第30回 瀬戸内海タートルマラソン大会
2009年11月29日(日)、小豆島において第30回瀬戸内海タートルマラソン全国大会が開催された。記念すべき第30回大会だ。
僕は1995年の第16回から、ほぼ毎年出ている。結構、坂が多いので、決して楽なコースではないのだが、香川県内では唯一のフルマラソンもあるので、フルマラソンに出ることも多い。ただ、去年は坂が無いフラットな徳島マラソンができたので、瀬戸内海タートルマラソンはハーフマラソンにした。さらに今年は、徳島マラソンに加え、10月に青森で弘前アップルマラソンにも出たので、もうフルマラソンはいいかな、という気持ちもあった。ただ、弘前アップルマラソンは、あとゴールまで5kmというところまで快調だったのに、突然足が動かなくなり、最後に非常に悔しい思いをしたので、そのリベンジをタートルマラソンで晴らしたいという気持ちもあった。
(テニス君)「じゃあ、一緒にフルマラソンに出ましょうよ!」
彼にとって、マラソンとはフルマラソンの事であり、いかに練習量が少なくても、フルマラソン以外の選択肢は無いようだ。
また、今年、四万十ウルトラマラソンで60kmを走破した矢野選手も、フルマラソンに申し込んだ。
(矢野)「今年は超長距離の練習を積んできましたからね」
一方、石材店は、子供の野球チームのコーチや審判に引っ張り出されて、練習がままならないため、フルマラソンは諦めてハーフマラソンに申し込んだ。
(幹事長)「う〜む。こら悩むところやなあ。ゾウ坂出はどうするん?」
ゾウ坂出(元ミス坂出)は去年、初参加して大会を盛り上げた事が記憶に新しい。彼女はいくらなんでもフルマラソンには出ないだろうから、彼女がハーフマラソンに出るのなら、そのエスコートと称して僕もハーフマラソンに出よう。
(ゾウ)「実は、その日、着物装いコンテスト中国・四国大会があって、そっちに出るんですよぅ」
なんと、そななイベントがあるのか。タートルマラソンより華やかそうだなあ。
(幹事長)「じゃ、僕もそっちを見に行こうかな」
(支部長)「これこれ」
(幹事長)「で、支部長はどうするん?」
(支部長)「いや、ちょっとゴルフが先約で入ってて」
(幹事長)「なんじゃとーっ!」
支部長もゾウ坂出が出るのなら、ゴルフがあろうが葬式があろうが、絶対に出てくるんだけどなあ。
さらに、海外のレースにしか出ないと豪語する驚愕の女性ランナートラベル恵子も今年は出ない。でも、船のチケットを手配してくれたので、感謝。
なんだか、今年は参加者が少ないなあ。
て事で、総合的に悩んだ結果、ハーフマラソンでお茶を濁すことにした。
ただでさえ参加者が少なかった今年の瀬戸内海タートルマラソンなんだけど、大会直前になってテニス君が1ヵ月単位で出張に行ってしまい、参加できなくなった。
(幹事長)「どこ行ったん?」
(石材店)「あんまり水が無い遠い国です」
さらに、石材店すら当日になって仕事が忙しくて来られなかった。
結局、朝、船で集合したのは、私と矢野選手だけになった。
(矢野)「集合って言うんですか?」
しかも、集合が遅かったせいで、座席は既に満席だ。仕方なく床にしゃがみ込む。ふと周囲を見渡すと、去年、ミス坂出と一緒に参加したO林選手がいた。今年は彼も一人で参加してるとのこと。ま、孤独な方が精神力を高めやすいんですけどね。
一息ついたところで、朝食のパンを食べる。以前は、レースの3時間前にはエネルギーを補給しておかないといけないって思って、朝早く起きてすぐに家で朝食を食べていたが、どうも最近、レース中にお腹を壊す事が多く、もしかして朝早く食べ過ぎるのが良くないのかなあ、なんて思っているのだ。しかも、十分にエネルギーを補給しようと思って大量に食べていたし。さらに言えば、前日の夕食も大量の炭水化物を食べていた。確かに、事前にエネルギーを補給しておくことは重要なんだけど、普段と違うことをして体調が狂ったのでは元も子もない。なので、今回は、普段と同じような時間に、量も少なめに食べることにした。
1時間の船旅を終えて、島に着く。今日の天気は、数日前の予報では雨だったけど、直前の予報はなんとか曇り。3年前のように雨が降ると寒くて体が冷えてしまい、悲惨なレースになってしまう。今日は風も無さそうだし、このまま雨が降らなければベストコンディションだ。
去年は天気は良かったけど気温が低いうえ、風が強烈にきつかったため、寒さを防ぐために長袖のシャツを着た。それでも終盤に足が止まってペースダウンしたときは寒かったくらいだ。しかし、今日は気温も低くないし風も無いから、迷わず半袖のTシャツだ。
フルマラソンとハーフマラソンでアベック優勝を狙う矢野選手(左)と幹事長(右)
(幹事長)「ウォーミングアップはせんの?」
(矢野)「フルマラソンの時は、さすがにウォーミングアップはええですわ」
当然、僕もウォーミングアップなんかで体力を消費したりはしない。て言うか、今日は遅い船で来たため、スタートまで、もうあんまり時間は無いのだ。特にスタートが10分早いフルマラソンに出る矢野選手としては、そんなにゆっくりはしていられない。
外に出ると、空は薄曇り状態で、風も無く、ちょうど良い感じ。なんとなく攻める気持ちがわいてくる。今回の目標は、とりあえず大会自己ベストの更新だ。このレースは、坂が多く、フルマラソンなら片道7つづつ計14の大きな坂があり、ハーフマラソンでも片道に3つ半、往復で7つの坂がある。こんなに坂が多いコースで自己ベストのタイムを出すのは非現実的なので、あくまでも、このレースでの大会自己ベストを狙う。そもそも坂の有無に関わらず、マラソンはコースや季節によってタイムが大きく変わってくるので、このレースに限らず、どのレースでも、とりあえず大会自己ベストを狙うのが良い子の正しい道だ。
この大会には14年前の1995年の第16回から、ほぼ毎年出ている。フルマラソンに出ることもあり、ハーフマラソンは今年で9回目だ。このうち、大会自己ベストは6年前の2003年に出している。あの頃は、出るレース出るレース自己ベストを出していて、1つのピークを迎えていた。その40代半ばに出した記録を、50を過ぎてから更新できるのか、という素朴な疑問もあるが、マラソンマンの亀ちゃんによると、そなな事は関係ないらしい。
(幹事長)「最近、タイムが伸び悩んでるんやけど、やっぱ歳やろか?」
(亀ちゃん)「んなな事は関係ない。んなな事は、もっとレベルの高い奴が言う事や。
もっと練習を積んでギリギリまでやってる奴なら、歳の影響も出てくる。
けど、お前みたいにロクに練習もせん奴は、歳は関係ない。
単に練習サボってるからタイムが伸び悩んでるだけや」
大変、分かりやすい励ましのお言葉である。まだまだ、やれるという事だ。ちゃんと練習すれば、の前提だが。
目標は自己ベストとして、なんと言っても重要なのはレース展開だ。これについては、弘前アップルマラソンの記事にも、庵治マラソンの記事にもしつこく書いているが、今回も強調しておかなければならない。今年、私は遂に悟りを開いたのだ。「最初に無理して飛ばすと、絶対に終盤に潰れてしまう」のだ。
(矢野)「そんなん、悟りを開かんでも、小学生でも分かりますよ」
(幹事長)「程度の問題なのよ」
基本的には、私もそれくらい最初から分かっている。記憶力が極端に弱い私でも、数多い過去の惨敗の記憶が嫌と言うほど残っているからだ。しかし、重要なのは、最初にどれくらい頑張るか、という程度の問題だ。最初から歩くようなペースで走れば、そりゃ、最後までペースは落ちないだろう。今年の丸亀マラソンではペースランナーを務めたが、ハーフマラソンを2時間半で走るという驚異的なスローペースだったため、最初から最後まで精緻なマシーンのように正確にピッチを刻んで走れた。しかし、真剣に走るレースでは、そなな事はしない。適度に頑張らないと良いタイムは出ないからだ。
これまでの経験からすれば、最初に過度に無理すれば終盤にガクンと落ち、最初にそこそこ頑張れば終盤には緩やかな落ち込みで済む。なので、去年までは、「終盤にガクンと落ちずにギリギリで緩やかなペースダウンで済む程度に前半を頑張る」というレース展開の作戦を練っていた。目標タイムをクリアするには、終盤に緩やかなペースダウンで済むギリギリで、前半にどれだけ貯金できるかが勝負の分かれ目と考えていたのだ。
しかし、当然ながら、そんなにうまくはいかない。前半に計画通りの貯金をするのは難しくはなく、ちょっと頑張れば、なんぼでも貯金は出来る。しかし、終盤のペースの落ち方は、たいていの場合、想定した以上に大幅にガクンと落ち込んでしまい、前半の貯金など、一気に無くなってしまうのだ。前半に貯金すればするほど終盤はその何倍も借金を返すような羽目になる。目標を高く設定すればするほど、当然、前半での無理が強くなり、終盤での落ち込みがひどくなる。その結果は、惨敗だ。
そこで、今年、ハタと気が付いた。そもそも前半で貯金しようとするから、終盤にペースダウンするのだ。前半で1kmあたり10秒や20秒の貯金をコツコツとしていったって、終盤で足が止まって歩いたりすると、何の意味も無い。前半の、ほんの少しの無理が、終盤には大きな負担になって返ってくる。逆に言えば、前半に適度に頑張るのを止めて、かなり抑えたペースで走っていれば、終盤もペースダウンしないはずだ。そうすれば前半で貯金する必要も無いって訳だ。
(矢野)「結局、当り前すぎる結論ですけど」
(幹事長)「当り前の事をできるかどうかが問題なのよ」
前半を、かなり抑えたペースで走れば、終盤でも全くペースダウンしないかも知れない。結果的に、その方がタイムが良くなるかもしれない。頭では分かっているつもりでも、これまでは、いざレースに臨むと、いつもいつも、ついつい色気が出て、好タイムを狙ってしまって、前半に過度に無理をしてしまうのだ。普通に走っているつもりなのに、前半のタイムが良いと、何となく調子が良いような気がして、「なんだか今日は、いけそうな気がする〜」(天津木村)って感じになってしまう。単に、周囲のランナーのハイペースにつられてオーバーペースになっているだけなんだけど、レース本番で興奮状態にあるため無理している自覚が無いからだ。これまで何回痛い目をみていても、懲りない。相変わらずロクな練習も出来てないくせに、懲りない。ついつい勘違いしてしまう。そして、終盤に一気に力尽きてしまうのだ。去年のタートルマラソンが典型だ。前半に調子に乗って飛ばした結果、後半で突然足が止まってしまい、惨憺たる結果に終わった。
それが、今年の徳島マラソンでは、前半は強烈な向かい風だったため、無理せずに徹底的にスローペースにしたこともあり、終盤までそれほどペースダウンしなかった。また、6月の走れメロスマラソンでは、初めての青森でのレースだし、ピッグ増田とおしゃべりしながら走っていたこともあり、前半はかなり抑えたペースとなったため、ハーフマラソンとは言え、最初から最後まで、ほとんど同じペースで走れた。しかも、レース後も足が全然痛くならないのだ。それで目から鱗が落ちたというか、開眼したというか、一種の悟りを開いたのだ。
(矢野)「単に、最初から遅かったっていう事ですよね。タイムもパッとしなかったし」
(幹事長)「最初が遅いと、あそこまで終盤にペースダウンしないってのは、新鮮な驚きだったよ」
さらに、弘前アップルマラソンでも、できるだけ最後まで一定のペースで走ることを目標として、最初から抑えたペースで走り、どこまで一定のペースで走れるか試してみた。あまりの練習不足のため、最終的には、あと5kmというところで突然、足が動かなくなり、結果的には惨敗したけど、37km地点まではほとんどペースが落ちず、そこまでのレース展開は満足できるものだった。そして、最後に、先月の庵治マラソンでは、距離が12kmと短いこともあり、ペースが落ちないどころか、後半の方がタイムが断然速かった。こんなん初めて。
(矢野)「それは、やっぱり前半、抑えすぎたって事ですね。余力を残しすぎですよ」
(幹事長)「確かに、あのレースは、最初から、もうちょっと飛ばせばよかったと後悔はしてるけど、一応、大会自己ベストだったのよ」
て事で、「前半を適度に頑張って、後半は緩やかなペースダウンで踏みとどまる」という従来のレース展開を改め、「前半は意識的に抑えて、終盤までペースを維持する。あわよくば終盤でペースアップさえ試みちゃう」というレース展開に自信を持ち始めたのだ。そして、その総仕上げとして、今年最後のレースである本大会でも実戦に移すことにした。
(矢野)「それで、練習はできとんですか?」
(幹事長)「問題は、それやな」
相変わらずである。はっきり言って今回も練習不足なのは否定しようのない事実だ。言い訳をさせてもらうと、青森に単身赴任しているのが構造的な原因だ。
従来、僕の練習方法は、週末のLSDだけだった。石材店のように、平日の朝、会社に行く前とか、あるいは仕事が終ってから走るなんて発想は皆無で、週末の土曜日か日曜日の天気の良い日に一回だけ走るのだ。元々、走り始めたのは、レースで良い記録を出すためではなく、あくまでも天気の良い週末に走ると気持ち良いからだ。その延長というか余興でレースにも出ているだけだ。
(幹事長)「レースで好タイムを出すために一生懸命トレーニングするなんて本末転倒も甚だしい!」
(矢野)「あんまり偉そうに言える事でもないですけど」
(幹事長)「ま、無理すると体にも良くないし」
(矢野)「全然無理しないから、幹事長は故障しらずなんですねえ」
ただし、週1回しか走らないから、距離は長めだった。ハーフマラソンの前なら20kmくらい、フルマラソンの前ならもうちょっと長く走る。
しかし、青森に単身赴任してからは、3週のうち2週は高松に帰省しており、帰省するとなると往復に時間もかかるし体も疲れるので高松に帰った時はゆっくり休むため基本的には走らない。青森に残っている週は、基本的に何かイベントがあるから残っているのだから、やはり走らない。て事で、週末に走る機会が無くなってしまった。そのため、練習は専ら平日の仕事の後となる。
ただ、これが辛い。夏場なら仕事が終わっても、すぐに帰れば、まだ明るいので外を走れる。これは、なかなか気持ち良い。しかし緯度が高く、しかも日本の東の方にある青森は、秋になると日暮れが早く、仕事が終わって帰れば、もう真っ暗。それに、11月になると吹雪きも始まり、寒くて走れない。なので、寮のトレーニング室のランニングマシーンが唯一の練習となる。これが、ほんっとにつまんなくて退屈で、イライラして発狂しそうになる。
(幹事長)「レースのために苦痛なトレーニングするなんて、まさに本末転倒だっ!」
それでも仕方ないから練習するけど、ウォークマン聴きながら気を紛らわせながら、どんなに頑張っても、最大で5kmが限界だ。週末に帰省すると寮に帰るのは週4日だから、毎日走ったとしても週に4回だ。でも、しんどいから毎日は走らないから、せいぜい週に2〜3回だ。仮に3kmを3回走っても計9kmなので、週末に20km走るよりはるかに短い。つまり、圧倒的に練習不足なのだ。
ただ、しかし、週1回長距離を走るよりも、距離は短くてもいいから週に3回くらい走った方がいい、という説もある。今年は、徳島マラソンから始まって、走れメロスマラソンも弘前アップルマラソンも庵治マラソンも、同じような状況の中、結構、満足できる走りが多かった。
(矢野)「どこで満足するか主観的な問題ですけどね」
(幹事長)「何を言うか。4レースとも、大会自己ベストだったんだぞ」
(矢野)「徳島マラソンは2回目だし、走れメロスマラソンと弘前アップルマラソンは初出場じゃないですかっ!」
ま、練習不足でも、どこまで戦えるか、楽しみではある。
いよいよスタートだ。まずはフルマラソンの部から。矢野選手が自信溢れる表情でダッシュしていく。
そして10分後にハーフマラソンのスタートだ。これまでなら、スタート直後は気持ちが高ぶっているうえ、ガンガン走り始める周囲のペースにつられて、ついついオーバーペースになって終盤に力尽きるが、今回は最初はできるだけ抑えて走る方針なので、周囲がガンガン走っても気にせず、自分だけの世界に入って淡々と走る。昔は、ほんと、負けるのが嫌で、ムキになって走ったけど、僕も大人になったものだ。
まずは自然体で走ってみて、最初の1kmのタイムで、その日の調子を把握する。速いと調子が良いって事だけど、速すぎると終盤で力尽きるから抑えなければならない。遅いと調子が悪いって事だけど、あんまり遅すぎると良いタイムも望めないので、少しは頑張る。
ところーが!このレースは、前半は距離表示が5kmおきにしか無いんだった!がーん。忘れてた。去年までは、できるだけ前半で貯金するっていう方針のもと、とにかく前半から行けるとこまで行けって感じで頑張っていたので、最初の1kmのペースなんて気にしなかった。とにかく頑張れるだけ頑張って、終盤に力尽きたらそれまでよ、って感じで、ペース配分なんて発想が無かったから、はっきり言って、途中の距離表示なんか、あっても無くても同じだった。しかし、今年は違うぞ。最初からペース配分が重要なのだ。それなのに、このレースは5kmおきにしか距離表示が無いから、こらもう困る。仕方ないから、とにかく無理せず自然体で5km走るしかない。
で、自然体で走った感じだけで言えば、なんとなく調子が良い。気持ちよく足が前に出る。なんとなく軽快な気がする。周囲のランナーから取り残されてる感じもしない。要するに、「なんだか今日は、いけそうな気がする〜」的な状態。
(矢野)「いかんやないですかっ!最初に調子に乗りすぎて終盤に力尽きるパターンですよ!結局、去年までと一緒やないですか」
確かに、その通り。これじゃあ、結局、去年までの惨敗レースの二の舞になっちゃう。ただ、今日は、別に周囲に惑わされているとか、本番でアドレナリンが出ているからという感じじゃなくて、本当に自然体なのに、なんだか体が軽いって感じ。いずれにしても、1kmごとの距離表示が無いからペースが分からないので、このまま行くしかない。
2kmほど行ったところで最初の坂が現れるが、まだ序の口なので、みんなペースを落とさずに上っていくが、僕はつられないように、できるだけ抑制的に上る。下りは、バカみたいにガムシャラに駆け下りると足を痛めて、終盤に足が動かなくなるんだけど、ま、ハーフマラソンだし、なんとか乗り切れるだろうと思い、結構、勢いつけて駆け下りる。
しばらく行くと、後ろ姿がきれいな女性ランナーが走っている。背も高く、スラッとして、ウェアもばっちり決めているし、なんと言っても走り方がきれいだ。ただ、後ろ姿がきれいな女性ランナーって、無理して追い抜いて前に回って確認すると、実はおばさんだったりすることも多いから要注意だ。
(矢野)「何が要注意なんですか?」
(幹事長)「無理して追い抜いたのに、ガッカリすると、ダメージが大きいのよ」
しかし、その女性ランナーは、追い抜きざまに確認しても、やはりきれいな人だった。サングラスしてて、よく分からないけど、あれ?
(幹事長)「なんや、H本さんやんかあ!」
(H本)「あら、こんにちわ!」
同じ会社のH本さんでした。彼女は庵治マラソンでも走ってて、マラソンやってるなんて知らなかったから、「よくレースなんか出てるん?」って聞いたら、「これが初レースなんです」なんて言ってた。だけど、かなり早くて、今年は僕も支部長も割と早かったから負けなかったけど、二人とも去年のタイムだったら負けていた。
(矢野)「何十年も走ってるのに、最近始めたばっかりの女性に負けるのは辛いですよねえ」
(幹事長)「何十年ってのはおおげさやけど、あんまり年季が関係ないってのは事実やなあ」
今日のレースだって、自分ではここまで結構、良いペースで来ているつもりだ。いくら彼女が前の方からスタートしていたとしても、ここでようやく追いついたって事は、そんなにペースは変わらないって事だ。ううむ。もしかして、やっぱり今日は、そんなに調子よくないのかな?
などと悩んでいると、ようやく5kmの距離表示が見えてきた。やはり、結構、速いペースだ。坂が無い丸亀マラソンと同じようなペースだ。つまり、坂があるこのレースとしては、かなり速いと言うか、速すぎるかも。このペースでは、終盤に力尽きる可能性が高いと心配になるほど。しかし、それでも、なんとなく「なんだか今日は、いけそうな気がする〜」。ま、やっぱり、記録には挑戦しないといけないから、調子が良い時は、果敢に攻めてみるべきだよな。
(矢野)「いかんやないですかっ!全然、抑制されてない。当初の作戦はどこ行ったんですか!」
まだ喉は全然渇いてないけど、最近の僕はよい子なので、最初からこまめに水分を補給する。喉が渇いてから飲み始めたのでは遅いからだ。
2つ目の坂をクリアし、3つ目の坂はかなり小さい、と思ったら、それはフェイントで、すぐ後に本当の3つ目の大きな坂が隠れてるんだけど、コースを熟知した僕には、そななフェイントは通用しない。ちゃんと心構えはできている。
この辺りで、折り返して帰ってくるトップの選手達とすれ違う。みんな素晴らしく速いけど、ま、僕は、同じコースを走っているというだけで、同じ土俵で戦っている気はないので、無視する。逆に、10分早くスタートしたフルマラソンの選手のうち、遅い人達には追いついて追い越していく。僕がフルマラソンに出る時は、おびただしい数のハーフマラソンの選手に抜かれるけど、逆の立場で追い抜く選手は、そんなに多くない。
3つ目の坂を下りた辺りに、10kmの距離表示がある。タイムは最初の5kmと、ほぼ同じだ。最初の5kmは、スタートラインにたどり着くまでのタイムロスや、スタート直後の混雑でのタイムロスがあるから、それを差し引くと、ちょっとは遅くなっているけど、まだまだ早い。坂が多いコースとは思えないタイムだ。
そのまま快調に飛ばし、最後の4つ目の坂を上り始めた頃にハーフマラソンの折り返し点がある。フルマラソンの選手達は、まだまだ先まで進むんだけど、ハーフマラソンは、ここで帰ることになる。ここから先こそが、本当のマラソンの世界であり、それはフルマラソンを走る人だけが入っていける世界であり、ここで引き返すのは寂しい気持ちもあるんだけど、今日は、なんだか調子がよく、好タイム狙いに気持ちが切り替わっているので、フルマラソンに未練はない。いくら調子が良くても、こななハイペースでフルマラソンを走っていたら、絶対に潰れるもんな。
折り返してすれ違う選手を見ていたら、会社のT智が走ってくる。おやあ、あいつもマラソンなんかやってたっけ?僕との差はほとんど無い。なんとなく追い抜かれるのは時間の問題のような気がする。
さらに行くと、H本にすれ違う。「頑張って〜」と声を掛けながらハイタッチをするが、そんなに僕と差が開いている訳ではない。やっぱり彼女は早いんだ。ここまで、結構、調子よく来ているからいいものの、終盤でペースダウンすると、確実に逆転されそうだ。頑張って〜、なんて言って欲しいのは僕の方だ。
意外なライバルが続出したので、かなり気合いが入った。普段なら、この辺りから徐々にペースダウンしていく頃だが、今日はペースを維持し、あわよくばペースアップしたいところだ。なんて思っていたら、あっさりとT智が追い抜いていく。やっぱり。
(幹事長)「走ってるって知らんかった。よくレースには出てるん?」
(T智)「今日で4回レース目。この大会は初めてやけど」
なんと、今年、初めて走ったフルマラソンで、いきなり4時間を切って、自信を付けたらしい。やるなあ。
(矢野)「やっぱり、年季って関係ないんですねえ」
(幹事長)「悲しいけど、認めざるを得ない」
(矢野)「て言うか、要は練習量の問題ですね」
折り返しを過ぎてからは、距離表示がだんだん短くなっていく。今度は3km目に距離表示があった。気合いが入ったせいか、なんと、前半より少しだけど早くなっている。僕としてはこれは驚異だ。T智に抜かれたとは言え、まだまだ諦めてはならない。て言うか、足は全然疲れてなくて軽やかに動く。次の3kmも、ほぼ同じペースを保っている。
いよいよ残り5kmだ。ここまで来たら、後先考える必要もない。下り坂では思いっきり駆け下りる。終盤になると、距離表示は1kmごとに現れるようになってて、さすがに上り坂ではだいぶ遅くなっているが、下り坂の区間では、かなり無謀なほど早いペースだ。もちろん、このままいけば大会自己ベストは間違いない。
最後の大きな坂を下りると、ラスト2km。あとはフラットな道なので、もう全力疾走だ。と思ったのだけど、さすがにここへ来て急速に疲れが出てきたのか、全力でスパートしたつもりなのに、大きくペースダウンしている。いかん、いかん。ここまで来てくじけてはなるまい、と必死で足を動かし、最後の1kmはなんとか頑張ることができた。
結局、6年振りに大会自己ベストを更新する事ができた。
(矢野)「まずは、おめでとうございます」
(幹事長)「いやあ、わっはっは。それほどでもないよ、君」
(矢野)「確かに、全然それほどでもないタイムですよね」
ま、矢野選手や石材店とは比較にならない遅いタイムだけど、個人的にはとても嬉しい。
(幹事長)「勝因分析をしたいと思う」
(矢野)「何か意味あるんですか?」
庵治マラソンと今日のレースと、連続して大会自己ベストを更新できた勝因として、可能性としては4つ挙げられる。
@天候が良かった
庵治マラソンも本日のレースも、曇り空で暑くも寒くもなく、風も弱かった。
Aシューズが良かった
前から履いていたシューズを青森へ持って行ったため、最近、新しいシューズを買った。これが軽くて気持ちいい。
B練習方法が良かった
週末1回のLSDから、距離は短いけど週3回のランニングマシーンが効果的だった。
Cレース展開が良かった
前半を抑え気味に走ったため、後半もペースダウンせず、むしろペースアップした。
(矢野)「レース前には何だかんだ言ってたけど、結局、最初から調子に乗って走ってましたから、Cではないですね」
(幹事長)「そうか?気持ち的にはCを推したいんだけどなあ」
もちろん、たまたま体調が良かっただけかもしれない。あるいは、複合的な要因かも知れない。いずれにしても、今年最後のレースで満足できる結果を残せて良かった。
レース後は暖かいそうめんを食べ、気持ちよくフラフラしていると、H本さんに会う。「どうやった?」って記録表を見せてもらって、びっくり。すごい早い。去年の僕のタイムより早い。今年は調子よかったから負けなかったけど、去年だったら負けていた。
(矢野)「冷や汗ものですね」
(幹事長)「彼女には天性の才能があるのじゃよ」
そういう矢野選手は、惜しくもギリギリで自己ベストは更新ならなかったけど、相変わらず、僕が毎日練習してもかなわないような好タイムだった。フルマラソンで、最後まで力強い走りを見せた矢野選手に乾杯!
(矢野)「って、僕を放っておいて、先に帰ったじゃないですか!」
(幹事長)「いや、すまんすまん。ちょうどいい船があったもんだから」
ところで、着物装いコンテスト中国・四国大会があってレースに出られなかったゾウ坂出だが、なんとコンテストで優勝してしまった!
このコンテストは部門が「振袖」、「留袖」、「カジュアル」とか色々あって、彼女が出たのは「留袖」部門だ。そこで優勝してしまったのだ。一番華やかな「振袖」部門の優勝者が全体の優勝者になるという規定になっているため、彼女は全体では準優勝という位置づけにされてしまったけど、「振袖」部門の人と直接対決した訳ではないから、あくまでも彼女も優勝者だ。
審査は、美しさだけを競うのではなく、鏡を見ずに一人で着物をすばやく着て、そのスピードと美しさと、さらには歩き方、立ち姿、しゃべり方などを総合審査されるのだ。こんなんに優勝するとは、さすがは元ミス坂出だけある。
(幹事長)「すごいなあ。着物はよく着るん?」
(ゾウ)「いえいえ、最近、習い始めたばっかりですぅ。もう、ぶっつけ本番!」
ぶっつけ本番で優勝するところが、彼女のすごいところだ。
(ゾウ)「来年4月には、東京で世界大会があるんですよ。どうしようかなあ」
(幹事長)「何が、どうしようかなあ、や!そななん、出ないかんの決まってるやん!
出ろ、出るんだ。絶対に出るんだ!見に行くからな!」
(ゾウ)「ぱ、ぱお〜ん」
ということで、中国・四国大会で優勝したゾウ坂出は、来年は東京の世界大会に出ることになりました。みんなで応援に行こう!
(幹事長)「でも、その前に、満濃動物リレーがあるぞ!」
(ゾウ)「がってん承知の助だいっ!」
〜おしまい〜
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