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2003.11.26

「何ですの?先輩」
「お前にな、ちょっと頼みたい仕事があんねんけどな」
「はあ・・・」
修治は、少しいぶかりながら生返事をした。
「これなんやけどな」
工藤が差し出したのは、壊れたオルゴールだった。
「え・・これは俺が作ったオルゴール・・何でここに?ちぇ・・要らんのやったら、捨てんでもええやろに・・」
修治は、がっかりしたようにそれを眺めながら言った。
「何、早合点してんねん。捨てたんちゃう、壊れたんじゃ」
「はあ・・せやけど、何で先輩が?」
「お前・・小便ちびんなよ。・・・実はな・・・」
修治に、耳打ちするように、工藤は説明を始めた。
「えっ!そんな事があったんですか!最近、この辺もぶっそうやなあ」
「気が強い娘や。腕噛んで、もう一人は、横っ面をこれ入れてる袋でしばいたそうや」
「まあ、良かったちゅうか・・そやったんですか」
「これ、卒業式までに直せ」
「え・・もう3日しかあらへん」
「阿呆ぅ!こんな可愛い娘が、これ壊れた方が辛いって泣いてるねん。お前、男やったら、徹夜でも何でもやって直さんかい!な・・わしからも頼むわ」
修治は、黙って頷いた。
「そうか、そうか。修治、お前も春が来たのお、ははは」
「先輩、からかわんで下さいよ」
修治が心許せるのは、この工藤であった。本当の兄のような存在になっていた。
そして、それから2日後、中学校の卒業式前日の事だった。千崎と田村が、新川家具工場の前で待っていた。
「よお、修ちゃん」
「おう・・お前らどないした?」
明日が卒業式だと言うのに、千崎は耳ピアス、田村は金髪をモヒカンに刈り上げていた。
「何や、修ちゃん、頭黒く染めたんか?」
「おう・・卒業式は、出たいからの」
「そんなもん出やんでええやんか。それより、今から俺等と付き合わんか?」
千崎が言う。
「断る。・・そやけど、千、お前その顔の傷どないした?亮・・・お前も腕に怪我してるやんけ」
「お・・これか?単車でこけたんや」
「のう・・・」
修治の目が光った。千崎、田村は少しびくっとした。
「な・・何やねん、修ちゃん、そない顔して」
「いやな・・2日程前にちょっとした事があってな、お前等、何か知らへんか思うての」
「何のこっちゃねん、修ちゃん、それって」
田村が聞く。
「いや、何でもあらへんわ。けどな、これだけは言うとくで、俺な、もうチームには入らへん。どこのチームにもや」
「ち・・分かったわ、修ちゃん、せやけどな、叉この関西は、雷神連合復活するかも知れへんのや。その時になってしもた思わんとけや」
千崎と田村のバイクはけたたましい音と共に、夜の街に消えて行った。