山口清吾師範の遺稿(抜粋) 
有段者特別研修 責任指導山口清吾 
(昭和53〜61年 於本部道場) 

道歌(祖師植芝盛平先生道歌より) 
・誠をば更に誠に練り上げて顕幽一如の真諦を知れ
・合気にてよろづ力を働かし美わしき世と安く和すべし
・惟神天地のいきにまかせつつ神の心をつくせ丈夫

道歌には道の真髄、修行の根本指針が端的に示されつくされている。
これは武道修行の上だけでなくそのまま日常生活人生の指針ともなるべきものである。

・  誠は道の根本-------合気の本体
・  合気は道の要諦-----理にして術
・  覚悟は行道の大事---覚悟のあり方

○ 道と術
・  技の心が人生日常生活の規範と遊離しないから道である。
・  特定の人の秘術秘技に留まらず、志す者は誰でもが到達出来る事を少なくとも可能性をはっきりと示し得るから道である。
・  道は同時に又広大、深遠であって求道に終わりはない。
・  道は精神や理法が実際の技に具現されて始めて道である。技なくて道を云っても始まらぬ無意味である。
・  技を究め様とする者は、まずその精神理法即ち道に目を向ける事が肝要である。
・  道に基づかない技は、必ず行き詰る或いは身を害つけたりする。
・  研究工夫も時には却って逆効果にしかならぬ事がある。
・  道、理は必然であり当然であり自然である。技は成るべくして成り当たり前の事としておのづとそうなる それが術である。
・  術は難しい事を行うのではない。
・  誰でも出来る易しい事を真剣に行う事が大切である。この事は真に気づき発見し、自覚する事はまことにむつかしい。
・  技は奇妙不思議を行う事ではない、あまりに当然自然だから却って不思議に見えたりする。
・  技を行うには身を捨てる覚悟が要る。覚悟も又一度になるものではない。覚悟のあり方、その状態が問題である。
・  昔は剣術、柔術等と稱し道を稱する事がなかった。
・  道を云わないから道が無かったのではなく道は武道として又神道、佛道として修行者の当然の心得としてあり、それ丈本来の武術に徹したと見るべきである。
・  我々は道を稱してもって足れりとしてはならない。

○合気呼吸鍛錬
・  合気呼吸こそは、人の本来具備している全能力を引き出し発揮させる。
・  生命躍動の理法である。同時にその実際的手段である。
・  術そのものである。すべての技のいのちである。
・  心・気・力一致の武術の極致もこれによってはじめて可能になる。
・  心身一如、自由自在の達人の境界境地もその修練の必然の法果に他ならない。
・  大先生は武術の上のみならず深く天地大自然の理法、万物創造生成発展の理法としての合気呼吸を説かれた。
・  それを神ながら武産合気の道と名づけられ又簡単に合気道とし、人間修練の普遍の大道行法として教示された。

○術技要諦
・  技を行う最も大切な心がけを大先生のお教へを中心に申し述べて見ます。今尚深く心に刻みつけられているものの第一に
◎  前進法を教へる。相手が大きければよじ登り乗り越えてゆくまでである。があります。
・  一つ一つの細かい技の名にとらわれない武術の根本義に徹したまことに簡にして含蓄深いお言葉と肝に銘じています。
・  これこそ正面出会い頭の技、第一教や入身の心でありましょう。
・  前進し相手に当る。そこに円転の理も生きてくるし、技も展開され生まれてくる。
・  安易に避けたりよけたりする事が決して入身転換の理でないことを知るべきであります。次に
◎  気で体当たりせよ
・  無暗にぶつかるわけではないが、実際に体当たりすれば相手が吹っ飛ぶ位でなければいけない。
・  それには『丹田に気力を集中してどこも固まらぬ体の柔軟さと足が居付かぬ事が肝要と思われる』
・  いつも足袋をはいて技を教示された大先生のゆるがぬお姿、電光の動きが想い起こされます。
・  武術の天才の上に無凝の不動心、自在心があの神技を生み、気で当り実際には当らない絶妙変転の技もおのづと湧出したと拝察されます。
・  剣や槍に対する場合特に気で当り打たせ突かせる覚悟で相打ちに行く気持ちが肝要と思われる。入身転換もそれでなければ不可能でしょう。
◎  切られる所にきられぬ所がある
・との尊いお教へをあげてむすびとします。

○武産合気(日本の武のこころ) 
・  祖師は「日本の武は謂わゆる戈を止めるを武というといった消極的なものでは決してない。」
・  「日本の武は神武であり、武産合気といって大八洲を生み成し修理固成されたイザナギ、イザナミ二神の御神業にこそ武の根源がある。真の武(ぶ産む)の精神業がある。」
・  「それを神ながらに神習うのが合気の道であり、万有を愛護するのが人の使命である。」と---------
・  新陰流の祖上泉伊勢守も武術の根源としてイザナギ、イザナミ二神の図をもって示している。古今の達人の不思議な暗合をみる思いがする。


合気道八幡浜一当流道場のメールマガジン第1部のバックナンバーです

2003/10/17    
第9号   「山口清吾師範の思い出 その2」・番外編1
2003/11/17    第10号 「誠は合気の本体」(伝山口清吾師範)・番外編2
2003/12/17    
第11号  「合気自然体の錬成」(伝山口清吾師範)・番外編3
2003/01/17    第12号 「初心」(伝山口清吾師範)・番外編4


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