第7回 塩江温泉アドベンチャーマラソン大会

〜 土砂降りの中の快走 〜

お待たせしました。第7回塩江温泉アドベンチャーマラソン大会10月28日(日)に開催されました。
(増田)「いつもの事ながら、掲載が遅かったですね」
(幹事長)「いやあ、相変わらず忙しくて、すまん、すまん。
     ん?こらこら、レースをサボった奴に言われる筋合いはないぞ」
(増田)「いやいや、私はサボったのではなく、当日、IT無料体験講座なるものが田舎の公民館でありまして・・・」
(幹事長)「そななもん、お前、今さら受けんでもええやろが?」
(増田)「いえ。家内が受講するため私は家で子守をおおせつかって
なんちゅー理由じゃーっ!

増田選手に限らず、今回は欠場者が続出となった。ペンギンズの気合いの無さが如実に現れています。

まず、高知県政策総合研究所の
宮武選手は、レースの10日ほど前になって「出張のため参加できない」などという連絡をよこしおった。今年の春のオリーブマラソンの時も同じ理由でサボったから、2回連続だ。何を隠そう、僕は今年の春まで宮武選手の前任者として高知県政策総合研究所に勤務していたのだが、年がら年中出張には行っていたが、週末の出張なんて皆無だった。今年になって方針が変わったとも思えない。怪しい。怪しすぎる。
て事で研究所内で諜報活動している
バド3号に極秘で確認してみる。
(幹事長)「オサマ・ビン・宮武の動きが怪しい。何か企んでいるに違いない。極秘で探ってくれ」
すると、信じられない驚愕の事実が報告されたのだった。
(バド3号)「なんとオサマ・ビン・宮武氏は、週末に若い女性と旅行に出かける模様です」
ひえ〜っ!いくら単身赴任の身とはいえ、そんな恐ろしい事が現実に起こるとは!しかも、宮武選手が一緒に旅行に出かけるという彼女は、僕と入れ違いに今年の春に入った所員で、才色兼備の独身女性です。そんな彼女が一体、何を好きこのんで宮武選手と旅行に行くのか!?宮武選手の奥さん!知ってますかっ!?
(宮武)「単なる出張ですがな。しかも豚カツ部長も一緒ですよう」

それから、人間という生物の限界に挑戦するかのごとく、いつも死にそうな顔をしてフラフラになりながらゴールしていた
藤塚さんは遠くへ転勤になってしまい、当分、参加できなくなりました。あの人だけが僕の心の支えやったのに、残念やなあ。

また、ペンギンズの良心と言われるほど熱心でひたむきな
タイガー杉原は、仕事の関係で今年は参加できない。残念だが仕方ない。頑張れよ、タイガー!
(宮武)「私の出張は徹底的に疑っておきながら、杉原君はあっさり許すんですか!?」
(幹事長)「タイガーの奥さんはええ人やしな」

さらに中山選手(元ダイエー)に至っては、最初から申し込みもしていない。彼が走ったのを見たのは去年の塩江マラソンが最後。その前は一昨年のオリーブマラソン。ちう事は、最近は1年半に1回しか走ってないぞ、あいつ。こんな事では、メンバー紹介のページの写真は、いつまで経ってもピンぼけのままやな。

なお
佐竹選手であるが、彼はいつも基本的にやる気まんまんだし、懲戒退会勧告の対象となる1時間30分の壁を数十秒のところで踏みとどまっている実力者だし、今回も期待していたのだけど、風邪でダウンし、退会前日になって欠場を決めた。タイガー同様、疑う余地は無い。

あと残るは私とF川、光高選手、それに池田から来る鈴木先生と新居浜から来る福家先生くらいか。一昨年はペンギンズから14名も参加したというのに、今年はすごく寂しいぞ。

さて、数日前の天気予報ではしばらくは天気が良いとのことだったので安心していたのだけど、前日の天気予報あたりから雲行きが怪しくなる。午後からは雨らしい。スタートは10時半なので、なんとか持ちこたえてくれたらいいなあ、なんて思っていた。しかし当日、朝、雨の音で目が覚める。朝からいきなり土砂降りやんかあ。天気予報の嘘つき!

しとしと降るくらいなら、まだ検討の余地はあるが、ここまでビシバシ降ってくださると、やる気が一気に失せてしまう。
ま、しかし、とにかく
F川に電話してみる。
(F川)「はい、えふかわです」
(幹事長)「おう、さすがに起きとったか」
(F川)「一応は起きました」
(幹事長)「で、どうする?」
(F川)「お休みなさい」
てことで、F川は予想通り、確固たる決意で欠場してしまった。仕事では見られない抜群の決断力であった。さらに光高選手は、F川よりも早い段階で決断を下したらしい。
(幹事長)「おまいらーっ、参加費がもったいないって発想はないんかっ!」

残る鈴木先生と福家先生の動向は不明だが、F川を始めとしてメンバーの大半が欠場なら、ぼくもおサボりしても非難はされないだろう。しかし、一方、これで僕がサボったら、ペンギンズは全滅かもしれない。ただでさえ、最近、書き込みが少なくて「ペンギンズは解散したんか?」なんて言われているくらいで、いくらなんでも恥ずかしい。ここはせめて幹事長の僕だけでも参加すべきか。こういう時にタイガー杉原が居れば、雨だろうが雷だろうが参加してくれるのになあ。

などと激しく悩みながら、いざという時に備えて、一応、準備は進め、カロリーの高い朝食を食べながら外を見続ける。しかし相変わらずの土砂降りで、止む気配は皆無。ただ、外へ出てみても、そんなに寒くはない。去年の丸亀マラソンは冬の雨だったので、体が引きつるほどの寒さだったけど、それに比べたら随分マシ。
それに、塩江マラソンは丸亀マラソン、小豆島オリーブマラソンと並ぶペンギンズ出場3大レースだし、個人的には1年に一度だけ参加するフルマラソンの11月のタートルマラソンの前哨戦にも位置づけている大事なレースだ。やっぱり、行くだけ行ってみよ。あくまでも激しく雨が降り続けて走る気力が沸いてこなければ、最悪、参加賞だけもらって帰ってこようと思い、準備をする。
去年の丸亀マラソンでは雨の備えがまるで欠落していたので、ビニールのゴミ袋をかぶって走った悲しい思い出があるので、今回は物置の中をかき分けてビニールの雨合羽を発掘する。これなら軽いし防水も完全だ。それから帽子に防水スプレーを大量に吹き付ける。普段は走るときには帽子は被らないのだけど、昨年の丸亀マラソンの後、隅田大先生から貴重なアドバイスを頂いたのだった。防水スプレーした帽子を被っていると、多少の雨なら平気になる。隅田大先生からは他にも、防水の良くきいた薄目のウインドブレーカーを着ること、手袋は撥水性の強いものとすること、などの貴重なアドバイスをいっぱい頂いたけど、今回はまだ寒くないので手袋は要らないだろう。
ところで
隅田師匠ですが、5月のオリーブマラソンの前日にアキレス腱を切ってリタイアしたままだ。当分、復帰には遠いのでしょうねえ。お元気ですかあ〜?

雨対策は整ったが、この雨じゃあ、せっかく去年買ったばかりの新しい(僕にとっては)高価な靴が汚れてしまう。塩江山岳マラソンのコースは汚い道もあるし。しばらく悩んでいたが、あっ、そうか、古いシューズを履けばいいんだ。て事で、古いシューズに履き替える。これは2年前にダイエーの優勝セールで3000円で買ったハイテクシューズである。靴ひもがなく、ダイヤルのようなネジを回すとワイヤーが締め付けられる画期的な構造であるが、欠点は走っていると足が痛くなることだ。

予定では9時までに受付し、開会式を経て、9時半頃にはスタート地点へマイクロバスで移動する。スタートは10時半なので1時間ほどスタート地点で待つことになる。普段ならいいけど、この雨の中、1時間も待っていたらそれだけでずぶ濡れになって体力も消耗してしまう。て事で、わざと遅刻していくことにする。この天気だし、許してくれるだろうと思い、9時半到着を目途に家を出る。
塩江町は香川県のカトマンズと言われる山岳地帯なので、普段なら、青空が広がる高松砂漠から山深く入って行くにつれ、だんだん霧が濃くなり、最後には小雨模様になってくるのだが、今回は様子が違う。土砂降りの高松を出発して塩江に近づくに連れ雨足が弱くなる。あれえ、おかしいなあ。で、到着した頃にはパラパラと落ちる程度の小雨になっちゃった。これなら何の問題も無く走れるぞ。一気にやる気が沸いてきた。

期待通り受付は遅刻しても平気だった。それにしても人が少ない。参加者が異様に少ないようだ。そもそもこの塩江マラソンは、四国のアンデスと呼ばれる塩江の山岳地帯を一気に駆け登り駆け下りるという無茶苦茶なコースなので、ランナーにはとても不評で、体に悪いからと言って参加を取りやめるランナーが続出し、毎年、着実に参加者が減り続けている。安易な参加者が駆逐されていき、よっぽど好きな人しか走らなくなっている。プログラムで確認すると、やはりハーフマラソンに参加登録している人は358人しかいない。だいぶ少なくなっている。10kmコース等を含めても1000人を下回っている。すっかりマイナーな大会になっちゃたなあ。かつては宇佐美選手や松野明美がゲストに来て一緒に走ったりしたこともあったけど、経費節約でそういうのも無くなったし。そのうち潰れるかもしれないくらい。
しかもその上、今年は朝からの土砂降り雨にくじけて、ペンギンズの若手メンバーを筆頭とする安易な気持ちで参加している連中が軒並みおサボりしたため、かなりの精鋭メンバーに厳選されているようだ。走れるのはいいけど、厳しいぞ。

大幅に遅刻しているため、マイクロバスではなく自分の車でスタート地点まで移動する。スタート地点は四国ハニーという名前の何をするのか分からない怪しい工場だ。色っぽい場所で無い事だけは外見から確実だが。
四電ペンギンズは、抜群の結束力を誇るチームなので、例年ならレース当日にならないと、幹事長の私ですら誰が出場しているか分からない状態だが、今年はほとんど誰も来てないのが分かっているから、メンバーを探す気も起こらない。ところが到着すると、いきなり
鈴木先生に声を掛けられる。
(幹事長)「わあ、良かった。鈴木さんも来てたんですかっ!」
(鈴木)「当たり前やんか」
(幹事長)「池田は雨はどうでしたか?」
(鈴木)「土砂降りや」
(幹事長)「それでも迷う余地無く?」
(鈴木)「豪雨の土砂崩れでレースが中止にならん限りは雨くらいでサボらんぞ」
偉いっ!さすがは鈴木大先生。雨で悩んだ自分が恥ずかしい。F川くんも、今後は気をつけるように。
(鈴木)「それから福家さんにも会ったよ」
おおう。福家さんも来られていたか。福家さんは79歳になられるお父上と一緒に毎年10kmに参加している。79歳になってもレースに参加しているお父上の熱心さも驚異だが、福家さん自身も今年の夏はオーストラリアまでペンギンズ初の海外遠征に行ったくらいだから、かなりの熱の入れようだ。

そうこうしていると、後ろから声を掛けていく奴が居る。誰かと思ったら、
亀ちゃんやないの。
(幹事長)「あれっ?お前も参加してたんか?」
(亀山)「ふっ」
そう言えば、去年も奴は、走り始めてしばらくして、いきなり背後から声を掛けて抜いていったなあ。奴は相変わらずペンギンズとの関わり合いを避け、今回も讃岐闘友会なんていうふざけた団体名で出ている。それにしても、亀ちゃんはレースでよく会うなあ。奴も熱心であるな。
ちゅうことで、今回の参加は鈴木先生、福家先生、亀ちゃんと私。て事で、みんな40歳以上じゃ。しつこいようだが、F川を始めとする若手メンバーの軟弱さが際だつ。
(F川)「何を偉そうに言よんですか。幹事長も電話した時は悩んどったやないですかぁ」
(幹事長)「あれはお前の迷う心を試していただけじゃ。まだまだ弱いのう」


まだ少し降っている雨を避けて軒下で雨宿りしていると、見知らぬ二人連れがいきなり声を掛けてくる。
(男1)「なんや、今日はかぶり物は無しか?」
(男2)「いつものカッパはどした?」
ななな、なんや、こいつらは?満濃公園リレーマラソンでの動物チームを知っているらしい。しかし今日は普通の格好をしているのに、なんで僕がカッパだと見破るんだ。なんだか怪しそうな男達なので、ヘタに逆らったりせず、適当に話を合わす。僕のハイテクシューズに気付き、やたら触りまくる。それにしても延々と漫才のような会話を続ける不思議な男達であった。

それからも鈴木さんと世間話しているうちに雨がすっかり上がる。空もなんとなく明るい。
(鈴木)「こりゃあ暑くもないし、ベストコンディションになってきたで。好タイムが出るかもしれん」
ふむ、そうかも知れない。そうなると、古くて重いシューズを履いてきた事が悔やまれる。新しい軽いシューズなら僕も好タイムを狙えたかも。鈴木先生をふと見ると、やたらと靴ひもを直している。
(鈴木)「なんか、こう、気になるんよねえ。走り始めたら関係ないんやけどなあ」
(幹事長)「僕なんか、いつも右と左と靴ひものきつさが微妙に違って気になっていかんのですよ」
(鈴木)「あっ、同じやな。僕もそうなんよ」
これはひげ剃りの時に、右のもみあげと左のもみあげの長さが微妙に違っているような気がして少しずつ交互に剃っていくうちに両方ともぶざまなほど短くなってしまうのと同じ現象である。これは専門的に言えば鏡像反応と言い、この分野の先駆的学者である名古屋大学の野依教授が今年のノーベル化学賞を受賞したことは記憶に新しい。

さらに鈴木先生は妙なテープを足に張り付けている。
(幹事長)「何ですか、そのテープ?どうせ電流を逃がすとか言うような怪しいテープでしょ?」
(鈴木)「いや、違う。これはゴムのように足を動かすのを助ける働きをするんや」
ふむ。大リーグボール養成ギブスと逆の働きをする補助力テープか。しかし、それって、そんなん貼って反則にはならんのかいな。
(幹事長)「いつもながら気合いが入ってますけど、最近もレースは結構出てるんですか?」
(鈴木)「いや、実は2月の丸亀マラソン以来なんや」
なんと。一時は毎週のようにレースを渡り歩いていたのに。
(鈴木)「今日は1時間50分くらいを目標にしようかなあ。幹事長は?」
(幹事長)「この山岳コースですから、制限時間の2時間半で帰ってくるだけで満足です」
スタート時間が近づいてきたが、空はますます明るくなってきて、もう雨は降りそうにない。お日様でも出てきたら暑くなりそうなので、下に着ていたTシャツは脱いで長袖のシャツ1枚にする。よっぽど半袖Tシャツにしようかと思ったけど、もしも雨が降り出したら困るので、妥協して長袖にする。せっかく防水スプレーを吹きまくった帽子だが、もともと帽子は嫌いなので、雨が降らないとなれば脱ぐ。短パンのポケットに入れていたビニール合羽も置いていく。
記録を狙うとなると、軽い新しい靴を履いてくれば良かった。この古いシューズは重くて走りにくいんだよなあ。ま、雨が上がっただけでも満足せねば。

(鈴木)「ここのコースは前半がひたすら登りだから後半バテてしまい、ペースの衰えないジイさんに抜かれたりするんよねえ」
(幹事長)「僕なんかバアさんにも抜かれまくりですよう」
なんて話していると、タオルの鉢巻きした見知らぬおっさんがいきなり会話に入ってくる。
(鉢巻)「わしなんか、ビリの方やから、みんなに抜かれまくりよ。こないだなんか、
     後ろ見たら最後尾の救護車が迫ってきて焦りまくりよ」
確かに、その鉢巻きは重いやろな。しかし、お前は一体、だれ?
基本的には今日は厳選された早そうなランナーばかりかと思ったら、一人だけ、見るからに素人丸出しの兄ちゃんがいる。軽くウォーミングアップしながら走っているのだけど、走り方が滅茶苦茶無駄の多い走り方で、義務教育を終了してから一度も走ったことがありません、っていうような走りだ。ふむ。これで少なくともビリは免れたな。ブービーは確保じゃ。

てな訳で、いきなりスタート。この塩江のハーフマラソンコースは、完走できただけでも自分を誉めたくなるような険しい山岳コースである。前半の登りはムキにならずにマイペースで上っていかねば後半バテバテになってしまう。もう分かり切ったレース運びなので、控えめに後ろの方からスタートし、淡々と軽いペースで走り始める。例の素人丸出し兄ちゃんは、と言うと、妙に早い。単にコースを知らないので調子よく飛び出しただけなのか、それとも無駄な動きをものともしない爆発的体力があって実は早いのか。
しかし、まだ坂が本格化しない僅か2kmの地点で、素人兄ちゃんは早くもバテバテになり、一気にペースダウンしてフラフラしている。はやり、単なる素人だったか。これじゃあ完走も難しいぞ。

雨はすっかり上がり、空も明るい。帽子を置いてきたのは正解だけど、長袖にしてきたのが暑くなってきた。ふと見ると、例の鉢巻きおじさんが前を走っている。ふむ、確かに遅い。軽く抜く。後ろの方からスタートしたので、ゆっくり走っても抜いていく人は少ない。むしろ抜く人の方が多い。これは精神的によろしい。ただし、プレッシャーが無いだけに、タイムは決して良くはならない。が、このレースはタイムより完走が目標だから気にしない。
だんだん上り坂はきつくなっていく。一昨年辺りから、最高に急な上り坂はためらいなく歩くことにしていた。特に去年は競歩を取り入れ、走っているランナーを5人も抜きさる事ができて大成功であった。しかし、今年は割と調子が良く、歩かなくても完走できそうな気配。
(中山)「えっ?幹事長、今年は歩かなかったんですか!?」
(幹事長)「あたぼうよ。今年は省エネ走法を編み出したからな」
(中山)「何ですか、それ?」
(幹事長)「走るとき、普通は右足を踏み出して右足が着地する前に左足を蹴り出し、今度は左足が
     着地する前に右足を蹴り出す。すなわち両方の足が同時に地面に触れている瞬間は無い」
(中山)「走ってるんだから当たり前ですよね」
(幹事長)「私の編み出した省エネ走法では発想を切り替えて、右足が着地してから左足を蹴り出し、
     今度は左足が着地してから右足を蹴り出すのじゃ」
(中山)「日本語ではそれを歩くと言います」
(幹事長)「それは物事を皮相的に捉えた物の言い方じゃな。肝心なのは気の持ちようなのじゃ。
     自分でも歩いているという自覚のもとで歩いていると、今度、走り出すタイミングが遅れてしまう。
     急な坂が終わっていても、ついついそのまましばらく歩いてしまったりするものじゃ。
     しかし一見歩いているようで心は走っていると、坂のスロープが緩やかになれば
     自動的に普通の走りに戻るのじゃ。オートマチックのギアチェンジのようなものじゃ」
みなさん、半信半疑というか無信全疑でしょうが、これは本当です。走っているつもりで歩くと、全然ペースダウンしません。去年の競歩よりも一層有効です。

前半の登りの途中にも、時々、下り坂がある。こういう時は、待ってましたとばかり、大股でバシバシ飛ばしまくる。こうい時にタイムをかせがねば。上り坂で抜かれた奴を抜き返し貯金しとかないとね。
ところが、なんとここで僕を抜く奴がいる。どういうランナーかと思ったら、これがなんと長いトレパンを履いた素人くさいねえちゃんだ。なんなんだ?こいつは。僕よりはだいぶ背も低いし、歩幅はだいぶ狭いはず。それなのに下り坂で一気に抜き去ってパタパタと走っていく。なんだか無性に腹が立って、勝手に
「バカ女」と名付ける。走るときは、間違っても下は短パン。どんなに寒くても雨が降っていても、下は短パン。それを黒の長いトレパンだなんて、なめてるにもほどがある。そんなバカ女に抜かれるなんて。めちゃめちゃ気分が悪い。いつか必ず抜き返してやる。
なんて勝手に腹立ちながら走っていると、またまた見知らぬおっさんに声を掛けられる。
(男3)「もうちょっとで上り坂も終わりですよう」
そんなん分かっとるわい。お前なんかに言われんでも知っとるわい。しかし、それにしても、このおっさんも、一体誰なんだ?なんでやたら知らない人が声を掛けるんだ?

と、この辺りで再び雨が降り始める。もうすっかり上がったと思っていたのに。まだ小降りで大したことはないので、帽子を置いてきた事は悔やむほどではないが、長袖にしたことはラッキーだった。油断はできないなあ。まあしかし、まだまだ暑いよりはマシ、って思える程度。
上り坂をしばらく行くと、案の定、さっきのバカ女が苦しそうに走っている。一気に抜いたれ、ってペースを上げるが、バカ女もなかなかしぶとく抜けない。苦しみながらついていくと、給水所が現れ、バカ女は立ち止まって水を飲む。そのスキにこっちは走りながら水を取って抜きさる。バカな女め。

もうバカ女には抜かれないように頑張って走っているつもりだったが、やはりさすがにペースはダウンしていき、ついに恒例の
盲目のランナーに抜かれてしまう。丸亀マラソンでも抜かれたし、最近、あちこちのレースで終盤にバテた頃に抜かれてしまう。伴走者がいるとは言え盲目ではそんなに早く走ることは難しいと見えて最初は決して早いペースでは無いのだが、実力があるためペースダウンすることなく、最後には抜かれてしまう。それは、まあ仕方無いのだけど、その伴走者がなぜかいつも僕に声を掛けていくのだ。
(伴走)「今日は遅いのう」
ほっといてくれ。
(伴走)「最近、屋島の周りは走っとん?」
(幹事長)「いやあ、最近はサボり気味で近所を走るくらいですねえ」
(伴走)「いかんやないの。そやから遅いんよ。もっと走らんと」
ほっといてくれ。それにしても、このおっさんは誰なんだ?丸亀マラソンで抜かれた時の伴走者も声を掛けていったけど、彼とは別のおっさんだ。一体、どういう事なんだ?なんで僕が以前は屋島の周りでトレーニングしていたことを知ってるんだ?
なんて混乱していると、雨足が強くなり、遂には台風のようなものすごい暴風雨になってしまう。
(幹事長)「こりゃあ、参りましたねえ」
(伴走)「天気予報ではお昼頃が一番雨が強いって言っとったのに、スタートの時に上がったから
     おかしいなあとは思っとったけど、やっぱり降り出したなあ。
     せやけど、走っとったら、おんなじおんなじ」

なんて言いながら盲目のランナーともども、一気に見えなくなってしまいました。
シューズの中はあっという間に水でジャボジャボ。古い靴にして良かった。その辺りから、後半の急な下り坂になってくる。路面が濡れてスリップしそうで危ない所だけど、普段なら転げ落ちるように下る一番急な下り坂では、たまたまものすごい向かい風になり、ちょうど良い具合にスピードがセーブされる。しかーし、この下り坂でまたまたバカ女に抜かれてしまう。信じられない走法。なんでやーっ!

急坂を下りきって平坦な道になると、今度は、これまたうまい具合に暴風雨が追い風になり、ちょうど良かった。逆なら前に進めないくらいの風だ。少し前にバカ女が見えるが、これがなかなか追い抜けない。もう後は平坦な道と下り坂だけなので、もしかしたら、もう抜けないかもしれない。バカ女に負けるなんて、悔しい。しかし、それでも離されまいと、なんとか着いていく。
例年なら、せっかく上り坂が無くなった時点なのに、前半の疲れが出てきて、この辺りの平坦な道で一気にペースが下がるところ。今年もさすがにペースが一気に落ちてきたが、それでも割とマシな方か。ひどい時には歩くようなペースになるもんなあ。
で、なんとか見失わなかったバカ女が、最後の給水所で再び立ち止まる。かなりバテているようだ。このスキに再び抜き去る。しかし、その直後から再び急な下り坂だ。ここで抜き返されては勝ち目が無い。もう必死になって転がり落ちる。しかし、それでも後ろからヒタヒタと忍び寄る靴音。どんどん近づいてくる。いかん。もう駄目だ。遂に抜かれる。と思ったら、別のおばちゃんだった。本来ならおばちゃんに抜かれて悔しいところだが、バカ女でなくてホッとする。その坂を下りきって後ろを確認するとバカ女の姿は見えない。やった。これで勝った。と思ったら、またまた後ろからヒタヒタと忍び寄る靴音。確実に近づいてくる確かな足取り。いくら頑張っても結局は抜かれてしまう。と思ったら、今度はおばあちゃんだった。普段なら、ますます腹立たしいシチュエーションだが、今日はバカ女でない限り許す。
そのまま遂にあと500mの地点まできて、余裕で後ろを見ると、ななな、なーんと、不死鳥というかゾンビのようなバカ女が、あと30mくらい後ろまで迫ってきているではないの。ぞぞぞぞーっ!信じられない底力。もう、後は死にものぐるいで走りまくる。最後で2〜3人は抜いたと思うが、それよりも、なんとかバカ女に勝てたのが嬉しい。て言うか、ホッとした。
僕がゴールして間もなくバカ女もゴールした。まともに顔を見ると、割と可愛い子だった。お互いの健闘を讃え合いたかったが、ま、僕が勝手にライバル視していただけなので止めておく。

山の天候は変わりやすく、ゴールした頃は再び雨はすっかり上がり、青空が広がっている。濡れた体もポカポカ暖かくなってくる。そのせいもあって、最後にものすごくスパートした割には、まだまだ余裕がある。あと10kmは走れそう。
(幹事長)「これやったら11月末のタートルマラソンも大丈夫かも」
(増田)「10kmでは足りませんよ。フルマラソンだと、あと21km走ってもらわんと」

タイムも、3年前よりは悪かったけど、去年や一昨年よりは良かった。この悪天候を考えると、かなり健闘したと言えまいか。
(幹事長)「タイムも悪くないが、3年連続で順位がグングン上がっている」
(増田)「3年連続で参加者が大幅に減ってますからね」
(幹事長)「我々の場合、順位は後ろから数えなければならない。
     一昨年は後ろに10人位しかいなかったけど、今年は僕の後にまだ50人はいたぞ。
     悪路と悪天候を苦にしない選りすぐられたランナーの中、大健闘と言えまいか」


ペンギンズ顧問の父上と一緒に10kmコースに出た福家さんの話によると、10kmコースの人は、ちょうど雨が上がってからスタートし、ゴールしてしばらくすると再び雨が降り始めた、というラッキーな展開だったようです。
(福家)「いやあ、暑くもなく、寒くもなく、気持ちよく走れたわ。ハーフの方は過酷なコースのうえに、
     あの雨じゃあ大変だったろうねえ」
(幹事長)「はい!もう、滅茶苦茶大変でした。完走しただけでもボーナス査定を上げて欲しいですねっ!」
(福家)「しかし、新城薫氏は、さすがに1番で颯爽と帰ってきとったよ」
なんとかーっ!新城さんも出ていたのかっ!ああいうセミプロの人が出るようなレースじゃないって言ってるのにぃ。それにしても、あのコースとコンディションも物ともせずにトップで走り抜けるなんて、やっぱり新城さんってすごいのね。
(福家)「それにしても雨という理由でサボっているメンバーが多いねえ。僕も以前はそんな気持ちが
     強かったけど、今ごろは、気にならなくなったなあ」
聞いとるか?えふかわ!?



冷えた体を芯から温めるために、熱いうどんを立て続けに2杯食べる。例年なら途中でうどんが無くなってしまい、宮武選手のような遅いランナーがゴールした頃にはうどんが無くなっているのが常だが、今年は参加者が少なかったからか、うどんが有り余っている。うどんの後は弁当も食べ、お腹パンパン。
というところで、レースの後は恒例の温泉である。せっかくくれるタダ券を使わないとね。

塩江で温泉と言えば、やはり新塩江温泉ホテルである。何を隠そう、ここのジャングル風呂にはかつて混浴露天風呂があったのだ。(第5回塩江温泉アドベンチャーマラソン大会記録参照)
ただし、ものすごく残念な事に、この混浴露天風呂は昨年、無くなってしまった。(第6回塩江温泉アドベンチャーマラソン大会記録参照) 痛恨の極みである。

しかし、それにもめげず、今年も3年連続で新塩江温泉へ行ってみた。ジャングル混浴風呂が無くなったとは言え、ここにはもう1つの秘密兵器が隠されている。歌謡ショーなのだ。出し物によっては時代劇風な時もあるし、あるいは歌と踊りのショーの時もある。信じられないけど、普通に入場すると大人は1500円くらい取られるのだ。タダ券でも無けりゃ、絶対に行かんぞ。

まずはゆっくり、温泉に入る。ところが、ほとんど入浴客が居ない。一体どうなっているのか。これじゃあ、潰れちゃうぞ。しかしそれは大間違い。風呂から出て歌謡ショーをやっている座敷に行くと、既にショーが始まっている客席は、ほぼ満席。みんな歌謡ショーが目当てなのだ。実演中にのんびり風呂に入っているなんて素人のやることだったのだ。
今回の出演者は
「いなせ組4人衆」なんていう巡業集団だ。若手のお兄ちゃん4人が歌って踊る。と言っても、もちろんジャニーズ系ではなく、和服に演歌の伝統文化系だ。さらにおまけで、なんと小学6年生の男の子も出演していた。ああいう子も一緒に全国をドサ回りしているんだろうけど、学校とかどうしてるのかなあ。
それにしても、この満席の客は一体なんなんだ?このオンボロ温泉の便所臭い劇場のショーに、どういう人たちがこんなにやってくるのか不思議だ。高い金払って。まあ、こういう世界もあるのだろうなあ。毎日何回も公演しているはずなのに、売店のおばちゃん達も食い入るように見つめている。もしかして、この世界では、かなりの人気実演集団なのか。最後まで4人の顔の区別が付かなかった私には、理解の域を超えていた。

温泉を出て振り返ってみると、入り口の看板は
「塩江新温泉劇場」となっていた。そうか。お風呂のおまけに歌謡ショーが付いているのではなく、ショーがメインだったか。


〜おしまい〜




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