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2003.11.23

ミナミの繁華街、小さなスナックの一室に千崎、田村が来ていた。
「何や・・お前らだけか?金村はどうした」
黒いサングラスをした大柄で、短い髪の男が言った。
「はあ、それが、返事まだ貰うて無いんですわ」
「なあ、千崎、わしん所には兵隊はなんぼでも居るんじゃ。せやけど、特攻任せてもええ奴を探しとんのやんけ。金村なら、「命知らずの狂い犬」と呼ばれた奴や、お前らだけでは話にならんのじゃ、おう!」
この男は、我悪羅のアタマの石井達也と言った、3つある暴走族の中で、一番大きな族のトップだ。
「こら!中途半端にしよったら、あかんぞ、おい!」
隣に居る凄みのある、長身の男が言う。我悪羅のナンバー2、特攻隊長の稲村 透だ。関西一の暴れ者として、叉非常に短気な男として知られている。
「まあまあ、稲ちゃん、そう言うたりいな、こいつらかて、この我悪羅に入りたい言うてるんやさかい」
モヒカンの、これも長身で、肩幅の広い男が、そう言った。この男は鬼怒羅のカシラで、橋本道和と言う。同じく、関西の虎と恐れられる、喧嘩一番と名乗る、有名な男だ。千崎達は、とうとう、鬼怒羅、我悪羅連合が近い事を悟った。
「分かりました。今度は修ちゃん、きっと連れて来ますわ」
「千崎・・あかん時は、チームに入る条件として、女でもバイクでも持って来い!」
稲村が言う。
「何や、稲ちゃん、それは」
橋本が笑う。
「はははは、それも面白いのう。わしはええで」
石井、稲村、橋本が笑った。
一礼して、千崎は出て行った。
「おお・・怖かった・・いよいよ、我悪羅、鬼怒羅連合のようやな」
千崎が田村に言った。
「戦争する気や、鬼羅亜と」
「そやな、けど、鬼羅亜のアタマの伊藤はんも、相当やるっちゅう話や」
「戦争する為の兵隊を集めとんのやで」
「おう」
千崎、田村がそう話していた。
「なあ、千ちゃん。修ちゃんは、元々、鬼羅亜のチームの方狙うとった。そやから、説得の方はなかなか時間かかるかも知れへんよってな・・これどうや?」
田村が耳打ちした。
千崎達が帰った後、橋本が石井に言う。
「なあ、石井ちゃん。あないな兵隊使ってどうすんねん。それに、金村ちゅうガキほんまに使えるんか?」
「ふ・・橋やん。あんたの所は喧嘩上等の武闘派や。けどな、我悪羅は、一杯小チームが集まってんねん。俺や、稲が睨み効かせてるから、何とか纏まっとるが、ここらで、一本にきちっと締めて、我悪羅が関西一番ちゅうのを示さなならん。金村ちゅうのは、3つの中学締めてた奴や、そう言う奴が要るのや」
「・・何や・・鉄砲玉かいな」
橋本が笑った。
「せや。特攻任せるゆうて、鬼羅亜の伊藤とやらせる。しくじっても、わし等の兵隊と違うと言えるしのう」
「石井ちゃん、あんたもエグイのお、ははは」
「兄貴が取れんかった、雷神の総長や。わしはどないな手でも使うたる」
「何やったら、わしがやってもええぞ、伊藤と」
橋本が言う。
「橋やん、もしタイマン張って、あんたがコケたら、鬼怒羅、潰されるんやで。まあ、やるんは、もうちょっとしてからや。それは稲にも言うてある」
「せや。わしも同じ事言うた。せやけど、わしが負けたら、我悪羅が、バラバラになるんじゃ、そう言われて、今は辛抱してるんやんけ」
稲村が口を歪めて答えた。
橋本は、この時思った。こいつ(石井)は腰抜けで、協力出来る奴と違うな、雷神2代目は自分や・・と。