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Only You 2
つかんだ坂東さんの手は熱かった。
おれは坂東さんを抱きすくめて肩に顔を埋めた。
ほっそりした、温かい体、おれの腕の中にすっぽり入ってしまう。 そうしているとだんだん気持ちが落ち着いてきた。
坂東さんはおれを熱っぽく見上げて、「あっちのほうへ行こ」とささやいた。
ぐずなおれがもどかしくなったのか、坂東さんはおれをベッドの方へずるずると引きずって行き、押し倒してしまった。 でもやっぱり上にはならない。横に寝て、おれを見てる。
「手間のかかる…」
おれの横で笑い、笑いながらキスをしてくれる。 そういえば、と体を起こし、
「平良は左利きだったな…じゃあこっちへ行こか」と言うと、坂東さんはおれの上をワニのように身をくねらせて横切り、右手へと移動した。 相当したたかに酔っているらしい。
そしていそいそとズボンを脱ぎかけて、やめた。
「こういう場合、やらしく脱がせてほしいんだなあ」
「は、はいっ」
おれは慌てて、その、つとめていやらしく脱がせようとしたが、チャックは妙に固くて、なかなか下ろせない。 けっこう力任せに下ろして、やっとズボンを引き摺り下ろし、すべすべした白い脚をむき出しにした。 ポケットから、ばたばたといろんなものが落ちた。 小銭入れやら、ミントガムやら、どっかでもらったライターとか、いろいろ。
あわててそれをポケットに収めて、軽く畳んでおいて、おれはセンパイのところへ戻った。
「左利きと、位置と、何か関係があるんすか?」
「そのほうがやりやすい。 こういうの無意識にしてるけど…逆だと、やりにくい。」
やりやすいから。やりやすい。やる。………きっぱり本気で、ヤラセルつもりなんだ。
言葉は直裁すぎるほどだけど、坂東さんの目は優しかった。
おれの全部をまとめて受け入れてくれる笑顔だ。 赤くなってるのは、二人で2本空けてしまった赤ワインだけのせいじゃない。きっとそうだ。
これからおれと坂東さんはベイビーができるようなことをするんだ。
坂東さんのやわらかい唇にキスをする。 坂東さんは優しく答えてくれる。それから首に、それから白い鎖骨のあたりに、薄いけれど滑らかな胸に。シャツのボタンを外して、小さなおへそを経由しておれの唇はどこまでも降りていく。
頭の中に、故郷の海の穏やかな波音が聞こえてくる。 満ちてくる潮が優しくおれの足をくすぐっていく。坂東さんの早い心臓の音が聞こえる。
坂東さんのやわらかい手が、おれの前に触れる。おずおずと、まるで恐れるようにだ。
「うお、もうビンビンの平良君でした」
うれしそうに坂東さんは言い、大胆におれのズボンを下ろして、生でぐいと握り、しゃかしゃかとしごき始めてしまった。
「あ…っ…あ…んっ」
坂東さんの肩越しに顔を埋めて、おれは布団の中にあえぎ声を消そうとする。
「きもちいい? 平良、もっとしてほしい?」
「坂東さん…っ いい、けど、もちょっと優しくし…てくださ…」
でないと、すぐいってしまいそうなんだ。
「こう? こうかな?」
幾分ゆるく握って、札勘で鍛えた親指で、おれの裏筋をうにゅにゅっとくすぐる。
「坂東さん、ああっ、そこはっ…んっ」
「………しまった……つい」
坂東さんはつぶやくと、いきなりやめてしまった。
「いつもの癖で。平良ごめん」
それから、坂東さんは枕元に落とした自分のネクタイを取り上げて、「縛って。ゆるくね」とおっしゃった。
「せ、センパイ。こいう趣味もあったんですか?」
「ない。縛られたことも縛ったこともない。これがはじめてだ」
おれは焦りながら、不器用に坂東さんの手首を縛った。 苦しくないように、なるべく緩くした。
センパイは白い腕から赤い布を垂らし、おれをじっと見つめた。
「これでもうおれは何もできない。無抵抗だ」
「センパ…」
「好きにしていいよ。お前のものにして……なんてな。おれもよくやるよな」
坂東さんはうつむいて、しばらくして、小さな声で言った。
「平良が、その……おれみたいなの、イヤっていうのなら別だ。無理強いはしない…けどおれは、お前と付き合いだしてからは…誰ともしてない。 これは信じてほしい」
その瞬間、あの夏の夜の熱気を思い出す。
目の前で「おれなんかどうせ公衆便所だ」と泣き出した坂東さんの、小さな肩、それは今も変わらず小さな肩だ。
おれは「誰にももう触らせないでくれ」と叫んだ。 絶対、守るんだと思った。
守るどころか、この人にこんなことまで言わせるなんて、おれは。 おれは、自分のちっぽけな傷ばかり気にして。最低だ。
「坂東さん!」
おれは全身の力を込めて坂東さんを抱きしめた。坂東さんは一瞬体を強張らせたが、すぐにぐったりと力を抜いて、おれに体を預けてきた。
「坂東さん、坂東さん、坂東さん!」
これじゃ足りない。 とても足りない。 きつく抱きしめた腕に力を込めて、小さな唇に何度もくちづけした。 それから腕に巻いた赤いネクタイをむしりとり、坂東さんの柔らかい首に唇を付けて、跡をつけるのもかまわず押し付けた。
小さな吐息を漏らして、坂東さんはおれに答えてくれた。
「坂東さん、おれは、おれは、おれは」
叫びながら、坂東さんの両腕を押さえつけた。
「許してくれ、おれはずっとずっと、こうしたかった!!」
坂東さんは、薄く目を開けておれを見た。
「…なんか……今ので……いっちまいそ……平良」
力なくおれの頬を撫でる、細い指を握り締めて、それから理性を売り飛ばした。
坂東さんへの気持ちでは誰にも負けない、でもおれはとても不器用だ。
体をつなげようとするのに、ゼリーもたっぷり使ったのに。
「は、はいりましぇん」
見かねて、おれの優しい人は、そっと手で助けてくれた。
「もっと入れても大丈夫だよ、平良」
坂東さんは優しく促した。
それでもおれは、坂東さんを傷つけるのが怖くて、ためらっていると、今度は懇願された。
「ほんとは全部、入れてほし…いんだ。 でないと…このままだと、ちょっと痛い」
「坂東さん」
「頼む、から」
ためらっているのが、かえって坂東さんを苦しめていることを知って、おれは坂東さんの腰を支え、一気に挿入を深くしてしまった。
「くっ…い、たいっ」
声を出してから、直己さんは自分の言葉に驚いたみたいにおれを見た。 そして、平良、大丈夫だよ、と首を振る。
「おれは痛くない、平良。大丈夫だから……」
それはうそだ。 先輩のものが一気に萎えてしまっているのが、何よりの証拠だった。
あわてて動くのを止め、坂東さんの中に無理やり突っ込んでいた、自分のものを抜こうとした。
坂東さんは驚くような力で、乱暴におれの腰を引き戻した。そうして、これ以上開けないほど開いた体に、おれをくわえ込んで、離さない。
ああ。先輩。 おれはまたあなたに犯されてるような、気がする、のはなぜ?
「こう、やるんだ…」
「ばんどうさ…っ」
「やめるな、平良……逃がさないよ……男なら腰を使え、腰をっ」
腰を使えって言われても。 おずおずと腰を動かすと、今度はおれまで痛かった。先輩の中は狭くて、手で、ましてや口でしてもらうときとちがって、鬼のようにおれを締め上げてくる。
「いた…先輩っ…おれ、いたいっ」
「おい、そのガタイは見掛けだおしか…? いやならこんどはおれがガンガンやらせてもらうぞっ。泣いても気絶してもやめてやらん、愛撫なしゼリーなしでがんがんやって、背中で発射するぞ。それでもいいのか?」
そして坂東さんは、念を押した。「おれはヤルといったらヤルぞ。」
あわてて、おれが本気で腰を使い始めたのはいうまでもない。
おれはいい年をして、無知で。
痛みに耐えたすぐ向こうに大きな快感があるなんて、おれは知らなかったんだ。
結局やっぱり痛がってた坂東さんが、いきなりびっくりするほど熱くなって、春の夜のネコみたいに低い声を上げながら、すごくシアワセそうな顔をして、おれより先に果ててしまったあと…はじめてみる坂東さんのそんな反応に見とれながら、自分の遺伝子の集合体を坂東さんに流し込んで。
満足して疲れ果てたおれは、坂東さんを抱きしめてキスをしたまま、眠り込んだ。
眠り込む間際、坂東さんがおれの髪を撫で付けて、耳元で「お前は、すごかった。 立派に男だよ、篤史」とささやいたような気がするけど、それはきっと自分で思ったことなんだ。 だっておれ、がんばったもん。 そうだ、そうにちがいない……。
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お赤飯だ平良(爆)
まったり徳島弁バージョン作りました。こちらじゃ。