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2003.12.2


残るは、石井と伊藤の決着だったが、殆ど石井は伊藤に抵抗も出来ず、ふらふらになっていた。
その時だった。一台の黒塗りの外車が止まった。
「おう・・何の騒ぎじゃ・・こりゃあ・・」
車から降りて来たのは、我悪羅の顧問を勤める福神会の加藤と言うやくざさった。その加藤が硬直した。
「あ・・あんた。工藤・・そ、総長じゃ無いですか」
加藤は、雷神連合当時の支部長だった男だ。
「何や・・加藤や無いけ・・何やっとんじゃ・・おのれ」
「い・・いえ・・」
加藤はうつむいた。
この関係を知らない、我悪羅の若い連中が、ざわざわとなった。
「のう、加藤。わしは、雷神総長を降りた時、後輩によお聞かせた事がある。それは、お前もよお知っとるわのお」
「は・・はい」
「わしはな、おのれがやくざやろうが、ちんぴらだろうが、知ったこっちゃない。けど、この関西を再び抗争に巻き込むなと頼んだ筈や」
「そ、それは、よお分かってま」
「そうか、ほな、ここでケジメつけたらんかい」
工藤の目が光る。加藤は伏せ目がちに、
「どんなケジメでっしゃろ・・」
「おどれ・・この我悪羅から、手引けや」
「分かりました」
車に乗って帰ろうとする加藤に向かって、ぼこぼこの稲村が叫んだ。
「そ、そんな加藤さん、殺生でっせ。わし等あんたに上納する為に、どない今までやって来たか」
「じゃかましいわい!」
加藤がつかつか歩み、稲村を思いっきり蹴り上げた。
工藤はなお言った。
「加藤、もうちょい遊んで行けや。今晩はのう、雷神2代目が決まる日や。拝んで帰れや、その面を」
「・・わしには関係無い事です・・ほな」
加藤は、逃げるようにして帰って行った。
「薄情なもんやのう、稲村。それがやくざっちゅうもんや。おのれも、ちんぴらになって生きるんか、どないするんか、よお今から見とけ」
「く・・くそおお!」
最後のあがきか、稲村がナイフを振り翳し、工藤に襲いかかろうとした。しかし、隣に立っていた、千崎が思いっきり稲村を蹴り上げた。稲村の腕は折れたかも知れない、鈍い音がした。千崎はきっちり自身のケジメをつけたのだ。工藤がその肩をポンと叩いた。
動けなくなって、殆ど気絶状態の石井を見て、工藤が吼えた。
「さあて!我悪羅、鬼怒羅、鬼羅亜にゆうとく!今から雷神連合復活じゃ!2代目総長として、伊藤が継ぐ。異存は無いのお!」
「おおーーー!」
6年振りに雷神連合が復活した夜だった。病院から修治が戻って来た。修治は自ら、特攻服を脱いでいた。そして、それを伊藤に渡した。
「伊藤先輩、この服は橋本先輩が着るもんやと、俺は、思います」
「分かった・・。よう言うてくれたの!預かるで」
修治はぺこりと伊藤に頭を下げた。
工藤が満足そうに頷いた。