第30回 小豆島オリーブマラソン大会
2007年5月27日(日)に第30回小豆島オリーブマラソン全国大会が開催された。
このレースは10年前の第20回から参加し続けているペンギンズの主要レースの1つなのだが、去年は、なんとたった3人しか参加者がいなかった。申込した人は例年どおりだったんだけど、当日、子供の運動会と重なってしまったとか、子供が病気になったとか、ウンコに血が混じったとか、苦しい言い訳のオンパレードで参加者が激減してしまったのだ。
しかーし、今年は違うぞ!新人女子部員が一挙4匹も同時デビューした1月の讃岐まんのう公園リレーマラソン大会の余勢をかって、さらに輪をかけて女子部員が5人も出るぞっ!
まずは、まんのうリレーでデビューしたブタ2号、トラ2号、ライオンの3匹。これに加えて、今回はトラベル恵子とPR真理子の2人も突然デビューだ。
(支部長)「い、いったい、これはどうしたことですかっ?」
(幹事長)「わ、わしにも分からんっ!」
少なくとも、満濃リレーでデビューした3匹は、懲りていなかったようだ。ブタ2号とライオンは、レース後も結構、涼しい顔をしてうどんを食べていたので、あり得なくもないが、トラ2号に至っては瀕死状態に陥っていたので、もう金輪際レースには出ないと思っていたのに。
(支部長)「トラベル&PRコンビはどうしたんっ?」
(幹事長)「何を隠そう、この2人は素人ではないのだ」
トラベル恵子とPR真理子の2人は、それまでランニングの経験は皆無だったのに、一昨年の秋、いきなり思いついてホノルルマラソンに参加し、完走したのだ。しかも、それで懲りるかと思いきや、味をしめてしまって昨年も連続でホノルルマラソンを完走したのだ。
(支部長)「げげげっ、私より、よっぽど実力者やないですか。私はフルマラソンに出たことないですよ」
(幹事長)「支部長には100km歩いたという輝かしい実績があるじゃないか」
トラベル&PRコンビは、このホームページの熱心な読者としても知られている。
(トラベル)「ビーフジャーキーの記事なんか好きだな」
(PR)「飛び込みの写真も面白かったよ」
(支部長)「えっ?そなな記事があるんですか?」
(トラベル)「でも何と言っても最近の話題作は立てこもり事件現場探索記よねえ」
(PR)「娘を斥候として派遣するのが面白かったな」
みんなも、このホームページの隅々までチェックしてみよう!今まで知らなかった記事が溢れているよっ!
女子部員が5人も出るってことで、長らくレースから遠ざかっていた中山選手(元ダイエー、現ジュビロ)まで目を輝かせて参加することとなった。
(幹事長)「あー、君は誰だっけなあ。久しぶりに顔を見るから忘れちゃったなあ」
(中山)「はいっ!わたくしは昨年のオリーブマラソンを、ウンコに血が混じったという言い訳でサボってしまった
中山でございますっ!」
(幹事長)「ふうん。で、今年のウンコは大丈夫なのかな?」
(中山)「はいっ、もうバッチリですっ!健康ウンコですっ!ぜひぜひ、今年のレースには参加しとうございますっ!」
去年、私を入れてたった3人で参加して血の団結を確認し合った支部長とテニス君は、当然、今年も出るが、ほかにも、久しぶりに復活した笹谷選手も出るし、2月の丸亀マラソンでペンギンズデビューを果たした矢野選手も出る。
(矢野)「ところで、デビューした割には、いまだにメンバー紹介のコーナーに載ってないんですけど」
(テニス)「僕も掲載が遅かったんですよ。男子部員の紹介は、女子部員が加入した時に、おまけで追加することになってるから」
そういう意味で、今回はトラベル&PRコンビが紹介されるから、矢野選手も一緒に紹介されることとなろう。たぶん。そのうち。もしかして。
このほか、福家先生ももちろん、参加されるが、85歳の父上とご一緒されるため、申込は別だった。
それにしても、10人を越える参加は、オリーブマラソンでは初めての快挙である。たぶん。よく覚えてないけど。
参加者は盛況だったんだけど、さて、ここからが問題だ。このレースには10年前から出続けているくらいだから、レース自体は良いレースなんだけど、最大の難点は交通手段だ。島で開催されるため船で行かざるを得ないのだが、大会会場である小豆島坂手地区には港はあるけど船の定期航路がないのだ。このため、主催者が高松発の臨時船を出しており、毎年、この臨時船を利用してきた。
しかし、この臨時船と言うのが、フェリーボートを借り切っているため、座席が少くて、例年、辛い思いをしてきた。石材店が非常に早く乗り込んでシートを確保してくれた年なんかは良かったけど、たいていの年は、通路の片隅に体を丸めてしゃがみ込むか、広い車両甲板に寝転がるかだ。車両甲板は固い鉄板で、おまけに朝は冷え込み、逆に帰りは太陽熱で焼けて熱くなり、とても人間扱いされているとは思えない状況だ。我々は、これを奴隷船と呼んでいる。それでも、唯一の交通機関であるから、文句を言いながらも素直に利用してきた。
ところが、今年、このフェリーボートの臨時船に加えて、なんと快適な高速船が用意されることとなった。ただし定員はとても少ない。おまけにフェリーボートの臨時船が往復で2000円なのに、高速船の臨時船は往復3000円だ。快適さを考えると1000円くらい余分に投資しても良さそうなものだが、なんとなく高い気もする。かなり悩んだが、今年は参加者も多く、特に女子選手も多いため、つらい車両甲板でも楽しく過ごせるかもしれないってことで、結局、安いフェリーボートの臨時船を申し込む事にした。
(幹事長)「さて、参加者も多いことだし、早く申し込みしようか」
(石材店)「ただ、小学校の運動会とバッティングしていないか心配ですねえ」
実は、石材店が住んでいる丸亀市は、ここんとこ毎年、小学校の運動会とオリーブマラソンの開催日が同じになっていて、家庭不和の元凶となってきた。一昨年は子供の運動会を捨てマラソン大会を優先させた石材店だが、去年は遂に力尽きて、マラソン大会を諦めざるを得なかった。しかし、これは石材店だけに限った話ではない。小学生を抱える我々に共通の問題だ。それで小学校の運動会の開催日が確定するまでオリーブマラソンの申込を待つことになった。
申込期限ギリギリになって各小学校の運動会の日程が判明した。その結果、石材店は今年もモロに重なってしまい、マラソンを断念せざるを得なかったが、その他のメンバーは、笹谷選手の地区はオリーブマラソンの1週間前、私と中山選手(元ダイエー、現ジュビロ)と矢野選手の地区はレース前日の土曜日と判明し、無事にオリーブマラソンに参加できることとなった。
(幹事長)「いやあ、良かった良かった。じゃ申し込みはまとめて頼むね」
(石材店)「なんで自分が出られないのに、僕が取りまとめせんといかんのですかっ!」
このような事情で、申込期限ギリギリに申し込んだのだけど、この時点では何の危機感も無かった。「定員オーバーになったら締め切ります」なんて書いているけど、今まで定員オーバーになったのは東京マラソンくらいだ。それ以外は、どのレースもギリギリに申し込んでもOKだった。どのレースの時も、ペンギンズ事務局長である石材店が、かなり前からみんなに周知しているんだけど、みんな「まだまだ先の話」って感じで忘れてしまい、ギリギリになって石材店がプッシュして、ようやく申し込んでいるのが現状だ。四国カルストマラソンに至っては、締め切りを大幅に過ぎても、事務局に電話したら出場OKとなったくらいだ。
さて、レースの参加証が送られてくるのは、たいていレースの直前になる。ところが、今回、妙に早い時期に大会本部から封書が届く。「なんで今年はこんなに早く参加証が届くんだろう?」って不思議に思いつつ開封すると、なんとびっくり、「定員オーバーであなたは臨時船に乗れませんでしょう」なんていうお知らせが船代返金の小切手と一緒に送られてきたのだ。
(幹事長)「おいおい、大変な事やぞ、臨時船に乗れないっていうお知らせが来たぞ」
(支部長)「私にも来ましたよ」
(笹谷)「僕も来ましたがな」
みんな来ている。当たり前だ。みんなまとめて申し込んだんだから、はずれる時は全員はずれる。父上と一緒に早々に申し込んでいた福家先生以外は、みんなはずれてしまった。
(中山)「僕らって運悪いですよねえ」
いやいや、運じゃないって。くじじゃないんだから。単に申込が遅すぎて全員アウトになったのよ。
(幹事長)「レースへの参加自体は受け付けてくれてる訳やな。でも船に乗れなかったら参加できんやないか」
(笹谷)「船に乗れないんやったら、参加できんのやから、参加費も返金して欲しいですねえ。
参加費は返してくれんのですか?」
こんな事は初めてだ。これまでも、例年、期限ギリギリで申し込んできたけど、こんな事になるのは初めてだ。いきなり全員、難民になってしまった。
大騒ぎしているところへ、一人涼しい顔の青年が満面の笑みで現れた。
(テニス)「いやあ、みなさん、おはようございます。どうしたんですか、困った顔をして。
まさか難民になったんじゃないでしょうね。
僕は個人的に早めに申し込んでおりましたので、無事、臨時船に乗れるようです。うわっはっは!」
(幹事長)「集団の和を乱すこいつの単独行動は党規違反ではないのか?」
(石材店)「う〜ん、残念ながら会則には申し込みにおける自分勝手で我が儘な非人道的行為に関する規定は
無いですねえ」
(テニス)「うわっはっは。お許しいただけるのなら、唯一人の勝者である私から、耳寄りな情報を提供しまっせ。
実は去年、私の友人が同様な事態に追い込まれましたが、事務局に電話して、
『船に乗れないのなら参加も止めるので参加費を返してくれ!』」と恐喝したら、なんと臨時船のチケットが
送られてきた、とのことですぜ」
(幹事長)「なにっ!?そなないい加減なものなのかっ!よしっ、早速ゴネてみよう!」
ところが、電話に出た事務局の兄ちゃんは、ヒジョーにいい加減そうな気の弱そうな青年で、それでいて妙に粘り腰で、脅しても懇願しても暖簾に腕押し状態で、全然らちがあかない。イライラしてきて電話を叩き切る。少なくとも、今年は去年までと違って、参加者が非常に多く、多少、定員オーバーで詰め込んでも、ぜーんぜん乗り切れない状態らしいと言う事は分かった。
こうなると選択肢は2つしかない。
@ テニス君だけ参加させる。
A なんとかして参加する。
(幹事長)「腹立つから、@にしようか」
(テニス)「ひえ〜、それは寂しいっ!」
(中山)「ざんねーん!せっかく女子と一緒に走れると思ったのにぃ」
(幹事長)「確かに、それはそうだ。なんとなく惜しい」
なので、少し遠いが、他の港に着く定期便を利用して行く方法を検討する。ちょっと離れた草壁港や、まあまあ離れた池田港や、かなり離れた土庄港など、高松からの定期便は結構ある。草壁港へは、臨時船よりよっぽど良い時間帯に高速船が出ている。しかし、確認してみたら、少なくとも出港の2時間前には並ばないと乗れないくらいの混雑になるらしい。それに、港に着いてから現地への移動も心配だ。バスはあるようだが、バスに乗るのに、また長蛇の列ができそうだ。
悩んでいると、笹谷選手があっさり言う。
(笹谷)「自家用車で行きましょうよ。僕がミニバンを出しますよ」
なんとっ!そうか、そうなのか、車ごと定期便のフェリーボートで行けばバスに並んで乗る必要もない。
(幹事長)「そうかそうか。なんだ、当たり前じゃん。なんで気が付かなかったんだ。
自分の車で行けばいいだけの話じゃないか。
人数が多いから、僕のミニバンも出そう」
て事で、2台のミニバンで行くことになった。
(中山)「なんとなく楽しくなってきましたね」
(幹事長)「うん、うん。なんだかピクニック気分」
(テニス)「なんとなく楽しくないなあ。せっかく唯一人の勝者だったのに、なんとなく仲間はずれの
除け者になった気分だなあ」
コスト計算をすると、人間だけだと往復で1000円くらいだ。
(テニス)「えっ?臨時船は往復で2000円もするのに定期便は1000円なんですかっ?」
(幹事長)「どうやら、そうみたい。臨時船って、座席もロクに無い奴隷船のくせに、妙に高いんやなあ」
ただし、我々難民組は、これに自動車の運搬料金が加わる。1台往復10000円くらいだ。福家先生とテニス君を除くと難民組は10人だから、2台で行って5人ずつ分乗すると1人あたり2000円だから、人間の乗船券と合わせて3000円か。
(テニス)「うわっはっは。やはり私の勝利ですね!」
(幹事長)「悔しくない?」
(支部長)「めっちゃ悔しいですね」
(笹谷)「1台で行きましょう!」
(幹事長)「えっ!?10人もいるのに?」
(笹谷)「ミニバンだから乗れますよ」
笹谷選手のミニバンは僕のミニバンと同型で8人乗りだ。たしかに僕のミニバンは広くて、スキーやキャンプの時に家族4人で仮眠することもできる。1台で行けば1人あたり合計で2000円くらいになる。
(幹事長)「どや?これで同額や」
(テニス)「むむむ」
ということで、違反すれすれの定員オーバー大作戦を決行することにする。
(石材店)「モロ違反してますって」
(幹事長)「どうせ当日になれば、急遽参加できなくなるメンバーが出てきて、定員に収まるって」
これで費用的にも勝者テニス君と同レベルに並んだ難民組であった。
取りあえず作戦は立てたが、今年は参加者が多くて臨時船にあぶれた人も多いようだから、定期便だって油断していては乗れないかもしれない。高速船ほどではないにしても、フェリーだっていっぱいになるかもしれないから、早めに並ばなければならない。しかし、JRで丸亀からくるトラ2号は、始発に乗っても高松駅に着くのはフェリー出港の20分前だ。中山選手に至っては、出港10分前に着くJRしかない。これは困った。
ここでトラベル恵子の登場だ。
(笹谷)「なんでトラベル恵子っていう名前なんですか?」
(幹事長)「トラベル関係の仕事をしている恵子だからじゃ」
旅行代理店業界では知らない者はいないというトラベル恵子さまのご尽力により、フェリー乗船の事前一括予約をすることができた。これでみんな出港ギリギリに来ても大丈夫だ。しかも料金は後払いだ。
(笹谷)「すごいですねえ。トラベル恵子さんに頼めば、何でもありですか?」
(幹事長)「業界の女帝だからな。知ってるか?僕ら7人全員が落選した東京マラソンに、
この2人はきっちり当選したんよ」
(笹谷)「そ、そこまで出来るんですかっ?」
(トラベル)「違いますって。あれは偶然ですって」
(幹事長)「僕ら7人は全員落選して、彼女らは2人とも当選するなんて、確率的にはあり得ないだろう?
世の中、何にでも裏はあるものよ」
ただし、中山選手は、10分前にJR高松駅に着く便で来ると、港までの移動時間を考えれば、あまりにもリスキーなので、自転車で来ることとなった。
(幹事長)「10kmくらいあるけど、大丈夫?」
(中山)「ふっ。軽いウォーミングアップですよ」
トラ2号は20分の乗り換え時間があるからJRで来てもOKだ。高松郊外に住むトラベル&PRコンビとテニス君は、トラベル恵子の車に乗り合わせて港へ来る。その他のメンバーは、そんなに遠くないので、自転車かランニングかウォーキングで港へ来ることとなった。
さて、いよいよレースまで1週間を切った月曜日に、笹谷選手が苦しんでいる。
(幹事長)「どしたん?」
(笹谷)「子供の運動会でリレーに出て、筋肉痛なんですよ」
笹谷選手の地区はレースの1週間前に小学校の運動会があったのだ。
(笹谷)「急にリレーに出てくれと言われて準備運動も無しに走ったのが良くなかったみたい。
ほんの短い距離だから、まさか筋肉痛になるとも思わなかったなあ」
しかし、この時点では深刻には考えてなかった。たかが筋肉痛だ。1〜2日すれば治るだろう。ところが、日が経つに連れて治るどころか、ますますひどくなっていく。
(幹事長)「それって、もしかして肉離れとか?」
(笹谷)「そんな感じですね。簡単には回復しそうにないですねえ。無理してマラソンなんかしたら、再起不能になりそう」
読者の誤解が無いように言っておきますと、笹谷選手はマラソンのみならず、剣道の達人でもあり、日頃から体は鍛えているスポーツマンだ。それなのに、小学校の運動会で走っただけで肉離れだ。歳をとってくると、日頃使わない筋肉をいきなり使うのは故障のもとだなあ。
(笹谷)「レースの前日に運動会がある人が多いけど、みんな気を付けてね!」
(幹事長)「僕、パン食い競争に出るんだけど」
(笹谷)「首の筋肉に気を付けてください」
笹谷選手が出られなくなったので、急遽、僕が車を出すことにする。
(幹事長)「車で行くことになったから、一緒に乗り合わせたい人がいたら、途中で拾ってあげるよ。
でも、みんな自転車や徒歩で行くから、もういいよね」
(矢野)「えっ?車で行くんですか?ぜひ乗せていって下さい!」
(ブタ2)「じゃ、私も!」
(ライオン)「私も、わたしも!」
(支部長)「わたくしも!」
(幹事長)「こらーっ!おまいら、ちょっとは遠慮せんかっ!」
前日の運動会では、パン食い競争は問題無かったが、綱引きでエキサイトしてしまい、若干、腰に不安を抱え込んでしまった私だが、普段より2時間も早起きして準備万端にして、矢野選手を待つ。矢野選手は、うちより少し遠方なので、彼がうちへ自転車で来て、僕の車に乗っていく。次はライオンズマンションでライオンを拾う。一応、トレーニングウェアを着ている。続いてブタズマンションでブタ2号を拾う。ブタ2号は、どう見ても今からマラソン大会に行くっていう感じじゃない。
(幹事長)「ううむ。どう見ても、普通のお出かけスタイルにしか見えないんだけど」
(ブタ2)「えっ?そうですか?こんなもんですよ」
(幹事長)「どう思う?」
(ライオン)「さすがに、ちょっと、気合いが入ってないような・・・」
(ブタ2)「ぶひっ!」
最後に支部長を拾いに行く。
(幹事長)「支部長はいつもウォーキングで港まで行ってたよねえ。
ちょうど良いウォーミングアップじゃなかったの?」
(支部長)「行きはちょうどいいウォーミングアップになるんだけど、帰りがきつくてねえ」
港に着くと、既にトラベル&PRコンビが来ている。
(幹事長)「テニス君は?」
(トラベル)「臨時船乗り場に捨ててきましたよ」
同じ高松港と言っても、臨時船が出る場所は少し離れているので、最初からいきなり仲間はずれだ。
しばらくすると中山選手も自転車でやってきた。最後に仕出屋のいとはん(元トラ2号)もギリギリでなんとか滑り込んできた。
(中山)「なんですか、仕出屋のいとはんって?」
(幹事長)「実は彼女は丸亀の由緒ある某仕出屋の跡取り娘なのだよ」
(支部長)「トラ2号のコードネームはやめるの?」
(幹事長)「いとはんの方が、なんとなくかっこよくない?」
(ブタ2)「ぶひぶひっ、じゃあ私のコードネームも変えてくださいよ。ブタ2号って、なんだかやだやだ」
(幹事長)「元祖ピッグ1号もイノブタに改名したいって言ってたなあ。じゃあイノブタ2号は?」
(ブタ2)「・・・ブタ2号のままでいいです」
これで難民組9人全員集合だ。フェリーに乗り込むと、予想以上に快適な客席だった。シートは広くてゆったりしているし、雑魚寝できるスペースも広い。自動車は満載だったけど、それでも客席には余裕がある。
(支部長)「臨時船より、よっぽどいいじゃない」
(幹事長)「ほんとっ!こんなにゆったりできるなんて、涙が出ちゃう」
臨時船もフェリーボートだけど、考えてみたら、古くなって利用されていない船を臨時に借りている船だから、もともと設備は古くて良くない。そのうえギュウギュウ詰めだから、定期便の方が断然すばらしい。
(支部長)「ところでトラベル&PRコンビさんは、ホノルルマラソンを2回も完走したんでしょう?
結構、トレーニングしたんですか?」
(トラベル)「いえいえ、ちょっと歩いたくらいですよ」
ここでウォーキングフリークの支部長の目が怪しく輝く。
(支部長)「なに?歩いた?どれくらい?」
(トラベル)「フルマラソンを走るんだからって事で、42kmくらい歩こうかって」
(幹事長)「よ、よんじゅうにきろも歩いたん?ひえ〜。どこを?」
(トラベル)「家を出て、ぐるっと讃岐平野を」
(支部長)「私も100kmウォーキングの前に、試しに高松から金比羅さんまで往復しましたがな」
(幹事長)「あり得なーいっ!」
100km歩くってのも僕の理解をはるかに超えているけど、それに備えて高松から金比羅さんまで往復するなんて、何を考えているんだろう。
(PR)「私たち普段からよく歩くんですよ。映画に行くときは、いつも一緒に歩いていくんですよ」
読者のみなさんの誤解が無いように解説しますと、トラベル&PRコンビの自宅から映画館までは、どう見ても10kmはあります。
(幹事長)「10km歩いて映画見て、また10km歩いて帰るの?」
(PR)「普通ですよねえ」
(支部長)「うん、普通ふつう」
いかん。トラベル&PRコンビと支部長はウォーキングで意気投合してしまった。
いつもは辛い奴隷船での船旅なので、早く着いたらいいなあ、なんて思いながら、なかなか着かないのでイライラするけど、今回は逆に、あっという間に着いてしまった。
(支部長)「いや、実際にかかった時間が短いですがな」
臨時船は1時間半もかかるのに、定期船は1時間で着いてしまうのだ。距離はほとんど同じなのに。やはり臨時船は老朽化しているのか?
ミニバンの定員を約1名上回る9人が乗り込み、島に上陸するやいなや現地に向かう。助手席には、当然、小豆島一周100kmウォークを制覇した支部長がナビゲーターとして乗り込む。移動時間が多少かかるとは言え、30分も早く着いているので、唯一の勝者であるテニス君より早く現地に着けるだろう。
と思ったのだが、島の田舎道なのに、妙に渋滞が多く、ノロノロ運転が続く。
(幹事長)「こ、これは、もしや・・・」
(支部長)「みんなマラソン組でっせ」
(幹事長)「て事は、現地まで渋滞?」
我々が乗ったフェリーは、池田港着のフェリーでは始発だったんだけど、土庄港に着くフェリーでは、もっと早い便もあったし、瀬戸内海に浮かぶ小豆島のレースのため、参加者の半分は四国外から来るから、本州から来るフェリーでやってきた車も多い。そのため、普段はのどかな島の道路は、参加者の車で溢れているのだ。ただし、受付の時間はたっぷりあるから、焦りはない。
と思っていたら、ようやく現地に着いたら、駐車場がほとんど埋まっているのだ。結構、広い駐車場があるのに、予想を超える車の数。なんとか片隅に5台分くらい残っていて、かろうじて滑り込めたけど、後の車はほとんどアウトだ。どこに停めたんだろう?
受付に行くと、例年にも増しておみやげが多い。Tシャツやタオルに加え、名産の小豆島ソーメンとか醤油とか海苔の佃煮とか、その他、怪しい飲み物とか山と入っている。受付を済ませてテニス君と落ち合う。
(テニス)「遅いじゃないですか。てっきり除け者にされたのかと不安でしたよ」
(幹事長)「ところで、いとはんは、友達も来るって言ってなかった?」
いとはんの友人のサイモンさんは、臨時船のチケットをゲットしていたので、現地で合流しようと言う事になっていたのだ。
(いとはん)「それが寝過ごしてJRに乗り遅れたから、その後、どうなったやら」
(幹事長)「げげっ、それって厳しい状況じゃない?」
と心配していたら、あっさりと現れた。土庄港行きの高速船に滑り込む事ができ、そこからはバスで来たそうだ。1人なら、なんとでもなるのかもしれない。
(テニス)「サイモンさんって、本名ですか?」
(幹事長)「どう見ても違うやろが。純粋な日本人じゃ。お住まいはどちら?」
(サイモン)「林田です」
(幹事長)「農協の辺り?」
(サイモン)「中学校の近くです」
(テニス)「めっちゃローカルな話をせんといて下さいっ!」
11人揃ってワイワイしていると、最後に福家先生が父上と一緒に登場だ。
(幹事長)「相変わらずお元気そうで」
(福家)「いやあ、そんなあ」
(幹事長)「違いますがな。お父上の事ですがな」
(福家父)「うわっはっは。85歳になってしもたけど、まだまだいけるで」
(みんな)「は、はちじゅうごさいですかっ!」
しかも、お父上は、このレースの第一回から30年連続で出場している。今回、80歳以上の参加者は16人。また30回連続出場者は14人。だが、80歳以上で30回連続出場は2人しかいない。あまりにすごい。すごすぎる。ちなみに、もう1人は、地元小豆島の81歳の人だ。
(福家父)「あとで30回連続出場の表彰があるからね」
自分自身を振り返ると、今から30年後なんて、絶対に走れないような気がする。30年どころか、10年後でも心配だ。
開会式が始まるが、とりあえず無視して準備する。準備ったって、レース初参加者も多いので、ゼッケン付けたりチップ付けたりするのにキャアキャア言ってるだけだけど、矢野選手だけは片隅で黙々とワセリンのようなものを足に塗り込んでいる。今回、彼が一番、というか、唯一、真剣っぽい感じ。
(幹事長)「なんか見るからに早そうやなあ」
(矢野)「いやあ、今回はやりまっせ。丸亀マラソンはいまいちだったけど」
いまいちったって、僕よりはずっと早かったのよ。
一方、支部長はテープを取り出している。
(幹事長)「うわ、支部長、本格的にテーピングなんかするの?」
(支部長)「テーピングはテーピングでも、足にマメができないように足の指や裏にテーピングするんですよ。
しませんか?」
これは100kmウォーキングで得たノウハウだそうだ。確かに足の指にテーピングしたらマメはできないかもしれない。でも、なんとなく気色悪そうなのでやめておく。
それにしても天気が良すぎて暑い。普段は滅多な事では帽子は被らない帽子嫌いの僕だけど、さすがにこの暑さでは熱射病になりそうで帽子を被る事にする。ブタ2号は日焼け止めクリームを塗るのに余念がない。確かにブタさんのデリケートな肌には、今日の日差しはきつそうだ。
(支部長)「中山選手は1年半ぶりのレースだけど、調子はどう?」
(中山)「ずうっとトレーニングしてないし、不安の固まりですよ」
彼は、ここ数年、ずうっと1年半ごとにしかレースに出てないから、いつも不安そうだけど、結果的にはいつも悪くない。僕は週に1回とはいえ、割と継続してトレーニングしているのに、ここんとこずうっと負けている。ので、今回も要注意だ。て言うか、勝てる可能性は少ないか。やはりライバルは支部長だけか。支部長には、去年、今年と、丸亀マラソンでは連敗しているが、オリーブマラソンでは勝ち続けている。2つのレースの大きな違いは坂の有無だ。坂の多いオリーブマラソンでは、支部長は決して期待を裏切らず、最後は絶対に歩いてくれる。なので、どれだけ前半でリードされようとも、最後には逆転できるのだ。とは言え、
(支部長)「今回は作戦を変えますよ。いつも終盤でバテるから、今年は最初は抑え気味にいって
最後まで余力を残しますよ」
(幹事長)「どう考えても、その方がいいよな。ところで、まだ毎朝、栗林トンネルを越えて走ってるの?」
(支部長)「いや、それが、3月に坂出支部長になってからというもの、ちょっとサボり気味で」
ふむふむ。良い事を聞いた。丸亀マラソンで惨敗したのは、支部長の早朝トレーニングのせいだ。早朝トレーニングのない支部長なら、勝てる可能性が大きくなった。
(幹事長)「あー、こほん。ところで初参加の君たちは大丈夫かな?」
(ブタ2)「えっ?平気ですよ。大丈夫ですよ」
(幹事長)「早く着替えたら?」
(ブタ2)「えっ?これで走るんですよ。もぐもぐ」
でもブタさんは長い黒のパンツをはいたまんまだ。
(幹事長)「その、お出かけ着のまんま?短パンは持ってきてないの?」
(ライオン)「さすがに、ちょっと、それは暑いかも・・・、もぐもぐ」
(幹事長)「て言うか、君らねえ。栄養補給とはいえ、レース直前に、ちょっと食べ過ぎじゃない?」
(ブタ2)「えっ?」
(いとはん)「えっ?」
(トラベル)「えっ?」
(PR)「えっ?」
開会式も佳境に入り、恒例のオリーブの女王の紹介が始まっている。
(テニス)「あれ、今年はオリーブの女王と一緒に写真を撮りに行かないんですか?」
(幹事長)「いやあ、もうあれは卒業したんだよ。ねえ支部長・・・。あれ?」
(テニス)「支部長と中山さんは、とっくにかぶりつきに行きましたよ」
(幹事長)「しまった。急げっ!」
会場に着くと、ゲストの千葉真子が登場していた。千葉真子と言えば、今年2月の丸亀マラソンのジョギング教室に来たのが記憶に新しい。あの時もハイテンションだったが、今回は一段とハイなテンションで、会場の爆笑を誘っていた。
でも、もっと面白かったのは、運営委員長のじいさんだった。千葉ちゃんと同じようなノリで会場の爆笑を誘っていた。さらに現れたゴミ分別戦隊エコレンジャーの5色の隊員も、気合いの入った格好の割には、あまりの出番の短さに笑ってしまった。
続いて延々とウォーミングアップして、いよいよスタート時間が近づいてきた。
と、その時、支部長と中山選手が嬉しそうな顔をして帰ってきた。
(中山)「うぉほっほ!今年もオリーブの女王と触れ合ってきましたぜ」
(支部長)「うほうほ」
(幹事長)「しもたっ、忘れとった!今からでも遅くないっ!」
慌てて引き返し、オリーブ神殿に強引に駆け上り、強引にオリーブの女王を捕まえて記念写真を撮らせて貰う。去年に続き、今年も2年連続でオリーブの女王の当たり年だ。
オリーブの女王と写真を撮っただけでレースの目的の半分を達成したようなものだが、中山選手(元ダイエー、現ジュビロ)は、さらに千葉真子とも写真を撮りまくっている。
(中山)「幹事長は千葉ちゃんと写真を撮らなくてもいいんですか?」
(幹事長)「うん。今年の丸亀マラソンで一緒に撮って貰ったし」
(中山)「幹事長の中では、千葉ちゃんの存在って、それくらいのもんですか」
(幹事長)「うん。Qちゃんとはレベルが違うのよ」
今回は参加メンバーは多いが、このうちハーフマラソン組は男子部員5人だ。
(支部長)「あれ?2回連続ホノルルマラソン完走のトラベル&PRコンビは?当然ハーフマラソンじゃないの?」
(トラベル)「いやあ、あたしたちって、海外専門だから、国内レースは力が入らないのよ」
(PR)「それに、同じレースで直接対決して支部長に恥じかかせても悪いしぃ」
ちゅうことでトラベル&PRコンビは10kmに出る。
それからブタ2号とライオンも10kmに出る。
(テニス)「みんな頑張ってるじゃないですか」
(幹事長)「て言うか、心配で心配で」
正直に告白しよう。口では「君たちなら10kmくらい軽い軽い」なんて適当な事を言って誘ったんだけど、本当に10kmに出るとは思わなかった。彼女たちの実績と言えば、満濃リレーマラソンで2kmのコースを2回走っただけだ。それがいきなり10kmレースに出て大丈夫なわけがない。それくらいは経験が無くても分かる。て言うか、経験が無ければ、普通、いきなり10kmには出ない。なので、いくら僕がいい加減な事を言って誘っても、せいぜい5kmコースに出るくらいだろうと思っていた。それが2人とも、なーんにも考えずに「じゃ10kmに出ます」なんて言うもんだから驚いてしまったが、今さら「そ、それは大胆すぎるから、せめて5kmにしといたら」とも言えず、ものすごい不安を抱えたまま今日を迎えたのだ。
(幹事長)「ま、でも、少しはトレーニングしてるよね?」
(ブタ2)「えっ?ぜーんぜん。1月の満濃リレー以来、1mも走った事ないですよ」
(ライオン)「私も、ぜーんぜん走ってません」
(幹事長)「走ってないにしても、何か他のスポーツは?」
(ブタ2)「えーと、何かしましたかねえ」
(ライオン)「部屋のお掃除とか、たまにしてますけど」
(テニス)「大丈夫ですかねえ」
(幹事長)「ぜーんぜん大丈夫じゃない。ひじょーにまずい。マジで危ないと思うよ」
(支部長)「みんな無理せんでええからね。救護車に乗る勇気を持とうね」
(幹事長)「支部長は、救護車を拒むプライドを持とうね」
いとはんは、仲間のサイモンさんと5kmに出る。
(支部長)「まっとうな線ですかね」
(幹事長)「はっきり言おう。いとはんの場合は、5kmでも不安で不安で」
僕は問いたい。問いただしたい。一体、君はなぜ走るのだ!?
(支部長)「しっ!せっかく来てるのに、あんまり言うと、ほんまに止めちゃいますよ」
(支部長)「いやあ、でも、満濃リレーの時の苦しそうな表情を思い浮かべると、
再び走ろうなんて気が起きるとは思えなかったんだけどなあ」
厳しい戦いを前に緊張感で硬い表情のメンバー達
いよいよスタートだ。スタートはまずハーフマラソンからだ。その後、10kmコース、5kmコースと続く。
自己申告で速い順に並ぶのだが、今年も去年と同じく、スタート直前に最後のオシッコに行ってたら、スタート時間ギリギリになってしまい、適当に並ぶ。
(支部長)「去年と全く同じ展開。学習能力が無いですなあ」
ま、あんまり前に行っても抜かれまくるだけなので、適当な場所からスタートするのでよろしい。最初は大混雑で歩くようなスピードなので、こういう時は素直に歩く。歩くのもウォーミングアップだ。しばらく歩いて空いてきた頃にようやく走り出す。取りあえずは中山選手(元ダイエー、現ジュビロ)の後を着いていく。テニス君も似たようなペースで走り出す。
コースは、出だしにいきなり坂があり、その後、8kmほどは平坦な道が続き、その後はひたすら坂の連続という、考えてみれば結構トリッキーなコースだが、もう慣れきってしまっているので淡々と走る。
それにしても暑い。いきなり暑い。なので、あまり無理せず走っていく。すると中山選手の後ろ姿が見えなくなる。ま、彼には無理して着いていったって、どうせ負けるだろうから、早々に諦める。最初の4km過ぎの折り返し点で確認すると、矢野選手はとっても速い。とんでもなく速い。彼って、こんな実力者だったのね。一方、実力者であることは証明済みのテニス君は、なぜか僕のすぐ後を走っている。明らかに余裕を持って流している。何かよこしまな考えがあるに違いない。
(テニス)「何があるんですかっ?」
支部長にいたっては、いきなり、とんでもなく遅い。4km過ぎの折り返しなのに、500m以上は遅れている。確かに今日は、最初は抑えていくって言ってたけど、それにしても抑えすぎじゃないの?しかも表情に余裕が無い。抑えているにもかかわらず、最初から苦しい表情だ。この先、よほどの事が無い限り、支部長には勝っただろう。
支部長とは早々に勝負が着いた。一方、中山選手は姿も見えない。だいぶ前に行っているようだ。テニス君にはどうせそのうち抜かれるのが間違いない。そうなると、なんとなく目標を見失ってしまう。いや、いかんいかん。こうなると、あとは自分との戦いだ。大会自己ベストを目指すしかない。しかし、このペースではそれも難しそうだ。このままペースダウンしなければ、なんとかなるかもしれないけど、この暑さの中、終盤のペースダウンは避けられないだろう。しかし、やるだけやってみなければ。
などと葛藤しながらチンタラ走っていると、少し遅れてスタートした10kmコースの選手とすれ違い始める。何かノボリが見えるなあと思ったら、「千葉真子選手」と書かれたノボリだった。千葉ちゃんは取り巻きランナー数人と一緒に走ってきた。思わずハイタッチしてもらう。
それから、我がトラベル&PRコンビとすれ違う。あくまでも一緒に走っている。これは熱き女達の牽制なのか、それとも単なる連れランなのか。2人とも結構いいペースだ。しばらくすると、今度はブタ2号とライオンのコンビがやってきた。ペースはゆっくりめだが、ものすごい余裕をかまして走っている。ううむ。なんとなく、大丈夫そうだ。まずはひと安心。
僕がひと安心していると、同じように彼女らと声を掛け合ったテニス君が、余裕の表情で一気にペースアップして消えていった。こうなると、完全に一人旅だ。しかも、どんどん暑くなる。当然、ペースは上がらない。でも、上がらないけど、そんなに落ちていない。厳しいコンディションの割には、なんとかペースを維持できている。さらに行くと、なぜか一時期、さらに快調になり、妙にペースが上がる。こんな所でペースを上げて大丈夫か不安だけど、ここで抑えても平凡なタイムになるだけなので、勢いに任せて駆けていく。
第二の折り返しで確認すると、矢野選手は異常に速い。これは相当な好タイムだ。テニス君も相変わらず快走している。ところが、中山選手は、意外にも、僕のほんの少し前を走っている。しかも表情は疲れ切っている。これなら抜くのは時間の問題かも。支部長はと言うと、前半、異常なまでにペースを抑えていた割には、さらにペースが落ちており、圧倒的に遅い。遅すぎる。こんな地点で、はやくも脱落確実。
中山選手は、背中が見えてきたので後ろから大声を掛けて驚かしながら抜こうと思っていたら、いきなり給水所で立ち止まって水を飲み始めたので、そのまま抜いていった。もう水は十分だ。
(トラベル)「突然ですが、水って、普通の水じゃないですか。
スポーツドリンクかと思って一気に飲んだら、むせちゃいましたよ」
(PR)「ほんとほんと。スポーツドリンクが常識じゃない?」
(矢野)「そうですよねえ。なま暖かい水なんて飲めませんよねえ」
(ブタ2)「ぶひぶひっ」
などと批判が噴出していたが、あまーい。甘すぎる。君たちは甘い!スポーツドリンクも甘すぎるっ!
(幹事長)「僕も以前はスポーツドリンクでないとガッカリしていたけど、最近は普通の水の方がいい。
スポーツドリンクは甘すぎて、なんとなくベタベタしちゃう。
普通の水ならうがいもできるし体にも掛けられるし」
ただ、普通の水は吸収が悪いので、あんまり飲んでも胃にもたれてしまう。なので、最後の方は飲まない。
(中山)「でも、もう死にそうで、飲まずにはいられませんっ」
中山選手を抜いて、ますます快調に飛ばしていったのだが、さすがに終盤は一気に足に来て、大きくペースダウンしてしまった。やっぱり、いつもこうなるのよねえ。最後の1kmくらいは圧倒的なスパートをかける予定だったが、あっさりと力尽き、結局、平凡なタイムに終わってしまった。
へろへろと帰ってくると、トラベル&PRコンビやいとはんとサイモンさんなんかがお弁当を食べている。みんな涼しい顔をしている。タイムを聞くと、さすがはホノルルマラソン2年連続制覇のトラベル&PRコンビは驚くべき好タイムだった。いとはんも、5kmでは物足りなかったみたい。
(幹事長)「ブタ2号とライオンさんは?」
(トラベル)「ソーメン食べに行ってますよ」
なんとあいつら、平気だったのか。て言うか、後から判明したところによると、我々がヒィヒィ言いながら走っている頃に、ブタ2号とライオンは、早々にゴールしたテニス君と一緒にソーメンを食べまくり、さらにはアイスを食べまくり、おまけに土産を買いまくっていたのだ!
(幹事長)「隊長に対する敬意を忘れたこやつらの行動は党規逸脱ではないのか?」
(支部長)「う〜ん、残念ながら会則には早々にゴールした後の自分勝手で我が儘な非人道的行為に関する
規定は無いですねえ」
中山選手は、と言えば、僕よりだいぶ遅れてゴールした。
(幹事長)「久しぶりに勝ったなあ。うれしーっ!」
(中山)「抜かれたのに気づきませんでしたよ。あんなに迫ってきていたのに抜かれないから、幹事長もバテて、
突然、歩き出しのかと期待してたのに」
(幹事長)「ここ数年、歩いたことはないよ」
(中山)「僕は終盤は歩きまくりでしたねえ」
さらに支部長を待っていたのだが、これが遅い。とてつもなく遅すぎる。もう見捨てて帰ろうかなんて思い始めた頃、堂々と歩きながら帰ってきた。しかも、全然恥じる様子もなく、沿道の僕らに
(支部長)「先にお弁当もらってきといて」
なんて涼しい顔して言いながらゴールへ向かって歩いていった。
平凡なタイムながら、そこそこにゴールした僕はいいとしても、オリーブマラソンが大得意で僕に負けた事がなかった中山選手の惨敗といい、例年にも増して大惨敗の支部長といい、やはり暑さを言い訳にしたいところだが、矢野選手は圧倒的な好タイムだったようだ。これだけ坂が多いコースにもかかわらず、坂が無い高速レースの丸亀マラソンよりはるかに好タイムだった。
中山選手と支部長の泣き言を聞いていると、ソーメンとアイスを食い散らかしたブタ2号とライオンとテニス君が帰ってきた。
(ブタ2)「あーら、お帰りなさーい」
(幹事長)「調子よかったみたいやなあ。全然練習もせずにいきなり炎天下で10kmも走って大丈夫?」
(ブタ2)「大丈夫でしたよー」
(ライオン)「うん。あれくらいなら平気ですねえ」
(テニス)「ふっふっふ。とかなんとか言いながら、ライオンさんは、ゴール直後はロボット歩きしてましたよ」
(ライオン)「な、なにを言うの。証拠はあるの?」
(テニス)「ふっふっふ。このデジカメでムービーを撮ってますのじゃ!」
おおう、確かにムービーには、膝が曲がらなくなったライオンさんが歩いていた。
さて、帰りは、どこの港から帰るかが問題だ。一番近い草壁港からの便は、遅い人がいたから、もう間に合わない。
(支部長)「へえへえ、わるうござんしたねっ!」
うそうそ。実は駐車場から出るのが大混雑になっていて、支部長が早くゴールしていても、とうてい無理だった。その次の時刻の土庄港発の便を目指して帰ることにする。
(幹事長)「テニス君は一人だけ臨時船だったね。おきのどくーっ!」
(テニス)「くやしーっ!なんで僕は勝者だったのに、いつの間にか唯一人の敗者なのーっ?
ん?いや、まて。サイモンさんは本来は臨時船だったよねえ。どうするの?」
(いとはん)「みんなと一緒に帰る?」
(サイモン)「う〜ん、でもせっかく臨時船に乗れるんだから臨時船で帰る」
(テニス)「やった!最後に再逆転!サイモンさんと一緒に帰れる。2人っきりで帰れる。
9回裏代打逆転サヨナラ満塁ホームラン!」
(いとはん)「チケットは忘れずに持ってる?」
(サイモン)「えっ?チケットって?」
(テニス)「臨時船のチケットだよ」
(サイモン)「そんなもん持ってませんよ。もらってませんよ」
一瞬、耳を疑ったが、サイモンは臨時船のチケットを持ってないのだ。
(幹事長)「もらってないって言ったって、参加証と一緒に送られてきたやろ?」
(サイモン)「入ってなかったですよ」
(幹事長)「じゃあ臨時船にはずれてたんじゃないの?」
(サイモン)「えっ?そうなんですか?」
なんと驚いた事に、彼女は臨時船にはずれたかどうか分からないのだ。この大会には初参加のため、臨時船に乗る要領が分からず、チケットが必要だという認識もなかったのだ。
(幹事長)「臨時船には乗れませんっていうお知らせ来なかった?」
(サイモン)「う〜ん、気が付かなかったなあ」
(いとはん)「どうする?」
(幹事長)「ゴネてみる価値はある。可愛い女の子が『チケット無くしちゃったの』なんて甘い声で言えば、
ほぼ確実に乗れると思う」
(サイモン)「え〜、できないよう」
(幹事長)「じゃあ、テニス君、お前のチケットやれよ。で、お前がゴネてみろよ」
(テニス)「そんなん、やですよ。拒否されたらどうするんですか」
結局、サイモンさんも僕ら難民組に入り、一緒に帰ることになった。
(幹事長)「ふっふっふ。それじゃあテニス君、独り寂しく帰りたまえ」
(テニス)「ひえ〜、やっぱり最後は僕だけ敗者なのね。さびしーっ!」
テニス君を置き去りにして土庄港へ向かう。来るときは9人乗ったけど、帰りはさらに1人追加で10人乗った。でも、フルフラットシートにして、体育座りをすれば、あと1〜2人は乗れそうな感じ。
道は相変わらず渋滞気味だ。定刻に着けるかどうか不安。途中の池田港からなら、さらに遅い時刻に出るフェリーがある。このまま土庄港まで行って、結局、乗れなくて、また池田港に引き返しているうちに、池田港発のフェリーにも乗り損ねる危険性がある。
(幹事長)「こんなとき、旅行のプロならどうします?トラベル恵子さん」
(トラベル)「行っちゃえ、行っちゃえ!」
プロの的確なアドバイスに従い、盲目的に土庄港を目指す。港に着くやいなや支部長と中山選手が乗船券を求めて走る。
(幹事長)「しもた。あの2人が一番足が弱ってるんやった。大丈夫かなあ」
足は大丈夫だったようだけど、お金が大丈夫じゃなく、2人合わせて全財産をはたいてかろうじて全員分の乗船券を買ってきてくれた。
帰りのフェリーも、とても快適。シートはゆったりしているし。潮風に吹かれながらダベっていると、あっという間に高松港に着く。僕らの船よりだいぶ前に出航した臨時船も、ちょうど同じ頃に着いた。総合的に考えると、やっぱり臨時船より、定期便に車ごと乗っていくのが快適だ。
(幹事長)「来年からは、テニス君以外は、最初っから臨時船は申し込まずに行こう!」
(テニス)「僕も難民組に入れてくださいよっ!」
レースの4日後。反省会を催した。
(幹事長)「あれ、人数が一人足りないなあ。誰か来てないの?」
(ブタ2)「ライオンさんが体調不良で来れなかったんですよ」
(幹事長)「えっ?レース直後は調子良かったみたいに見えたけど」
(ブタ2)「違うんですよ。昨日食べた頭脳パンが悪かったみたいで」
(幹事長)「ず、ずのうパン?」
(石材店)「何それ?」
(ブタ2)「えっ?知りませんか?」
(みんな)「知らんっ!」
頭脳パンとは、頭脳粉っていう小麦粉を使ったパンらしい。
(石材店)「それって食べたら頭が良くなるの?」
(ブタ2)「て事になってますけど」
(幹事長)「ライオンさん、最近、何か悩み事があるの?」
(石材店)「て言うか、それ食べて体こわしてたんじゃ、意味ないじゃない」
(幹事長)「これからはライオンさんのコードネームは頭脳パンにしようかなあ」
(トラベル)「次は何のレースに出るんですか?」
(幹事長)「ふっふっふ。よくぞ聞いてくれた。次はこれじゃーっ!」
(矢野)「はい、次のイベントはよんでん陸上部と一緒に走ろう!ですっ」
(トラベル)「それって、正式な陸上部と一緒に練習するっていう意味?」
(矢野)「正式な陸上部が、地元の中学生や高校生を指導するんですよ」
(幹事長)「僕は中学生女子の部に入れてねっ!」
(支部長)「僕も僕もっ!」
(石材店)「おっさんが何を言よんですかーっ!」
(矢野)「いえいえ、大丈夫っすよ。支部長は去年も参加してくれましたけど、みなさん自分のレベルに合わせて
好きなグループに入って走って下さい」
(中山)「えっ、じゃあ、ほんとに女子中学生の部でもいいの?
いや、でも、ぼ、僕は女子高生の部がいいかなあ、うっひっひ」
(石材店)「たぶん蹴散らかされますよ」
ちゅうことで、矢野選手のご好意により、我々、よんでん陸上部と一緒に走ろう!てなイベントに参加することになりました。
(幹事長)「陸上部なんて、ペンギンズが蹴散らかしてくれようぞ!」
(石材店)「さっきと言うてる事が違ってますよ」
みなさん、乞うご期待!
〜おしまい〜
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