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2003.12.19


修治の2腹目は今度は、順調に2羽とも孵化していた。
羽崎インテリアグループでは、役員総会がこの日、開かれていた。議事進行役は羽崎社長だ。
「・・・でありますから、グループに、山本建材さんを招き入れ、役員として辣腕を振るって貰う事になりました。賛成の方は起立をお願い致します」
全員が起立した。山本建材のグループ入りは、これから羽崎グループがステップアップするのに重要な案件であったからだ。
「それでは、承認と言う事で、山本喜一君を招きたいと思います」
拍手で、山本社長が入室する。
「・・続きまして、グループ内を束ねる、無任所役員の設置についてでありますが・・」
言いかけた、羽崎社長に、
「議長!」
常務の市村保一が手を上げた。
「市村君」
「その無任所役員の設置でありますが、主に、どのような役割を担うのでありましょうか」
「今から、ご説明申し上げます。グループは、インテリア部門、販売・管理部門、流通・資材部門の3つに再編成し、それぞれを担当役員が統べる事になりますが、この間の連絡役に一名増員したいと思う次第です」
「分かりました」
市村は、黒い眼鏡を少し持ち上げて頷いた。決して納得した顔で無い事だけは、はっきり読み取れた。
「それでは・・その担当役員として、佐久間米次君を推挙致します。ご賛同の方は起立願います」
今度は、羽崎剛史専務と、市村保一常務が起立しなかった。
「・・それでは、賛成多数と言う事で、佐久間君の役員が承認されました」
この羽崎の役員会で、反対票を投じた者は、実は初めてだ。羽崎社長が苦い顔をしながらも、佐久間が入室した。ここで、羽崎専務の手が上がった。
「羽崎専務!」
「はい、ここで私の提案で御座いますが、このように羽崎グループも躍進の一途を遂げ、これから益々の発展と充実の為に、事業拡大に於ける、増資の案を進言致します」
ははあ・・やはりその手で来たか・・・米次は思った。
「只今のご提案で御座いますが、私見ながら今暫くはこの状態で、再度役員会の議題に載せたいと思いますが、どうでしょうか」
今度は全員が拍手で賛成をした。
役員会が終わって、社長室に呼ばれた米次だった。
「ふう・・・ああ、露骨に来るとのう・・」
羽崎が苦い顔をしながら言った。
「しょうが無いですよ。専務としたら、ここまで、全部門を任されて来たと言う自負があるでしょうし」
「ま・・佐久間。お前には辛い役目かも知れんがな。どうも、共和物産関連の動きがおかしい。それで、根回しも充分出きんまま、お前を推挙した形だ。風当たりは強いやろうが、お前に任せる。業者の動きを探ってくれ」
「はい・・」
某料亭での、今度は羽崎専務と市村常務の会話・・。