樹勢や葉状が違うものはない。
どんな松でも剪定がうまく出来るようになるには、なんといっても数をこなすことが一番である。
やらないことにはうまくならないし、剪定スピードを上げることも出来ない。
経験に勝るものはないのである。


剪定が済んだ場所を
下から眺めて見ることも大事である。
飛び出している枝やバランス的に見栄えが良くない枝は、取り除いておかなければならないが、脚立を移動させてから気が付くことがたまにある。
こんな時、脚立を元に戻して仕上げしなければならないが、高い脚立であれば手間がかかる。
高い場所は、脚立を立てる場所ごとに仕上げを見ておいた方が良い。


初心に帰ってという事もすごく大事である。
今までやっていたことを忘れてヒヤッとしたことが何度かある。
6尺の低い脚立だったので、まあいいかと転倒防止の固定をしていなかって、倒れそうになったこと。
木の枝を持って脚立から降りていたら木の枝(枯れ枝だった)が折れ、後ろに落ちそうになったこと。
両手ばさみを脚立に刺していたのを忘れ、太ももに刺さりそうになったこと。
防塵眼鏡をしてなかって目に埃が入ったこと。
いずれもちょっとした不注意だが、大怪我になることがある。
常に初心を忘れず、細心の注意を払うことが重要である。