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白い雲2部
始めに
白い雲一部をお読みくださった方にお断り申し上げます。
白い雲一部は、純粋にこの世に生を受けた、天才少年と稀有の銘鳩の事を追及しました。
2部は、全く趣向を変えて、人間本来の持つ泥臭い、人情や、友情、数々の出来事に遭遇しながら生きて行く、人生を表現したくて、書きました。白い雲とは、巨大な物語の集合体です。ですから、全くの創作であり、フィクションではありますが、皆さんの身近にあるような出来事かも知れません。
一部の印象とは全く違うかも知れませんが、しかし、どこかで、川上氏や、香月少年と繋がっている・・そんな小説です。
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ここに登場する人物、団体名等はフィクションであり、実在の物とは何等関係が御座いません。
本小説の無断転用を固くお断り申し上げます 

2003.11.11

序章


ウオ――ン・・バリバリ・・・けたたましい爆音が背後から聞こえる。
その音はあっと言う間に1台のトラックを追い越して行った。
「おおっと・・」
慌ててハンドルを切る佐久間。隣の助手席で、少しうとうとしていた初老の羽崎は、「はっ・・」と目を覚ます。
「社長、大丈夫ですか?」
運転手は佐久間米次。隣に乗っているのは、羽崎四郎。関西で、大きなインテリア専門ショップの社長である。
佐久間は同時に、その羽崎四郎の会社の営業マン兼、競翔のハンドラーと言う28歳の大柄の青年である。
「いや、何。目が覚めてしもうたわ、ははは」
「申し訳ありません」
「お前が謝る必要あらへんわ。暴走族ちゅう奴らかいな」
「ええ、最近特にこの街には多くて。迷惑な話ですよ」
「若さを発揮する場所が、他にあらへんのやろう」
「自分も、やや彼等と近い年齢ですが、自分の場合、空手に明け暮れていた年頃です。実際、理解出来ません」
羽崎四郎は、関西競翔界のベテランで、現在西郷連合会長を務める。季節は2月、春の競翔に向けての訓練初日の事であった。
郊外に出て、広い直線道路を左折して、旧街道に入って緩いカーブに指しかかった時であった。
「止めてや、佐久間君」
慌ててブレーキを踏む佐久間。
「どう・・されました?」
突然の羽崎の停止命令に、路肩に急停止した佐久間だった。
2トンのトラックの助手席から降りる羽崎、やや太り気味の体は、スマートな降り方では無かった。
「あ・・・!」
声をあげる佐久間の視線の先には、田んぼに横たわるオートバイが見えた。
その横に少年と思しき姿が、まだ真っ暗な夜明け前の事、良くは見えなかったが、確かに横たわっているようだ。
近寄ると、金髪に髪を染めた少年だった。
「大丈夫か!」
佐久間が少年に声を掛ける。
「う・・」
気を失っていたらしい少年が起き上がろうとする。
「動くな」
佐久間が少年を制すると、羽崎が目配せをした。
「はい・・救急車を」
「・・余計な真似すんやないわ!」
少年は、起き上がろうとしながら、大声を出した。
佐久間は少年の腕を抑えた。
「い・・いたたた。このボケ!痛いやんけ!」
「ふむ・・腕は打ち身程度だな・・どれ・・?足は?」
「が・があっ!」
少年は苦痛で顔を歪めた。
「折れては無いようだが、ヒビが入ってるかも知れんな。ほら・・身の程知らずとはこの事だ。帰れんだろうが、坊主」
「放っとけ!この野郎・・」
「そうも行かんやろう、見んかった事にも出来んわい」
羽崎は、佐久間に少年をおぶさせると、トラックまで、運んだ。


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