第64回 丸亀マラソン大会

〜 今年もペースランナーだよ 〜



2010年2月7日(日)、第64回香川丸亀国際ハーフマラソン大会が開催された。
そして、我が四電ペンギンズは、今年も去年に引き続いてペースランナーの大役を仰せつかった

(幹事長)「微力ながらも大会の成功に一役買えるってのは嬉しいなあ」
(矢野)「これもひとえに新城プロのおかげですね」


我がペンギンズの特別名誉コーチである新城プロは、この丸亀マラソンのプロデューサーである金哲彦氏とは昔からのマラソン仲間なので、我々に声が掛かるのである。金哲彦氏は、日本陸連の女子長距離マラソン強化部長で、今回のレースもテレビ中継の解説者で登場する。

(幹事長)「満濃リレーマラソンと同じく、我々は大会に欠かせない存在になりつつあるのかな」
(矢野)「いや、それは全然違ってて、去年の僕らの姿を見て、自分もペースランナーをやりたいという希望が
       殺到しているらしいですよ」
(幹事長)「な、なに?それは、いかん。絶対に死守せねばならんぞ!」


て事で、去年はペースランナーの半分は大学生に頼んだりしたが、今年は全員、四電ペンギンズのメンバーで揃えた

(矢野)「いきなり嘘言うたらいかんですがな」
(幹事長)「バレましたか」


ペンギンズだけでは力不足なので、四電の正式な陸上競技部のOB達と一緒に務めました

ペースは1時間30分、1時間45分、2時間、2時間30分、3時間の5つで、各2人ずつ。去年は1時間45分ペースはなかったが、最もランナーの数が多い層なので、今年追加になったものだ。
このうち速い方の1時間30分、1時間45分は陸上競技部OBが、遅い方の2時間30分、3時間は我々ペンギンズが、2時間は両方から1人ずつ出した。ペンギンズでは、2時間に矢野選手が、2時間30分は去年と同じく支部長が、3時間は石材店が務めた。あと、3時間の石材店の相棒には、金さんが主催しているマラソンクラブの方が東京から一緒にやってきて務めることとなった。

実は、去年は僕も支部長も、最初は2時間のペースランナーをやりたかった。2時間ペースなら、いつもの調子で適当に走れば、ちょうどいいペースなんだけど、2時間30分になると、かなり意識してペースを抑えないといけないから、一定のペースでうまく走れるかどうか不安だったのだ。2時間30分といえば1km7分のペースだ。レースの前半で飛ばしすぎて失敗し、終盤に力尽きて足を引きずるようにして走っているペースだ。その超スローペースを最初からずっと、というのは逆に結構しんどそうだ。しかも、時間的にも2時間30分も走るのは、しんどいに決まってる。そもそも2時間30分とか3時間のペースランナーなんて必要なのか?という疑問もあった。いくら最近は制限時間が3時間になって、初心者がどっと増えたとは言え、2時間30分とか3時間のペースランナーを目安に走る人がいるとは思えなかった。でも結局、みんな遅いペースランナーを嫌がったため、調整の結果、最終的には矢野選手が2時間のペースランナーをやり、僕と支部長は2時間30分のペースランナーをやることになったのだ。
ただ、結果的には、2時間30分前後のランナーは予想外に多かった。最近のマラソンブームにはびっくり、ってとこだ。そのため、寂しいどころか、とても充実したペースランナーだった。フジテレビの美人アナウンサー平井理央さんも、僕らを目安に後ろから着いて走ってくれたし、とても楽しかった。
て事で、今年は最初から2時間30分ペースを喜んで引き受けた

ただ、3時間の石材店となると、さすがに苦痛だ。彼は普通に走れば1時間30分ペースだから、その2倍の時間をかけた超スローペースで走らなければならない。3時間ペースと言えば、1km8分半くらいのペースだ。ほとんど早歩きと変わらないようなペースだ。3時間もゆっくりゆっくり走るってのは、とってもしんどいし、精神的にもきついと思う。おまけに、3時間ペースというのは、制限時間ギリギリのペースなので、ペースランナーより後ろの人は失格という事になってしまう。だから、くじけそうになる人たちに声を掛けて励ましてなんとか一緒にゴールさせなければならないという大役でもあるのだ。

(幹事長)「ま、頑張ってくれたまえ」
(石材店)「気楽に言わんとってください!」


去年は、ペースランナー導入の初年度で、僕らも初体験で、かなり緊張したけど、今年は2回目だし、ペースも去年と同じなので、精神的には楽だ。

(矢野)「ところがですね、今年は風船を付けることになったんですよ」
(幹事長)「風船っ!?」


去年はペースの時間を書いた大きなゼッケンを着け、お揃いの帽子も被ったんだけど、それでも目立たないって事で、今年はもっと目立つように風船を付けて走る事になったのだ。

(幹事長)「それって空気抵抗があるんじゃない?ペースを維持できるかなあ。
       それに、風船が後ろになびいてしまうと見えにくいんじゃない?」
(矢野)「なので、速いペースのペースランナーは付けません。
       風船を付けるのは2時間、2時間30分、3時間のペースランナーです」

ううむ。確かに速いペースで走っているランナーなら、後ろになびいちゃって見えないから、遅いランナーだけってのは理にかなってるんだけど、負荷というか空気抵抗が心配だなあ

(幹事長)「ま、僕は支部長と一緒に励ましあって走るからいいよ」
(矢野)「その点も変わります。2人一組じゃなくて、バラバラに走ってもらいます」


去年は目立つようにと思って2人一組で走ったけど、今年は、できるだけ多くの人の目安になれるように間隔を空けて走ることになった。2時間30分ペースの僕らなら「2時間29分ペースと2時間31分ペースで走れ」とのご指示だ。

(幹事長)「うう〜ん。ますます心細いなあ」


しかも、実は、さらに問題がある。今年は長距離のトレーニングが全然できてないのだ。長距離を走ったのは、11月のタートルマラソンで21km走ったのが最後だ。去年は、週末になると長めの距離を走り、かつ1週間前には皆でコースを試走し、距離表示の位置も確認したりして、準備万端だった。しかし今年は、週末の長距離トレーニングが全然できてないのだ。はっきり言って練習不足なのだ。これは、青森に単身赴任しているのが構造的な原因だ
従来、僕の練習方法は、週末のLSDだけだった。石材店のように、平日の朝、会社に行く前とか、あるいは仕事が終ってから走るなんて発想は皆無で、週末の土曜日か日曜日の天気の良い日に一回だけ走るのだ。ただし、週1回しか走らないから、距離は長めだった。ハーフマラソンの前なら20kmくらい、フルマラソンの前ならもうちょっと長く走る。しかし、青森に単身赴任してからは、週末はできるだけ高松に帰省しており、帰省するとなると往復に時間もかかるし体も疲れるので、高松に帰った時はゆっくり休むため基本的には走らない。青森に残っている週は、基本的に何かイベントがあったり遊びに行っているから青森に残っているのだから、やはり走らない。て事で、週末に走る機会が無くなってしまった。そのため、練習は専ら平日の仕事の後となる。
ただ、これが辛い。夏場なら仕事が終わっても、すぐに帰れば、まだ明るいので外を走れる。これは、なかなか気持ち良い。しかし緯度が高く、しかも日本の東の方にある青森は、秋になると日暮れが早く、仕事が終わって帰れば、もう真っ暗。それに、11月になると吹雪も始まり、寒くて走れない。なので、寮のトレーニング室のランニングマシーンが唯一の練習となる。これが、ほんっとにつまんなくて退屈で、イライラして発狂しそうになる。ウォークマン聴きながら気を紛らわせながら、どんなに頑張っても、最大で5kmが限界だ。週に2〜3回、3〜5km走ったところで、週に10km程度だ。圧倒的に練習不足なのだ。
練習不足でも、普通のレースのように単に参加するだけなら失敗してもいいけど、ペースランナーやってて、終盤で足が痛くなってペースダウンするなんてみっともない姿はさらしたくないので、少しプレッシャーがあるのだ。

(支部長)「そうは言うても、2時間30分ペースなんやから、なんとでもなるって」

支部長は今年も1週間前に試走したから、余裕しゃくしゃくだ。ま、でも、確かに2時間30分のペースなら、なんとかなるかな。



丸亀マラソンは毎年、レースの前日にランニング教室がある。ゲストは豪華だ。5年前は野口みずき選手がアテネオリンピックで金メダルを獲った後の初レースとして丸亀マラソンに出場し、前日のジョギング教室のゲストにもなった4年前には、Qちゃんこと高橋尚子様がお見えになり、我々ファンと一緒に至福の時を過ごされた3年前は、金哲彦氏が千葉真子を連れてジョギング教室をやった
そして、去年は、4年前に続き、Qちゃんこと高橋尚子様がお見えになり、金哲彦氏とコンビでジョギング教室が開催された。もちろん我々も、そのお手伝いをさせてもらったのは言うまでもない。去年、ペースランナーをやらないかという打診があったとき、すぐさまホイホイと引き受けたのは、Qちゃんとお近づきになれるからだった。4年前にQさまが来てジョギング教室やったときは、雪がちらつく寒さの中、何時間も前から震えながら開門を待ったのだが、昨年は、スタッフの一員としてお手伝いしたので、Qさまと一緒に控え室で懇親したりできたのだ。

そして、今年は、3年前に続き、金哲彦氏が千葉真子を連れてランニング・クリニックをやるのだ。もちろん、我々も去年と同じく、そのお手伝いをする事になった。

前日のランニング・クリニックで金さんや千葉ちゃんと一緒に
(前列左から石材店、幹事長、金さん、千葉ちゃん、など)

千葉ちゃんは、Qさまほどのオーラはないけど、実は結構かわいい。明るくて素敵なキャラクターなので、一緒にいると、とても楽しい。なかなか得がたいキャラクターだ。
さて、いよいよランニング・クリニックだ。
最初にストレッチのやり方なんかを丁寧に教えてもらう。千葉ちゃんが金さんとのやり取りで、例のハイトーンでハイテンションで話すのを聞いていると、本当に面白くて楽しい。まるで漫才みたいだ。ただ、去年のQさまに比べると、どうしても一般的な人気や知名度は低いため、去年に比べて参加者は少なかった。だけど、逆に言えば、それだけ熱心な人が参加しているようで、去年のように、実はランニングには興味ないけど、Qちゃん見たさに参加した、ってな感じの人はいなくて、みんな一生懸命やってた。

その後は、ペースランナーに合わせて軽くジョギングする。本番のレースと同じペースで走ってみるのだ。2時間30分ペースを目標にしている人なんて、あんまりいないだろう、なんて思ったら大間違いで、これが結構いたので、やり甲斐があった。やっぱり近年のマラソンブームは凄い。ものすごく底辺が広がっている。ただし、かなり遅いペースなのに、スタジアムを軽く5周(2km)走っただけで、既にゼイゼイ苦しそうになってる人もいた。明日のレース本番は大丈夫かなあ。
ランニング・クリニックは1時間ほどで終わったけど、千葉ちゃんはサイン会とかマスコミの取材対応がある。サイン会は思った以上に盛況で、ファンが群がっていた。その間、僕らは控え室に戻り、明日の打ち合わせをする。

まず問題になるのがペース配分だ。ペースランナーってのは、例えば2時間ペースなら、最初は調子に乗って飛ばして、終盤、力尽きてペースダウンして、結果的に2時間ジャストでゴールした、なんてのは駄目だ。当り前だ。そんなんじゃ真面目なランナーの目安にならない。できるだけ正確に最初から最後まで1km5分40秒の一定のペースで走らなければならないのだ

(矢野)「いやいや、そうでもないでしょ。
       普通、2時間でゴールする選手って、最初から最後まで1km5分40秒のペースを守ってゴールするんじゃなくて、
       最初はもっと速いペースで走り、終盤はペースダウンして、結果的に仕上がりが2時間になるんですよねえ。
       そういう人の目安として走るのなら、同様に最初は速めに走って、終盤を遅めにした方がいいんじゃないですか?」
(石材店)「僕もそう思いますねえ。僕らが最初から1km5分40秒のペースで走ってると、
       最初はそれに合わせて走っていた人が終盤に力尽きて、2時間でゴールできなくなりますよ」
(幹事長)「でも、それこそペース配分が難しいぞ。
       やっぱり、ここは割り切って、時計代わりに正確に一定のペースで走るべきじゃない?」


と議論は白熱したが、最近、参加者が多くてスタート直後は大混雑になり、我々がスタートラインを越えるのは、スタートの合図が鳴ってから10分くらい経ってからになるので、そのロスを取り戻すためには、もっと早いペースで走らないといけないって事に気付き、結局は、各自の判断に任せて、極端なタイムのアップダウンが無いようにしながら、目標のタイムでゴールするという方針となった。
2時間30分を受け持つ僕と支部長は、僕が2時間29分ペース、支部長が2時間31分ペースでゴールする事になり、それを21.0975kmで割った厳密なペース配分表を作って持ってきてたんだけど、結局、スタート時にタイムロスが10分ほどあるので、なんの意味も無かった。

それから、風船をどこに付けるかも問題だ。帽子に付けるのが一番目立つし、邪魔にならないんだけど、それだと飛んで行っちゃうかもしれないので、肩の辺りに付けることにした。



レース当日は、いつものように矢野選手が僕の家に集合して、そこへ支部長が同僚のヤイさんの車で迎えにきた。ヤイさんは、こういったレースに参加するのは初めてだが、元々スポーツマンのうえ、かなり練習は積んでいるらしく、なんとなく余裕の表情だ。4人で出発し、途中でゾウ坂出を拾って5人でスタジアムに着いた。ゾウ坂出とは、1ヵ月前に満濃リレーマラソンで一緒に走ったばかりだ。ヤイさんとゾウ坂出は一般選手として参加するので、そこで分かれ、僕と支部長と矢野選手はスタッフ控え室へ向かう。

今年の招待選手は、男子では昨年同様、モグスとダニエルが目玉だ。モグスは3年前の大会では、当時世界歴代10位となる59分48秒で優勝している。1時間を切るなんて、もう想像を絶する驚異的な速さだ。1km当たり2分50秒だ。100mなら17秒だ。

(幹事長)「100mでも、着いていけんかも」
(支部長)「足がつりそうですねえ」


モグスは、去年のこの大会でも優勝した。そして、去年の大会で2位だったのがダニエルだ。
一方、女子の目玉はマーラ・ヤマウチだ。北京オリンピックで6位になったのが記憶に残るが、彼女は去年のこの大会で優勝している。他には2004年の東京国際女子マラソンで優勝したジェノベーゼとか、2007年のロッテルダムマラソンで優勝した大南博美とかがいる。
こういった世界レベルのランナーが参加する一方で、僕らのように2時間30分とか3時間のペースランナーと一緒にゴールする市民ランナーも大挙して参加するのが面白いところだ。同じレースとはいえ、全く別の世界が展開されるのだ。

打ち合わせも終わり、千葉ちゃんはサイン会用に自分の本に忙しそうに一生懸命サインを始めたが、横から割り込んでサインをもらった。ごめんなさい。
ウォーミングアップという発想が根本的に無い僕と支部長がヒマを持てあましてたら、矢野選手が汗を流しながらウォーミングアップから戻ってきた。

(矢野)「こら、暑いっすよ!」

どんなもんかと外へ出てみると、気温は低いんだけど、天気が良くて、しかも風がほとんど無いから、走ってると暑くなる可能性が高い。2時間ペースで走るのなら、この天気なら迷わずランニングか半そでTシャツだ。ただ、2時間30分の超スローペースで走るとなると、体もそんなに熱くはならないと思われるので、あんまり薄着する訳にはいかない。でも、去年はかなり寒かったので、長袖のシャツの上からウィンドブレーカーを着て、さらにペースを表示したビブスを着て、それでちょうど良かったけど、今年は、それじゃあ暑すぎるだろう。悩んだ結果、半袖のTシャツとウィンドブレーカーという組み合わせにした。

今年のペースランナー5組10人の勢揃い

スタート時間が近づいてきたので、スタート位置へ移動する。今年は「2時間30分ペースランナー」って大きく書いたプラカードを掲げた女子が、お付きとして一緒に列んでくれた。

(幹事長)「まさか、それを持ったまま一緒に走ってくれたりして?」
(女子)「まさか、あり得ませんよね」


招待選手を先頭に、持ちタイムの速い順番に並んだスタート地点において、1時間30分、1時間45分、2時間の各ペースランナーは、同じくらいのペースのランナーが並んでいる辺りで一緒にスタートするのだが、2時間30分と3時間のペースランナーは、最後尾から出発することにした。

それにしても、今年はまた一段と参加者が多い。なんでも1万人近く集まったらしい。ここんとこ毎年、急増している。昨今のマラソンブームのうえ、何年か前から制限時間を大幅に緩和したほか、この大会は定員で締め切ることなく、なんぼでも参加者を受け入れるのが要因だ。なんと、大会の前日まで受け付けてくれるのだ。これは、スタート会場がキャパの大きい丸亀スタジアムだからできる事だし、タイム計測はチップによってネット計測してくれるので、スタート地点でパニックにならないからだ。

いよいよ遠くでスタートの合図が聞こえた。だけど、ものすごい数のランナーの最後尾に着き、しかもランナー達はネット計測だから油断してて、スタート地点を過ぎるまでダラダラ歩いていくから、ものすごく時間がかかる。あまりに混雑しているから、走るなんて出来やしないのは確かだけど。ただ、満員電車状態のままスタート地点まで辿り着くと、さすがにみんないきなり走り始めた。
結局、去年はスタート地点まで5分かかったのが、今年はスタート地点まで10分もかかってしまった。なので、2時間30分ペースで1km7分ちょっとと計算していたペースは、2時間20分ペースとなり、1km当たり30秒くらい速くしなければならなくなった。それでも1km6分40秒という超スローペースに変わりはないんだけど、せっかく用意した1kmごとのタイム表が全く役立たずになってしまった。
ここで支部長と作戦を立て直す。最初はちょっと速いペースで走り、ロスタイムの10分を取り戻したら、本来の1km7分ちょっとのペースに戻すのか、それとも、こうなったら最初から最後まで正確に1km6分40秒を維持して走るか。

(支部長)「ま、ちょっと自然体で走ってみましょう」

て事で、まずは、かなりゆっくり目で自然に走ってみた。そしたら、だいたい1km6分30秒くらいの、ちょうど良いペースだったので、そのまま走り、本来の目標タイムに追いついたところでペースダウンする事にした。
ただ、最後尾から走り始めたため、大勢のランナーを追い抜いていかねばならない。去年もランナーの多さにびっくりしたが、今年は一段と多い。参加者が1万人近くいるんだから当たり前と言えば当たり前だが、それにしても多い。

思った通り、今日は快晴のうえ、風が無い。気温は決して高くはないけど、走ってると暑くなる。給水所では十分に水分を補給する。
不安要素だった風船は、意外に邪魔にならず、空気抵抗も気になるようなものではなかった。少なくとも風が無ければ、そんなに後にたなびいたりしないので、よく目立つようだ。本来の目的とは全然違うけど、沿道の子供達に人気だった。「風船つけて走ってる!」とか言われて、大人気だ。満濃公園のリレーマラソンに動物チームで出たときのような声援を受けて、なんとなく嬉しいので、声が掛かれば手を振って愛嬌を振りまいて走った。ちょっと本来の趣旨と違うけど。
ただ、周りに人が少ない時は全然問題無いけど、人混みを掻き分けて追い抜く時は、やっぱり風船は邪魔になるような気がした。本当はあんまり人を掻き分けて追い抜いたりしたくないんだけど、一定のペースを維持しようとしたら、どうしても追い抜いて行かざるを得ない。その時は、ランナーの邪魔になるといけないので、手で風船をひっぱって短く持って走った。さらに、ちょっと風が吹くと、風船が流されて、思いもしなかった方角の人の邪魔になったりする。風船はよく目立って良いのだけど、一方で、かなり邪魔になってたんじゃないかなあっていう不安はある。
折り返しのすれ違いで確認すると、2時間ペースの矢野選手も、周りにランナーが密集して、風船が邪魔になって走りにくそうだった。

天気はずっと晴れで、風もあんまり吹かないから、ウィンドブレーカーがちょっと暑い。ペースが遅いから汗はあんまりかかないけど、それでもウィンドブレーカーなんか無しで思いっきり気持ちよく走りたい気分だ。

15km地点の辺りで、ようやくタイムロスを取り戻し、本来のタイムテーブルに沿った走りに切り替える。つまり、かなりペースダウンしたという訳だ。この辺りに来ると、大半のランナーがペースダウンするから、結果的に、ちょうど良かったかもしれない。僕らの姿を見て「この人に着いていったら2時間30分でゴールできるんだな」と思って、なんとか着いてきてくれる人が多かった。
その中で、一人の男性が、本当に嬉しそうに話しかけてくる。

(男性)「やっと2時間30分のペースランナーが見つかった。良かったわあ。
       今までずっと探してたけど見つからんかった。どこにおったんですか?」
(幹事長)「僕ら最後尾からスタートしたから、ようやく本来の2時間30分のペースに戻ったとこですわ」


この人は、奈良からわざわざ来たとの事だけど、仲間はみんな速くて、一人孤独に走っていたらしい。で、僕らの姿が見えなかったから、不安で不安で仕方なかったらしい。この後は、ずうっと僕と話しながら一緒に走ってゴールした。
他には「ネットですかグロスですか?」と尋ねてくるランナーも多かった。「僕らはグロスの時間で走ってますから、みなさんは数分の貯金がありますよ」なんて言うと、安心して、ゆっくり走っていた。嘘でも「これネットですから、頑張って下さいよう」って言った方が良かったかも。

終盤の3kmほどの直線コースに入ると、力尽きて歩いている人も多いが、こういう人には片っ端から「もう、あと3kmだよ。頑張って最後まで走ろうよ」なんて声を掛けると、蘇って走り始める人が非常に多かった。これは嬉しかった。最後は気力の問題の場合が多いから、なんとなく気が抜けてプッツンして歩いていた人が、僕らのかけ声で、もう一度、やる気を出して走り始めた、なんていうケースが多いのだ。最後にスタジアムに帰ってきて1周ちょっと走るのだが、あと少しってところまで来ているのに歩いている人がいる。こうやって、くじけそうな人に声を掛けて蘇らせるのが楽しくなり、最後まで楽しく走る事ができた。

後を見ると、支部長もジャスト2分差でゴールした。去年と同様、精密機械のような正確なピッチを刻む人間ランニングマシーンのコンビである。

(支部長)「今年も余裕で終わりましたなあ」
(幹事長)「自画自賛は気持ちが良いなあ」


去年は、僕らの後は、それほどランナーも多くなかったけど、今年はまだまだ夥しい数のランナーがやってくる。そして最後に3時間のペースランナーの石材店らが現れた。

(石材店)「もう、めっちゃ疲れました。こんな妙な疲労感は初めてですよ」

さすがに普段の倍の時間で走るのは、かなり厳しかったようだ。

(石材店)「しかも、僕らが制限時間みたいなものですから、僕らが追い抜いたランナーってのは、
       タイムオーバーで失格を意味するんですよ。だから励ますのが必死で」


確かにそうだ。3時間のペースランナーに抜かれるって事は、制限時間内に帰ってこられないって事だから、これは目安というより、死刑宣告みたいなものだ。いくらネット計測で数分の貯金があるとは言っても、関門はグロスの時間で管理しているから、アウトになってしまうのだ。

レースの方は、今年は去年とは入れ替わってダニエルが優勝し、モグスは2位だった。ダニエルは去年よりタイムが良かった。こいつら、ほんとにすごい。一方、女子はチャップルっていうオーストラリアの選手が優勝した。あんまり聞いたことない選手だ。マーラ・ヤマウチは6位だった。

僕らの仲間では、ゾウ坂出は、15km地点付近まで2時間のペースランナーの矢野選手に着いていったんだけど、そこからだんだんペースダウンしてしまい、惜しくも2時間を切れなかった。しかし、それでも確実に去年よりタイムが良くなっており、次のレースでは2時間を切れそうな予感。レース初参加のヤイさんは、2時間を切る好タイムでゴールしていた。大したものだなあ。



レースの夜は、今年もゲストの金哲彦氏を囲んで打ち上げ会を開催した。ゾウ坂出が、ちょっと早いバレンタインデーのクッキーを焼いて、みんなに配ってくれた。
金さんからは、今年も色々とアドバイスを頂いた。

(支部長)「と言いながら、結局、すぐ忘れてますけどね」
(幹事長)「覚えてるのは、ウォーミングアップなんかは、あんまり無理してはいけない、なんてサボることばっかりやもんな」


また、金さんが大会のプロデューサーをつとめる限り、今後も基本的にペースランナーは設けるとのことなので、来年以降もペースランナーとしてお手伝いできそうだ。
これまで、丸亀マラソンは自己ベストを更新できる高速レースとして1年のうちでも大きな目標だったから、これに参加できないってのは残念でもあるけど、ペースランナーとしての充実感と比べると何の問題もない。

てことで、来年以降も四電ペンギンズはペースランナーで頑張るよ〜!


〜おしまい〜




戦績のメニューへ