第5回 高松ファミリー&クォーターマラソン in 庵治

〜 なんとか大スランプから回復 〜



2010年10月24日(日)、高松市庵治町において高松ファミリー&クォーターマラソン in 庵治が開催された。
この庵治マラソンは、今は亡き屋島一周クォーターマラソンを引き継いだもので、距離が12kmと短いため、通常なら、あんまり深く考えずに参加する。

(石材店)「何ですか?フルマラソンやハーフマラソンなら深く考えてると言うんですか?」
(幹事長)「ペース配分とか色々あるだろ」
(石材店)「結果が付いてこなけりゃ無駄な考えですね」


確かに、ペース配分の作戦を真剣に色々と考えても、裏付けとなる練習をしてないため、取らぬ狸の皮算用で終わり、何の意味も無いのだが、それでも悩んでしまう。しかし、この庵治マラソンは、距離が短いのでペース配分もクソもない。最初からやみくもに飛ばすだけだ。なので
精神的に楽なレースだ

(石材店)「やみくもに飛ばして、あのペースなんですかっ!?」
(幹事長)「余裕を持って走っているように見えるじゃろ?でも、実はあれが限界スピード」


他人が見たら全力疾走には見えないだろうけど、僕にとっては庵治マラソンは短距離レースであり、
肉体的には非常にしんどい。しかし、逆に精神的には気楽だ。何も考えずに単純に走るだけだからだ。
しかし、今年は違う。5月末のオリーブマラソンで大会自己ベストを大幅に更新した後、なぜか突然、
空前絶後の絶不調を迎え、7月のわかさぎマラソン10月初めの弘前アップルマラソンと信じられないような惨敗が続いているので、なんとかこの距離の短い庵治マラソンで立ち直りのきっかけを作りたいのだ。長い距離だと簡単には復活できないかもしれないけど、短い距離ならやみくもに走って立ち直れるかもしれないからだ。

(石材店)「立ち直るための練習は積めたんですか?惨敗続きの原因は、はっきり言って練習不足でしょ?」
(幹事長)「惨敗続きの原因は今年の夏の異常な猛暑で練習不足に陥ったからだけど、その後も走れてないなあ」


練習不足が解消されてないのに、絶不調から脱出しようなんて、甘いと言えば甘いかも。

(幹事長)「その代わり言っては意味不明だが、このたび青森の赴任先の会社で陸上部を立ち上げたぞ」
(ピッグ)「えっ?ほんとにっ?すごくレベルが高いんじゃないですか?」


実は、
今、出向している青森の会社には、めっちゃ速いランナーがいっぱいいる。ピッグが今年の春まで所属していた部にもアホみたいに速いランナーがいて、それを知らないピッグが、赴任してきた時の歓迎会で「マラソンやってまーす」なんて言って恥をかいたそうだ。他にも速いランナーがゴロゴロいるのに、今まで陸上部ってのが無かったので、このたび目出度く陸上部が設立されたのだ。ただし、参加したメンバーは、速い人ばっかりだ。最近のマラソンブームもあり、また、単身赴任寮の周囲は熊しか住んでいない何も無い退屈な荒野なのでランニングでもやらないと病気になってしまうという環境のせいもあり、走ってる人は結構多いのだけど、設立メンバーのレベルが凄すぎて多くの人は遠慮してと言うか尻込みして加入していない。フルマラソンでサブフォーじゃないのは僕くらいのもので、サブスリーさえゴロゴロいる。アホみたいに速いのだ。もうレベルが違いすぎて、全然、話が合わない。合同練習なんかも始まったけど、絶対に着いていけないスピードの練習なので、当然ながら参加していない。

(ピッグ)「そなな部に、よくもまあ参加できましたねえ。恥ずかしくないですか」
(幹事長)「恥ずかしいけど、その恥ずかしさを糧にして自分のレベルを向上させようと思ってな。緊張感を持って励むのだよ」
(石材店)「100%嘘でしょ。単に会社の補助が欲しいだけでしょ?」


なんと、陸上部に加入すると、大会への参加料が会社から出るらしいのだ。恥ずかしさに打ち勝つだけの魅力と言えよう。

(幹事長)「アホみたいに速いと言えば、さらにキチガイみたいに速い城武君は10月10日の新潟マラソンでも優勝したらしいよ」
(支部長)「げげっ、新潟まで行って荒らしとんですか!」


城武選手は、ペンギンズに加入してから、徳島マラソン小豆島オリーブマラソンと連続で初出場初優勝を飾っているが、もう向かうところ敵無し状態だ。
ペンギンズへの加入が彼にとって大きな励みになったのは疑う余地はない

(石材店)「訂正を2点。@彼はペンギンズには加入してないし、A以前から敵無し状態でしたよ」

レース当日の朝は、ピッグ増田が迎えに来てくれる。ピッグは今年の春に青森から高松に帰ってきた。それ以来、徳島マラソンと小豆島オリーブマラソンに一緒に出走した。徳島マラソンはゴールまであと500mってところで抜かれてしまった記憶が苦々しく蘇る。

(幹事長)「目上の人をもっと敬うように!」
(ピッグ)「足を引きずって歩いてる人を抜かないのは無理ですよ」


小豆島オリーブマラソンでは、大会自己ベストの走りをしていたのに、あと一歩のところでピッグを抜くことができなかった

(幹事長)「最後は遠慮して譲れよ!」
(ピッグ)「幹事長が後にいたなんて知りませんがな」


どちらのレースも、中盤でもう少しだけ頑張っていればピッグに負けなかったはずだ。

(幹事長)「よーし。今日は頑張ってライバルのピッグに勝つぞ!」
(ピッグ)「私は練習不足というか、オリーブマラソンの後はほとんど練習してないので、最初から勝つ気はありませんよ」


途中で丸の内支部長を拾う。

(幹事長)「例のトライアスロンって、出るの?」
(支部長)「いや、ちょっと用事があって」


よく知らないんだけど、11月3日に、なぜか突然、高松トライアスロンが開催されるらしいのだ。僕は、てっきり支部長は関係者なので強制参加させられるのかと思っていたけど、勘違いだったようだ。地元高松でトライアスロンが開催されるなんて、素晴らしいことであり、これをきっかけにトライアスロンを始めようかなあ、なんて思っていたのだけど、コースを聞くと、ちょっとためらってしまった。まずスイムは高松港で750m泳ぐ。

(幹事長)「あそこ水、汚くない?」
(支部長)「ノーコメント」


次のバイクはサンポート地区をグルグル8周回って20kmだ。

(幹事長)「やたら入り組んだコースで走りにくいし、8周って退屈しない?」
(支部長)「ノーコメント」


最後のランは灯台の堤防を3往復だ。

(幹事長)「あの堤防は気持ちよくて僕もお気に入りのランニングコースだけど、3周もするのはどうかと思うけど」
(支部長)「ノーコメント」


せっかくの開催なんだから、バイクは浜街道を気持ち良く走りたいし、ランは中央通りのビル街を駆け抜けたい。てっきり、そういうコースだと思ってたんだけどなあ。マラソンもそうだけど、なかなか交通規制が難しいのかなあ。

会場に着くと、すぐ後から石材店石材店ジュニアゾウ坂出を乗せて到着する。なぜ石材店ジュニアが来たかと言うと、なんと石材店は親子でファミリーの部に出場するのだ。ファミリーの部は親子一緒に3kmを走るもので、一緒に手をつないでゴールしないといけないので、親子どちらかだけが早くても駄目なのだ。石材店はペンギンズのエースで速いんだけど、石材店ジュニアも今年1月の満濃動物リレーで我々に圧勝する猛スピードで衝撃的なデビューを飾ったくらいだから、はっきり言って異常に速い。実は石材店は、2月頃から膝に痛みが出てきて、4月に手術をしたせいで、しばらくレースから遠ざかっていたので、むしろジュニアに引っ張られるかもしれない。

故障と言えば、ゾウ坂出もオリーブマラソンで膝を痛めた。

(幹事長)「もう大丈夫?」
(ゾウ坂出)「なんとか平気になりましたよう」
(幹事長)「これだけ故障者が続出しているのに、15年以上もレースに出ていて故障した事がない私って、
       もしかして、すごくない?」
(石材店)「故障する以前の問題です。ロクに走ってないじゃないですか。今回も相変わらず練習不足でしょ?」


受付を済ますと、参加賞をくれる。この大会の前身である屋島一周クォーターマラソンの頃は、参加費が僅か1000円だったにもかかわらず、素晴らしく立派なバッグをくれたりしてたけど、庵治マラソンになってから、とてもセコくなっている。去年は小さなポーチのような物で、その前が爪切りで、その前が小さなペットボトルケースだった。今年は屋外で座るための小さいマットだった。

(支部長)「爪切りよりはマシですな」
(幹事長)「競技場なんかに観戦に行く時に役立つもんな」


このレースは受付を済ませてからスタートまでの待ち時間が異常に長い。まず最初に親子で走るファミリーの部があるから仕方ないとは言え、メインの12kmレースのスタートまで2時間以上もある。もしかして、メイン競技はファミリー部門なのか?

そうこうしていると、支部長の同僚のヤイさんが登場。ヤイさんは今年の丸亀マラソンでマラソンデビューしたんだけど、それ以降は走ってないらしい。

(支部長)「でもヤイさんは基本的にスポーツマンだから平気で走ってしまうのよ」

さらに福家父上を発見。

(幹事長)「お父上っ!お元気ですかっ!」
(福家父)「ふぁっはっは。ま、なんとかな」


福家父上は、88歳の米寿を迎えられた今も現役でレースを荒らしまくる驚異の鉄人だ。いや、もう仙人と呼んだ方が相応しいだろう。たぶん今回も最高齢者の栄誉を欲しいままにしてるんだろうなあ。
福家父上がいるからには、もちろん福家先生も来ている。福家先生も元気そうだ。元気って遺伝するんだろうなあ。

(幹事長)「今年は親子で出場が2組か!」
(支部長)「年齢から言えば4世代ですけどね」

各界各層の最高峰を集めた精鋭部隊
(左からゾウ坂出、幹事長、ヤイさん、支部長、福家父上、福家先生、石材店、石材店ジュニア、ピッグ増田)

それから、さとやんに会う。さとやんは見かけによらず速い。

(さとやん)「ほっといてくれ!」

いや、ほんと、見るからに遅そうな、ええおっちゃんなんだけど、発電所で毎日、お昼休みに走りまくっているから、異常にスピードアップしているのだ。

(幹事長)「小豆島タートルマラソンも出るん?」
(さとやん)「いや、今年は別のレースに出るために備えてタートルマラソンは出ない」
(幹事長)「別のレースって?」
(さとやん)「ちょっと海外のレースに挑戦することになってな」
(幹事長)「か、か、か、かいがいのれーすって、まさか小豆島のタートルマラソン?」
(さとやん)「だから、それには出ないと言ってるだろがっ!」


小豆島も海の外だが、彼の言う海は太平洋の事である。

(幹事長)「まさかとは思うけど、ひょっとしてホノルルマラソンか?」
(さとやん)「ずばり、その通り」
(幹事長)「悪い事は言わん。やめとけ」
(さとやん)「なんでや?」
(幹事長)「私が代わりに行く」


なんと、さとやんは12月にホノルルマラソンに出るのです。いーなー。

さらにブラブラしていると、なんと広M君に会う。

(幹事長)「うわ、お前、何してんの?まさか走るん?その体で?」
(広M)「まだまだ初心者ですから、苛めないで下さいよう」


いや、しかし、びっくりした。広M君のようなマラソンとは全く縁の無さそうな人間までレースに参加するなんて、世も末・・・、もとい、マラソンブームもバブルの様相を呈してきたなあ。

長時間待たされたが、いよいよレースが始まる。まずはファミリーの部だ。石材店にとっては、たった3kmのレースだし、何の緊張も無いが、ジュニアの方はちゃとしたレースとしてはデビュー戦だ。満濃リレーは遊び半分のレースだし、ちゃんと練習して出たわけでもない。なので、今回はかなり緊張している。

(幹事長)「練習はしたん?」
(ジュニア)「いや、あんまし」


ま、しかし、彼の素質をもってすれば3kmくらいは軽いもんだろう。スタートと同時にロケットスタートで飛び出していくかと思ったけど、さすがに石材店が制御して、適度なスピードで駆けだしていった。
このファミリーの部は、小学生が親と一緒に走るのだけど、小学生だからと言ってバカにしてはいけない。速い子は、もうめっちゃ速い。優勝者ともなると3kmを10分台で帰ってくる。今年もトップで帰ってきた親子は2位を圧倒的に引き離してダントツの優勝だった。石材店親子は、と思って見てると、かなり上位で帰ってきた。ぱっと見たところ8位争いだ。8位に入ると入賞で表彰されるから、9位とは大きな違いだ。その前後も入れて7位から10位あたりの親子は、もう必死で団子状態だ。
しかし、ここで係員から「手をつないでゴールしてください!手をつないでゴールしないと失格ですよ!」などと拡声器でがなり立てられる。これで戸惑う親子も多い。うまくタイミングが合っていればスムースに手をつなげられるが、たまたま逆に動いていたら手をつなぐ事に気を取られてペースが落ちてしまう。ゴール直前になって団子状態はますます混乱の極みになる。石材店親子もなんとか手をつないでゴールしたが、なんと、惜しい!9位だった

(幹事長)「うわあ、惜しいなあ」
(ピッグ)「あと少しやったのに」
(支部長)「本当は8位やったん違う?写真判定したんか?」


などとみんな真剣に惜しがっていたけど、石材店本人は至って冷静で、

(石材店)「ま、こんなもんですよ」


と涼しい顔で言う。もちろん、ジュニアの方は冷静ではいられない。もう、めっちゃ悔しがって、あの時あーしてたらどーのこーのと、盛んに言ってたけど、石材店の分析では、あの展開ではゴール前でどんなに頑張っても8位ペアは抜けなかっただろう、との事だった。

(石材店)「要するに、お前の練習不足や」
(ジュニア)「しょぼん」


しかし、8位入賞はできなかったとは言え、9位って、凄い。凄すぎ。ジュニアは小学4年生なので、あと2回出られるから、前途有望である。
前途有望な少年の走りを見た割には、気合いが入らないのは、もう前途が無い中年だからである。かなりウダウダしたつもりだけど、なかなか時間が経たない。ウォーミングアップする人も多いけど、我々はそんな無駄なエネルギー消費はしない。せいぜい軽くストレッチするくらいだ。体はそんなに重くない

(幹事長)「一時の絶不調から立ち直りつつあるのだろうか?」
(ピッグ)「でも、惨めな途中棄権した弘前アップルマラソンの前も体調は悪くなかったんやろ?」
(幹事長)「確かにその通り。それで調子に乗って飛ばしたのが良くなかった」


気合いは入らなくても、レース前には、本日の目標を設定せねばならない。

(幹事長)「今年も目標は1時間を切りたいぞ」
(支部長)「毎年、同じ目標やけど、いつか達成できるんかなあ」


12kmを1時間ってのは、1km5分ペースだから、そんなに早い訳ではない。このレースの前身だった屋島一周クォーターマラソンのコースは、同じく12kmだったけど、坂が少なくて走りやすかったため、1時間を切っていた。でも、坂が非常に厳しい庵治マラソンになってからは、3年連続で1時間をオーバーしている。僕や支部長にとっては、かなり高いハードルなのだ。去年は、あと数十秒というところで惜しくも達成できなかった。

(ピッグ)「今、絶不調のど真ん中なんですから、無理じゃないですか?」
(幹事長)「たぶん、無理ね。でも、どこまで戦えるかに意義がある」


何が何でも絶不調を抜け出さない事には、このまま一気に老化が進みそうな気がして怖い。

(幹事長)「それと、現実的な目標としてはピッグと支部長に勝つこと」
(ピッグ)「だから、僕は最初から戦う意志は無いですって」


レース展開については、最近は、前半を出来るだけ抑えて後半もペースを維持するという作戦を徹底させて好記録を出していたけど、弘前アップルマラソンで惨敗した結果を引きずっている今回は、絶不調を脱すべく、そういう姑息な作戦は捨てる事にした。て言うか、絶不調の今、前半を抑えて走ったら、そのまま最後までズルズルと遅いペースのまま終始しそうで得るものは無いと思われる。距離が12kmと短い事もあり、今回はペース配分の事は考えず、最初からできるだけ飛ばすことにする。

いよいよ12kmの部のスタートとなる。
今日の天候は、事前の天気予報では「午後からは雨が降るけど、午前中は分からん」って感じだった。ちょっと怪しい雲だけど、5月のオリーブマラソンで雨の中を快走してから、雨は全然苦手ではなくなったので、気にはならない。それより、風がちょっとあるのが気になる。ただ、気温が高く、風が無ければ暑いくらいなので、微妙なところだ。
絶不調から抜け出すべく、まずは気合いを入れながら周囲に負けないペースで走り出す。自然体で走ったつもりでも、気持ちの高ぶりと、周囲のペースにつられて、結構、早めなペースになっているのを期待した。ところが、1km地点で時計を見ると、ぜーんぜん速くない。やっぱり絶不調のど真ん中だけに、気合いを入れても、この程度か。中盤に大きな坂が続くことを考えれば、これじゃあ1時間は切れない。でも、さすがにそれ以上ペースアップすると潰れそう。とにかく、いけるところまで気合いを持続させて走るしかない。それから、当面の目標としては、支部長とピッグに抜かれないことだ。スタートの位置取りが僕の方が前だったので、今は二人とも後にいるはずだ。
喉はまだ渇いてないが、前半はこまめに給水所で水を飲む。ペースを落とさずに水を飲もうとするので、たいていは咳き込んでしまい、無駄に体力を消耗するが、ペースを落とすわけにはいかない。なーんて頑張っているつもりなのに、次の1kmも、ほとんどペースは上がっていない。今日は辛抱のレースかもしれない。なんて考えていると、さっそくさとやんに追い抜かれる。僕の方が絶対に軽やかな体型なのに、なんぜあんなに軽やかに抜かれるんだろう。

(さとやん)「ほっといてくれ!」

さとやんには負けると分かっているので深追いはしない。
この大会のコースは、前半の途中に中規模の坂が3つあり、それが終ると、5km地点から6kmの折り返し点まで1kmも延々と大きな上り坂が続くという、かなり坂の多いコースだ。ただし、もう慣れていてコースは熟知しているつもりなので、調子が良いときは、そんなに気にならない。「あれっ、坂って、こんなものだったっけ?」などと余裕のコメントを心の中でつぶやいたりするくらいだ。しかし、今回のように絶不調の中にあっては、逆に坂がきつい。「あれっ、坂って、こんなに沢山あったっけ?こんなに急勾配だったっけ?」てな感じ。坂の連続で、ほとんど平坦な部分が無いって印象。坂の登場と共に、タイムはみるみるうちに悪くなる。心配した風も時折強くなり、ほとんどが向かい風だ。帽子を飛ばされている人もいる。
そして、いよいよ1kmの長い上り坂だ。これはなんとしても気持ちを切らすことなく最後まで闘わなくてはならない。もちろん、タイムはジリジリと遅くなっているけど、なんとか辛抱しながら頑張る。

なんとか折り返し点まで近づいてきたところで、前を行くさとやんとすれ違う。そんなに離されてはいない。追いつけるとは思えないけど、僕も大きく脱落している訳ではないということだ。
なんとか大崩することなく中間地点で折り返すと、なんと、すぐ後を支部長が着いてきている。意外や意外、油断したら抜かれるくらいの距離だ。坂が多いコースでは支部長は終盤は力尽きる事が多かったのだが、5月のオリーブマラソンでは、珍しく最後まで力尽きることなく快走を見せていたから、要注意だ。
さらに、少ししたらピッグが来た。支部長よりピッグの方が遅いという展開も予想外だけど、ピッグは本当に完璧な練習不足だったようだ。さらにゾウ坂出が続く。足の故障は、なんとか無事のような走りだ。さらに続いてH峰君とすれ違う。さすがに苦しそうだが、歩き出すようなペースではなく、しっかりした足取りだ。大したものだ。

折り返しの後は、1kmの長い下り坂を一気に下る。ここが時間の稼ぎ時だ。ここでどれだけ借金を返せるかで結果が予想できる。だが、かなり無理して飛ばしたつもりだけど、やっぱりそれほどペースは上がらず、1時間を切るのは絶望となった。しかし、ここで緊張を切らす訳にはいかない。後には支部長とピッグが迫っているし、1時間は切れなくても絶不調から脱する機会なんだから、できる限りの走りをしないといけない。

長い坂を降りた次の1kmも勢いを持続して、まあまあのペースだったが、その後は、疲れが出始めたせいか、そう簡単にペースは維持できない。上り坂の区間ではガクンとペースダウンしてしまうため、下り坂の区間でどれだけ取り戻せるかが勝負となる。だが、結局はプラスマイナス同じくらいで、前半の借金は返せない。後半は基本的に追い風気味なので、その点は楽になったけど、コースが曲がりくねっているせいもあり、時折強い向かい風になる。しかし向かい風よりも、むしろ無風状態になった時の方が暑さで堪えた。
いよいよ最後の1kmになり、なんとかラストスパートをかけようと思うのだけど、もう足があんまり動かない。て言うか、本当を言えば、1時間切りの可能性も無くなり、どんどんモチベーションが低下している状態だ。
しかし、あと数百mのところで石材店ジュニアが出迎えて声援を送ってくれた。これに大いに元気づけられた。そのすぐ横には石材店がカメラを構えて写真を撮ってくれたし、なんとか格好付けてそのまま最後まで手を抜かずにゴールできた。
結局、1時間は切れず、去年よりもタイムは悪くなったが、これまで5回開催された中で2番目のタイムだった。

(幹事長)「イマイチと言えばそれまでだが、こないだまでの絶不調からは脱したと言えるのでは中廊下、渡り廊下」
(石材店)「距離が短いレースですからねえ。どうでしょうかねえ」
(幹事長)「少なくとも復活の兆しは見えたと宣言したいぞ」
(石材店)「もとから復活って言うほどのレベルでもなかったですけどね」


なんとなく自己満足感に浸りながら他のメンバーのゴールを待つ。支部長は、折り返しではすぐ後を来ていたんだけど、最終的には、もう少し差がついていた。

(支部長)「それでも去年より速かったなあ」
(幹事長)「去年は100kmウォークに出た直後で後遺症があったじゃない」


ピッグは、さらにだいぶ遅れてゴールした。レース前の宣言どおり、完全な練習不足。て言うか、最初からあんまり気合いが入っていない。

(ピッグ)「て言うか、僕、気合いの入ったレースって、した事ないですねえ」

確かに、ピッグはいつも淡々と走っている。欲が無いと言うか何と言うか、彼の辞書には気合いという言葉は無いのだろう。

(支部長)「その割には、よく負けてるのよね」
(幹事長)「気合いの入ってない人に負けるのって、空しいのよねえ」
(石材店)「だから幹事長も気合いが入ってないんですってば!」


今年は支部長にもピッグにも勝ったし、とにかく絶不調からは脱したような気がするので、満足できる結果だったと言えよう。
さらにゾウ坂出がゴールする。まあまあのタイムで、39歳以下女子の部で半分よりは上だった。

(ゾウ坂出)「半分より上位だと嬉しいですよねえ」
(支部長)「私も40歳以上男子の部で、かろうじて半分より上ですぜ」

ただし、女子の方が参加者が少ないのでゾウ坂出の順位は2桁だけど、僕らは3桁だ。そう言えば、石材店親子はファミリー部門で1桁だ。さすがに1桁は有り得ないよなあ。

(支部長)「ビリから数えて1桁ってのは、あったけどね」
(幹事長)「僕もビリから数えて2桁なら何度でもあるぞ!」
(ピッグ)「自慢せんとって下さい!」
気分良く歩いていると、同じ会社のH本さんに会う。彼女は去年の庵治マラソンが初レースだったんだけど、結構、良いタイムで、危うく負けるところだった。続く小豆島タートルマラソンも、なんとか逃げ切ったんだけど、今年の徳島マラソンでは、遂に終盤に歩いている所を抜かれて負けてしまったのだ。いわば、支部長やピッグに続く好敵手と言えよう。

(石材店)「何十年も走ってるのに、最近始めたばっかりの女子が好敵手ですか?」
(幹事長)「彼女は1年で僕の10年分くらいの練習をやってるんじゃないか?」


日の出の勢いの彼女なので、今回も負けても仕方ないと思っていた。

(H本)「幹事長、今日は最後まで頑張ってたじゃない!」
(幹事長)「えっ?そうかな?」
(H本)「何度も抜こうとしたのに、最後まで抜けなかったのよ」
(幹事長)「やった!今日は勝ったのか」


てっきり負けたのかと思っていたけど、最後の方もなんとか気持ちを切らさずに頑張ったのが良かったのだ。それにしても、ずっとすぐ後を走っていたのか。レースの途中で分かっていれば、もっと気合いも入っただろうに。

福家父上と一緒に5kmの部に参加した福家先生も余裕の表情でゴールした。

(幹事長)「いくらなんでも余裕あり過ぎじゃないですか?真剣に走ってます?」
(福家)「君に言われたくはないな」

今年もレースの後は、うどん屋で反省会だが、初めてのうどん屋へ行く。いつものようにゾウ坂出は小(1玉)、僕らは中(2玉)、大食らいの支部長はためらわずに大(3玉)を頼む。ところが、このうどん屋は量が多かった。中でもかなりの量で持てあましたのに、支部長の大は異常な量だった。さすがの支部長も途中で飽きていた。
(幹事長)「なんとか復活の兆しが見えて嬉しい。次は小豆島タートルマラソンで頑張ろうぞ、みんなっ!」
(支部長)「いや、その日は用事があって」
(石材店)「僕も用事があって出られませんねえ」
(ゾウ坂出)「私も申し込んでたんですけど、用事が出来ちゃって」
(ピッグ)「私はそもそも申し込んでもないし」


なんとかーっ!だーれも出ないのかっ!?がっかり。僕は初めて出たマラソン大会が小豆島タートルマラソンということで愛着があるし、相性が良いのか坂が多い割には妙に良いタイムが出るし、毎年欠かさず出ているけど、なぜかペンギンズのメンバーの参加率は異様に低い。孤独な戦いを強いられるかも。いや、しかし、確かテニス君が出るって言ってたはずだ。なんとしても連れて行かなければ。


〜おしまい〜




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