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2004.2.20

PCのクラッシュ(1月20日頃)や、悪質なメールも多く、HPを閉鎖しようと思ってましたが、幸いデータが残ってまして、業者が善意で修理してくれました。私自身は、純粋に小説をアップしているつもりで、内容に到りましても、特定の個人を中傷したり、盗用したりする部分も無い筈(全くの創作)で、この白い雲を連載しているつもりです。しし、暖かいメールも何度も頂きましたし、この白い雲を読んで下さっている方には、そんな人は一人も居ないと存じ上げます。鳩の好きな皆さんのメールに勇気付けられて連載を鈍足ですが、続ける事にしました。

工藤達の結婚披露宴が、羽崎グループの企画によって、マスコミにも流れ、この日の南港の特設会場には、大勢の人が詰め掛けていた。まるで野外イベント並のユニークな結婚式は、新郎、新婦が大型トレーラーを運転して登場すると言うパフォーマンスで始まり、トレーラーの中で軽快な司会を担当するのは、HZKの桜井部長補佐であった。特攻服姿の若者達の胴上げ、ユニークでミスマッチに見えながらも、不思議な整合性があり、修治の運転するマッハVや、千崎、田村のチーム工藤のバイクの競演。圧巻であったのは、友人代表と言う事で米次と鈴木による、真剣白羽取りの組み手。この様子を見ながら、会場に紛れ込んでいた峰岸の顔が、わなわなと震えた。鈴木が羽崎社長側の人間と言う事を、この時初めて知ったのだ。その組み手直後、鈴木が壇上からマイクを取って大声を張り上げた。
「皆さん、今日はおめでとう御座います。我がHZKイベント事業部は、本日社を挙げて、この結婚披露宴をサポート致します」
マスコミのカメラが集中した。そして、
「皆さん、それでは壇上に我が社の歌手を紹介します。多田君!どうぞ!壇上に!」
「あ!アホかあ!多田・・・」
峰岸が叫んだ。カメラを持った手が震えていた。
その鈴木の言葉と同時に、多田は数人の特攻服姿の男達によって、強引に壇上に上がらされていたのだ。
多田は、もう壇上で歌う他無かった。成る程・・素晴らしい声だった。
この様子は、実況放送となって、当然、岡村の目にも入った。
「ば・・馬鹿野郎・・!」
岡村は顔を真っ赤にして怒った。
「いやあ!めっちゃ感激したわ。おおきに、佐久間、そして皆!」
壇上から工藤が挨拶をする。
おおーーーーー!どよめきが上がる。伊藤がTVのインタビューを受けていた。
「特攻服姿で結婚式もええや無いですか。俺等純粋に尊敬出来る先輩を祝いたいだけですわ。馬鹿ばっかり俺等は普段やってますけど、今日は、ここまで歩いて来たり、電車で来ました。今日はほんまにええ結婚披露宴で、このイベントを企画してくれはった、HZKグループさんに感謝申し上げます」
おおーーー!ぱちぱちと盛んな拍手が沸いた。感涙と感激の中で、HZK初のイベントは大盛況に終わったのだった。
「でかしたぞ!佐久間」
羽崎社長が上機嫌で言った。
「瓢箪から駒ですね。ははは」
「今日のイベントは、大成功や。それでちょっと急がなあかん事が出来たわ」
「分かって居ります。でも、今日は桜井君の大手柄ですよ」
「そや。もう既に何十本もイベントの話が舞い込んどる。桜井君の司会の才能にもびっくりしたわ」
「はは・・でも、もう自分の真剣白羽取りは勘弁して下さいね」
「わはは。お前も命が幾つあっても足りんわのう。せやけど、多田君の歌が上手いのにも驚いたな」
「そうですね。是非、スカウトしましょう。共和物産からHZKへ」
米次がにやりと笑った。敵のスパイを逆に引き抜こう等と言う大胆な発想に、羽崎社長も少し苦笑していたが、多田は共和物産を首にされるに違い無い。そして、恐らく峰岸も飛ばされるであろう。
この結婚イベントで、工藤達とのつながりや、暴走族との関わりを持った佐久間への攻撃材料が逆に、HZKへの大宣伝となって、大きな飛躍の足がかりとなったのだ。明暗・・それは岡村と米次にはっきりとこの夜を境として現れた。