カマルはアイスを連れて薄暗い路地裏を歩いていた。

「…こんな所で何をしらべるんだ?」

「あまり喋らずに歩け、それと念のために言っておくがここで知った事は誰にも話すな」

カマルは険しい表情で入り組んだ道を早足で歩き、アイスは引き離されないように焦りつつもついていっていた…

しばらく歩いているとカマルは突然立ち止まった…

「どうかし…うわっ!」

カマルはアイスの手をつかんでそのまま走り出し、近くの道を曲がってすぐ身を隠すように壁に身を寄せた…

少したつと何者かが慌てた様子で曲がってきた、そしてカマルはその人物を一気に捕まえた。

「さっきから、誰かがつけているとは思っていたが…なぜお前がこんな所にいる?」

カマルに取り押さえられていたのはラピスだった。

「ラピス? 塩ジジイの所に行ってるんじゃなかったのか?」

「どうしても…ラズリの事が気になって…」

「それで、後をつけてきたと?」

黙って頷くラピスにカマルは黙り込んでしまった…

(何でこんなめんどくさい事になった…
 こんな事にならないようにあのお付きの女に戦えない奴らを押しつけてきたというのに…
 このまま帰すか? いや帰り道で面倒な事に巻き込まれるかも知れない…
 今日は諦めてあいつらに合流…駄目だ、ラズリの事は一刻を争う事になっている可能性もある…)

「…仕方ない、お前も一緒に来い」

「いいんですか?」

「ああ、それとアイスもしもの時はこいつを連れて逃げろ」

「…わかった」

「じゃあ行くぞ、ラピスは私の後ろを歩け、アイスはその後ろだ」

カマル達は一列になって周りを警戒しつつ進んでいった。



しばらく歩いてある建物の前まで来るとカマルは

「ここからは私一人で行くお前達は少しここで待っていろ」

と言い残して建物の中に入っていってしまった…

「待っていろって言われても…待ってるだけじゃ退屈だな」

「それじゃあ、ラズリがこの十年間どうしていたか教えてくれない?」

「ラズリが? 歌を披露して皆を楽しませたり…」

「そういうのはいいから」

「…厄介な事に首を突っ込んで巻き込まれたり…」

「やっぱり、そんなことだと…ちょっと待ってヘリヤから連絡が来たみたい」

ラピスの方にリビアンが現れた。

「ヘリヤから?」

「うん、別れる前にグラスを貸しておいたんだ」

『えーと…これで聞こえるのかしら?』

リビアンからヘリヤの物だと思われる声が聞こえてきた。

「うん、大丈夫聞こえてるよ。 何かあったの?」

『…ラピス、落ち着いて聞いてほしいのだけど、ラズリが見つかったわ』

「………え? 本当? どこにいるの? 無事なの?」

ラピスは動揺しているのか声が少しうわずっている…

『…………檻の中』

「……………え?」

「…それとすごく言いにくい事なんだけど、話しかけても反応がないの」

「…そんな……なんで…嘘でしょ…」

ラピスは状況が理解できないのか受け入れられないのか固まってしまい、見かねたアイスが割って入った。

「…ラピスしっかりしろ。それでなんとか檻から出せないのか?」

「それが…その…私とアクアとマリンも同じ檻の中にいるの」

「……………」

「ラピス!? しっかりしろ! おい!」

ラピスはその言葉を聞いて崩れるように気を失ってしまった…

『どうしたの? そっちでも何か起きたの』

「いや、何でもない、それよりなんでそんな事になっているか説明してくれないか?」

『分かったわ、塩ジジイの所から帰るところだったんだけど…』





ヘリヤの話によると、数時間前、ヘリヤ達はトボトボと宿に向かって歩いていた…

「なんで、入ってすぐに追い出されたんだろ」

「おれが知るかよ」

「塩爺様…怖かったです…砂糖婆様はあんなに優しかったのに…」

「じゃが、こうして塩は貰えた…」

「何言ってるの!? あれは塩をまかれたんです!」

「さすがに服や体にまかれた塩は料理に使いにくいわ」

「塩ジジイはザビエラちゃんの顔見て塩を撒けって命令してたみたいだけど一体何やらかしたの!?」

「うーん、水晶玉を割りかけた事かのう」

ルセアは涙目でザビエラに詰め寄るが、ザビエラはいつも変わりない態度だった…

「せっかく、白輝の都の塩が手に入ると思ったのに−」

「まあまあ、皆さんそんなに落ち込まなくても運が悪かったと思って諦めましょう

 そんなことよりラズリ様の…」

「そこのお嬢さん方、うちの塩を見ていかないかい?」

突然商人の男性に声をかけられた。

「塩あるの?」

ルセアはすごい勢いで商人に食いついた。

「はい、この街でも特に上質な物を取り扱っています」

「…でも高いんでしょ」

「とんでもない、ここだけの話ですがお嬢さん方のような綺麗な方だけに特別価格でお譲りしてるんですよ」

「綺麗だなんてそんな…」

「それでは皆さんこちらへどうぞ」

「みんな、早く行こうよ」

「まあ、塩が買えるなら…」

商人はヘリヤ達を近くの建物に案内した。

中は薄暗くて何もおいてなまるで空家のようだった。

「なんだよ、何もないじゃねーか」

「おかしいな、あの人建物を間違え…きゃあ!?」

その時天井から檻が落ちてきてヘリヤ達は閉じ込められてしまった。

「なんなんだよこれ!?」

「よー分からんが大変な事になったみたいじゃのう」

「ザビエラちゃんは何で落ち着いてるの!?」

突然の出来事にパニックになっているとどこからともなく数人の男達が現れた。

「まさか、こんな罠なにかかる奴がまだいたとは」

「馬鹿だからだろ、じゃあいつも通りに縛ってから牢屋に…」

「あれ? 女が一人足りない…?」

「なんだと…」

「ぐわ!!」

男の中の一人が思いっきり吹っ飛んだ。

そして、その男がいたところにはバリーゥが立っていた、険しい表情で体に炎を纏わせていた…

「あなた達は自分が何をしたか分かっているんですか?」

そして瞬く間に男達を叩きのめしていった。

「その方達は誰か分かっているんですか? あの麗しのラリ…ってなんですかこれ…きゃあ!?」

バリーゥは突然何かに吸い込まれるかのように消えてしまった…

「…全く、強そうなジンがいたら気をつけろといつも言っているだろ」

バリーゥが吸い込まれた先にいたのは他の男達より明らかに偉そうな老人だった。

片手には青色の小瓶があった。恐らくラビーゥを吸い込んだ魔道具か何かだろう…

「すみません親分」

「いいから、さっさと残りの奴らをいつも通り連れて行くぞ!」

「は、はい」





「それで、閉じ込められた牢屋の中でラズリを見つけたんだな。アクアとマリンは一緒にいるみたいだけど後の二人は?」

『ザビエラとルセアは別の場所に連れて行かれたわ』

「別々に閉じ込められているのか?」

『ええ、あいつらさっきここはジンを閉じ込めるために用意したとか言ってたから…』

「話はだいたい分かった」

「うわ!? カマルさん!?」

いつの間にかアイスの後ろにカマルが立っていた。

「今すぐ準備して助けに行くから安心しろと、そこにいる子供達にも伝えてくれ」

『ええ、でもここがどこか分かるの?』

「…ルセアには迷子防止用の魔法アイテムを仕込んであるからそれを使う
 それから今聞いた話でお前達を捕まえた連中がどういう奴らかだいたい分かった」

「今の話で分かったのか?」

「ジンを閉じ込めるような魔道具を持ち歩いてる奴なんてそれほど多くはない

 そんな事よりこんな面倒くさい事さっさと終わらせるぞ」

カマルはラピスを抱えて歩き出し、アイスは慌てて後を追った。



あとがき

ザビエラさんとアイスさん(藤乃蓮花さん)、ヘリヤ・ジアーさん(戸成さん)、ルセアさんとカマルさん(鶫さん)お借りしました。


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