第3回 とくしまマラソン

〜 絶好のコンディションで惨敗 〜



2010年4月25日、第3回とくしまマラソンが開催された。
一昨年から始まった新しいレースだが、坂がほとんど無いフラットなフルマラソンなので、いきなり大人気のレースとなった。四国でもマラソン大会は多いが、フルマラソンでフラットなコースは、意外に少ない。一番のネックは交通規制で、警察が納得しないとマラソン大会は開催できない。東京都知事みたいに絶大な権力を誇る政治家なら、鶴の一声で都心のど真ん中で東京マラソンを開催できるが、普通は簡単ではない。交通量の少ない山間部や島なら特別の大がかりな交通規制をしなくても42kmのコースを確保するのは比較的簡単で、実際、そういうコースが多いのだが、そういう場所では、どうしても坂が多いコースとなってしまう。我々の近場で手頃なフルマラソンと言えば11月に開催される小豆島タートルマラソンだが、これも坂が多いと言うより、まるでほとんど坂の連続のようなコースで、かなりきつい。交通規制と言えば、徳島市は、四国の県庁所在地の中でも唯一、私鉄電車が走ってない町で、しかも中心部に川が多いこともあり、道路の混雑は激しい。なのでフルマラソンのコースを確保するのは簡単ではない。
しかし、徳島には吉野川という強い味方がある。この大河川の真っ直ぐな堤防の上をコースにすれば、交通規制は少なくても済むのだ。しかも、このレースは、坂が無いにも関わらず制限時間が7時間と長く、初心者に非常に優しいレースだ。

て事で、去年の第2回は、定員を4000人に増やしたにも関わらず、申し込みスタートから1週間もしない間に定員オーバーとなり、あっという間に締め切られてしまった。このため、考えの甘い人間が揃ったペンギンズは、申し込めなかったメンバーが続出した。今年は、さらに人気が高まり、6000人にまで定員を増やしたんだけど、結局、たった2日間で受付は打ち切られてしまった。受け付けてもらえた参加者は定員を上回る6617人だったらしい。僕らは去年のことがあるから、申し込み受付時期を注視していて、12月1日の申し込み開始直後に素早く申し込んだけど、相変わらず危機感の足りないペンギンズは、申し込めなかったメンバーが続出した。

(石材店)「それにしても、すごい事態ですよねえ」
(幹事長)「ほんとほんと。東京マラソンほどじゃないけど、こんな四国でも、ここまでマラソンブームが過熱すると、
       ちょっと怖いくらいだよなあ」


マスコミによると、近年、若い女性を中心にマラソンがブームになってるらしいけど、四国のレースを見る限り、若い女性がそんなに増えているとも思えない。後姿では若い女性に見えても、追い越しながら確認すると、たいていは「あれ?」てな感じだ。

(石材店)「それって、結構、問題発言ですよ」
(幹事長)「いやいや、これを読んでる良い子のみなさんは、お若くて、おきれいですってば」


しかも、いくら制限時間が甘いと言っても、徳島マラソンはフルマラソンだ。ブームに乗って始めたばかりの若い女性ランナーが気軽に走れるとも思えない。

(石材店)「それは認識が間違ってます。
       幹事長みたいに、せいぜし週に1回走ってお茶を濁す程度なら、フルマラソンも遠い夢ですけど、
       彼女たちは気合いの入れ方が違うから、1年もすればフルマラソンに出てきますよ」


この石材店の何気ないコメントが、まさに今回のレースの私の惨敗を見事に予想していたとは、この時点では考えてもみなかった。



相変わらず危機感も無くロクに練習をしなかった僕と違い、石材店はトレーニングに余念が無かったのだが、突然、アクシデントが襲った。今年に入ってからの石材店の実績は、1月10日の満濃動物リレーマラソンでは、チームでダントツのスピードだったし、2月7日の丸亀マラソンでは、最後尾の3時間のペースランナーで走ったのだが、3時間という異常なスローペースのために疲労感は残ったらしいけど、特に故障はなかった。
ところがその後、2月28日の東京マラソンに向けてトレーニングしていると膝に痛みが出てきたらしい。それで、しばらく休養したりもしていたけど、どうしても痛みが引かず、東京マラソンはやむなく欠場。その後、ちょっとマシになってきたところで軽く走ってみたところ、やっぱり具合が悪い。以前から時々、膝が痛くなったりしてたようだけど、そんなに長引いたことはなかったので、スポーツ整形で有名な病院で診てもらったところ、20年以上も前にテニスで膝の靭帯を痛めた後遺症で、手術が必要との診断だった。て事で、今年は石材店が出られなくなった。
(ちなみに、手術は4月中旬に無事終わった。膝の手術なので下半身麻酔なんだけど、なぜか手術中は全裸にさせられたという、貴重な経験をしたらしい。しばらくは無理せずリハビリに励み、レースへの復帰は秋頃になりそうだ)


石材店は出られなくなったが、代わりに、今年は青森から高松に復帰したピッグ増田が初参加する

(幹事長)「お帰り、ピッグ!ピッグが高松に復帰して、まことに喜ばしい限りじゃ」
(ピッグ)「お帰りというか何と言うか、幹事長は青森勤務のままですよねえ。
       相変わらず参加率100%て、どうなってるんですか」
(幹事長)「今年に入ってから、週末に高松に帰らなかったのは、4回だけだもんな」
(ピッグ)「その4回は、全部、スキーに行ったときでしょ?」


青森勤務だろうが高松勤務だろうが、私のライフスタイルに変化はない。つまり、今年も例年通り、トレーニング不足は否定しようがない。

(石材店)「偉そうに言う事ではないですよね」
(幹事長)「ただし、今年はピッグという心強い仲間がいる」


ピッグは3年前に青森に赴任してからというもの、青森県内のレースを片っ端から荒らしまくってきたが、練習量は僕といい勝負だ。しかも、単身赴任寮に住んでいる僕は、冬場でも寮のトレーニング室のランニングマシーンで少しは走ることができるが、彼は家族と一戸建ての社宅に住んでいたから、今年の冬場はトレーニングができていないはず。高松に帰ってきてからの3月と4月で、どこまでトレーニングできたかが勝負になるが、たぶん、あんまり走ってないだろう。

(幹事長)「な?そやろ?」
(ピッグ)「ほんま、そうですね。最近は、さすがに焦って毎朝走ってますけどね?」
(幹事長)「え?毎朝?」
(ピッグ)「青森時代の体内時計が続いてるんですよ」


ピッグは青森勤務のとき、社宅から職場まで遠かったため、7時前に出発する通勤バスに乗らなければならなかったので、早起きの癖がついているのだ。高松じゃあ、自転車で10分もあれば通勤できちゃうので、1時間以上、余裕ができたらしい。これは、侮れないかもしれない。

(ピッグ)「幹事長は、まさか毎日は走ってないでしょ?」
(幹事長)「発狂したくないからな」


青森に来てから何度も書いたけど、ランニングマシーンって発狂しそうなほど退屈でつまんない。本来、楽しいから走っている市民ランナーとしては、こんなに苦痛を感じてトレーニングするなんて、本末転倒もいいところだ。なので、どんなに頑張ってみても、2日に1回が限界だ。それでも週に3回は走れるが、1回あたりの距離が短い。どんなに頑張ってみても5kmが限界なので、どんなに頑張ってみても1週間に15km程度が限界だ。昔からトレーニング不足はいつものことだけど、それでもフルマラソンを控えた時期になると、週末には20km以上は走っていた。いくら頻度が増えたと言っても、せいぜい5kmしか走ってない状態でフルマラソンに出るのは不安が残る。
とは言え、この1年、似たような状態の中で、結構、いい成績を残してきた。10月の庵治マラソン(12km)と、11月の小豆島タートルマラソン(ハーフマラソン)と、連続で大会自己ベストを出した。

(石材店)「決して褒められた記録じゃないですけどね」
(幹事長)「しかし、現状の練習方法も悪くないという証明にはなるぞ」
(石材店)「12kmと21kmですからね。フルマラソンにも通用するかどうかは疑問ですね」


確かに、10月の弘前アップルマラソンでは、終盤まで結構、快調に走っていたのに、あと5kmという所で急に足が動かなくなり、足を引きずって歩いたりしながら、惨敗した。やっぱり長距離走をやっておく必要はあるよなあ。でも、青森は寒くて、4月中は外を走れない。

(石材店)「毎週、高松に帰ってきてるんですから、その時に走ってください!」



レース当日の朝は、ピッグ増田が迎えに来てくれる。本当はJRで行ってもいいところなんだけど、高松発の朝一の特急では、受付時間に間に合わないのだ。この点だけは、なんとか改善して欲しいと思う。

(ピッグ)「もっと受付時間を遅らせるとか?」
(幹事長)「もっと早い特急を走らせるとか」


車で行く場合も、かなりの早起きが必要となるが、青森で早起きの習慣がついてしまったピッグにとっては、どうってことない時間で、朝から元気だ。

結局、練習不足を解消できないまま、レースを迎えたが、精神的には決して追い込まれていない。10kmレースとかハーフマラソンなら、どうしてもタイムの事が頭から離れず、基本的に大会自己ベストを狙って緊張する。しかし、フルマラソンの場合は、基本的に完走だけが目標となるので、緊張感が無いと言うか、とても気楽だ。

(中山)「言っておきますけど、完走と言うのは最後まで歩かないという意味ですよ」
(幹事長)「もちろんだとも!」


制限時間が7時間もある徳島マラソンの場合、ゴールだけが目標なら1kmを10分かけて歩けばいい。時速6kmなので、早足なら可能なペースだ。しかし、そななことをしても意味が無い。ウォーキング大会じゃあるまいし。あくまでも最後まで全く歩かずに完走するのが基本的な目標だ。歩かなければ、タイムもそれなりの結果となる。

(中山)「で、幹事長は、フルマラソンで一歩も歩かなかったことはあるんですか?」
(幹事長)「去年の徳島マラソンは、なんと一歩も歩かずに完走したんぞ!」
(石材店)「あれ?ソーメンとか座り込んで食べたりしてませんでしたっけ?あと竹輪とかトマトとかも」
(幹事長)「だから、あれは完全に止まって食べてたんであって、歩いた訳ではないぞ」
(中山)「それって、ほんとに完走って言うんですか?」


とにかく、最初から「完走できればいいや」っていう目標なので、精神的には楽だ。

(ピッグ)「自己ベストとかは狙わないんですか?」
(幹事長)「座り込んだり歩いたりさえしなければ自己ベストは着いてくる」
(中山)「やっぱり、まともに完走したこと無いんだ」


今日は天気が良く、雲ひとつない快晴だ。ただ、少し風がある。同じように天気が良くて風が強烈だった去年のレースを思い出してしまう。去年はものすごい風で、前半はモロに向かい風となり、すごく厳しかった。その代わり、後半は風に背中を押されて、なんとか最後まで完走できたので、良かったのかもしれない。

去年と同じく、駐車場になっている吉野川の河川敷に車を停め、シャトルバスでスタート会場の中央公園まで運んでもらう。受付を済ませ、今年も徳島支店の参加者が集合写真を撮るところに合流すると、片岡選手に肩を叩かれる。

(幹事長)「お?元気?」
(片岡)「ま、ヒマやからな」


片岡選手とは、去年のレースでは最後まで何度も抜きつ抜かれつのレースを展開したライバルだ。

(片岡)「抜くのは、相手が座り込んで休んでる時やけどな」
(幹事長)「お互い、しょっちゅう休憩してたからな」


で、今年も素知らぬ顔をして、徳島支店の集合写真に写る。

徳島支店さんの集合写真で大きな顔をして写る幹事長(前列左から2人目)とピッグ(同じく4人目)

(石材店)「徳島支店と何の縁も無いくせに、相変わらず主人公みたいな顔をして写ってますねえ」

写真を撮った後は、そろそろ着替えをしないといけないが、例によって、何を着るか悩んでしまう。天気が良いので、風さえなければ半袖Tシャツで決まりなんだけど、去年も天気は良かったけど風が強烈だったため、長袖シャツを着ていたのに前半はすごく寒かった。今年は去年ほど風は強くないけど、暑いより寒いのが嫌いな僕としては、寒さが怖くて長袖シャツにした。
あと、風が強そうなので帽子は被らない。一方、一昨年はトイレ探しの時に冷や汗をかいたから、ティッシュは必携だ。それに、なにより、長時間の退屈さと戦うためにウォークマンは必携だ。

(石材店)「相変わらず攻めの姿勢が感じられませんねえ」


スタート地点では、タイム順に並ぶようになっているが、ピッグとは似たようなタイムなので、一緒にスタンバイする。去年はスタートを待っている時が、すごく寒かったけど、今年は風も弱まってきて、むしろ暖かい。寒いのが嫌いな僕としては、絶好のコンディションになってきた。

(ピッグ)「長袖は暑いですかねえ」
(幹事長)「快調に走っている時は暑いかもしれないけど、終盤で足を引きずってる時は寒くなるから、ちょうど良いって」
(石材店)「最初から足を引きずる事を想定しないでください!」


いよいよスタートの号砲が鳴る。参加者が6600人もいるので、スタート地点となった狭い道路はかなり混雑しているが、このレースはタイムを体に着けたチップでネット計測してくれるので、スタートラインを越えるまでは誰も走ろうとしない。て言うか、ギュウギュウ詰めで、とても走れる状態ではない。スタートラインを越えると、さすがにみんな走り始めるが、混雑しているので、当分の間はゆっくりとジョギングする程度だ

(ピッグ)「それにしても遅いですねえ」
(幹事長)「焦ったら、あかんで」


最近、支部長から借りて読んだ小出監督の本によると、最初の2〜3kmはウォーミングアップと割り切って、絶対に焦ってはいけないとのことだ。これは前々から色んな人が言ってることだけど、なかなか実行できない。ついつい焦って、ちょっとでも前へ行こうと人混みを掻き分けて走ったりするけど、時間的にほとんど効果が無いうえに、疲労だけが確実に蓄積されていく。そもそも小出監督の本によると、一般的な市民ランナーなら、ウォーミングアップそのものが全く不要との事だ。体力を消費するだけだ。よっぽど速いタイムを狙っていない限り、プラスの効果は無いらしい。

(ピッグ)「そんな有難いアドバイスがあったんですか」
(幹事長)「ハーフマラソンならともかく、フルマラソンのウォーミングアップは我々レベルには不要やな」


て事で、ダラダラ走っていたら、最初の1kmは、なんと7分以上かかった

(ピッグ)「いくらなんでも、ちょっと焦りますね」
(幹事長)「うん。焦る。焦りまくる。ちょっと遅すぎ」


で、そろそろ空いてきたので、ペースを上げたら、次の1kmは5分ちょっとのペースに

(ピッグ)「これは速すぎじゃ?」
(幹事長)「うん。速すぎ。これじゃ最後までもたない」


て事で、なんとか本来のペースに戻す。

(石材店)「本来のペースって、どれくらいですか?」
(幹事長)「ま、
1km6分くらいやな」
(石材店)「最初からサブフォーは狙ってないってことですよね」
(幹事長)「終盤に余裕が残っていれば狙ってもいいけど」
(石材店)「絶対にあり得ないですね」


その後は、かなり正確に1km6分弱のペースを維持して走る。しばらくはピッグと一緒に走っていたが、ピッグに着いて行くのが少ししんどくなって、徐々に離されていく。ペースダウンしたのかな、と思って時計を確認したが、相変わらず、ほとんどペースは一定だ。ピッグが若干ペースを上げたようだ。恐れていた強風はほとんど吹かず、むしろ暑いくらい。給水所でも小まめに水を飲み、なんだか快調に走れる。氷砂糖を置いてある給水所もあったので、口いっぱいに頬張る。できるだけ長い間、栄養補給をしたかったからだけど、これは少し失敗だった。後から考えたら、ポケットに入れておけば良かったのだが、疲れた頭は、そこまで知恵が回らない。口いっぱいに氷砂糖を頬張って走るのは、呼吸も苦しいし、水も欲しくなるし、なかなか厳しかった。ま、文句は言えませんけど。

快調に走っていると、20km付近の折り返し点が近づいてくる。折り返しの辺りで去年とコースが変わっていて、若干、戸惑ったけど、コース的には走りやすくなった印象だ。折り返しでピッグの姿を探したが、前方にはいない。あれ?おかしいな。と思っていると、僕の少し後ろから走ってきている。どこか給水所で立ち止まってのを抜いたのかもしれない。
相変わらずペースはほとんど狂いなく一定で走れている。まるで精密マシーンのようだ。最近、丸亀マラソンのペースランナーをやってるから、体が正確になったのかもしれない。ここまで正確にペースを維持できてしまうと、逆に、このペースを壊したくなくなる。て事で、給水所でも立ち止まらずに走りながら水を飲む。1秒のタイムもロスしたくない気分なのだ。トイレも行きたくなったが、時間が惜しくて我慢する。後半に入ると、そば米汁とかソーメンの接待があり、去年なんかは、ここぞとばかりに座り込んで、いっぱい食べ、トイレにもいって、休憩しながら完走したんだけど、今年はタイムロスがもったいなくて、水以外は何も取らずに走り続けた。たぶん、これが、大きな失敗だったのだろう。

後半に入っても相変わらずペースは落ちず、快調に走っていたら、25km辺りで後姿のきれいな女性ランナーを追い抜く。追い抜きざまに確認しても、やはりきれいな人で、サングラスしててよく分からないけど、あれ?まさか、もしかして。

(幹事長)「おっ、H本さんやんか!」
(H本)「うわ。抜いたら、いかんよ!」


同じ会社のH本さんに、また会ってしまった。レースで会うのは、去年10月の庵治マラソン11月の小豆島タートルマラソンに続いて3回目だ。その庵治マラソンが初レースなんだけど、結構、良いタイムだったし、小豆島タートルマラソンでは、さらに速かった。丸亀マラソンでも、かなり良いタイムだったらしいから、この調子じゃ、いずれ負ける時が来るだろうとは恐れていたが、早くもフルマラソンに挑戦していたとは、すごい。すごすぎる。

(石材店)「だから言ったでしょ?若い女性ランナーは、結構、練習しているから、
       走り始めて1年もしなくてもフルマラソンに出てくるんですよ」


しかも、単に挑戦しているだけではない。今日の僕は、ここまでかなり快調に走ってきたつもりだ。それなのに、25km地点でようやく追い抜くなんて、彼女も相当良いペースだ。て言うか、女性ランナーって、最後までペースダウンしない人が多いから、このまま逃げ切れるかどうか、非常に不安だ。「抜いたらいかんよ」と言う声を振り切って、取りあえず追い抜く。
ここで気合が入ったせいか、時計を見ると、ちょっとペースが上がった。後半に入ってペースが上がるなんて、もしかしてサブフォーが狙えるかも、なんて下心を出したのが失敗だった。こなな所で無理してペースを上げたら、とんでもないことになる。しばらくすると、どんどん足が重くなる。時計で確認すると、コンスタントにタイムが落ちていく。このタイムの落ち方が非常に正確なのだ。まるで精密マシーンのように、1kmごとのタイムが正確に落ちていく。

(幹事長)「相変わらず精密マシーンの走りやろ?」
(支部長)「もう何もコメントできまへんな」


あっという間に1km7分台になり、足がつってきた。両手にスプレーを抱えたスプレー隊のおねいちゃんの集団がいて、両足にたっぷりスプレー吹いてもらったけど、それで一気に回復するはずもなく、とうとう痛みに耐え切れず歩いてしまう。

(中山)「やっぱり歩きましたね」
(幹事長)「えーん、えーん、情けないよう」


途中まで、あんなに正確に快走していたのに、やっぱりオーバーペースだったのだろうか。もっと抑えた方が良かったのかなあ。足を引きずりながら歩いたり走ったりしていると、35kmあたりでH本さんが僕の肩を叩いて「頑張ってよ」って言いながら追い抜いていく。やっぱり最後までペースダウンしないなあ。遂に彼女に負けてしまった。レースに出始めて1年も経ってない女子にフルマラソンで負けるなんて、ああ情けない。
去年は、後半は強風が背中を押してくれたおかげで完走できたけど、今年は前半に風が無いと思ったら、むしろ後半が向かい風で、ますます厳しい展開になった。足が痛いし、ちょっと寒いし。
歩いたり走ったりしながら、なんとか帰りつかねばならんので、足を引きずりながらゴールの陸上競技場まであと500mってところで、なんと、ピッグにも抜かれてしまった

(ピッグ)「幹事長、どしたんですか」
(幹事長)「ひえ〜、足が動かんのや。助けてくれ」


もちろん、ピッグは無視して追い抜いていった。あと僅か500mなのに、足が動かないから抜き返すことができないのだ。なんとか最後は手を上げてゴールしたけど、途中まで好タイムの希望を抱いていた割には、結局、相変わらずの惨敗だ。
(幹事長)「いかんなあ。ペース配分に失敗したのかなあ」
(ピッグ)「て言うか、水しか補給しないってのは失敗ですね。タイムなんか狙ってないと言っておきながら、
       変に色気を出して僅かな時間を惜しんで食べ物を補給しなかったのが敗因でしょう」


ピッグは、去年の僕のように、ゆっくりとソーメンとか食べたらしい。やっぱり、そうすべきだったよなあ。

(幹事長)「ま、しかし、最後まで歩かずに完走した去年より、ちょっとだけタイムは良かったぞ」
(ピッグ)「えっ?去年って、そんなにひどかったんですか?」
(幹事長)「去年は、途中で休憩しすぎたからな」


去年よりタイムが良かったってのだけが、かろうじて救いだけど、あまりにレベルが低くて、ぜーんぜん嬉しくない。ところが、記録証をもらって確認すると、出場者の中で上から1/3くらいの順位だ

(幹事長)「なーんだ。結構、速いじゃーん」
(石材店)「元気なんだから、もっと上を目指して下さい!」


暖かいうどんを食べて、なんとか空腹もいやされる。終盤、足が痛くて走れなかった割には、レース後は、それほど痛くない。て言うか、普通に歩ける。これこそが、頑張れていない証拠だ。以前は、フルマラソンの後は、まともに歩けなかったもんなあ。不完全燃焼感が残るレースであった。

それから、やっぱり練習方法というか、練習不足が惨敗の大きな要因であろう。最近のように頻度は増えたけど、距離の短い練習しかしてないと、10kmやハーフマラソン程度なら通用しても、フルマラソンでは通用しないのだろう。やはり長距離を走っておかねばならないだろうなあ。当たり前の事を再認識させられたレースであった。



(石材店)「レース後のゴールデンウィークに遊びまくっていた割には、結構、早い掲載ですね」
(幹事長)「なんと、このレースの2週間後、すなわち明後日には
八戸うみねこマラソンに出るからな」
(石材店)「惨敗した割には、無茶なスケジューリングですね」
(幹事長)「スケジューリングした時点では、徳島マラソンの快走の余勢で一気に八戸を走る予定だったんだけど、
       心身の傷が癒えないままの出走になりそう」


フルマラソンを走った直後なので、ハーフマラソンくらい練習しなくても余裕で快走できるだろうと期待してたんだけど、逆に足の痛みと言うか違和感が残ったままだ。なんとか自己ベストを狙いたいところだけど、あんまり無理するのは止めておこう。その2週間後には、今度は小豆島オリーブマラソンがあるし。

(石材店)「僅か1ヵ月の間に、フルマラソン1回とハーフマラソン2回ですか。ちょっと過密すぎますね」

この過密スケジュールが吉と出るか凶と出るか、さてお楽しみだいっ!


〜おしまい〜




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