第3回 大阪マラソン2013
2013年10月27日(日)、第3回目となる大阪マラソン2013が開催され、幹事長の私がペンギンズを代表して出場してきた。3年目にして抽選に当選して出場できたのだ。
(石材店)「今年は東京マラソンに続いての当選ですよねえ」
(幹事長)「これは奇跡の年と呼ぶしかないぞ」
今回の大阪マラソンは定員28000人に対して14万人以上が申し込み、競争率は5倍を超えていた。だから平均すれば5年に1度くらいの当選になる。なので3年目に当選っていうのは、まあ平均的なところかなあ、とは思う。ただ、しかし、今年は2月に、競争率10倍超の東京マラソンにも当選して参加しているので、当選確率1/10の東京マラソンと当選確率1/5の大阪マラソンに同じ年に出場できる確率は1/50で、つまり50年に一度の快挙となる。もう死ぬまで無いだろう。
(石材店)「当分はどっちも出られないって事ですよね」
(幹事長)「まだまだ京都マラソンと神戸マラソンがあるぞ」
2大レースに連続して出場できるなんて奇跡だし、嬉しい限りではあるけれど、一方で「同じ年に続けて出るなんて、なんかもったいないなあ」という気持ちもある。10年とか5年に一度しか出られないレースなんだから、1年に1レースで十分だ。どうせ来年はどっちも出られないんだろうから、それなら毎年1レースづつ出た方が楽しいよなあ。今年の当選した権利を来年に持ち越せれば良いんだけど。
などと贅沢な不満もあるが、出られる時に出ておかなければ、という気持ちもある。いつ故障して走れなくなるかも知れないし。
大阪マラソンの魅力は、東京マラソンと同じく、普段なら絶対に走れない大都会の街中を走れるということだ。神戸マラソンや京都マラソンと言ったシティマラソンも魅力は同じだ。ただし京都マラソンは今年、出場した支部長によると、市街地を走るシティマラソンというよりは、周辺部の小山を走る田舎のマラソンっぽかったらしい。神戸マラソンは市街地だと思うけど、東京や大阪のような高層ビル街という感じでも無さそうなので、大都会のど真ん中を走るシティマラソンと言えば東京と大阪だろう。
スタート地点は大阪城だし、御堂筋を往復するし、大阪ドームの前も通るし、通天閣の側も通るし、なかなか魅力的なコースだ。ただ、最後の方は中心部からはずれて南の方へ行ってから臨海部の埋め立て地帯に入ってゴールするので、ちょっとつまんないかも。これは東京マラソンと同じで、東京マラソンも新宿の都庁前をスタートして皇居の側を通り、銀座を往復するし、東京タワーや浅草寺やスカイツリーを見ながら走る魅力的なコースだったけど、最後は埋め立て地に入ってゴールだった。ゴール後の混雑なんかを考えると、市街地では対応が難しいからかもしれない。
東京マラソンのコースとどちらが華やかなのか、というのは走ってみないと分からないが、東京マラソンと違うのは、季節が良いってところだ。もちろん、タイムを考えればマラソンのベストシーズンは冬だろう。シリアスなマラソン大会は多くが冬に開催される。しかし、私のような不真面目なランナーは、冬は寒いのであんまり好きじゃない。タイムだけを考えれば2月の丸亀マラソンなんかは良いタイムが出るけど、好みで言えば、7月末の酷暑の汗見川マラソンなんかの方が楽しい。
なので、厳冬期の2月末の東京マラソンよりは10月末という一番優しい季節の大阪マラソンの方が良い。毎年、この時期は庵治マラソンに出ているのだが、庵治マラソンは天気が悪くても結構、汗だくになるし、天気が良いと体感的には夏になる。なので、大阪マラソンも天気が良いと暑いだろう。だが、寒いよりは暑い方がマシだ。庵治マラソンのように短い距離なら暑くても寒くても別にどっちでも構わないが、フルマラソンになると寒いのは辛い。フルマラソンの場合、前半は体が動いているから熱も出てきて暑くなるが、後半は疲れ切った体を引きずって歩くように走るので、体がどんどん冷えてくる。なので寒い時期のフルマラソンは辛い。今年の東京マラソンは、暖かいカッパ姿で出た上に、天気が良くてポカポカ陽気だったので、寒いどころか、むしろ暑くて汗びっしょりになったけど、それはたまたまだ。青森時代に毎年出ていた弘前アップルマラソンは10月初旬の開催にもかかわらず、北国なので終盤寒くなって辛かった。
大阪なら10月末開催ってのが一番良い。ベストシーズンだ。終盤に力尽きてトボトボ歩いても快適だろう。
ところで、大阪マラソンの参加料は10000円だ。ちょっと前の感覚から言えば、マラソン大会ごときに10000円なんて高い。ほんの少し前まで、マラソン大会の参加料はせいぜい3000円くらいだった。ただ、田舎のマラソンに比べれば大都市マラソンは参加する価値も高いし、東京マラソンも10000円だったから同じだ。12000円に値上がりした京都マラソンに比べれば安い。
と思ったら大間違いで、なんとチャリティ募金と称して2口以上(1口500円)が強制的に徴収される。チャリティ募金て、チャリティなんだから任意じゃないのか?それを強制徴収だなんて、言葉が間違っていると言うか、はっきり言って詐欺だ。さらに、なんと事務手数料として500円も徴収される。普通、事務手数料なんて参加費の中に含まれるんじゃないのか?これらを合わせると、結局11500円になってしまい、京都マラソンと同レベルになってしまった。
関西のマラソン大会は高いなあ。関西商人やなあ。あこぎやなあ。
ホテルの予約
大阪マラソンの受付は、東京マラソンど同じように、前日までに済ませなければならない。最近のマラソン大会は当日の朝だけでなく、前日も受付できる大会が多くなってきたが、大都市のマラソンは当日の受付がダメって場合が多い。なぜだろう?なぜかしら?たぶん人数が多すぎて、当日の朝では大混乱になるからだろうけど、遠方から来る人にとっては負担感が大きい。
(石材店)「遠方の人はレースのために前日から来ないと間に合わないから、同じでは?」
(幹事長)「いやいや、加古川マラソンとか明石海峡大橋マラソンとか、早朝に出発して間に合ったじゃない」
東京は無理としても、関西方面なら早朝に出発すれば間に合うから、当日受付をして欲しいな。東京だって、前日受付をするためには、あんまり遅く着く訳にはいかないから、前日も潰れてしまった。やっぱり当日受付が望まれる。
てことでホテルを予約しなければならない。いつも出遅れる私としては珍しく、今回は素早く宿泊場所確保に動き、ネットで調べてみた。すると、やっぱり大都会だ。なんぼでもある。東京マラソンの時も、何万人ものランナーが参加するからホテルの部屋は無くなるんじゃないかって思ったけど、もともとホテルの部屋数が多いし、参加者は多いと言ったって、大半は自宅から来られる人だ。だから、そんなに慌てる必要も無かった。大阪も同じで、ホテルの部屋数は多いし、参加者も大半は関西圏の人だから、部屋はなんぼでもあるってことだ。東京なら土地勘もあるから、どの辺りの場所で宿泊すれば移動が楽かが分かるけど、大阪はあんまり土地勘が無いため、どこに泊まれば良いのかよく分からない。「ま、焦る必要も無いし」ってことで、しばらく放っておいた。
その後、9月に入ったので、さすがにもう予約しておこうと思ってネットで探すと、相変わらず山ほどホテルが空いている。しかも、妙に安いホテルが山ほどある。東京なら一番安いのはカプセルホテルだが、それでも3000円はする。普通のビジネスホテルなら、辺鄙な場所にある一番安いホテルでも5000円はする。ところが大阪は1000円程度からある。しかもカプセルホテルでもないみたい。一体こりゃ何じゃ?
何が何やら分からないので、片っ端から場所と条件を確認していくと、極端に安いホテルは西成区に集中していることが分かった。これはもしかしたら、って思って調べてみると、なんと釜ヶ崎(あいりん地区)のドヤ街じゃないか。ドヤ街で労務者が住んでいた簡易宿所(通称ドヤ)が時代の流れでビジネスホテルっぽく模様替えしているのだ。で、いくら模様替えしたとは言っても、元々3畳トイレ無しといった狭い部屋なので、料金は安い。しかもエリアとしてイメージが悪いから極端に安くしているのだろう。こりゃあ、ちょっと怖い。いくら安くても、こら怖い。
てことで、このエリアのホテルを避けて探すと、なんと、逆にかなり高いホテルか、かなり辺鄙なホテルしか残っていない。なんと、そうだったのか。まだまだいっぱい残っていると思っていたけど、それはドヤ街のホテルであり、僕らが普通泊まるようなホテルは、もうスッカラカンになっていたのだ。がーん。
当然ながら悩む。高いホテルにするか、それとも辺鄙なホテルにするか。悩みに悩んで、ドヤ街にした。
(石材店)「そう来ましたかーっ!」
(幹事長)「ものは試しだからな」
そう。ものは試しだ。人生、何事も経験だ。こういう機会でもない限り、なかなかドヤ街に泊まろうとは思わないだろう。怖い物見たさで一度くらいは泊まってみたい。いくらドヤ街と言っても、日本だからそんなに治安が悪い訳でもないだろう。交通の便も良いし。
てことにしたが、それでも一番マシそうなホテルにした。料金もエリアでは一番高い。ま、高いと言ってもしれてますけど。近辺のホテルの大半が和室3畳とかにせんべい布団を敷いた部屋だけど、一応ベッドがある。行ってみてのお楽しみだ。
前日の移動
前日受付は夜の7時半までなので、高松をお昼過ぎに出る高速バスに乗って出発する。これまで大阪行きのバスには何度も乗ったことがあるけど、たいていは空いている。なので、今回も高速バス乗り場で「次の便のチケットください」って言ったら、なんと満席。結局、1時間近く待つことになった。土曜日のお昼頃に出発したことはなかったけど、この時間帯は混雑してるんだ。「帰りはどうしますか」なんて聞かれたから「時間が決まってないから予約しない」って言ったら「日曜日の夜は既に満席だから、適当な便を予約しておいた方が良いですよ」なんて言われたので、何があるか分かんないから、空いている便のうち、一番、遅い便を予約した。体調がイマイチだからゴールは遅くなるかもしれないし、帰りの駅が混雑するかも知れないし。
バスの中では、敬愛する金哲彦さんが書いたマラソン本を再度読み返す。たいてい、こういう本は、本番の数ヶ月前からの取組について書いてあるから、前日に読んだところで一夜漬けにもならないんだけど、何か注意しておく点がないか、再度チェックだ。で、しつこく書いてあったのが「序盤は我慢してペースを抑えろ」ということだ。これは、今さら言われなくても、耳にタコが出来るほど聞いてきたことだ。しかし、いくら聞いていても、いざ本番になるとアドレナリンが爆発してしまい、レース序盤は周囲につられて一緒にハイペースでダッシュしてしまい、終盤に大きなツケが返ってくるのだ。同じ過ちを何十回も繰り返してるんだけど、本番になると、どうしても「いや、今日だけは例外的に調子が良さそうだ。今日だけはいけるかもしれない。こんなに調子が良い時に記録を狙わなければ記録を狙える時なんて無いじゃない」なんて思って頑張って走ってしまい、結局、終盤に力尽きるのだ。これは、何回失敗しても身にしみない。本当に学習効果が無い。はっきり言ってアホだ。
だけど、今回は、風邪を引いて体調が悪いので、「今日だけは調子が良さそうだ」なんて変な勘違いをすることはないだろう。風邪は2週間ほど前から引いていて、サイクリングしまなみ2013の記事にも書いたけど、N藤さんと全く同じ経過をたどり、どんどん悪化して、まだ喉の痛みが治らない。風邪引き状態で雨の中のサイクリング大会に出たんだから当然なんだけど、風邪の調子はますます悪化して、喉は危機的な状況に陥った。でも、今年の風邪は、喉はやられるものの熱があまり出ないもんだから、何度、会社の医務室へ行ってもあんまり薬はくれず、いまいち改善していない。熱があんまり出てないから、そんなにしんどい訳ではないが、本調子からはほど遠い。なので、何があろうとも、今回は「序盤はできるだけペースを抑える」を徹底することにした。
バスは夕方に大阪のなんばに着き、地下鉄を乗り継いで受付会場である南港のインテックス大阪へ行く。ここは当日のゴール会場にもなる。国際展示場とのことなので、東京マラソンのゴール会場だった東京ビッグサイトと同じような施設か。地下鉄中央線の終点コスモスクエアから歩いて10分程度の場所にあった。
東京マラソンと同様に受付場所へ入るには参加証と身分証明証が必要で、会場は混雑しているかと思ったけど、東京マラソンの時ほど混雑はしてなくて、スムースに受付できた。受付でゼッケンやシューズに着けるチップをもらい、それから記念品のTシャツをもらう。このTシャツは優れものだった。東京マラソンも含め、他のマラソン大会の記念のTシャツは、生地は良いにしても、ただのTシャツであり、デザインもパッとしないから、自宅の押し入れで山積みで眠っている。しかし、今回のTシャツは脇腹の部分にはメッシュが入っていて、カットもランニング用にデザインされた専用Tシャツで、素晴らしく格好良い。マラソン大会でもらったTシャツが格好良いなんて事は非常に珍しい。これは明日、さっそく着ようと思う。
受付が終わると、大きな展示場を使って色んな企業がブースを出してお祭り騒ぎしている。色んな計測をしてくれたり写真を撮ってくれたりしてるんだけど、人が多くて、やたら行列ができているから、ことごとくパスする。ランニング関係の物品販売も行われており、ウェストバッグを物色する。今回、持ってきたウェストバッグは、ちょっと大きめなこともあり、腰でブラブラして安定性が悪い。なので、ちょっと小ぶりになるが、体にピッタリフィットしてぐらつかないものを買った。明日はこれにゼリーなんかを入れて走ろう。
ホテルへ突入
受付も終わったので、ホテルがある釜ヶ崎地区の北にある新世界方面に出かける。ここには通天閣もある。通天閣なんて、もう何十年も見ていない。久しぶりだ。
地下鉄の駅から降りて外に出ると、いきなり目の前に通天閣がそびえ立っていて驚いた。ただ、通天閣へ向かう商店街は寂れていて、多くの店のシャッターが閉まっている。もしかしたら、今日はもう営業が終わっただけかもしれないが、まだ6時だし、大半の店は潰れているんだろう。ただ、通天閣より南の商店街は飲食店が大半で、結構、賑わっていた。新世界と言えば「ソースの二度づけ禁止」の串カツが有名だ。人気店には長蛇の列が出来ているし、そうでない店も、ほぼ満席だ。でも、マラソン前夜に消化の悪そうな串カツ食べてビールを飲むのはよろしくないので、我慢してラーメンとチャーハンでカーボローディングする。
食事が終わったら、まだ時間は早いけど、取りあえずホテルの様子を見に行く。いよいよ怪しいホテルに突入するのだ。釜ヶ崎なのでドキドキしながらホテルを探したんだけど、さすがに釜ヶ崎地区では一番まともそうなホテルなので、駅から割と近く、辺りの雰囲気も別におかしなところはない。
ただ、玄関先には、自動車の駐車スペースはほとんどなく、なぜか駅前のような大量の自転車が停めてある。まさか、自転車で泊まりにきている訳でもあるまいし、大きな謎だ。玄関には「本日満室」って大きく書いている。そうか、満室なのか。
中に入るとフロントみたいなカウンターがある。恐る恐る「ここフロントですか?」って聞いたら「そうですよ」って対応してくれる。対応はとても丁寧で、拍子抜けするくらい。一体どういう客が泊まっているのかと思って観察すると、どうやら韓国や中国からの観光客が大量に宿泊しているようだ。フロントにも英語、中国語、韓国語のパンフレットや地図がわんさか積まれている。
部屋は5階だったので辺りを見回すが、エレベーターが無い。「エレベーターどこですか?」って聞くと、ずうっと奥の方にあるらしい。で奥へ行こうとすると、まずフロントの横に、靴を脱いで上がる自炊スペースがある。キッチンや小さいテーブルやテレビがあり、まるで普通の家みたいだ。自分で作った麺類をテレビを見ながら食べている人がいる。その横には、パソコンスペースがあり、タダで使い放題だ。ただし、使っている人はいなかった。さらに、その奥には浴場があったりして、一番奥にエレベーターがあった。不思議な配置だ。
5階に上がると、フロア中にトイレの臭いが充満している。共同トイレだから仕方ないか。部屋に入ると、いきなり小さなベッドがある。ベッドと言っても高さ30cmくらいで、まるで床に布団を敷いているような感じ。ベッドの他には小さいテーブルとテレビがあるだけ。でも、そんなに不潔な感じは無いから一安心。
トイレへ行ってみると、洋式と和式の個室が1つづつと、小用が3つ。数としては十分だし、なんと洋式はウォシュレットになっていた。最近はウォシュレットでないと耐えられない私としては嬉しい驚きだ。ところが、なぜか洗面台は1つしかない。これは朝になると混雑するかも。
ホテルのチェックも終わったところで、さて、いよいよ、今回のマラソンツアーのハイライトと言うべき釜ヶ崎探検ツアーに出かけることにする。
ノンフィクション ルポ 釜ヶ崎探検記 |
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(石材店)「マラソンとは全く無関係の話でしたが」
(幹事長)「今回の旅行のハイライトだからな」
(石材店)「結局、好印象を持たれたようで」
(幹事長)「最初は緊張したけど、なかなか落ち着ける町だったなあ」
(石材店)「幹事長って、危ないとこや汚いとこが好きですよねえ」
(幹事長)「たぶん前世がホームレスかインド人やったんやと思う」
最後にコンビニで明日の朝食を買った。これまでマラソン大会の当日の朝食は菓子パンが多かった。甘くてカロリーが高いからだ。でも、金さんの本によると、レース当日の朝食はバナナとおにぎりが良いと褒めちぎっていた。バナナは栄養もあるし消化も早い。おにぎりはパンに比べて腹持ちが良い。てことなんだが、コンビニにバナナは無かったので、おにぎりを2個買って帰る。
ホテルに戻ってくると、同じフロアで若い女性の4人グループとすれ違う。日本人だった。若い女性達がこんなホテルに泊まるなんて、どういう事だろう。貧乏旅行中なのか、それとも僕のように他にホテルが取れなかったのか。
ドヤ街探検から帰ってきたら、かなり疲れてしまった。結構、歩き回って足に疲労感を感じる。左足のふくらはぎが少しつり気味だ。かなり緊張したから、精神的にも疲れてしまった。マラソン前夜に、こんなに疲れてよいものだろうか?
天気予報を見ると、明日の天気は、朝から晴れて雨の心配は皆無だけど、気温が下がり、風も強いって言ってる。雨の心配が皆無ってのは朗報だけど、寒くなるのが怖い。まだ10月末なので、寒いって言っても、たかが知れているとは思うが、今は風邪が完治していないから、寒さが怖い。
レースの朝
レース当日の朝は、早起きした。パンフレットを読むと、スタートは9時なんだけど、スタート地点でのランナー整列は8時35分までとなっている。さらに手荷物を預けるのは8時までだ。東京マラソンでは大混雑を恐れて早起きして出かけたにもかかわらず、あんまり混んでなかったから油断して無意味にブラブラしたせいで、結局、レース前にトイレに行けなかったので、今日は計画的に行動することにした。
現地でトイレの大をするのは、時間切れで用を足せなくなるリスクがあるので、まずは無理してホテルで済ませる。朝早いので、トイレそのものは空いていたが、案の定、1つしかない洗面台は混雑している。僕が歯磨きしている時に、他にも2人、明らかに大阪マラソンに出るランナーが歯磨きをしており、譲り合いながら洗面台を使った。僕と同じように、選択に困って、このドヤ街のホテルにしたんだろう。
部屋に戻って朝食のおにぎりをまず1個食べる。消化を考えて、ゆっくり噛んで食べる。
次は、例によって、何を着ていくか考えねばならない。今日は天気は良いけど、気温が下がるし風も強いって言ってたので、少なくとも長袖のシャツは必要だ。問題は、それ1枚でいいのか、さらに半袖のTシャツを重ね着するか、だ。もし暑そうだったら脱げばいいので、取りあえずは現地までは重ね着していくことにした。半袖Tシャツは、昨日もらった参加賞のTシャツが格好良いから、これを着て走ることにした。Tシャツにゼッケンを着け、シューズにタイム計測チップを付けて、準備万端だ。
まだ早いかとも思ったけど、この安ホテルに居てもつまんないので、ホテルを7時前に出発する。外に出ると、本当に良い天気だ。先週のサイクリングしまなみ2013では大雨に祟られたうえ、その後も、この1週間は台風が次から次へと日本にやってきたせいで、ずうっと雨が続いていたが、ようやく雨の心配も無くなった。
電車に乗ると、ランナーらしき人が何人か乗っている。シューズにチップを付けているからすぐ分かる。目の前に座っているランナーは電車内でおにぎりを食べている。僕も、もう1個残っているおにぎりを食べたくなったけど、隣の人が眉をひそめているので、止めておく。大阪城が近づくにつれ、だんだんランナーが増えていく。
スタート会場の大阪城へは大阪城公園駅が近いが、車内アナウンスでは「大阪城公園駅は大変混雑しているのでランナーは森ノ宮駅で降りてください」なんて言ってるので、素直に降りた。他のランナー達を見ると、大半の人は大阪城公園で降りるらしく、森ノ宮駅ではあんまり降りなかった。
会場到着
森ノ宮駅を降りると、全然、混雑は無く、適度に賑わっている大阪城へスムースに入っていく。東京マラソンの時のような意味不明の手荷物検査は無いし、ランナー以外もみんな会場に入れた。まだ7時過ぎだ。手荷物を預ける時間は8時までだし、スタート地点に並ぶのは8時35分までだから、まだまだ時間はある。ちょっと早く来すぎた。
空は雲一つ無い快晴。気温は低いから日陰に入ると肌寒いけど、恐れていた風はまだ弱いので、日射しを浴びると少し暖かい。
ブラブラするなら手荷物を預けてからにしたいけど、まだ寒いのでトレーニングウェアを脱ぎたくない。することも無いので、残り1個のおにぎりをゆっくりかみしめながら食べる。それでもそんなに時間はかからないから、仕方なくトレーニングウェアを脱いで手荷物をまとめて、預けることにした。手荷物を預ける場所も、東京マラソンみたいには混雑していない。参加者は同じ3万人だし、参加者以外でも出入り自由なのにゆったりしているのは、会場が広いからだろう。東京マラソンは東京都庁周辺の狭い場所だったけど、こちらは広い大阪城公園が会場だから、ゆったりして気持ち良い。
昨日買ったウェストバッグに携帯電話やティッシュペーパーや退屈しのぎのウォークマンなんかを入れておく。体にフィットして、走っても揺れずに、違和感が無い。ただ、ちょっと小さいので、ゼリーは入らなかった。ゼリーはスタート前に食べることにして、ランパンのポケットに入れた。ペットボトルの飲み物も手に持って、お散歩を始める。
スタート地点は申告した予想タイム順になっており、手荷物を預けた場所からスタート地点までは歩いて20分はかかる。それでも時間はまだまだたっぷりあるし、身軽になったので、大阪城をブラブラ散歩する。途中、いくつか仮設トイレが設置されている場所があるが、どこも気が遠くなるような長蛇の列が出来ている。あまりの列の長さに並ぶのを諦めて、堂々とお堀に向かって立ちションしている連中もいる。多数の女性ランナーも通る横で堂々と立ちションするなんて、う〜む、大阪はちょっとマナーが悪いかも。
(國宗)「おや?先週のサイクリングしまなみ2013のエイドステーションで、建物の陰でこっそり用を足していたのは誰でしたっけ?」
(幹事長)「あれは、ちゃんと隠れてしてただろ?」
ホテルを出る前に一度はトイレに行ったものの、スタート前には再度行かなければならない。しかし、ここは公園なので、ちょっと探せば既設のトイレがあるはずだ。なので、取りあえず仮設トイレはパスする。
公園内は、どこからでも大阪城の大きな天守閣が見えるが、それでも良く見ようと思ったら、できるだけ近づいた方が良い。て事で、天守閣の真下まで行くと、見事にそびえ立つ大阪城が見えた。予想通り、そのすぐ側には既設トイレがあり、ガラガラですぐに用を足せた。スタート前の記念写真を撮り、ブラブラしながらスタート地点に向かう。
大阪城をバックに初優勝を誓う幹事長
(もらったばかりの記念品Tシャツを着ている)
スタート地点は大阪城の西側だ。道を挟んで大阪府庁がある。8時半少し前にスタート地点に着くと、既に大勢のランナーが整列している。このエリアには出場するランナーしか入れない。会場係員が「8時35分になると封鎖します。それより遅れたランナーは最後尾からの出発になります」なんて言っている。東京マラソンでは、危うく遅刻しそうになったので、泣く泣く仮設トイレの行列から離れて整列したが(それでも季節外れの暖かいレースで汗まみれになったため問題は無かったけど)、今日は余裕を持って整列した。なのに、係員の言葉を甘く見てか、それともよっぽどトイレが我慢できないからか、まだまだ大勢のランナーが仮設トイレに長蛇の列を作っている。
どこまで本気で封鎖するんかなあ、なんて思ってみていると、8時40分頃になると、本当に本気で封鎖し始めたので少し驚いた。遅れたランナーは許さないという確固たる姿勢が伺えた。しかし、それに素直に従うランナーは、どちらかと言えば少数派で、多くのランナーは係員の制止を無視してバリケードされた柵を乗り越えてどんどんスタート地点に入ってきていた。う〜む、さすがは大阪だ。東京マラソンよりは大衆のマナーが悪いかも。
タイムはシューズに付けたチップで計測してくれるので前からスタートしようが最後尾からスタートしようが関係無いけど、後ろの方には遅いランナーが山ほどいるから、最後尾からスタートしたら遅いランナー達をかき分けて走る必要がある。参加者の少ない大会なら大した問題は無いかも知れないけど、3万人もの大群衆が走る大阪マラソンじゃあ、最後尾からスタートしたら最後まで他のランナーをかき分け続ける必要があるだろう。そのため、強引に前の方に割って入ろうとするのだ。
相変わらず空は雲一つ無い快晴で、風も弱く、気温も低く、もうこれ以上ないってくらい絶好のマラソン日和だ。普通なら、これで結果が悪かったとすれば、前半に調子に乗って飛ばしすぎて失敗するパターンだろうが、今日は風邪で体調が悪いから、こんなに良いコンディションでも完走できるかどうか不安で仕方ない。
実は風邪を引いただけでなく、それ以前の問題として、今回はフルマラソンとしては練習量が圧倒的に足りない。回数としては、8月以降、平日でも週に2回は走ってきたから、週末も含め、よく走ってきた方だけど、週末にあんまり長い距離を走れていないのが問題だ。走らないんじゃなくて、走り始めてもすぐ足が重くなって、あんまり長い距離が走れなくなっているのだ。その大きな理由は自転車だ。自転車を買ってから半年足らずでサイクリングしまなみ2013に出る事になったので、8月から9月にかけてはランニングより自転車の練習を最優先していた。そのために自転車については大きな自信がつき、あんまり怖いものも無くなったけど、その疲労により、ランニング練習に悪影響が出たのだ。ランニングと自転車では使う筋肉が異なるため、直接の影響や悪影響は無いと思うんだけど、疲労感は残るから、どうしても悪影響は出る。
てことで、今回は練習では最長でも20kmちょっとしか走れていない。今までなら、フルマラソンの前には30km近くは走れるようにしていた。それでも10km以上足りないが、本番の気合いで42kmを乗り切っていた。て言うか、たいていの場合は乗り切れずに終盤は歩いたりしているんだけど。それが練習で20kmちょっとしか走れてないのでは、いくら本番でアドレナリンが出たとしても、42kmは無理だよなあ。なので、今日は絶好のマラソン日和だけど、どこまで走れるか不安でいっぱいだ。できれば最後まで完走したいってのが切実な目標なのだ。
体調不良ではあるけど、せっかく滅多に走れない大都市大阪のど真ん中を走れるマラソン大会なのだから、まずは楽しみながら走りたいと思う。これは東京マラソンの時と全く同じだ。なにも、こんな大会でしゃかりきになって良いタイムを出そうとしたって仕方ない。周りの風景を楽しみながら、のんびり走る観光物見遊山マラソンにしたい。だから、本当はお気楽なはずだ。
ところが、そうは言っても、少し気が重い。いくら物見遊山マラソンと言っても、完走できなければ悲惨だ。ハーフマラソンくらいなら、いくら体調が悪かったりしても完走はできるけど、フルマラソンの場合は、元気な時でも、ほぼ間違いなく終盤は足が痛くなって引きずるようにゴールする。足が痛くなるのは避けられないので、どこで痛くなるか、どれくらい痛くなるか、どこまで我慢できるか、が勝負の分かれ目だ。痛くなっても、あと少しなら我慢して乗り切れるし、痛みが軽度なら、我慢して乗り切れる。でも、まだまだ先が長いのに痛くて足を動かせないようになると、もう辛くて辛くて、「一体なんのために走っているんだ?」という根源的な疑問が沸いてきて、悲しい気持ちになってしまう。今日の体調を考えると、下手すると半分くらいで足が痛くなる可能性がある。過去にも徳島マラソンや弘前アップルマラソンや瀬戸内海タートルマラソンで、折り返し点で半分が終わった直後から足が痛くなって、辛く悲しい後半を泣きながら走ったことがある。半分と言ったって、フルマラソンの半分だから後半だけで21kmもある。21kmも足を引きずるのは悲しい。
でも足の状態は、恐ろしいことに、走る前から左足のふくらはぎなんかに違和感を感じている。先週、サイクリングしまなみ2013を走ってから残っている疲労感だ。早く言えば、足が攣る気配を感じるのだ。昨晩、ドヤ街をウロウロしたのも良くなかったかも。スタート前からこの状態では、怖すぎる。その場で屈伸運動なんかしながら、できるだけ筋肉をほぐすが、気休めにもならない。金さんの本にも、素人ランナーにウォーミングアップは不要だけど、ストレッチは入念にすべし、て書いてあったが、混雑するスタート地点でストレッチは無理だ。
なんて、悲惨な事態になる事ばかり考えてしまい、せっかく5倍以上の競争率を突破して参加できたマラソン大会なのに、今ひとつ心は晴れない。スタート時間も近づいてきたので、ポケットに入れてきたゼリーを食べる。いつ食べても美味しいので、少しは気が晴れる。それから、終盤トボトボと歩くときに気を紛らせるためにウォークマンを付ける。もちろん、せっかくだから沿道からの歓声も楽しみたいし、元気なうちは周囲の音も感じたいので、最初から聴くことはしない。
スタート
スタート地点は申告した予想タイム順になっており、僕が指定されたスタート地点は前から1/3くらいの場所だ。申告する予想タイムは、正直な方がいい。実力より前からスタートすると、周りのみんなから置いてきぼりになって精神的に落ち込むか、あるいは周りの速いランナーにつられて無理して飛ばしてしまって潰れる可能性が高い。逆に、後ろの方からスタートすると、おしゃべりしながら固まって走る遅いおばちゃん連中にブロックされて前へ行けない。参加者の少ないマラソン大会なら問題ないけど、3万人も参加する巨大マラソン大会では、最後まで遅いランナーに邪魔されてイライラすることになる。なのて、自分の実力通りの場所からスタートするのが一番良い。
スタート地点は大阪城の西側の大阪府庁前だが、それは先頭であり、そこから北側に大勢のランナーが整列している。最後の方は、大阪城の北側をぐるっと取り囲むように1km以上は離れている。僕が並んでいる前方から1/3程度の場所は、全体から言えば前の方なんだけど、それでもスタート地点はまるで見えない。いよいよスタートしたらしく、会場内放送でスタートしたのは分かったが、自分達が動き始めるまではタイムラグがある。しばらくすると、ゆっくり動き始める。タイムはシューズに付けたチップで計測してくれるので慌てる必要は全然なく、周囲も焦るような人はいない。
割と前方に並んでいたため、思ったより時間はかからず、5分ちょっとくらいでスタート地点を通過することができた。しかも、スタート地点を越えたら、そんなにダラダラ走ることもなく、1〜2分もすれば割とスムースに走り始めた。もしかしたら、かなり遅いペースなのに、体調が悪いから、ちょうど良いペースだと感じているのかもしれないけど。とにかく、今日は足が痛くならないように抑えて抑えて走るつもりなので、周りに合わせて走る。どんなレースでもそうだけど、序盤のノロノロしたペースに我慢できない若造が、強引に前へ前へと他人を押しのけて走っていく。でも、周りが遅いからと言って隙間をかき分けてダッシュするのは無駄に筋肉を使うだけで言語道断だと金さんの本に書いてあったし、さすがにそれはもう分かり切っている。序盤で多少無理して頑張ったって、大してタイムは良くならない上に、後半に100倍返しの痛い目を見るのだ。てことで、周りと一緒に抑えめのペースで淡々と走っていく。
スタートからしばらくは大阪城の南側の道を東に向かって走っていく。途中、1km地点があるので、最初のタイムチェックをするが、おや?予想を上回る遅さだ。もちろん、スタート直後の混雑の中を走っているので、遅いのが当然なんだけど、そこまで遅いとは感じてなかっただけに、ちょっと驚き。驚きというか、この遅いペースをちょうど良いって感じてたってことは、やっぱり調子悪いんだなあと実感する。
大阪城の南東の角に来たら南へ進路を変えて、しばらく走る。大阪城の南側を走っていた時は日陰も多く、長袖と半袖の重ね着でちょうど良い感じだったけど、南向きの道路を走っていると、日陰が無いため直射日光をモロに浴びてしまい、急激に暑くなる。最初は我慢しようと思ったけど、この日射しの強さでは、とうてい我慢できなくなると言うか、体力を消耗してしまうと思って、走りながら1枚脱ぐことにした。ゼッケンは外側に着ている半袖Tシャツに付けているから、まずは両方を脱いでから半袖を着直す。脱いだ長袖は邪魔になるけど、今日はウェストバッグを付けているので、そのベルトに挟んだ。ウェストバッグをしていて本当に良かった。これが無いと、ずっと手に持って走るところだった。ウォークマンもはずして、取りあえずウェストバッグに入れておく。
鶴橋の辺りまで南に走り、今度は西側に方向を変える。この辺りで3km地点だが、時計を見ると、相変わらず似たような遅いペースだ。ううむ、これはやっぱり体調がかなり悪いのだろう。金さんの本を読んで、序盤はできるだけペースを抑えて走ろうと思っていたけど、そんな無理して抑える必要も無い、というか、これ以上抑えると、とんでもなく遅くなってしまうっていうペースだ。遅いのは仕方ないとして、できるだけこのペースで維持しよう。救いは、周囲のランナーもそんなに速くなく、周囲と調和して走れているってことだ。
さらに2kmほど走ると5km地点の最初の給水所がある。ここにはスポーツドリンクと水が置いてある。大阪マラソンは給水所が充実していて、5km地点以降は2.5kmごとにある。その半分は水だけだが、後半は水だけの給水ポイントに給食ポイントも併設されており、楽しみだ。5km地点では、まだ喉は渇いていないが、金さんの本によると、喉が渇いたと感じた時は既に遅く、前もってこまめに水分補給しておかなければならないとの事なので、取りあえず飲んでおく。
5km地点を越えて、さらにしばらく西へ向いて1km足らず走ると、なんばで御堂筋に出る。東京マラソンの銀座と同じように、大阪マラソンでは御堂筋がメインストリートだ。この広い通りを3kmほど北上する。車を通行止めにした広い道路を走るのは大変気持ち良い。できれば道のど真ん中を走りたいところだけど、ど真ん中は日陰が無くて暑そうなので、ビルの陰がある歩道に近い部分を走る。歩道に近いため、沿道から声援を送ってくれる応援の人々が間近に見られて楽しい。色んな楽器演奏やダンスなど、東京マラソンと同じように沿道のパフォーマンスが面白いのだ。途中の7.5km地点に2回目の給水所があり、ここは水だけだが、こまめに飲んでおく。
1kmごとにタイムはチェックしているんだけど、相変わらず遅いながらも、なんとなく少しずつ徐々にさらに遅くなっている。じわじわと。う〜ん、これは困った。体調を考えると、タイムが悪いだろうってのは予想していたけど、こんなに遅いってことは、早々に足が痛くなって歩き始める危険性が非常に高いってことだ。怖いなあ。もちろん、まだ足は痛くはないけど、なんだか足に疲労感は感じる。両足のふくらはぎが、そのうち攣るんじゃないかっていう予兆を感じる。怖いなあ。
御堂筋を北上して淀川に来ると、そこで東方面に方向転換して、大阪城の北側を目指して走る。大阪マラソンは前半は、東京マラソン以上にちょこちょこと方向転換しながら道を走る。あんまり長い距離を直線で走るとウンザリするので、気分転換にはちょうど良い感じだ。
10km地点の給水所でスポーツドリンクを飲んでしばらく行くと、再び大阪城が見える。タイムは明らかに悪くなっている。不安はますます高まっていく。ただ、そんなに極端に遅くなっているわけでもないから、周りのランナーがどんどん前へ行ってるなんてことはない。周囲のランナーもペースを抑えているのか、大半の人は似たようなペースで走っている。
ペースは遅いけど、景色はどんどん変わっていき、気持ち良いコースなので走っていて楽しい。時計さえ見なければ楽しいレースなんだけどなあ。
大阪城の真北で折り返し、再び西に向いて走る。折り返すと、後ろからくるランナーの大群衆が見える。ものすごい数だ。全体の1/3くらいの場所からスタートして、まだそんなに抜いたり抜かれたりはしてないから、まだ全体の1/3くらいのところに居るはずだ。なので、前を行くランナーは1万人で、ものすごい数だけど、後ろには2万人ものランナーがいるわけで、こら、もう凄すぎるというか、多すぎ。
13km地点の4つ目の給水所で水を飲んだら、今度は御堂筋まで戻らずに堺筋で北に曲がり、淀川を半分渡って中之島に入る。このコースのハイライトの一つだ。中之島の真ん中の道を中央公会堂に向かって走る。あらためてみると、なかなかきれいで立派な建物だ。
中央公会堂まで来ると北側に回り込み、大阪市役所の北を通って、再び御堂筋まで来たら南へ折れる。ここからは、さっき北上した御堂筋を南下する。当然、ここでも大勢のすれ違うランナーが見える。ここですれ違うって事は、僕らより5kmほど後ろってことだが、後ろの方のランナーはスタートも遅かったはずなので、まだまだ大量にいるのだ。広い御堂筋を、行きも帰りも大勢のランナーが埋め尽くしていて、まさに壮観だ。
途中、15km地点の5度目の給水所でスポーツドリンクを補給しながら、広い御堂筋を再び3kmほど南下して、なんばに戻ると、今度はそこから西向きに折れる。今度は大阪ドームを目指して走るのだ。途中、17.5km地点の6度目の給水所で水を飲みながら2kmほど走ると大阪ドームが見えてきた。周辺は川やら橋やらショッピング施設やらがあって、なんとなく楽しい雰囲気の街だ。大阪ドームの前をしばらく北上して折り返し、再び大阪ドームに戻ってきたら、ちょうど20km地点だ。
タイムは、ここまでもジワジワと悪くなってきてたが、この辺りでガクンと大きく悪化し始める。さすがにこれはいかん、と思って少しは頑張ってみたものの、あんまり無理して頑張ったら、あとで一気にダメージが来るはずなので、そんなに無理する訳にはいかない。なので、仕方なく、ペースダウンしながら走っていく。
大阪ドームから再び東へ向かって走ると、中間地点がある。過去、大惨敗したレースを振り返ると、弘前マラソンにしてもタートルマラソンにしても徳島マラソンにしても、いずれも半分が終わった辺りで、もうかなりダメージがあった。どう頑張っても、せいぜいあと5kmくらいしか走れないんじゃないか、っていう感覚で、実際、その後は、なんとか5kmくらいは頑張ったものの、すぐに力尽き、歩きが入ってしまった。なので、中間地点ってのはその後の展開を占う重要なポイントだ。今日は走る前から体調不良で、レース序盤は予想以上のスローペースで、それなのに早くも足に疲労感が出てきて、先行きが大いに不安だったけど、意外にも、なんとか持ちこたえている。タイムは確実に悪くなっているけど、足の疲労感はそれほど悪化しておらず、まだ痛くなる兆候はない。それでも、痛くなるのは時間の問題だろうとは思う。
いつもなら、中間地点を過ぎると、足が痛くなるのと同時に、走るのも飽きてきて精神的に疲れてくる。そもそも42kmも走るなんて飽きるに決まっているが、特に海岸線をひたすら走るタートルマラソンや、吉野川の堤防をひたすら走る徳島マラソンなんか、絶対に飽きてくる。なので、たいていは中間地点を過ぎるとウォークマンを聴き始める。多少は足の痛みも気が紛れて誤魔化せるし。でも、今日は東京マラソンと同じく、風景がどんどん変化していって退屈しないし、沿道の応援も多彩で退屈しないので、ウォークマンを聴こうという気にはならない。
これだけ大勢のランナーが走っている割には、仮装しているランナーは意外に少ない。て言うか、ほとんどいないくらい。僕等が初めて動物チームで出場した15年前の明石海峡大橋開通記念駅伝大会なんか、10チームに1チームくらいは仮装チームがいて、スーツ姿で頭に大きなウンコを乗せたチームとか、バレリーナの格好をしたチーム(もちろん男)とか、看護婦さんチーム(これも男)とか、明石の大だことか、マーブルチョコの箱だとか、お侍さんチームや土人チームや点滴打ちながらの病人チームや、もう阿鼻叫喚の末期的世界だった。だから関西のマラソン大会は仮装のオンパレードかなあなんて思っていたけど、とても少ないので意外だ。珍しくミツバチの格好をした女性とかいて、後ろ姿は若々しかったけど、前に回って顔を見たら、おばさまだった。
逆に、沿道には、パフォーマンス以外にも応援がバラエティに富んでいて、色んなコスプレで応援してくれている。メイドさんの集団とかミニーちゃんの集団とかとハイタッチしていくと、本当に元気が沸いてくる。
そして笑ったのは、プラカードに大きく「足が痛いのは気のせい」って書いたものだ。このフレーズは流行っているのかどうか分からないけど、「足が痛いのは気のせい気のせいっ!」って叫んでくれている人が結構いた。確かに、そう思えば気が楽になる。今日はまだ足は痛くなってないけど、これなら痛くなっても乗り切れるかもしれない。
大阪ドームから東へ向かってなんばに戻り、今度は南に向かって折れる。
しばらく行くと、いよいよ待ちに待った23km地点の給食ポイントだ。まずはバナナがある。金さんの本によると、バナナは消化も良くて給食には最適とのことなので、小さく切ったバナナを何個ももらう。さらにスティック状のソイジョイみたいなものもあった。バナナは食べてすぐ飲み込めるが、ソイジョイ的なものは噛むのに時間がかかるので、コップの水と一緒に取り、時間をかけて走りながら食べた。これでお腹が満たされ、とても元気が出てきた。もちろん、食べてすぐ栄養が補給される訳ではないんだけど、空腹感が癒され精神的に良い影響が出たようだ。
ただ、食べ物を取ったりするのに時間がかかるから、タイムはますます悪化している。それでも、元気が出たから取り戻せるかもしれない。
朝から雲一つ無い快晴で、日射しが当たると暑くて長袖シャツを脱いだんだけど、少しづつ雲が出てきて、ときおり日が陰る。そうなると、気温自体は低目なものだから、たちまち肌寒くなる。相変わらず風は弱いので、そんなに寒い訳ではないが、寒さに異常に弱い僕としては、再び長袖シャツを着ようか迷う。でも、迷っているうちに、また日射しが出てきて、たちまち暑くなると、とても長袖を着ようとは思わず、そのまま走る。
僕は昨日もらった記念Tシャツを着ているが、みんな好きずきで色んなTシャツを着ていて、背中のメッセージを読むのも楽しい。たいていは所属チームの名前とかで、言葉があっても、たいていは「頑張ろう」とか「お先にどうぞ」とかだが、今日は「痛くても死なへん」てのがあって、走りながら笑ってしまった。確かに、足が痛くなったって死にはしない。「足が痛いのは気のせいっ!」ってのも面白かったけど、こちらの方がさらに面白い。なんだか、これなら足が痛くなっても今日は平気かなあ、なんて思えてきた。
給食ポイントからさらに少しだけ南へ進み、大国町で東に曲がる。昨晩、夕食を食べた新世界方面に向かうのだ。ここも、このマラソン大会の小さなハイライトの1つだ。小さな、というのは、せっかく通天閣の側まで行くんだけど、東京マラソンのスカイツリーと違って通天閣は小さいから、ほんの一瞬(たぶん1秒くらい)しか見えないからだ。ま、「見た」という実績に意味があるので、一瞬でも構わない。建物の隙間から一瞬だけ通天閣を見たら、そこで折り返して西に向かって戻っていく。
さきほど東に曲がった大国町の交差点を越して、さらに西へ向かうと、25km地点がある。給食ポイントでは大幅にタイムをロスしたものの、給食で元気を回復したので、タイムは改善されたつもりになっていたけど、時計を見ると、さらにタイムは悪くなっている。おかしい。でも、足の疲労感は徐々に高まってきたとはいえ、まだまだ痛くなりそうじゃないので、できるだけペースを落とさないように淡々と走る。25km地点には給水ポイントがあるが、さすがにもうお腹もふくれたし、水もいいや、って思って、本日、初めて給水をパスする。
西に向かって少し走り、芦原橋で南に折れ、そこから1kmほど南に向かって走ったかと思うと、今度はまた東に折れる。ここに27km地点の2つ目の給食ポイントがある。さっき食べたソイジョイ的なものが美味しかったので、またまたここで頂くことにする。まずは消化の良いバナナを3切れもらい、さらにソイジョイ的なものをもらおうとしたら、なんとその前にクリームコロンが山盛りだ。クリームは、なんとなく消化に悪そうな気もするんだけど、クリームコロンは大好きなので、思いっきりわしづかみにする。さらにソイジョイ的なものも何個かもらい、さらに水の入ったコップも取ったので、両手が溢れてきた。なんとか強引にクリームコロンを頬張って水で流し込み、さらに時間をかけてソイジョイ的なものを水と一緒に食べる。なんか、美味しくて、とてもハッピーな気分。
給食ポイントからほんの少し東に走ると、再び大通りに戻り、南へ折れる。この辺り、コースはちょこちょこと曲がりまくるが、その方が気分転換になってよろしい。ただ、ここからは南へ向かって変化の乏しい道を真っ直ぐ3kmほど走る。エリアとしても環状線から外に出て、都心部から離れていくから、町並みも平凡になっていく。精神的にくたびれる区間だ。広い通りを真っ直ぐ走っていくと、はるかかなたまで先行するランナーが道を埋め尽くしている。相変わらず、スタート直後の混雑ぶりのままだ。いつまで経ってもばらけないのだ。時計を確認すると、さきほどの給食ポイントでのタイムロスが大きかったようで、ますますペースダウンしている。でも、給食ポイントでの楽しさを考えると、多少のタイムロスは犠牲にせねばならない。
この辺りは、実は、昨晩、探検した釜ヶ崎地区のすぐ西側だ。一歩中へ入ると、ドヤ街が広がっているはずだが、大通りからは良く分からない。空は雲がだんだん増えてきて、南向きの大通りなので、日射しが照りつければ暑くなるが、雲に隠れればたちまち肌寒くなる。長袖シャツをいつ着ようか悩むところだ。
しばらく行くと30km地点となる。タイムはさらにますます悪くなっており、もう挽回は不可能だと思われる。しかし、奇跡的に足が痛くならない。足さえ痛くならなければ、歩く必要はない。歩かなければ、どんなにペースが落ちても、そんなにひどいタイムにはならない。もしかして、このまま行けるかも、なんて希望の光が少し見えてきた。
風景の変化は乏しくなってきて、足取りも重くなってきたとは言え、まだまだやる気は十分だ。いつものレースなら、足取りが重くなってきたら、次の距離表示が待ち遠しいのになかなか現れず、絶望的な気分になるけど、今日はそんな事もない。少し走ると、すぐ次の距離表示が現れるって感じ。気分を紛らせるためにウォークマンを聴こうという気もおきない。今日はウォークマンは最後まで不要かも。
さらに少し走ると、ようやく西に折れ、だんだん南港方面に近づいていく。1kmちょっと走ると、また南に曲がり、少し行ったところに、再び32.5km地点の給食ポイントがある。給食ポイントは5kmごとにあるので、後半に入ると楽しみで気が紛れる。
今度は何を食べようかなあ、なんて思いながら近づくと、なんと、いきなり、いなり寿司がある。お兄さんが「去年の大阪マラソンで人気ナンバーワンやったで!」なんて言ってるので、1ついただく。美味しい!さらに、小さなおにぎりもあるし巻き寿司もあるしお餅もあるし、キュウリやトマトもあるし、お饅頭やカステラやお菓子類もたくさんある。どれにしようか迷いつつも、手当たり次第色んな物をもらって食べた。もうお腹は空いてないんだけど、美味しそうな物がいっぱいあるから食べずにはいられない。東京マラソンも給食は充実していたが、大阪マラソンはそれ以上で、本当に楽しい。
給食ポイントを過ぎると、もう残りは10kmを切っている。今回の給食ポイントでは、さらに一層、タイムをロスしたけど、そうでなくてもタイムは悪化の一途をたどっている。しかし、それでも足が痛くなる気配が無い。遅いながらも、まだ走れそうだ。とは言え、いつ足が痛くなるか、相変わらず不安で不安で仕方ない。この辺りになると、歩いているランナーも増えてくる。7時間という、とっても甘い制限時間を考えると、あとは歩いたって楽勝でゴールできる。て言うか、制限時間7時間なら、最初から1km10分で歩き続けてもゴールできる。て言うか、そんなに歩くのは嫌だぞ。走った方がマシだぞ。
給食ポイントを過ぎたら、住之江公園のところで海に向かって西に折れる。ここからは、南港の埋め立て地帯へ向かって、どんどん人家は少なくなっていく。ますます雲が増えてきて、もう日射しは出そうにない状態なので、ここで再び長袖シャツを着ることにする。半袖Tシャツの上にそのまま被ればゼッケンが見えなくなるので、いったん半袖を脱いでから着直す。汗でビチョビチョになったTシャツを走りながら脱いだり着たりするのは、かなり難しかった。でも、乾いた長袖シャツを下に着たら、汗でビチョビチョしてたのがサラサラと気持ちよくなった。
西へ進むにつれて、人家は少なくなるどころか、無くなってしまった。35km地点辺りは、なんだか貯木場のようだ。東京マラソンもゴールはお台場で、銀座からお台場へ行く途中が殺風景なコースだったが、この大阪マラソンもゴールの南港へ行くコースが殺風景だ。
35km地点を過ぎると、もうレースも終盤だけど、なぜか、まだ足が痛くならない。タイムは指数関数的に悪くなっているけど、足は痛くはない。どんどん重くなっているけど、痛くはない。足が重いのと痛いのでは、全然違う。痛いのは我慢できなくなるけど、重いのは全然平気だ。今日は奇跡的に、このままいけるような気がしてくる。嬉しくなって「このまま行けるじゃん!」って叫んでしまう。
さらに西へ走っていくと、36km地点を過ぎて北に折れる。すると前方に南港大橋が見えてくる。このマラソン大会で最大にして唯一の坂だ。ただ、このマラソンはほとんど坂が無いから最大の坂になっているけど、坂そのものは標高2〜30mで、全然大したことはない。レース終盤で足は疲れ切っているけど、タートルマラソンなんかの事を思えば、全然平気だ。なので、周りには歩いているランナーも多いが、遅いながらも最後まで走って上っていく。
南港大橋を渡り終えると、38km地点に最後の給食ポイントがある。このレースは給食ポイントが楽しくて仕方なかったけど、さすがに、もうあと4kmだ。もう食べる必要は無い。て言うか、もうお腹いっぱいだし。てことで、給食に群がるランナーを横目に、最後の4kmのロングスパートを仕掛ける。南港大橋で大幅に悪化したタイムを少しでも取り戻すつもりだ。もうここまで来れば、足が痛くなる心配はしなくてもいいようだし、痛くなっても我慢できる距離だ。
次の1kmは、ちょっとは頑張ったので、ほんのちょっとはタイムが改善した。でも、あんまり長続きせず、その次の1kmは、またちょっと遅くなった。
ふと横を見ると、普通のゼッケンじゃなく谷川真理って書いたゼッケンを着けて走っている女性がいる。これは谷川真理なのか?慌てて側へいって「谷川真理さんですか?」って聞いたら「そうですよ」って言うので、握手してもらい、一緒に走ることにした。でも、あまりにペースが速くて、いくら残り2kmと言っても無理そうなので、あっさりと諦める。ゴール直前になって追い抜かれるなんて、彼女は最後尾からスタートして、ここまでみんなを追い抜いてきたんだろうな。
40km地点で残り2kmとなると、いよいよ南港のランドマークの超高層ビルコスモタワーが見えてくる。元々はワールドトレーディングセンタービルとして建設されたものの、紆余曲折を経て最終的に大阪府庁が入居している建物だ。もう足が痛くなる不安も無いし、ゴールも見えてきたので元気回復し、走り続ける。が、41km地点で見たタイムは、それほど良くなっていない。
最後の1kmは、さすがに気合いを入れ直して、一段と大幅にペースを上げた。周囲のランナー達も最後なのでペースアップしているが、僕はここまで足が痛くなることを恐れて力をセーブしていたため、だいぶ余力が残っているので、一気に蹴散らしながら走る。普通のマラソンは、たいていはゴールは競技場だが、東京マラソンと同様に、このレースもゴールは、なんでもない所に突然設置されている。さすがに最後の1kmは、序盤と同じくらいのスピードでゴールできた。
ゴール
結局、スタート地点では前から全体の1/3くらいの場所にいたが、ゴールした順位も、参加者3万人中、1万番目くらいだったので、1/3程度だ。最初から最後まで、順位はほとんど変動しなかったってことか。前半は抜かれる方が多かったような気がするが、終盤は歩いているランナーを大勢抜いたから、結局、同じくらいになったのか。
最初から超スローペースだったから、タイムはパッとしない平凡なものだが、最後まで足が痛くならなかったのが、すごく嬉しい。フルマラソンで最後まで足が痛くならなかったなんて、今まで無かったような気がする。もう気分は最高だ。
(石材店)「それにしても、どの写真も手を上げてますねえ」
(幹事長)「だって気分いいんだも〜ん!」
東京マラソンも、最初から観光がてらに超スローペースで走ったから、最後まで歩かずにゴールしたけど、あの時は、途中、娘と会っておしゃべりしたり、あちこちで本格的に写真撮影したりして、立ち止まったというか休みまくったので、ちょっと事情が違う。それに、あの時も最後まで歩かずに完走したとはいえ、終盤は足を引きずって歩くようなスピードだったから、タイムも、すごく悪かった。でも今日は、観光がてらの物見遊山マラソンとは言え、給食ポイント以外では立ち止まることなく、最後まで全然歩かずにゴールした。
これまで、フルマラソンに出る場合は、良いタイムを出そうという意欲の一方で、終盤で足が痛くなって歩く羽目になると辛いだろうなあ、なんていう不安を常に抱えていた。それが、今回、吹っ切れたというか、自信が付いた。体調さえ悪くなければ、もうちょっと速いペースで今日と同じようなレース展開をすれば、結構良いタイムが出るのではないだろうか。
最後にスパートできたってことは、全力を出し切っていないってことだし、最初からスローペースで通したから平凡なタイムだったけど、コースが気持ちよかったし、最後まで足が痛くならずに完走できたから、ものすごい充実感がある。最近は、フルマラソンは辛いからもう止めようか、なんて思い始めていたけど、次のレースが楽しみになってしまった。
良い気持ちでゴールしたら、完走メダルとフィニッシャータオルを掛けてくれる。メダルはどうでもいいけど、タオルがなかなかよろしい。
Tシャツと言いタオルと言い、大阪マラソンの記念品は優れものだ。強制チャリティのせいで東京マラソンより1500円も高い参加費に憤りを感じていたが、記念品の質の良さと、給食ポイントでの食べ物の豊富さのおかげで、怒りが納まった。と言うか、とても好感の持てる大会だ。
それに、やはり大都市のマラソンは風景が変化に富んでいて、とても楽しい。最後まで退屈しないし、沿道の応援も楽しいし。大阪マラソンは、景色という点では、さすがに東京マラソンよりは少し落ちる。景色のバラエティさが、少し落ちる。都市の規模が東京より小さいので仕方ない。でも沿道の応援は引けを取らないし、記念品とか給食とかが素晴らしかったので、総合的には互角以上のものだった。本当に楽しかった。
大阪マラソンばんざーい!
フィニッシャーズタオルなんかのほかにも、飲み物や食べ物をもらい、預けていた手荷物を受け取って着替え、ゆっくり飲み食いしてから駅に向かう。僕がゴールして1時間も経っているのに、まだまだ大勢のランナーがどんどんゴールしてくる。制限時間までまだ1時間以上もあるから、まだまだなんぼでも走っているのだ。
後から見ると、フルマラソン出走者は29112人で、そのうち完走者は27680人で、完走率は95%だ。制限時間が7時間もあるってことも完走率が高い理由だろうけど、大都市のマラソン大会は楽しいから、最後まで走ろうという気が沸いてくるわなあ。
まだまだランナーがゴールしてくるので、駅までの道は大きく迂回させられ、足を引きずって歩くのはしんどかったが、意外に地下鉄の駅は混雑してなくて、スムースに電車に乗れた。なんば駅のバスターミナルにも順調に着き、予約したバスの発車時間まで時間がありすぎたので、空席がある早い便に変更してもらい、チーズ食べてワインを飲みながら帰った。
今年は2月の東京マラソンと言い、今回の大阪マラソンと言い、シティマラソンを堪能した。
(幹事長)「僕やっぱりシティマラソンがええな」
(國宗)「残念ですが、東京マラソンも大阪マラソンも、当分は無理ですよ」
そうなのだ。競争率が1/10とか1/5のマラソン大会に、そうそう出られる訳ではないから、ちょっと悲しい。東京マラソンも大阪マラソンも、どちらも10万円出せばチャリティランナー枠で出られる。マラソンって、金さえ出せば出場できる、あこぎな世界なのだ。マラソン大会の出場は金次第なのだ。10万円は高いけど、この気持ち良さを考えれば、また今後、数年、落選が続けば、慎重に検討する余地があるなあ。
(國宗)「そんな先の事より、次のレースが控えてるでしょ」
(幹事長)「はい。1ヵ月後に瀬戸内海タートルマラソンがあります」
瀬戸内海タートルマラソンもフルマラソンの部があるんだけど、なんと今年は、9月の大雨による土砂崩れでコースの県道が一部通行止めになったままなので、フルマラソンの部が中止となった。なので、ハーフマラソンでタイムを追求するぞ!
さて、その瀬戸内海タートルマラソンも順調に終わった11月最終の土曜日の朝、國宗選手から突然電話がかかってきた。
週末の朝と言えば、これまでは自転車の朝練をやっていたが、1週間前のタートルマラソンに行った時に、「もう寒くなってきたから自転車の朝練は春まで中断しよう」と決めたはずだ。だが、認知症の進行が目を覆うばかりの今日この頃の私としては、断言できるほどの自信もない。もしかして、今日は朝練の日だったのだろうか?
(幹事長)「えーと、あのう、まさか待ってる?」
(國宗)「何を寝ぼけてるんですか。今朝の日経新聞見ましたか?」
(幹事長)「えっ?にっけいしんぶん?いや、まだ」
(國宗)「幹事長の写真が出てますよ」
(幹事長)「えっ?何がバレたんやろ?」
(國宗)「大阪マラソンの写真やと思いますよ」
慌てて日本経済新聞を見てみると、なんと、確かに私の写真が断りも無く載っている。
(國宗)「断りがいるんですか?」
(幹事長)「いや、ま、出演料とか頂けるのなら・・・」
知ってる人は知ってると思うけど、日経新聞は月1回くらいのペースで1ページまるまる使ったマラソン記事が掲載されている。そして今回は、いかにしてイーブンペースを守るかという手法についての記事だ。まさに、最近、私が身をもって会得しつつある技の話ではないか。そのような記事のど真ん中に大阪マラソンを激走する私の写真が掲載されているなんて、まさにピッタリすぎて恐ろしい。とても偶然とは思えない。
(幹事長)「私の走りをずっと観察してたんやろか?」
(國宗)「いや、単に偶然でしょ」
(幹事長)「でも隅っこの方じゃなくて写真のど真ん中やぞ。主人公やぞ。こんな偶然あるか?」
(國宗)「現に起こってますやんか」
14年前の第22回小豆島オリーブマラソンのとき、スポーツ報知に中山選手と一緒に載った事がある。全国紙への掲載は、その時以来だ。
(幹事長)「あの時はカラー写真だったけど、今回は白黒かあ」
(國宗)「これ、ほんまに幹事長jなんですか?」
(幹事長)「中山選手も、そうだと言ってるぞ」
(國宗)「二人で言ってるだけでしょ?」
(幹事長)「この数千人の大群衆の中から自分の姿を探し出すのは大変な苦労やったぞ。写ってるかどうかも分からんのやからな」
(國宗)「写ってるかどうかも分からんのに、よう探しますねえ。それに比べたら、今回は私でも分かりましたよ」
確かに、今回のは他人が見てもすぐ分かるほど鮮明だ。だとしても、記事には「大阪マラソンの写真」とも書いていないから、自分でも見過ごしていたかも知れない。國宗選手の観察力の鋭さには感動すら覚える。
(國宗)「仕事柄、経済新聞は隅から隅まで目を通しますからね」
(幹事長)「そ、そうか・・・」
それにしても、なんで経済新聞にマラソンの記事が定期的にデカデカと載るのかは分からない。この記者は、経済新聞の記者でありながら、マラソン大会に出ては、その体験記を書いているのだ。もしかして、これしか仕事してないかもしれない。これなら僕でもできるぞ。て言うか、僕の方が面白い記事が書けるぞ。日経新聞さん、僕を雇ってください!
〜おしまい〜
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