第4回 高松ファミリー&クォーターマラソン in 庵治
2009年10月25日(日)、庵治町において高松ファミリー&クォーターマラソン in 庵治が開催された。
5月の小豆島オリーブマラソンはインフルエンザ騒ぎで中止になったし、汗見川清流マラソンや今治シティマラソンの代わりに、今年は青森で走れメロス マラソン大会や弘前アップルマラソンに出たりしたため、四国でのレースは、4月の徳島マラソン以来、実に半年ぶりだ。
この庵治マラソンは、今は亡き屋島一周クォーターマラソンを引き継いだもので、今年でまだ第4回目の由緒の無いレースだが、場所が高松の中心部から近いうえ、距離が12kmと手頃なため、初心者を誘いやすい。このレースをきっかけに、マラソンの泥沼に引きずり込むにはもってこいの設定だ。去年もライオン1号、ブタ2号、ゾウ坂出など、何も知らない子羊のような女子部員を甘い言葉でだまくらかして参加させてきたのだ。
(石材店)「ライオンとかゾウとか、あんまり子羊っぽくないですけど」
(幹事長)「で、今年の獲物は?」
(支部長)「いません!」
(石材店)「いません!」
あらら。今年は新人はいないのか。
ま、しかし、今年も去年に引き続き、強力女子部員であるゾウ坂出(旧姓ミス坂出)が参加する。
ただ、しかし、彼女の参加には、大きな暗雲が漂ってきた。ゾウ坂出は、支部長の甘い言葉に騙されて、レースの2週間前に、なんと小豆島一周100kmウォークなんていう大バカ野郎なイベントに参加すると言うのだ。こんな大アホなイベントに参加したがために足を故障し、庵治マラソンを欠場するなんてことになったらランナーとしては本末転倒だ。
(ゾウ)「そこまで言われるほどランナーでもないですけど」
小豆島一周100kmウォークというのは、支部長が3年前に参加したイベントだ。若気の至りで、一度はあんな辛いイベントに軽はずみに参加したのも仕方ないとは言え、まさか二度と参加するとは思ってなかった。3年もしたら、辛い記憶が薄れてきて、再度挑戦することになったらしい。
(幹事長)「あれほど辛かったはずやのに、ほんまに記憶力が悪いやっちゃなあ」
(支部長)「鳥頭のあんたに言われたくはないな」
僕も今年の7月、十和田湖一周50kmウォークなどと言うアホなイベントに参加したが、これはもう大変どころか死ぬような思いをした。ランニングと違ってウォーキングなどと言うものが、いかに無駄で無意味で空しくて時間とエネルギーと人生の浪費であるかを証明したようなイベントだった。
(支部長)「一般の人は、ランナーに対しても同じようなイメージを持ってますよ」
(幹事長)「何を言うか!この裏切り者めが!」
十和田湖一周50kmウォークは、ただのウォーキングじゃなくて、途中、標高1000m以上の山を越えていくという発狂じみたコースだったので、その地獄のような辛さは筆舌に尽くせないほどだった。しかし、それでも距離は50kmだ。大きな坂は少ないとは言え、小豆島の海岸線に沿って100kmも歩く小豆島一周100kmウォークには、アホさ加減で完敗だ。
それなのに、ああ、それなのに、ゾウ坂出が支部長に騙されて、一緒に参加するというのだ。
(ゾウ)「別に騙されてませんって」
(支部長)「人聞きの悪い」
(幹事長)「じゃあ、夢遊病状態になって崖から落ちかけた話とか、足の皮が全部剥けてしまった話とか、聞いた?」
(ゾウ)「えっ?ほ、ほんとですかっ!?」
(支部長)「話を勝手に作らんといて下さい!」
結局、僕の忠告も聞かず、ゾウ坂出は支部長と一緒に100kmウォークに参加してしまった。無事、生還するのを祈るのみだ。
さらに、追い討ちをかけるように、矢野選手がレースの1週間前に四万十川ウルトラマラソンに参加すると言うのだ。
(幹事長)「げげっ、100kmも走るん?」
(矢野)「いや、今年は初参加なんで、とりあえず60kmの部に出る予定です」
60kmとは言え、フルマラソンの1.5倍だ。これは強烈だ。あり得ない。よっぽど練習しないと完走は考えられない。
(矢野)「よっぽど練習しましたよ」
2週間前の100kmウォークと言い、1週間前の60kmマラソンと言い、よくもまあ、そなな過酷なレースに出るなんて、感心するというか、何と言うか、
(幹事長)「みんな、庵治マラソンを軽視しすぎてないかっ!」
ま、軽視されても仕方のないマイナーなレースなんですけどね。
結局、支部長とゾウ坂出は、足の痛みをこらえて、なんとか参加することとなったが、矢野選手はレース直前になっても決めかねている様子で、「当日の朝、足の痛みがひどくなければ行きます」との事だ。
で、レース当日は、支部長が迎えに来てくれて、一緒に高松駅まで石材店とゾウ坂出を迎えに行く。ゾウ坂出は、見た目は元気そうだ。
(幹事長)「100kmウォークは、どうやった?」
(ゾウ)「途中の関門でタイムオーバーとなって、60kmでリタイアしました。きつかったですねえ」
(幹事長)「それでも60kmも歩いたんか!?」
いやあ、立派というか、アホというか、よくもまあ、何が楽しくて60kmも歩くんだろう。
(支部長)「私は3年前に続き、見事、完歩しましたよ」
(幹事長)「知らん」
二人とも、足に後遺症が残っていて、普段使わない筋肉とか関節が痛いようだ。そらそうやろなあ。それが普通だ。それなのに参加してくれた事が嬉しい。ゾウ坂出は、痛めた膝をかばうためにガチガチにテーピングをしている。彼女の底力というか、スポーツウーマンぶりは本当に凄いなあ。
(支部長)「私のスポーツマンぶりも評価してよ」
(幹事長)「知らん言うたら、知らん」
今年の招待選手
(左から福家先生、支部長、石材店、ゾウ坂出、幹事長、矢野選手)
(あれ?つっちー君が居ない?)
矢野選手の参加は不明だが、取りあえず4人でレース会場の旧庵治町役場へ到着。受付では参加賞をくれるんだけど、最近、これがセコい。一昨年は小さなペットボトルケースで、去年に至っては、なんと爪切りだった。参加費が僅か1000円だったにもかかわらず、素晴らしく立派なバッグをくれたりしていた屋島一周クォーターマラソンの頃が懐かしい。今年も妙に軽くて小さいなあと思っていたら、エコバッグと小さなポーチのような物だった。
(支部長)「去年の爪切りよりはマシ、ってとこか」
(幹事長)「やっぱり財政が厳しいんかなあ」
3年前の第1回大会にはゲストで福士加代子が来たけど、それ以降、ゲストもいないし。レース自体が廃止にならないか不安だなあ。近場で開催される手頃なレースとして、存続を祈るのみだ。
このレースは受付を済ませてからスタートまでの待ち時間が異常に長い。12kmレースのスタートまで2時間以上もある。まず最初に親子で走るファミリーの部があるからだ。主催者としては、ファミリー部門をメインイベントと考えている節がある。ま、仕方ないか。
着替えを済ませて、待機場所でダラダラ時間を過ごしていると、なんと、参加が危ぶまれていた矢野選手が登場した。
(幹事長)「おおう、回復したんか?」
(矢野)「いや、いまいちなんですわ」
(幹事長)「でも、出るんやろ?」
(矢野)「いや、まだ迷ってるんですわ」
なんと、矢野選手は、取りあえずは会場に来たものの、まだ出走するかどうか迷っているのだ。
(幹事長)「四万十川ウルトラマラソンは、どうやったん?」
(矢野)「いやあ、なかなか良い経験でしたよ」
て事で、突然ですが、矢野選手のミニ報告記を。
〜 第15回 四万十川ウルトラマラソン 〜
2009年10月18日(日)、高知県中村市で開催された第15回四万十川ウルトラマラソンに出てきました。
ウルトラマラソンの先駆け的存在であり、四万十川のネームバリューもあって、全国的に非常に人気が高く、抽選で当選した1800人限定のレースです。参加者は限られていますが、参加者数を上回るボランティアの方のサポートと住民の皆さんの声援に支えられています。
レースは100kmの部と60kmの部があり、今年は初参加ということで60kmの部に出ました。大会の雰囲気としては、60kmは至ってアットホームです。スタッフや沿道のボランティアなど、毎年のことなので、きめ細かな対応がすっかり慣れています。前夜祭にも参加しましたが、手長えびのから揚げや田舎寿司などを肴に、地元の方とのおしゃべりが楽しいひと時でした。
コースですが、100kmの部は、スタートから20km上りが続き、その後、下りが20km続き、その後の60kmは比較的平坦なコース。60kmの部のコースは、100kmの部の後半60kmと同じなので、比較的平坦な道が60km続きます。旧十和村から四万十市を目指して、四万十川を下るコースで、たゆたゆと流れる四万十川を横目に走るコースは、さすがにすばらしく、全国的に人気があるはずだと実感。全体的に下り傾向ですが、大した峠ではないものの、一箇所だけ峠越えがあります。
レースの展開ですが、下り傾向の平坦なコースとは言え、初参加で序盤に頑張り過ぎたせいか、30km手前で両足が痙攣し、後半は「歩き」と「ストレッチ」と「ちょっと走り」の繰り返しで、これまで味わったことないほど辛いレースとなりました。ゴールこそしましたが、6時間37分というタイムで、目標の5時間半には遠く遠く及ばない結果・・。
クリアすべき問題は、ペース配分と、エイドでの栄養補給ですね。スタート後すぐに100kmの選手と合流しますが、調子に乗って疲労している100kmの選手を追い抜いていたりすると、後半どうしても持たなくなります。また、長時間走ると何も食したくなくなりますが、給水・給食エイドで、栄養をきちんと取ることも大事だったと痛感しています。塩分などのミネラル不足で、痙攣を起こしたのではと反省です。
ただ、タイムには不満ですが、レース自体は楽しかったですね。途中、なんとビールを振舞ってくれる私設エイドなどもあり、おもろいの一言です。毎年、つかまって出来上がってしまう人もいるそうです。中村高校のゴールでは、一人ひとりのゴールがオーロラビジョンに映されながら、紹介アナウンスをしてくれ、完走メダルをかけてもらえたときは、感涙ものです。地道なLSDばかりの練習がいやになっていましたが、ひょっとしたら、リベンジで来年も出ているかも、と思っています。
やはり、ウルトラマラソンって、楽しそうというか、充実してるっぽいよなあ。僕も一度は出てみたいけど、完走が不安だわなあ。
で、矢野選手だが、会場に来てまで、まだ参加しようかどうしようか迷っていたが、会場でみんなの盛り上がりを見れば、走らない訳にはいかない。結局、気合を入れて出走することになった。
例年どおり、福家先生もお父上と一緒に参加だ。お父上は、去年よりさらに1つ年を上積みして87歳という超高齢での参加だ。一体、いつまで記録を更新し続けるんだろう。
さらにセミプロランナーのつっちー君も登場だ。つっちー君は、セミプロ級の高速ランナーだけど、過去に辛い事があって、フルマラソンを避け、10km程度の短めな距離を得意としてきた。
(石材店)「過去に何があったん?」
(つっちー)「単にフルマラソンがきつかっただけですよ」
しかし、遂に逃げ回る事が不可能となり、近々、久しぶりにフルマラソンに出走するらしい。どんな記録が出るか、大いに期待できる。
そんなこんなでウダウダしてたけど、時計を見ると、全然、時間が進んでない。まだ1時間半はある。一部のメンバーはウォーミングアップに出かけたが、そなな無駄なエネルギー消費は避けたいので支部長と一緒にウロウロする。それでも、あまりに退屈したので、仕方なく、少しだけウォーミングアップで小走りする。すると、軽くウォーミングアップしただけで、今日の体調が、かなり悪いという事が分かった。おかしい。体が重い。3週間前に弘前アップルマラソンを走って以来、体調は悪くないはずなのに。
(石材店)「体が重いのは、単に、それ以来、練習してないからでしょ?」
(幹事長)「3週間前にフルマラソンを走ったんだから、もう練習は不要だろ?」
(石材店)「その甘い考えが根本的に間違ってますね」
あまりの体の重さに、早々にウォーミングアップを諦める。天候は、事前の天気予報では「雨が降るかも」って感じだったけど、例によって雨の少ない地方なので、結局、降りそうで降らない。気温は低めで、風もほとんど無いし、晴れて暑い時に比べると、非常に良いコンディションだ。
(幹事長)「こんなに天候コンディションが良いのに、自分の体が重いのは、もったいないなあ」
(石材店)「もったいないんじゃなくて、気合を入れて頑張ってくださいね!」
さて、本日の目標を設定せねばならない。
(幹事長)「距離が12kmだから、目標は取りあえず1時間やな」
(支部長)「毎年、同じ目標だけど、達成できた事はあるん?」
(幹事長)「屋島一周クォーターマラソンの頃は1時間を切ってたんやけど、庵治マラソンになってからは達成してないんよ」
12kmを1時間ってのは、1km5分ペースだから、決して早い訳ではない。このレースの前身だった屋島一周クォーターマラソンのコースは、同じく12kmだったが、坂が少なくて走りやすかったため、1時間を切っていた。でも、坂が非常に厳しい庵治マラソンになってからは、3年連続で1時間をオーバーしている。僕や支部長にとっては、かなり高いハードルなのだ。
(幹事長)「なので、現実的な目標としては、支部長に勝つことやな」
(支部長)「その目標は楽勝ですな」
支部長みずからの惨敗宣言だ。支部長は、2週間前に100kmも歩いてるから、足に後遺症が残っている。一方、僕は、なんと言っても、僅か3週間前にフルマラソンを完走しているのだから、12kmくらいは軽いものだ。
(支部長)「フルマラソンの後遺症は無いの?」
(幹事長)「マラソンはウォーキングと違って、変な所を痛めたりはせんからな」
ウォーキングを100kmもやれば後遺症が残るのが当然だが、マラソンの場合は、後遺症というより、むしろ貯金のようなもんだ。フルマラソンの後は、休養と称して、ほとんど練習してないけど、練習不足って事にはならないだろう。なので、支部長には、後ろ向きで走ったって勝てるだろう。つまり、最初から勝負は見えているから、あんまり目標にはならない。
目標も大事だが、なんと言っても重要なのはレース展開だ。これについては、弘前アップルマラソンの記事にしつこく書いたが、最近、悟りを開いたのだ。
最初に無理して飛ばすと、絶対に終盤に潰れてしまう。数多い過去の惨敗の記憶が嫌と言うほど残っている。それでも、去年までは、レース展開の作戦を練る時に、最初は早くてだんだん遅くなるというペース配分を前提にしていた。つまり、終盤にペースが落ちるのを見越して、前半でどれだけ貯金できるかが勝負の分かれ目と考えていたのだ。どうあがいても、終盤にはペースは落ちる。その落ち方を事前に予想して、目標タイムをクリアするには、前半でどれだけ貯金する必要があるかを逆算で計算していたのだ。
しかし、当然ながら、そんなにうまくはいかない。前半に計画通りの貯金をするのは難しくはなく、ちょっと頑張れば、なんぼでも貯金は出来る。しかし、終盤のペースの落ち方は、たいていの場合、想定した以上に大幅に落ち込んでしまい、前半の貯金など、一気に無くなってしまうのだ。前半に貯金すればするほど終盤はその何倍も借金を返すような羽目になる。そこで、ハタと気が付いた。前半で貯金などするから、終盤にペースダウンするのだ。前半で1kmあたり10秒や20秒の貯金をコツコツとしていったって、終盤で足が止まって歩いたりすると、何の意味も無い。前半の、ほんの少しの無理が、終盤には大きな負担になって返ってくる。逆に言えば、前半から抑えたペースで走っていれば、終盤もペースダウンしないはずだ。
ただ、これは、頭では分かっているんだけど、いざレースに臨むと、いつもいつも、ついつい色気が出て、好タイムを狙ってしまって、前半に無理をしてしまう。
それが、今年の徳島マラソンで、前半は強烈な向かい風のためすごく遅かったこともあって、終盤までそれほどペースダウンせず、歩くこともなかった。さらに6月の走れメロスマラソンでは、ハーフマラソンとは言え、最初から最後まで、ほとんど同じペースで走れた。そして、レース後も足が全然痛くならないのだ。それで目から鱗が落ちたというか、開眼したというか、一種の悟りを開いたのだ。
(石材店)「しつこいようですけど、単に、最初から遅かったっていうだけの事ですけどね」
(幹事長)「最初が遅いと、あそこまで終盤にペースダウンしないってのは、新鮮な驚きだよ」
(石材店)「あそこまで遅くする必要はない、というか、もうちょっと頑張ってくださいよ」
それで、先月の弘前アップルマラソンでも、できるだけ最後まで一定のペースで走ることを目標として、最初から抑えたペースで走り、どこまで一定のペースで走れるか試してみたのだ。
(石材店)「で、結果は、やっぱり惨敗だったでしょ?」
(幹事長)「確かに、あまりの練習不足のために最終的には惨敗したけど、37km地点まではほとんどペースが落ちず、
実に満足できるレース展開だったのよ。残りの5kmさえ無ければ」
て事で、今回も前半はできるだけ抑えて走り、後半で勝負する作戦を取ることにした。
いよいよスタートだ。
たいてい、スタート直後は気持ちが高ぶっているうえ、ガンガン走り始める周囲のペースにつられて、ついついオーバーペースになって、終盤の失速に結びつくのが常だ。しかし、このレースは僅か12kmの短い距離なので、そんなに心配することはない。序盤を、それほど意識的に抑えなくても、終盤でバテる事もないだろう。てことで、取りあえず自然体で走ってみる。たぶん、自然体で走ったつもりでも、気持ちの高ぶりと、周囲のペースにつられて、結構、早めになっているはずだ。
と思って1km地点で時計を見ると、あれれ?だいぶ遅い。かなり遅い。特に意識してないのに、全然オーバーペースになっていない。意識的に抑えたつもりがないのに、かなり抑えたペースになっている。
(石材店)「日本語として、それって“抑えた”って言うんですか?」
(幹事長)「無意識のうちに抑えてるのかと思って」
オーバーペースどころか、かなりアンダーペースだ。一体、なにごと?意識的に抑えたつもりが無いのに、かなり遅いペースって、春の徳島マラソンの時もそうだし、先日の弘前アップルマラソンの時もそうだ。このペースでは、1時間なんて無理だ。一体、これはどういう事だ?
(幹事長)「なぜだろう。なぜかしら」
(石材店)「だから、最近、最初からペースを抑えて走る事に自己満足してるから、もう早く走れない体になったんですよ」
確かに、100kmウォーク明けで万全でない支部長がぴったり着いてくるほどのスローペースだ。しかも最初の1kmは坂が無いが、その後は、どんどん坂が出てくる。絶対にペースダウンするはずだ。なので、これはいかんて事で、ちょっと気合を入れなおしてペースを上げる。
と思ったのだが、次の1kmも、さほどペースが上がっていない。う〜ん。おかしい。でも、それ以上ペースを上げると、なんとなくしんどい。前半から無理をしたって良い事はないので、やむなくスローペースのまま走る。すると、なんと、あろうことか、支部長が僕を抜いてどんどん離れていくのだ。あり得ない!考えられない!100kmウォークの後遺症は無いのか?まさか、支部長に置いていかれるなんて、想定もしてなかった。支部長にだけは負けたくないから、着いていくべきだろうか。
しかし、よくよく思い出してみれば、こういう展開はお馴染みのものだ。支部長は序盤で飛ばすのが常だ。そして、前半で支部長にリードを許した場合、坂が無いフラットなコースなら、そのまま逃げられてしまう。ここんとこコースがフラットな丸亀マラソンでは連敗が続いている。しかし、坂があるコースの場合は、どれだけ前半でリードを許したところで、終盤の坂で確実に抜き返せる。間違いない。これまで、一度たりとも例外はない。支部長は極端に坂に弱いのだ。なので、取りあえず深追いせず、ペースを守って走る。
(幹事長)「なんで終盤に力尽きるって分かってるのに、前半で飛ばすの?」
(支部長)「終盤に力尽きるから、前半で貯金しとくんですがな」
僕は最近、いくら前半で貯金しても終盤で力尽きたら借金だらけになるから、逆に前半を無理せずに最後までペースを維持した方が結果的に良いタイムになる、と開眼したのだけど、支部長はまだまだ悟りの境地に達していないようだ。
(石材店)「ただし、可能性は低くても、支部長スタイルの方が好記録が飛び出す可能性はありますね。
幹事長は最初から記録を捨ててますけど」
大人になった僕は、支部長の背中を冷静に見送って、ペースを守って走り続ける。なーんて言えば格好いいが、次の1kmも、その次の1kmも、相変わらずペースは遅く、こんな調子じゃ1時間は切れそうにない。しかし前半の最後の大きな坂をクリアするまでは、無理するのが怖い。遅れは後半に入ってから取り返すことにして、我慢のレースを続ける。
この大会のコースは、途中、中規模の坂が3つあり、それが終ると、5km地点から6kmの折り返し点まで1kmも延々と大きな坂が続く。何はともあれ、前半最後の大きな坂をクリアするまでは無理をしてはいけない。最後の大きな坂があるから、それが不安で不安で、そのせいで、それまでの坂は、そんなに苦しくない。
信じられないくらい悪いタイムをキープしたまま、いよいよ前半最後の大きな坂を登り始める。この大会も4回目で、この大きな坂にも慣れてきたので、そんなにビビる事なく淡々と登っていく。
この辺りに来ると、トップ集団のランナー達が早くも折り返してくる。うちのメンバーでは誰がトップで来るか、なかなか楽しみだ。去年は、泥酔状態の石材店を尻目に、矢野選手が圧倒的なスピードで先頭を駆け抜けていった。しかし、今年は矢野選手は四万十川ウルトラマラソンの後遺症が残ってるから、石材店がリベンジするだろうな、と思っていた。ところが、なんと、今年も矢野選手が真っ先に帰ってくる。やはり、ウォーキングと違って、いくら直前に走っても、マラソンの場合は後遺症は残らず、むしろ貯金になるのか。
一方、石材店は、今年は二日酔いじゃないけど、ここんとこの練習不足がたたって、いまいち力が出ないようだ。元々、石材店は練習の虫で、驚異的な練習量をこなし、それによって皇帝ペンギンの名を欲しいままにしていた。ところが最近、子供の野球チームのコーチや審判に引っ張り出されて、練習がままならないのだ。
などと、他のメンバーの様子を確認していると、なんと目の前に支部長の姿が突然、飛び込んできた。おおう、終盤を待たずに、前半で早くも射程圏内に入ったか。よし、ここで一気に抜き去るぞ。と全身に気合を入れたが、なんの事はない。こっちが気合を入れなくても、支部長がみるみる近づいてくる。遅い。ものすごく遅い。まるで歩いているかのようだ。坂に極端に弱い支部長は、前半最後の大きな坂に突入したとたん、あえなく力尽きたようだ。別に、ことさらペースを上げなくても、勝手に一気に抜けてしまう。一応、抜くときに声を掛けたんだけど、既に意識朦朧状態で、言葉にならない返事が返ってきた。
ふむ。1時間を切るという目標も、この状況では非現実的になりつつあるし、支部長との勝負も、こんなにあっさりと勝負がついてしまっては、レース後半の緊張感が無い。つまんないな。ぶつぶつぶつ。などと余裕をかましながら中間点で折り返すと、あれれ、なんと、一気に成仏したはずの支部長が、ゾンビのようにすぐ後ろを着いてきている。なんと言うことだ!どこにそんな力が残っていたんだ?
これで一気に緊張感が回復した。長い上り坂の後は、当然ながら長い下り坂になる。こういう長い下り坂で勢い付けて思いっきり駆け下りると、足に大きな負担がかかり、終盤で悪影響が出てくる。なので、今日は下り坂も抑え目に走ろうと思っていた。しかし、完勝したと思っていた支部長がピッタリと着いてくるなんていうホラー映画のような恐怖状態なので、そんな冷静な判断は無視して、ここぞとばかりに思いっきり全力で走って下りつづける。
途中、ゾウ坂出を発見。登りの途中なので、さすがにしんどそうだけど、すれ違うタイミングからすると、ペースは結構いい感じ。声を掛け、ハイタッチしてすれ違う。その後も全力で下りきり、時計を見ると、この1kmは、かなり無茶苦茶なハイペースになっていた。これで最後まで持つか不安だったけど、勢いが持続し、次の1kmも、かなりのハイペースだ。僕にとっては、オーバーペースとも言えるが、しかし、もう残りは4kmだ。全部、ラストスパートしたっていける距離だ。このままいけば1時間も切れるぞ、と急に色気が出てきたが、なんの事はない、その無理がたたって、次の1kmは一気にペースダウンだ。過去の記録を見ても、この区間には結構、大きな坂があり、前半の元気なうちは気にならないけど、後半ではガクンとペースダウンするのが常なのだ。しかし、まだまだ諦めず、坂を越えてから再度ラストスパートをかけると、次の区間は再び好タイムだ。よし、このままいけば1時間が切れるかも、と思ったけど、次の区間も坂が立ちはだかる。ここまであんまり無理してなかったら、大した坂ではないけど、終盤に来て無茶な走りをしたもんだから、この坂がしんどくて、再びタイムは悪くなる。それを過ぎると、いよいよ最後の1kmだ。再びラストスパートをかける。
(石材店)「普通、ラストスパートって、最後の1回だけですよ。ラストの意味わかってますか?」
(幹事長)「人生、常にラストスパートじゃよ」
最後の最後なので、さすがにヤケクソで飛ばしたら、下り坂の区間よりもタイムが良かった。素晴らしい区間賞の走りだ。
(石材店)「で、タイムはどうやったんですか?」
(幹事長)「ほんのあと少しのところで今年も1時間切れなかったーっ!悔しーっ!
やっぱり前半のスローペースが悪かったか」
(石材店)「だから言ったでしょう。前半から遅すぎるって。もうちょっと挑戦的なレースを展開してくださいよ」
挑戦的と言えば、前半からあり得ないペースで飛ばした支部長は、途中で力尽きたと思ったのに、その後は妙に回復して、結局、僕のすぐ後にゴールした。去年より大幅にタイムが良くなった。僕は今日、後半はかなり早いペースだったはずなのに、前半で死にかけていた支部長が着いてきていただなんて、後から考えても、ゾーっとする。100kmウォーキングの後遺症はどこへ行ったんだ!?侮れない支部長!
ペンギンズメンバーでトップは、去年に引き続き矢野選手だった。さすがに60kmマラソンの翌週とあって、数十秒だけ去年よりタイムを落としたけど、60kmも走った翌週に、去年とほぼ同じってのが、すごい。
石材店は、二日酔いの泥酔状態だった去年よりタイムを伸ばしたけど、練習不足がたたってか、去年に引き続き、あと少しのところで矢野選手にかわされた。僕と支部長の戦いに匹敵するペンギンズ内部の熾烈なライバル関係である。
(石材店、矢野)「一緒にせんといて下さいっ!!」
ゾウ坂出も去年より良いタイムでゴールした。彼女も、60kmもウォーキングした後遺症が残っているはずだが、大したものだ。みんなの底力には脱帽だ。
(幹事長)「僕は、あとほんの僅かで1時間は切れなかったけど、去年よりだいぶタイムが良かったぞ。
コースが屋島から庵治に移ってからは自己ベストや。
やはり前半を抑えて走るという今年の大きな方針が間違ってなかったということじゃな」
(支部長)「私は、100kmウォークの後遺症があったにもかかわらず、前半から飛ばしたけど、
去年よりだいぶタイムが良かったよ」
(矢野)「僕も、1週間前の60kmマラソンの後遺症を無視して最初から飛ばしたけど、去年とほとんど同じタイムでしたよ」
(石材店)「様々な後遺症を抱えたメンバーが、ここまで健闘したってことは、幹事長の作戦が良かったんじゃなくて、
実は天候のコンディションが良かったからじゃないですか?」
むむ。そうなのか?天候のせいなのか?確かに、天気が良かったら暑くてかなわないこの大会なんだけど、今日は心配された雨が降らず、ずっと曇り空だったから、気温としてはちょうど良かった。おまけに風もなく、すごく走りやすかった。そうなのか。天候のせいなのか。
(石材店)「1つの目安は、幹事長が常々言ってることですけど、ゴールした後の完全燃焼感はありますか?」
(幹事長)「残尿感はあるけど、完全燃焼感は無いなあ。足も痛くないし」
(石材店)「明らかに全力を出し切れてない証拠ですね」
確かに、ここんとこ、常に付きまとうのは不完全燃焼感だ。て事は、前半を抑えて走る作戦が良かったという証拠にはならない訳か。う〜む。あと1回くらいは試してみないと結論が出ないなあ。
(ゾウ坂出)「私は、60kmウォークの後遺症で膝が痛かったから、無理しちゃいけないって思って、
抑え気味に走ったら、結果的に去年より少しタイムが良くなったんですよ。
幹事長の言うとおり、抑え気味に走った方がいいんじゃないですか」
(幹事長)「おおう、なんという素晴らしいご意見。やっと現れた私の理解者!」
今年もレースの後は、うどん屋で反省会だ。
(幹事長)「私の反省点としては、レース展開が悪かったかなあ。もっと前半から頑張れば良かったかなあ」
(石材店)「だからいつも言ってるでしょう。もっと積極的なレース展開をしてくださいよ」
ほんと、レース展開は難しい。プロでも失敗の繰り返しだ。永遠の課題やなあ。
僕以外は、特に反省が無いらしく、特に支部長は去年より大幅にタイムが良くなったため、うどんだけでなく、おでんも食べまくっている。
久しぶりの四国のレースは、タイムは割と良かったものの、なんとなく悔しい気持ちも残る微妙な結果だった。
てな訳で、次回の小豆島タートルマラソンは、自己ベストを狙うぞ!
〜おしまい〜
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