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2003.11.30 電話の声は低かった。 「はい・・工藤・・え?お前、誰や・・?」 工藤の表情が見る見る変わる。眉間に皺寄せたその表情は、悪鬼そのもののように変化した。修治はその様子をじっと見ていた。 「おう・・分かった。今から行くわ。待っとれ!」 がちゃんと電話を切った工藤は、奥の部屋に入った。修治も続く。工藤は箪笥の奥から特攻服を出した。その特攻服には雷神初代総長の刺繍があった。修治は悟った・・。 「俺も行きます!」 「阿呆う!お前はここに残っとれ!」 工藤が怒鳴った。 「いや、行きます。俺のダチの事ですやろ?俺が、ダチの事で動けんのなら、一生恨みますよ、先輩!」 修治は真っ直ぐ工藤の目を見た。工藤はその真っ直ぐな目に、 「ち・・しょうが無いのお。ほなちょっと待っとれ!」 工藤はもう一つの箪笥の中から、雷神連合特攻隊長の服を出した。 「ええか、この服を着る以上、わしもお前も半端は出来ん。けど、言うとくで。わし等は、暴れに行くんとちゃうど、修治。その服はのう、雷神の特攻隊長だった、飯村浩二ちゅう男の形見や。初代をわしと争うた、今の我悪羅の石井の兄の身を庇って死んだ、アホな男の服や。けどな、その飯村がこの関西を救い、雷神連合が生まれたんじゃ。よおその事を腹に入れて行くんやで。ええか!勝手な真似は許さんぞ、分かったの!」 「はい!」 凄まじい工藤の気迫だった。これが初代雷神連合を束ねた男・・修治は体が熱くなった。
「何!総長が!どっちへ行った!」 「今、市川が後ついて行ってます。南港の方ですわ」 「よっしゃ、集合かけろ、熊!」 「おう!」 鬼羅亜が動いた。大きな一夜になりそうな気がした。伊藤もどこかに向かった。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「橋・・どうしても行くんか?」 「へ・・昼間来よった小僧に言われたわ。わしは、わしの道行くで」 「へ・・お前もどうしようも無い阿呆やの、ま、わしもせやけど」 伊藤のバイクの後ろに乗って、橋本が・・どう言う会話が2人に交わされていたのか、知る由も無い。しかし、工藤も伊藤達も、その何かに向かって進んでいた。 「キュキュキューーーーーキュウウーーーー!」 激しいタイヤ音が聞こえた。ブレーキ跡からは煙が出ていた。 「ワレ!何者じゃい!」 周りにたむろっていた連中が、驚いてZGを見る。そこは、我悪羅の集合場所である空テナントであった。 ゆっくり、工藤と修治がZGから降りる。 「ひ・・ひえ・・雷神初代総長・・・?」 取り囲んだ数名が、慌てて空テナントに飛び込んだ。 「た・・大変ですわ!今、雷神連合初代が来てます!」 「な・・何やてえ?」 中で、ぼこぼこにされていた、千崎と、田村がにやっとした。 「稲!どう言うこっちゃねん、修理工場に金持って来いゆうたんと違うんけ!」 「し・・知らんがな・・わしは工藤に、金持って来いゆうただけや!」 「あ・・あほんだら!その、工藤ちゅうのが、初代やんけ。ぼ・・ボケがあ!」 石井が真っ青になった。 外から大声で、工藤が怒鳴った。 「ええか!この喧嘩、雷神連合初代総長、工藤が買うた!他の者は手え出すな。文句ある奴はこのわしが相手したるさかいのお!」 一人で、20数名と喧嘩して勝った事もある、伝説の怪物だ。我悪羅の連中は後ずさりした。その形相も凄まじく、威圧感ある工藤の貫禄に、手を出そうとする者は一人も居なかった。 |