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2004.1.1


工藤達は、途中で軽く食事を済ませ、向かったのは六甲だった。2人は神戸の夜景を眺めていた。
「なあ・・理沙」
「ん?」
「わしと、一緒になれへんか」
「もう・・いきなりそれかい・・情緒も何もあれへんがな・・もう!」
理沙は、工藤の胸に飛び込んだ。もう、自然と2人は同じ時を共有していたのだった。周囲も分かって居た筈。こうして、工藤と理沙は結ばれた・・。
修治が久し振りに顔を見せたのは、工藤BSの開店セールであった。駐車場のスペースには、各メーカーのバイクの展示で、人もごった返していた。工藤が、忙しく客の応対に追われている。
「おう!修治!」
工藤が、修治を見て、声を掛けた。修治のマッハを何人かの若者が取り囲んで珍しそうに見ていた。
「済んません、先輩。オープニングも来れんで・・」
「何の、何の。忙しそうで、結構やないか」
「あ、修君、いらっしゃい」
理沙も声を掛けた。
「理沙さん、こんちわ」
頭を下げる修治だった。
「まあ、奥のテーブルでも腰掛けといてくれや、修治」
「はあ・」
修治が奥のテーブルに着くと、すぐコーヒーが出された。
「はい、修治君」
「えっ?」
その声に、修二が見上げると、新田恵利であった。
「あ・・れ?新田・・どないしたんや?ここで・・」
「ふふ・・うちね、たまに、ここでアルバイトやってんのよ。久し振りね、修治君」
「卒業以来やなあ・・全然知らんかったわ」
「うちね、オーストラリアに行ってたんよ、一年間」
「へえ・・」
恵利は修治の前に座った。短いスカートから見える白く長い足に、修治は少し視線を上げた。
随分変わったな・・修治は恵利の顔を見てそう感じた。それは、恵利も同じように思っていた。
「修治君、随分変わったね、大人びたゆうか・・」
「へ・・そう言う新田も変わったやんか」
照れ臭そうに修治は言った。その先にある、ますます綺麗になったとは、到底口には出来なかったのだ。
「背・・伸びた?修治君」
「まあ・・ちょびっと」
「どの位、今あんの?」
「今か?・・176か7位かなあ・・」
「わあ、随分育ってるやん。中学の時は、167か8位やったでしょ?」
「・・そやったかな・・よお知ってんな、新田」
「あのね、オルゴール、大事に持ってんのよ」
「おう・・そうか」
そんな2人の様子を、理沙がにこにこしながら見ている。
「なあ、哲ちゃん。恵利ちゃんと、修君、ええ感じやん」
哲ちゃんと呼ぶのは、勿論工藤の事だ。理沙と工藤は、既に、同棲中であった。
「おう、恵利が修治を好いとるのは知っとる。けど、ありゃあ、両方見たいやのう・・」
「ふふ・・あの、はっちゃけが、あんなにしおらしゅうしとるわ」
「はは・・それより、理沙、お客さんの相手せにゃ、早う」
「おう!」
「・・おう・・て・・お前・・」
工藤が頭を掻きながら、他の客の応対に追われていた。
「なあ、修治君、今日バイク乗って来てる?」
「え・・?おう・・」
「前に約束したでしょ?乗せてくれる?」
恵利が修治の顔をじっと見る。
「おう・・そのうちな」
「嫌、そのうちやなんて」
「せ・・せやけど、俺も色々やってるし・・」
「今日、乗せて」
「あかんて、今日、お前、ここの手伝いやってるやんけ」
「ちゃうの。今日は修治君来る思うて、それで、ついでに手伝ってただけやの」
「え・・?」
「うち、ちょっと理沙姉さんに言うてくる」
「あ・・おい!」
恵利は、向こうの理沙の方に行くと、千崎、田村が修治の所にやって来た。
「よお!」
「修ちゃん、忙しそうやないけ」
「聞いたで、千、サーキットで走ってるんやてな。先週6位入賞やったそや無いか。頑張ってるなあ」
「まだまだ・・や。俺より、大将や理沙さんの方が断然速いねんもん」
「・・はは。知ってるわ」
「え・・?何で?」
千崎が聞く。
「いや・・はは。あ、亮!お前、整備士の資格とったんやてな」
「へへ・・まあな」
亮が照れ笑いした。
「頑張ってるやんか、お前も」
「好きやさかいな、機械いじるの。今はな、毎日楽しいねん」
「そうか・・」
修治は嬉しそうな顔をした。修治の周りも急速に変化していた。
「ほな、わし等、あっちで、バイクの説明せなあかんよって」