合気道開祖 植芝盛平伝より(出版芸術社刊) 

○   無我の神技

・   「腕力」から「気の流れ」へ昇華した開祖の神技---長い歳月の時々刻々の難行苦行の所産であり、心血をそそいだ克己の生命の結晶であり、いいかえれば開祖みずからが意識し作為したものではなく、ひたすら行においてかちえた天の賜物であったと解さねばならない。

・   武道一筋に生きた、開祖の人間的価値はそこにある。人間業の極限に挑み、ついにおのずからなる「神技」を勝ち得るにいたった修行の過程こそが尊い。

・   武の世界における自・他にたいする相対的な力関係に打ち勝ち得た開祖が、そのいわゆる武の極限的体験を契機として、ついに自・他を超克した絶対的な精神世界に悟入をし、純化された生命力の象徴としての「気」に生きはじめた事である。外界の条件や状況になんらわずらわされることなく、自然さらには宇宙の「気」と渾然一体化しつつ、無心無我なるがゆえに自在に立ち居振る舞い得るようになったことに他ならない。

・   したがって、たとえば道場において開祖と相対する者は、そこの人としての開祖を見ることができず、いたずらに己れの心身、己の自我とのみ独り相撲を演じさせられる羽目となる。つまり触れずして宙に飛ぶ「神技」となるわけだが、それは結局「無我」が「自我」を踊らせたすがたともいえるかもしれない。

・   「我即宇宙なり」の悟境に達し、直截のことばをもって「気は合気道そのものなり」と明言し、気・心・体は「神技」に昇華し得たのであった。

・   雄々しき力技をくり広げる、いうところの武の世界を内包し、かつ生命力を産みいだす本源としての「気」に生きる武、開祖の好んだことばをかりていえば「武産合気」に達する道程は、一朝一夕にしてつくられたものではなかったのである。


○道統不変

・   真の武の道は、万物造成の宇宙的根源生命力を活かすこと。

・   和と愛と礼節あってこそ真の武の道。

・   真の武の道は武農一如、武産合気の生命力生産の実践こそ原点である。

・   合気道は魄ではなく、魂のひれぶりである。

・   一元の大神の全徳をこの世にたたえ、この宇宙の根源をすべて表に出すことです。

・   そして万有のすべてのものを愛育する責任をもって大道にご奉公する。

・  いいかえれば全大宇宙の一元の営みの現われを、誰にも頼まれなくともすべてお守りする処の役目が合気道です。

・ つまり、自己に与えられた天命を行う事であります。要は、自分のつとめを完うすればよいのです。つとめが神になっていれば、これはまことに幸いです。

・  みなそれぞれ、処を得つつ生きてゆき、世界大家族としての集いとなって、一元の営みの分身分業として働けるようにするのが、合気道の目標であり、宇宙建国の大精神であります。

・  絶えずこの祈りによって争いをさせんようにする。だから合気道は試合を厳禁している。がその実は大いなる愛の攻撃精神、和合、平和への精神です。

・  自己の愛の念力(念彼観音力)をもって相手を全部からみむすぶ。愛があるから、相手を浄めることが出来るのです。

・   合気道を修行修練せんとする者が心・気・体の鍛錬をつうじて宇宙根源の気を自得する。そして己の真の実力を発見し、めざめた目・ひらかれた心をもって天職に生きるべきことを望まれた。

・  合気道の道統は各自が宇宙と自己との一体化を成就することをもって究極の極意とする。

○開眼

・  開祖は、「合気とは言霊の妙用」であるといい、また、「言霊とは声とは違う。言霊とは腹中に赤い血のたぎる姿をいう」との比喩を用い、「道というのはちょうど、体内に血が巡っているように、神の大み心と全く一になって離れず(神人一如)、大み心を実際に行じてゆくことをいうのである。神の大み心から少しでも離れたら、それは道にはならんのじゃ」

・  「合気道とは天授の真理にして、武産の合気の妙用なり」と述べている。   

・  「黄金体に化す!」「とうとうわしは、己れ自身、わが全能をのみもって”神を視た!”」「わしは、直後、はっと悟りえたように思う。勝とうとして気を張っては何も視えんのじゃ。愛をもってすべてをつつみ、気をもってすべてを流れるにまかすとき、はじめて自他一体の気・心・体の動きの世界が展開し、より悟り得た者がおのずから、いわゆる勝ちをおさめている。勝たずして勝つ---正しく勝ち、吾に勝ち、しかもそれは一瞬の機のうちに速やかに勝ち、つまりは自他一体、神人一如、宇宙即我なる愛の産霊そのももの勝利となる。すなわち、己一個の勝ち負けははるかに超越した、武産の神の絶対の勝ちがそれであり、武の道とはそこに到達することをもって至上とする。」

・  かくして開祖は、みずからの武道が「愛のみ働き」であり、「宇宙そのものと一つになり、宇宙の中心に帰一する」ものである妙諦に達し得たと思われる。-------わが合気道は、大正十四年、この日をもってすなわち開祖が黄金体と化した日をもってその第一歩を踏み出したものであると、私は断じたい。(二代目道主植芝吉祥丸) 

○「万有愛護」

・  開祖は後に開悟のおり、「武道の根源は神の愛であり、万有愛護の精神であると悟り得て、法悦の涙がとめどなく頬を濡らした」と述べている。

○不屈気魂の火は消えず

・  『常に百パーセントの自由度をもった自然体に自分をおけ』

・  合気神社の建立は、開祖にとっていうならば「合気道を武産し、守護しつづけてくださった四十三神(後述)への御礼」であった。 

○大いなる和のむすび

・  開祖はよく、「△○□が一体化して となり、それが気の流れとともに円転してスミキルのが合気道じゃ」などと説述していたものである。

・  「合気は愛気じゃよ」

・ 要するに「合気求道」をつうじて己れの気・心・体を鍛錬し、同時に宇宙万有と気の流れを一つにして自由自在の境を楽しみ、生きとし生けるものと和しつつ真如愛護の実をあげることを目的とする---開祖の信条

・  「合気道は世界・人類平和のかけ橋じゃ。武とは戈を止ましむるものだということがみんなに理解されれば本望じゃ。日本の武道の本質が合気即愛気だという哲理が、世界のひとびとに理解されたとは嬉しいのう」と、開祖はそのころよく語っていた。

・  武道とは身命を賭する必死の行であるがゆえに、奥義はその道に励み修せんとする者のみがよく見聞を許さるべき秘事である。みだりにこれを門外漢にもらすなどは武道への背徳非信の行為であるというのが開祖の信念であった。

・  昭和四十四年一月十五日、本部道場恒例の「鏡開き式」でと演武を通しての道話をしみじみとした口調でこのように述べた。「合気道は気の御業(みわざ)であります。言霊の妙用であります。宇宙組織の魂のひびきであります。万有ことごとくを産みなし、むすびなしてゆく道であります。わたしはいま『天の浮橋』に立ち、世界人類の大和大愛を希いつつ神楽舞い昇り、舞いくだろうと思います。」

・  1969/04/26入神

武産の合気の妙用 


合気道  (光和堂刊)より

合気道の精神
基本動作と基本技法
◆ 道主を中心とした或る座談会

合気真髄 合気道開祖・植芝盛平語録より(柏樹社刊) より

○ 合気道は魂の学び
・   宇宙の真象を眺め、己れに取り入れよ
・   魂の花を咲かせ、魂の実を結ぶ
・   形はなく、すべて魂の学び
・   武の元の心の初め
・   松・竹・梅の教え
・   顕幽神三界、腹中に胎蔵
・   宇宙組織を体内に造り上げる
・   世界の和合への道
○ 合気とは愛気である
・   愛は争わない
・   和合する宇宙の心を実現する
・   宇宙組織の魂の響き
・   「合」は「愛」に通ず
・   宇宙を和と統一に結ぶ
・   六根を清め愛の大精神へ
・   世の中は無欲の者の所有になる
・   合気道に形はない
・   合気の精神
・   武道の根源は神の愛---万有愛護の精神
○ 合気は武産の現われ
・   誠の道をもって天地と相和す
・   森羅万象は武道における大いなる教え
・   一元の本を忘れず誠を守るべし
・   声と心と拍子が一致して言霊となる
・   霊体一致の美しい身魂をつくる
・   空の気を解脱して真空の気に結ぶ
・   十種の神宝も三種の神器もみな、身の内に
・   天の浮橋に立たねば武は生まれない
・   念を去って皆空の気にかえる
○ 合気は息の妙用なり
・   息の響きと天地の響きをつなぐ
・   「気の妙用」によって心身を統一
・   天の運化が魄と魂の岩戸開きをする
・   合気の行を大いに練磨し和合へ
・   誠一つに質素を旨とせよ
・   武の兆しは阿吽の気の禊による
・   日々の稽古から心身一如の上の和合へ
・   鎮魂帰神によってすべてが分かる
○ 宇宙につながる合気
・   正しい念は宇宙と気を結ぶ
・   宇宙の変化の真象を見逃すな
・   合気道を体得すれば自己を知る
・   万有万神の条理を明示する神示
・   真の武道とは宇宙と一つになること
・   宇宙の一元の大御親を忘れてはならない
・   宇宙の響きを自分の鏡に写しとる
・   円の本義
・   武産合気をもって宇宙の修理固成に進む
・   神々が合気の出現を寿く
○ 合気とは禊である
・   誠の心が千引きの石
・   顕幽神三界を立て直す
・   魂に神習うていく己れの岩戸開き
・   生成化育の大道
・   禊は合気である
・   造り主に神習う
・   自己の心を祓い、立て直す
・   精神の立て直しは禊から
・   愛のかまえこそ正眼の構え
○ 神人合一の修行
・   光と熱とを体得し、真人み完成せしむ
・   死生を往来して修行の道に入れた
・   天地の真象を無駄に見過ごすな
・   浮橋に立って言霊の雄叫びをせよ
・   声と肉体と心の統一ができてはじめて技
・   天地の教えを稽古を通して描きだす
・   心身統一に専念し、響きの土台を養成
・   心と肉体と気の三つを宇宙万有の活動と調和
・   大平和のための鏡となる
・   天地人和合の理を悟る

植芝盛平先生口述 武産合気 高橋英雄著(白光出版)より
○  武産合気
・   合気道とは
・   道歌
・   合気道は宇宙万世一系の理法なり
・   合気道は天授の真理にして武産合気の営みである
・   合気道は和合の大道であり宇宙経綸の道へのご奉公である
・   合気道は言霊の妙用 宇宙禊の大道である
・   自己完成の道
・   祈りについて
・   武のはじめ
・   武産合気の根源
・   私の合気修行方法
・   合気の練磨方法
・   真の武
・   武気について
・   二度目の岩戸開き
・   神のたてたる道
・   霊の禊法
・   祭政一致の本義
・   神の生宮
・   天の呼吸 地の呼吸
○  大先生随聞記
・   神楽舞
・   宇宙と一つ
・   一剣にすべて吸収
・   植芝先生の横顔
○  植芝盛平翁の昇天
○  植芝盛平先生の思い出