カマルはルセアとザビエラそしてヤシュムとバリーゥを引き連れてラピスとアイスが待っているはずの集合場所に向かっていた。
「もうすぐ集合場所だ、あの二人うまくやっているといいんだが…」
「あの二人とは誰の事じゃ?」
「アルとジイドだ、ヘリヤを心配して追いかけてきたらしい」
「あのいつも怖い顔で追いかけっこしてる二人が?」
「…ルセア、そういうことは本人には言うなよ」
「…あっちの…方も…成功して…私たちと…同じ所…に向かってる…けど…
着くのは…私たちより…遅く…なりそう…って星が言ってる」
「星と話せるって、こういう時だけは便利ですねー」
「お前ら…少しうるさいぞ、それよりここを登れば集合場所だ」
カマルたちは集合場所に着いたがそこには誰もいなかった。
「誰もおらんぞ」
「そんなはずは…」
「場所はここであってるの?」
ルセアは周りを見回しながら前に踏み出した。
「あぶない…」
「え?」
ヤシュムの警告に本人よりもカマルが早く反応してルセアを引き戻した。
すると、ほぼ同時にルセアがいた場所の地面がえぐれた。
「ちっ…外しちまったか」
「誰じゃ!? 当たったら危ないじゃろ!」
「そいつはあまり良い値がつきそうにないから別にいい」
「ひどい!」
「そいつはあの双子のジンのついでに捕まえただけだ、いてもいなくても構わん」
どこからともなく老人が現れた。
「お前は…まさかこんな所で見つかるとは思わなかった」
「カマル、あの人知ってるの?」
「……昔あいつのせいでひどい目に遭った…が今はそんなことはどうでもいい。
おい、お前らはルセアとザビエラを連れてここから離れろ、あいつの相手は私がする」
「何言ってるんですか、それでは活躍してラリマー様に褒めてもらう計画が…」
「私も…失敗を…挽回…しないと…」
「お前らじゃまた瓶に閉じ込められるだろ!」
ヤシュムとバリーゥは渋々カマルに従って離れていった…
「まとめてかかってこなくていいのか? 囮になるつもりなら…」
「…得意の占いでどこにいても見つけるんだろ? 相変らずしつこい奴だ」
「なっ」
カマルは隙を突いてナイフを投げた。
しかし、ナイフは老人に右手に持っていた曲刀でたたき落とされた。
そして老人はカマルに向かって曲刀を振って水の刃を飛ばした。
カマルは後ろに跳んでかわした、カマルが立っていた場所に水の刃が当たり大きな裂け目ができた。
「ほう…ならこれならどうだ?」
老人は連続で水の刃を飛ばしてきた。
カマルはかわし続けるが最後の一撃を避けきれず、左腕に切傷ができた。
「どうした? よけるだけか?」
(近づく事もできないな…少しでも隙があればどうにかなるが…)
カマルはなんとか対抗しようとするがじりじりと追い詰められていく…
「これでとどめ…な…なんだこれは?」
老人は曲刀を振り上げたその時、老人の服の下から煙が吹き出した。
「あの煙はまさか…」
煙が収まるとそこにはラピスとアイスがいた。
「あれ? おれは確か瓶に吸い込まれて…ラピスしっかりしろ」
アイスはラピスを揺さぶるがどうやら意識を失ってしまっているらしく動かない。
「てめえら…どうやって出てきやがった!?」
老人は水の刃をアイスに飛ばした、アイスはとっさにラピスを抱えて後ろに飛びながら炎を水の刃に放った。
水の刃と炎はぶつかり合って打ち消し合って湯気が一瞬老人の視界を奪った。
「今だ!」
カマルはその一瞬の隙を突いて一気に近づき老人の腹にナイフを突き立てた。
その時カマルと老人の顔が近づいた。
老人は腕を振ってカマルを振り払った。
(こいつ腹に何か仕込んでいたな…首を狙うべきだったか)
「その眼…思い出した、お前あの時のガキか…あの時はよくもやってくれたな!」
老人はなぜかカマルに対して激しい怒りを燃やしていた。
「もう金なんかどうでもいいまとめてぶった切ってやる!」
老人は怒り狂い曲刀に力を込めた。
すると曲刀に水がまとわりつき、もとの刀身の数倍にも成る大きな曲刀になった。
(まずいな…二対一とはいえアイスはラピスを抱えていてまともに戦えるか分からない…
かと言ってラピスを手放せさせたら、あいつに人質に取られて面倒な事になる…)
老人は曲刀を両手で持って振りかぶったその時、
「ぐっ」
老人はうめき声を上げてよろついた、右腕にはコピシュが刺さっていた…
「危ないところだったな」
声のする方を見てみるとそこにはジイドの姿があった。
「ジイド!」
「っち、ここまでか…」
老人は地面に曲刀を突き立てて力を込めた。
すると霧が発生して辺りを覆ってしまった。
霧が晴れると、そこには老人の姿はなく、腕に刺さっていたコピシュが残されていた…
「あれ? あいつどこに行った?」
「…どうやら逃げたみたいだな」
「そっか…」
アイスは胸をなで下ろした。
「なんだ、大したことなかったな」
「ああ、お前のおかげで助かった」
「それで、そっちが助けに行った四人はどうした?」
「ヘリヤと双子のガキ共はここに来る途中にいたお付きの女に任せてきた。お、噂をすれば…」
「カマルー! 無事でよかった!」
ルセアがすごい勢いで走ってきてカマルに飛びついた。
カマルは難なくルセアを受け止めた。
が、さらに誰かに飛びつかれて倒れてしまった。
「いたた…ってザビエラちゃん?」
「なんでお前まで飛びついてくるんだ」
「楽しそうじゃったからつい…」
「二人ともはしゃぎすぎですよ」
ザビエラに続いて、ヤシュムとヘリヤにアクアとマリンもやってきた。
「あの、さっきの怖い人はどこに…」
「もう逃げたよ…って星が…言っている」
「ひぃ!?」
突然ヤシュムにのぞき込むように話しかけられたマリンは驚いて悲鳴を上げた。
「どう…したの…?」
「あんたが急に顔を近づけるから驚いたんだ!」
アクアはヤシュムとマリンの間に割って入った。
ヤシュムはアクアとマリンをじっと見つめた。
「な、なんだよ…」
「…叔母さん…」
「は?」
「私は…ラリマー姉様…の妹…だから…私の…事は…叔母さんと…呼んで」
「な、なんでそんな事…」
ヤシュムはアクアにぐいっと顔を近づけた。
「分かったよ! 分かったから少し離れろ!」
ヤシュムは満足した様子でアクアから離れた。
「なんなんだよ…」
「まあまあ、変わった人だけど悪い人じゃないから…」
ラピスの意識が戻ったらしく、アイスに背負われたままアイスに話しかけた。
「ラピス、気がついたのか」
「うん、まだ体が少し重いような気がするけど…それよりラズリは…」
ラピスはもうろうとした様子で辺りを見回した。
「ラズリならアルと一緒にこっちに向かっているはずよ」
「一緒じゃないの?」
ヘリヤは脱出するときアルとラズリを置いてきた事を説明した。
「…行かなきゃ」
ラピスはアイスから降りて歩き出そうとしたが、すぐによろけてアイスに支えられた。
「無理するな、まだまともに動けないんだろ」
「でも、ラズリが…」
無理矢理にでも進もうとするラピスをアイスが止めているとのんきな声が聞こえてきた。
「皆様ーラズリ様とついでにアル様を連れてきましたよ」
そう言って現れたのはさっきから姿が見えなかったバリーゥだった。
すぐ側にはラズリが歩いていて、そしてなぜかアルはバリーゥに背負われていた。
「ぎゃははは! 何やってんだよ?」
よく分からない状況に皆が言葉を失っている中、ジイドだけは大笑いしていた。
「えっと…何があったんだ」
「それがですね、ジイド様から聞いてラズリ様とアル様を迎えに行ったんですが
途中でアル様がラズリ様を背負ったまま倒れていて…
「それ以上何も言うな!」
アイスの質問にバリーゥが答えているとアルが大声で遮った。
「どうせかっこつけてラズリを背負って連れ出して、ここに来る途中で腰を痛めて動けなくなったんだろ」
ジイドが笑いを堪えながら言ったことは図星だったらしくアルは黙ってしまった。
「そっちのおっさんより姉貴はどうなってるんだ?」
「お、おっさん…」
「それが…言うことは聞いてくれるみたいなんですけど、感情がないというか動くだけの人形みたいというか…」
バリーゥはしどろもどろになりながら説明した。
「そんなことよりもさっさとここから離れた方が良いんじゃないのか」
「そんなことって…」
「ジイドの言うとおりだ。ここは危険すぎるラズリのことは気になるが、今は安全な所まで移動するのが先だ」
一部不満そうな者はいたが、一行は白輝の都に向かって歩き出した。
あとがき
ザビエラさんとアイスさん(藤乃蓮花さん)、ヘリヤ・ジアーさんとアル・アーディクさんとジイドさん(戸成さん)、ルセアさんとカマルさん(鶫さん)お借りしました。
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