第8回 弘前・白神アップルマラソン大会 

〜 練習不足で敢えなく途中棄権 〜



2010年10月3日(日)、第8回弘前・白神アップルマラソン大会が開催された。去年、初めて参加した青森県内唯一のフルマラソン大会だ。
この大会の存在を教えてくれたのは、今年の春まで青森にいたピッグ増田で、彼は一昨年の第6回大会に参加している。その話では、四国のマラソン大会のような厳しい坂もなく、
津軽富士と呼ばれる岩木山を見ながら、赤く色づいたリンゴ並木の中を走る快適なコースだし、ゴールすると美味しい林檎をくれるということで、僕も参加したのだった。
実際に去年、走ってみると、ピッグの言う通り、なだらかな快適なコースで途中まで快調に走れた。これなら一昨年のピッグのタイムを破るのは間違いないと確信しながら調子よく走っていたら、あと5kmという所で、突然、足が動かなくなり、足を引きずるように歩いてゴールしてしまい、惜しくもピッグの記録に手が届かなかった。

(石材店)「敗因は?」
(幹事長)「ズバリ練習不足でしょう!」
(石材店)「でも、それって、いつもの事でしょう?」


確かに、練習不足でなかったレースは、過去、とても少ない。ただ、青森に来てから練習方法が変わったので、練習不足の定義が変わった。四国にいれば冬でもそんなに寒くないから、週末には外を走る。逆に言えば、週末に外を走るから平日は走らない。週に1回だけまとめて走るわけだ。しかし青森は冬は雪で外を走れないから、平日に仕事が終わってからランニングマシーンで走る。ランニングマシーンは発狂者製造マシンと言われるくらい超つまんなくて精神衛生上悪いから、走ってもせいぜい3〜5kmくらいだ。その代わり、週に3回ほど走る。週末は四国に帰省するので走れない。
という事で、以前は練習不足と言えば、週末に走る距離が短い、という意味だった。フルマラソンの前なら、せめて1回に30kmは走っておくべきだけど、せいぜい20kmくらいでお茶を濁してしまい、レース本番では、頑張っても30kmくらいでガクンとペースダウンしてしまうというのが典型的なパターンだ。
一方、短い距離だけど頻度の多い練習方法に変えた青森では、長い距離を一度も走ってなくても、ハーフマラソンなら結構、レース本番で通用したりする。

(石材店)「その成果が大会自己ベスト連続8レース達成なんていうアホな偉業ですか?」
(幹事長)「その話題は忘れてくれ。もう触れたくない」

しかし、さすがにフルマラソンでは、そういう練習方法はなかなか通用せず、去年のこの大会では残り5kmで突然、馬脚を現してしまったのだった。

(石材店)「で、今年は、ちゃんと練習したんですか?してないと思うけど」
(幹事長)「有り得ないくらい、練習しませんでした」


別に、この大会をナメている訳ではない。僕が出るフルマラソンは、春の徳島マラソンと、秋のこの大会の年2回だけであり、随分、前から緊張感を持って心の準備はしてきた。

(石材店)「何なんですか、心の準備って?マラソンなんだから心の準備じゃなくて体の準備をして下さいな」
(幹事長)「ずっと焦りは感じながらも、練習できなかった、という状態じゃな」


ただ、言い訳させてもらうと、今年の夏は異常に暑くて、練習どころではなかったのだ。

(石材店)「それは認めます。でも青森はマシだったんじゃ?」
(幹事長)「いえいえ、青森も空前の猛暑だったのよ」


僕が住んでいる寮にはエアコンが無い。なにもケチって作られたボロ寮ではない。若造どもが住んでいる周辺の寮に比べれば、部屋も広いし設備も立派だ。冬は暖房がガンガンきいて半袖短パンで年中過ごせる。しかし、必要性が無いからエアコンが無いのだ。去年の夏は、全く必要性を感じなかった。それが今年は、暑くて夜、寝られないのだ。窓を開けてもなま暖かい空気が入ってくるだけ。こんな猛暑じゃ練習で走る気力が起きない。7月末のわかさぎマラソンの惨敗も、この暑さが原因だ。

(石材店)「でも、それって、なにも幹事長だけが暑いんじゃなくて、参加者が暑かった訳でしょ?惨敗の理由にはなりませんよ」
(幹事長)「そうなんよなあ。暑さには比較的、強かったはずなんだけどなあ」


なので、暑さは敗因の1つではあるけれど、それよりも、今、
絶不調のど真ん中にあるような気がするのだ。去年から春頃までは絶好調の波が続いていたのに、それが突如として反転したようなのだ。

(幹事長)「もしかして、疲れが溜まってるんじゃないか、って思ったりして、
       あんまり練習しない方がいいじゃないか、って思ったりして」
(石材店)「あまりにも都合のいい解釈ですねえ。そんなに疲れるほど練習もしてないでしょ?
       老化は進んでるかもしれませんけど」

そもそも四国じゃあ10月早々にフルマラソンなんて考えられない。夏場は練習できないから、秋になって走り始め、だんだん距離を延ばしていく訳だ。青森は夏でも練習できるからこそ、この時期にフルマラソンがあるのだ。それなのに、夏が暑くては、通用するはずがない。

なーんて、言い訳は山ほどしたいけど、とにかく、今回はレース前の練習としては、最長でも10kmくらいしか走らなかった。足が重くて、それ以上、走れないのだ。練習の頻度も、せいぜい週2回くらいだし。なので、今回はレース前からタイムは一切、気にしない。完走できればそれでいい。完走だけが目標だ。

同じ青森県内のレースとは言え、青森県は広いので、去年と同じように、前日から弘前市へ行く。去年はホテルを取るのが遅くて、レース会場から1kmほど離れた場所のホテルしかとれず、レースが終わって帰るのに足を引きずって苦労したから、今年は早めに近い場所のホテルを予約してある。

前日に受付を済ませておくために会場へ行く。すると、夜は
前夜祭があると言う。色んなレースで前夜祭ってやってるけど、そういうものに参加したことはない。前日に会場へ行く事がないからだ。

(幹事長)「前夜祭って、何やるんですか?」
(係の人)「立食パーティーです」


て事で、どうせ夕食は食べないといけないから、参加費は1000円だし、試しに出てみることにした。参加者は関係者らしき人と一般参加者が半々で、一般の人は全部で100人くらいかなあ。

会社の仕事で大きな会議の立食パーティーに行くと、めっちゃ豪華な食べ物が並んでいて、全部、食べきれず悔しい思いすらする事が多いが、今夜の立食パーティーの食べ物は、ごく普通の食べ物だった。もっとも、レース前夜に消化の悪い豪華メニューを食べる気は無いので、それで十分だ。ビールなんかは飲み放題だったけど、これも控えめにしなければいけない。

知った人もいないので、その辺の人と適当におしゃべりする。青森市内から来たっていう人は、当日の朝でも来られるけど、前夜祭ってのに一度出てみたかったから、という理由で来ていた。横浜から来たっていう人は、本職はトライアスロンだけど、マラソン大会も全国のに出ているようだ。
そして、すごいのは、
八戸市のおじいさんだ。時間があるから、全国各地のマラソンに出ているそうで、つい1週間前にはサロマ湖100kmウルトラマラソンに出たばかりとのことだ。まだ疲れが残っているので、今回は10kmの部に出たそうだが、後から聞くと、シニアの部で堂々の6位入賞だったそうだ。四国八十八ヵ所巡りもしていて、今年は秋に、愛媛県内のマラソン大会に出たついでに最後のお寺をお参りして八十八ヵ所をフィニッシュするそうだ。
最初は知った人もいなくて居心地悪かったけど、色々と話していると、たまにはこういうのに参加するのも面白いと思いました。

前夜祭で知り合った高速高齢ランナー(左)と幹事長(右)

(石材店)「女性の話が出てきませんが」
(幹事長)「女性も少しは来てたんだけど、なかなか恥ずかしくて話せなかった」
(石材店)「嘘ですね!」

去年は前夜にカーボローディングのつもりで大盛りラーメン食べてお腹を壊し、元も子もなくなったが、今年は控えめに食べ、控えめに飲み、早めに就寝したから、コンディション的には悪くない。

翌朝も気持ちよく目覚める。ホテルは朝食付きだったけど、消化の悪そうなおかずは食べず、ご飯をメインに頂く。ホテルから会場はすぐ近くなので、走る恰好に着替えて、スタートギリギリにでかける。

(石材店)「相変わらずウォーミングアップは無しですね」
(幹事長)「特に今回は無駄なエネルギーの消費は極力控えねばならんからなあ」


ギリギリにスタート地点に並び、膝と腰の関節だけは十分に回しておく。走ってると膝に違和感を覚えたりするのは昔からあるけど、最近、老化のせいか、腰に違和感を覚える事が多くなった。膝も腰も、どっちも深刻なものではないけど、ちょっと気持ち悪い。

今回は、タイムは一切狙わず、完走できればラッキーくらいの気持ちなので、後方からのスタートにした。下手に前方に位置取りして、周囲のランナーに引きずられるとオーバーペースになるからだ。できるだけ前半はペースを抑えて走らないと、絶対に終盤で潰れるのが目に見えているからだ。て言うか、終盤どころか、わかさぎマラソンのケースみたいになったら、中盤で潰れるかもしれない。

今日の天気予報では天気は下り坂。スタート時は曇りだけど、そのうち雨が降るとのことだ。なんとかゴールするまで持ってくれればいいんだけど。去年も雨が降ったり止んだりで今イチの天気だった。ただ、今年の小豆島オリーブマラソンでは雨のせいで気温が低く、オリーブマラソンとは思えないような好記録を出せたので、それ以来、雨はむしろ歓迎したいくらいだ。とは言え、雨で寒くなると辛いので、一応、雨合羽代わりの穴あきビニールゴミ袋をポケットに入れておく。オリーブマラソンの時にも被って好記録を演出した秘密兵器だ。去年のこのレースでは、ビニール袋を持ってきてなかったので、雨が少し寒かった。それから、普段なら被らない帽子も被る。多少の雨なら帽子だけで耐えることにする。

いよいよ9時にスタート。スタートした直後は、しばらく下り坂がある。ここで調子に乗って飛ばしたりすると、絶対に後で足に負担が出てくるので、できるだけ軽く走る。今日の体調を見るために、最初は決して無理はせず、自然体で走るのだ。ところが、適当に走っているはずなのに、意外に1kmごとのラップは、そんなに遅くもない。これは判断が難しいところ。もしかして奇跡的に体調が良くなったのか。それとも、単に周囲に引きずられているだけなのか。しかし、結局、いつものように、もしかしてひょっとして好タイムが出る日なのかもしれない、なんて期待して、敢えてペースを落とさす、そのまま流れに身を任せて走る

市街地を抜けてアップルロードという道に入ると、両側にはリンゴ畑が広がり、赤い実をいっぱい付けたリンゴの木が並ぶようになってくる。この辺りは、多少のアップダウンがあるが、周りの景色を見ながら走れば、全く苦にならない。
一方、恐れていた雨は、早々に降り始める。降り始めると、かなり雨脚が強くなるかもしれないっていう天気予報だったので、ためらわずにビニール袋を被る。もちろん、少し走りにくいけど、寒さで体が固くなるよりマシだ。なんちゅうても寒さには弱いから。

10km地点までは、リンゴ畑の間を走りながら、時々坂も混じる曲がりくねった道で、10km過ぎのハーフマラソンの折り返し点を過ぎると、岩木川に並行した道をひたすら上流に上っていくようになる。なので、非常に緩いとはいえ、ずうっと微かな上り坂が10km続く。そのせいかもしれないが、10kmを過ぎた辺りから、さすがに徐々にペースダウンし始める。ただ、それでもそんなに大きく落ち込みもしない。
コースが単調になり始めるので、この辺りでウォークマンを付ける。長時間をひたすら我慢しながら走るフルマラソンでは、ウォークマンが無いと、うんざりしてしまう。

徐々にペースダウンしながらも、なんとか大崩することなく淡々と走り続けて21kmの折り返し点まで来る。給水ポイントでは、水だけでなくバナナやリンゴなんかの食べ物も支給してくるので、できるだけこまめに飲食する。僕らのような遅いランナーにとっては、フルマラソンは長丁場で、何か食べないと空腹になって力尽きるからだ。

しかし、食べ物を補給しながらも、ペースはどんどん落ちていく。急激に落ちていく。25kmを過ぎた辺りからは、一生懸命走っているつもりなのに、よっぽどペースが落ちているらしく、他のランナーに次々に抜かれていく。
そして、30kmを過ぎたところで、もう限界。足が痛くて走れなくなる。歩くことはできるけど、再び走る事ができない。去年は、残り5kmの地点で突然、足が動かなくなり、歩くしかなくなった。少し歩いては少し走っての繰り返しになった。しかし、それは残り5kmだからできたこと。今日は、まだ12kmもある。こら、絶対に無理じゃないの、と思いながらも、取りあえず1kmは歩いてみた。しかし、全然回復しそうにない。この後11kmもひたすら歩くのは無理。というか、精神的に無理。て事で、何のこだわりも無く、あっさりと途中棄権を決める

(石材店)「あまりにも根性が無いというか、プライドが無いというか」
(幹事長)「勇気ある撤退と言ってくれ」
(支部長)「一度、途中棄権すると、癖になるでしょ?」
(幹事長)「もう失う物が無い強みだわな」
(石材店)「それは弱みじゃないですか!」


途中棄権して迎えの車を待っている間も、雨は相変わらず降り続き、走るのを止めた体には冷たく、体の震えが止まらなくなってくる。もちろん、文句を言えた筋合いではない。ようやく到着した車に乗せてもらうと、寒さからも解放され、足の疲労も急速に回復してくる。同じように車に乗った他のおっさんが「情けないけど、天国じゃあ」って叫んでいた。まさに、その通り。すごすごと会場に戻ると、単に足が痛くなって途中棄権しただけなのに、強制的に医師の診断を受けさされる。

(石材店)「恥ずかしくないんですか!」
(幹事長)「さすがに、ちょっと恥ずかしかったです」


それでも、この大会は途中棄権者に優しくて、ゴールもしてないのに美味しい完熟リンゴをもらったし、足にスプレー吹いてくれたり優しくしてくれた。ふと後を見ると、ベッドに横たわって酸素吸入してもらっている人が3人もいた。ううむ。あれくらい頑張らねばならないのかもしれないなあ。リンゴは、悲しくも美味しかった。

係のお姉さんに「大丈夫ですかあ?」なんて気を遣ってもらいながら、救護テントを後にするが、そもそも、単に練習不足で足が動かなくなっただけなので、既に疲労は回復してしまい、足取りも軽く、ホテルに戻る。

(石材店)「そんなに簡単に回復するようじゃ、そもそも途中棄権する資格は無いんじゃないですか?
       加古川マラソンの時は、死にそうになりながらも歩いてゴールしたじゃないですか」
(幹事長)「さすがに僕も、それは思った。もしかして完走できたんじゃないか、って」


敗因は、もちろん、練習不足以外の何物でもないだろう。序盤をもっとスローペースで走っておけば、もうちょっと持ったかも知れない気がしないでもないけど、たぶん五十歩百歩だっただろう。所詮は、終盤は力尽きたと思う。
ただ、最初から絶対に完走する気でいれば、たぶん、あんなにあっさりと歩き始めることもなく、仮に少し歩いても、また走り始めたような気もする。でも今日は、レース前から練習不足のために完走できないかもしれない、っていう思いこみがあったし、超弱気になっていたから、ちょっと足が痛くなったくらいで、もう駄目だと思いこんだのかも知れない。マラソンはレース終盤になると、非常に精神的なものに左右されるもんなあ。それにしても、情けないことでした。

さて次は、庵治マラソンです。さすがに12kmのレースなので、途中棄権することはないだろうけど、この調子じゃあ、好タイムは望めそうにないなあ。女子部員に負けないという最低目標すら、危ういかも。


〜おしまい〜




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