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2003.11.29 「おお、済まんの、修治。忙しいとこ・・ほれ・・こいつら知っとるか?」 「お・・千に亮。どないした?」 「やっぱり、知り合いかい。こいつらなー。ここへ、こそ泥に入りよったんや」 「何やて?おう!こら。千!亮!おのれら、まだ馬鹿やっとんのかい!」 修治が大声を上げた、2人は少しびくっとなった。 「修ちゃんが、人の事そないに言えるんかい」 千崎が伏せ目がちに言った。 「何やと・・こら・・」 修治の眼が異様に光る。千崎の胸ぐらを掴んだ。それを工藤が止めた。 「止めとけ。こんなしょーも無いの殴って、職人の大事な手痛めたら、かなわん」 「け・・」 千崎が、少し安心したかのように顔を歪めた。 「こそ泥よりな、わしはこいつらの傷が気になるねや、修治」 工藤が言う。 「工藤先輩・・俺もそう思いました。けど、俺等は中学一年の時からつるんで、やんちゃやった仲間です。せやから、まさかこいつ等が女襲った犯人とは、信じとうは無いんですわ」 千崎、田村が、わなわな震えた。 「な・・何ゆうてんねん、修ちゃん」 千崎の顔がひきつっていた。異様に修治の眼が光った。田村が眼を伏せた。 「おう!亮!俺の目、見んかい。おどれ・・まさか・・恵利、襲ってへんやろな?」 「あ・・当たり前やんか。何・・ゆうてんねん、修ちゃん」 「そうか・・おう!千!何で、工藤先輩の所にこそ泥に入ったねや」 「せ・・せやから部品盗りに来ただけやってゆうとんねん」 「・・千・・お前ここにFZあるの知ってるやろ」 修治の追求の槍は突き立ったままだ。全くそれを緩める気配は無かった。 「知っとった・・けど、何でFZ俺等が盗まなあかんねん」 千崎が答える。 「この前、お前等、我悪羅の石井のとこ行くゆうとったやんけ。俺を連れてくゆうとったのう・・今から案内せえや」 「何でや・・。せやけど、それなら話は早いわ。俺等かてこんな真似せんでも済んだんや」 「ほお・・」 修治の口元が緩んだ。話の筋が見えて来たのだ。 「修治、もうええわ。大体の所、わしも察しがついたわ。こいつ等石井のチーム入る条件にお前や、女、バイクを持って来い、連れて来い言われたんやで」 「工藤先輩、済んません。ケジメは俺が取りますんで・・」 その言葉に、工藤は阿修羅の形相になって怒った。3人がびくっとなった。初めてこの工藤の怒り顔を見たからだ。 「ボケえ!修治、お前の出る幕や無いわい!ええか!お前はもう職人になる身や。善さんの弟子になって、立派な家具職人になるんやろが!そないな事わしは許さんぞ」 修治はじっと工藤の顔を見た。その時であった。工藤の修理工場の前にけたたましい爆音が響いた。出て行こうとする修治を制して、工藤が出て行った。 「おう・・ここに千崎、田村が来とるやろ、出せや」 「何じゃ?おのれは」 工藤の目が光る。 「わしか?わしは我悪羅の稲村ちゅうもんじゃ、早う出せや」 修治が工藤の横に出た。 「ほう・・金村か。ええとこ居るやんけ。我悪羅に入る返事、この場で聞かせて貰うで」 「そんなもん、誰が入るかい」 修治は答えた。 「なんやと、われ・・」 狂い獅子の異名を取る稲村の顔が歪んだ。 「さっさと去ねや、こら」 工藤が言う。 「おのれに関係あらへんわい。金村、お前は後じゃ。千崎、田村はどこや、早う出せや」 「ここに、居らんゆうたらどないしますの?稲村はん」 修治が稲村を睨んだまま、言う。その瞬間、修治の腹に稲村の蹴りが飛んだ。「ぐ・・ぐほ」 修治はその場にうずくまった。 「えらい挨拶やのお。おい・・」 工藤が、立ち上がろうとする修治を抑えて言った。 稲村は工藤を押しのけて奥へ入ろうとした。その腕を工藤は思いっきり締め上げた。 「ぐ・・な・・何さらすんじゃい!」 「それはこっちのセリフやろがい。こっから先は一歩も通さへんぞ」 「ぐ・・ぐぐぐぐ」 その力は稲村でも、容易には振りほどけない程であった。 「わ・・われ、何者や・・」 稲村も、尋常でない工藤の底知れぬものを感じていた。 「何者でもあらへんわ、修理工場の、格好ええあんちゃんやんけ」 「ぷ・・」 この余裕に修治が笑った。 この様子を事務所奥で聞いていた、千崎、田村がお互い顔を合わす。 「よお・・今日の所は去んどけ。ほんで、石井に言うとけや。工藤さんの目の黒い内は、ここらで、でかい面はさせんとな」 稲村は、この場はこれ以上は無用と、またけたたましい爆音を残して帰って行った。 「さて・・こいつら、どうします?先輩」 修治が工藤に尋ねた。 「せやの・・まあ、わしの所は実害は無い事やし、修治に任せるわ。ただし・・女の娘を怖い目に合わせたケジメだけは取らんとのお」 「その通りですわ。千、亮。おのれら、どう言うつもりで、恵利襲うたんか、言うて見い。きっちり言うとけよ。今の内に」 「この通りや、堪忍してや、修ちゃん」 千崎は、観念して認めた。 修治は、ぼろぼろになるまで2人を殴った。工藤は止めなかった。修治のこれが工藤への落とし前であり、恵利への落とし前だ。それが、修治の千崎、田村の友情でもあった。落ち着いた頃、工藤が修治の肩をポンと叩いた。 「もう・・ええやろ。2人のやった事は許されん・・けど、未遂に終わった事や。この辺で勘弁や・・」 「はあ・・はあ・・そない工藤先輩がゆうてくれはるんでしたら」 「よっしゃ・・おい、千崎、田村ゆうのか?お前等、どうせ、やる事も無いんやろ。明日からここへ来いや」 「え・・?」 |