第29回 瀬戸内海タートルマラソン大会
2008年11月30日(日)、小豆島において第29回瀬戸内海タートルマラソン全国大会が開催された。
このレースには1995年から毎年出ている。フルマラソンよりハーフマラソンの部に出る事が多いけど、一昨年は、競争率3倍の東京マラソンの抽選にはずれた腹いせに久しぶりにフルマラソンに出た。石材店、ピッグ、テニス君も同じ運命だ。続いて去年も、全く同じ展開で、競争率5倍にアップした東京マラソンの抽選に再びはずれて、投げやりにフルマラソンに出た。石材店やテニス君も同じくフルマラソンに出た。
そして期待された今年だが、なんと競争率7倍以上にまでうなぎ上ってしまった東京マラソンに、3年連続で足蹴にされてしまった。この流れでいくと、今年もフルマラソンとなるところだが、ここで少し事情が変わった。ゾウ坂出の参戦だ。
ゾウ坂出(元ミス坂出)は、去年までも色んなマラソン大会に出ていたのだが、今年1月の満濃公園リレーマラソン大会で四電ペンギンズの動物チームのメンバーとして華々しくデビューし、その後は5月の小豆島オリーブマラソンで坂が少しある10kmレースを快走し、さらに10月の庵治マラソンで坂がたっぷりある12kmレースでも快走し、すごく自信をつけちゃって、タートルマラソンでは坂が多いにもかかわらずハーフマラソンにデビューすると言い出して聞かないのだ。
(ゾウ坂出)「ちょっとちょっと!庵治マラソンの時だって、あんなに坂があるとは教えてもらってなかったし、
今度のタートルマラソンだって、ハーフマラソンくらい楽勝だよって言うから出ることにしたのに。
坂があるなんて聞いてなーい!」
(幹事長)「ふっふっふ。甘い、甘すぎるっ!
タートルマラソンは庵治マラソンより距離が長い分だけ、坂も大きなのがいっぱいあるのじゃよ」
(ゾウ坂出)「ええーっ!また騙されたーっ!!」
(幹事長)「ふわぁっはっは、もう遅い。もう後には引き返せないのだっ!試練だと思って受け止めるがよいっ!」
もちろん、騙したのは支部長だが、こういう事情でゾウ坂出が無謀にも坂の多いタートルマラソンでハーフマラソンを走ることになったので、支部長はエスコート役として一緒にハーフマラソンに出ることになった。
(幹事長)「じゃ僕もお付き合いしてハーフマラソンにするわ」
(石材店)「じゃ僕もフルマラソンはやめてハーフマラソンにします」
(矢野)「じゃ僕もハーフマラソンにしよっと」
などと、ゾウ坂出がハーフマラソンに出るのをいいことに、みんな雪崩を打ってハーフマラソンにしたのだった。もちろん、僕らにだってエスコートできるような余裕はないのだけど、自分だけフルマラソンに出ちゃうと、ゴールした頃にはみんなとっとと帰ってるかもしれないのが恐いのだ。それと、所詮はみんな心の底では「フルマラソンはしんどいよなあ」と思っているだ。
て事で、みんなで仲良くハーフマラソンに出ることにしたのだけど、その後、脱落者が続出した。まずは肝心の支部長が仕事で来れなくなった。
(幹事長)「日曜日なのに仕事?」
(支部長)「イベントが多くてねえ。現場は大変よ」
それからエース石材店は足の故障で急遽、欠場となった。
(幹事長)「そう言えば去年も体調はいまいちだったけど、そのせいで前半を抑えたおかげで、
結果的には良かったじゃない。今年もその戦法でいったら?」
(石材店)「今回は足が痛くて走れるような状態じゃないんですよ」
さらにテニス君も出張で行けなくなった。
(幹事長)「どこ行くん?」
(テニス)「遠−い、暑ーい国です」
なんだか楽しそうだけど、結構ハードなスケジュールらしい。
一方、海外のレースにしか出ないと豪語する驚異の女性ランナートラベル恵子は今年も健在だ。
(幹事長)「海外のレースというと、ホノルルマラソンと小豆島ですか?」
(トラベル)「一応、海を渡るからね」
ただし、去年はハーフマラソンに出たトラベル恵子は今年は10kmコースに出る。
(トラベル)「ぜーんぜん練習してないですから」
(幹事長)「一人だけ10kmに出ると、みんながゴールするまでヒマだよ」
(トラベル)「いえいえ、思いっきりソーメン食べてますから」
逆に、去年は10kmレースでお茶を濁していた小松原選手は、今年はハーフマラソンに出る。
ところで、かつてはタートルマラソンの名前に導かれて皆勤だった亀ちゃんは、最近、このレースでは姿を見かけることが少なくなった。彼は金とヒマが腐るほど有り余っているため、最近は「普通のレースは面白くない」てことで、あちこち彷徨っているのだ。一昨年は四万十ウルトラマラソン100kmを優先したし、去年は那覇マラソンを優先し、この小豆島タートルマラソンは回避してた。今年4月の瀬戸大橋開通20周年記念マラソンみたいな珍しいレースには出てるけど、それ以外は、もっぱら遠方のレースを荒らしている。6月には隠岐の島のウルトラマラソン100kmレースに出たし、9月にはなんとスイスで開催されるユングフラウマラソンなんていうとんでもないレースに出たらしい。アルプスの観光地インターラーケンを出発し、ユングフラウを眺めながら標高1500mも上るフルマラソンだ。
(幹事長)「どこからそななレース見つけてくるん?」
(亀)「何を言うか。世界のランナーの憧れのレースやぞ。超有名」
(幹事長)「そななレースは金とヒマが腐ってる人しか行けんやろ。コースは気持ち良さそうだけど」
(亀)「最初は気持ち良いコースやけど、終盤は完全な登山道だった。マラソンというより山登り」
写真を見せてもらうと、確かに終盤は道なき道って感じ。世界一厳しくて世界一美しいコースを走るフルマラソンと言われてるらしい。そりゃ私も行ってみたいけど、金もヒマも腐ってないから無理やなあ。小豆島で我慢するしかない。
一方、佐伯先輩は、今年、四万十ウルトラマラソン100kmに出たけど、この小豆島タートルマラソンもフルマラソンの部に出る。
(幹事長)「まだ疲れが取れてないんじゃないですか?」
(佐伯)「いやいや、100km完走したら、フルマラソンくらい、いつでも走れるよ」
たしかに、100kmレースに出るために、休日の練習でも5〜60kmは走っていたとのことで、フルマラソンくらい、軽いものらしい。そら、それくらい走れるようになってないと、とても100kmは走れないだろう。欲を言えば7〜80kmは走れるように体を作っておきたいところだが、休日にそんなに走っていたら一日が丸つぶれだし、仕事にも差しさわりがあるだろう。佐伯先輩も、亀ちゃんほどではないにしても、金とヒマが腐り始めているとは言え、100kmも走るなんて大したもんだ。
それから毎年、お父上と一緒に参加していた福家先生は、毎年出ている広島の宮島クロスカントリー大会が同じ日の開催となったため、そっちを優先して、小豆島タートルマラソンは不参加となった。
(幹事長)「宮島の方が優先ですか」
(福家)「観光がてらにね」
金とヒマが腐ってる人はいいよなあ。
春のオリーブマラソンもそうだが、小豆島のレースは船の便を考えるのが重要となる。去年までは、ちょうど良いタイミングで高速船があったため、多くのランナーが高速船を利用していた。ウォーミングアップをしない僕は、あんまり早く行ってもヒマなだけなので、それより遅い高速船を利用していたが、それでもギリギリ間に合った。ところが石油価格高騰のため船会社が大赤字となり、突然、高松−小豆島間の高速船が一気に半分に減便になってしまった。その結果、レースに間に合うタイミングの船便が1便になってしまった。こうなると、高速船に乗るためには、かなり早くから並ばなければならないのは目に見えている。高速船に乗っている時間はフェリーの半分の30分だけど、並ぶ時間を入れると、フェリーと変わらなくなってしまう。しかも、並んだあげく、満席になって乗れなかったら、それからフェリーに乗ろうと思っても、フェリーにも乗れない恐れがある。
て事で、今年は最初から料金が半額ですむフェリーを利用することにした。ただし、フェリーも時間の都合が良いのは1便だけ。僕らのように、高速船を諦めてフェリーを利用するランナーも増加するだろうから、下手するとフェリーにさえ乗れなくなるかもしれない。
て事で、旅行業界に強力なコネクションを持つトラベル恵子さんにお願いして事前にフェリーのチケットを入手する。
(矢野)「トラベル恵子さんの力はすごいですねえ」
(幹事長)「東京マラソンでもホノルルマラソンでも、彼女に頼んだらすぐに参加できるよ」
(トラベル)「だから、それは誤解だって!」
石材店が参加する場合は、彼は準備万端で早々に集合するから、場所取りも全面的にお任せなんだけど、今回は石材店が来ない。トラベル恵子さんは小松原選手を拾ってくるから、もしかして遅れるかもしれない。そうなると、JRではるばる来る人に比べれば、割と近場に住んでいる責任も少しは感じて、今年は僕が少し早めに行って座る場所を確保することにする。
(石材店)「やれば出来るじゃないですか」
(幹事長)「今回はゾウ坂出さんが来るから特別ね」
フェリー出航の40分前に港に着くと、チケット売り場に多少は列が出来ているが、あんまり大したことはない。これならわざわざトラベル恵子さんにお願いして前もってチケットを買っておく必要すら無かったかな、なんて思いながら船に乗り込む。地べたに座り込む事態を予想してレジャーシートも用意してきたが、なんのことはない、まだまだ座席はいっぱい空いている。ちょっと拍子抜けしながら取り合えず6人分の座席を確保する。
トラベル恵子さんに電話してみると、まだ車に乗ってこっちに向かっている途中だった。到着には、まだまだ時間がかかりそう。早く来ておいて良かった。
そうこうしていると、なんだかいつの間にか、と言うか、あっという間にどんどん座席が埋まっていく。どうやら電車やJRが続々と到着したようだ。来るのが5分遅れていたら、座席は全然無かっただろう。
しばらくすると自転車で来た矢野選手が到着する。さらに続いてJRで来たゾウ坂出が到着する。さらにトラベル恵子さんが小松原選手を連れて到着。その頃には、床も座る余地がなくなるほど混雑してきた。
(トラベル)「幹事長が早めに来て座席を取ってくれおいて、本当に助かったわ」
(幹事長)「トラベルさんが事前にチケットを買っておいてくれて、本当に助かったわ」
などとお互いの栄誉を称え合っていると、満を持して空手バカ一代が登場した。実は、数週間前の休日に練習していると空手バカ一代に出会った。場所は自宅から10kmほど離れた地点。そこまで往復すると20kmになる。そこを、なんと空手バカ一代は奥さんと一緒に走っていたのだ。「今度のタートルマラソンには家内と一緒に出ますから」なんて言ってたのだが、後から考えると、彼の家からだって、そこまでは10kmくらいあるはず。
(幹事長)「奥さんと一緒にハーフマラソンに出るの?」
(空手バカ)「家内は、まだ産後4ヵ月なんで、そら無理ですわ。あの辺を走っていただけです。一緒に10kmレースに出ます」
産後4ヵ月かあ。すごいなあ。そう言えば、ペンギン中村くんの奥さんも去年の庵治マラソンで産後4ヵ月で出場して女子5kmの部で4位に入賞した。女の人って、すごいのね。
(幹事長)「あっ、デジカメ忘れた!」
こら、まずい。ホームページに掲載する写真が撮れない。
(ゾウ坂出)「あっ、私もデジカメ忘れた!」
げげっ、いつもカメラを忘れないゾウ坂出まで忘れたとは。仕方ないから携帯電話のカメラで撮るが、僕の携帯のカメラの性能の異常なまでの悪さは庵治マラソンの記事で証明されている。今回も、ロクな写真が無いので、ごめんなさい。
その後、船が港を出て30分くらい経った頃、ミス坂出の友人のO林選手が突然、登場した。
(O林)「乗船券を買うのに苦労しましたよ」
(幹事長)「???どこにおったんですか?」
(O林)「チケット買うのに並んでたんですよ」
後方を見ると、売店に長蛇の列が出来ている。何かを買うための列のように見えるけど、実は乗船券を買うのに並んでいるらしい。もちろん、通常は乗船券売り場で乗船券を買ってから船に乗り込むんだけど、乗船券売り場に驚異的な列が出来てしまい、出航の時間に間に合わない人が大量に発生したため、取り合えず全員を乗せて、それから乗船券を買わせているとのことだ。
(幹事長)「でも、いったん乗ってしまえば、チケット買わなくてもバレないんじゃ?」
(矢野)「幹事長は絶対にそういう発想ですねえ」
それにしても、そんなに乗客が殺到していたのか。早めに来て本当に良かった。
(矢野)「でも、座席どころか床にしゃがむスペースも無いのに、こんなに乗せていいんですかねえ」
(幹事長)「フェリーって定員という概念が無いんじゃない?」
春のオリーブマラソンの臨時船は、フェリーの車両用甲板に巨大なシートを敷いて人間を寝転がらせて運ぶ。車の重さに比べれば人間なんて何人乗っても大丈夫なんだろう。気の毒にO林選手は通路でぎゅうぎゅうになっている。そう言えば、去年もフェリーを使ったテニス君が「むっちゃ混んでて、床も足の踏み場もないくらい埋め尽くされて、オリーブマラソンの奴隷船と同じ状態でしたね」なんて言ってたなあ。
ふと矢野選手を見ると、栄養補給に余念がない。僕も以前は、船の中で栄養補給に余念が無かったのだが、今年の徳島マラソンで、「フルマラソンだから大量にエネルギーを蓄えておかなければならない」との強い思いで前夜および当日の朝に大量の炭水化物をとって、レース中に激しくお腹を壊して惨憺たる結果に終わった反省から、前日から当日にかけて控えめな食事をすることにしている。もちろん、前日は酒も控えるようにしている。
(矢野)「そこまで気を遣っても結果に結びつかないんですよねえ」
(幹事長)「やかまし!」
島に着くと、天気予報どおり天気はすごく良いんだけど、これまた天気予報どおり、冷たい北風が非常に強い。一昨年のような冷たい雨よりはマシだけど、向かい風になった時は強烈だ。港から会場の役場まで1.5kmほど歩く間も寒かった。受付を済ませ、選手控え室になっている公民館に入って準備を始める。トラベル恵子とゾウ坂出は女子更衣室となっている福祉会館へ消えていく。
今日のように天気は良いけど風が強烈にきついっていう天候だと、着るものに迷ってしまう。フルマラソンなら、終盤は絶対に歩いて寒くなるから、前半の暑さは我慢して着込みまくるところだが、ハーフマラソンなら寒くなる前に帰ってこられるかも。でも、これだけ風がきついと半袖は恐いなあ。なんて迷っている横で、矢野選手は早々にランニングシャツに着替えている。
(幹事長)「それ寒くない?」
(矢野)「僕、すぐ暑くなるんですよ」
などと言いながら、早々にウォーミングアップに出かけてしまった。散々悩んだあげく、結局、薄手の長袖で妥協した。
それから足のマメ防止のために、足の裏にテーピングする。春のオリーブマラソンで支部長に教えてもらったマメ対策だ。こんなに簡単にマメが防げるなんて、目からウロコ。風は冷たいけど、まだ手袋は要らないだろう。帽子も被る必要なし。しかし、ティッシュは必携だ。徳島マラソンではトイレで苦しんだもんな。
準備が終わって外へ出て、女性陣と合流すると、矢野選手がウォーミングアップから戻ってきた。早くも汗びっしょりだ。ほんとに暑がりのようだ。
だいぶダラダラしてたせいか、スタート時間が迫ってきて慌てて会場へ向かっているとKO野選手に会う。高NO選手は高速ランナーで、しかもウェアなんかが決まっていて、すごく格好いいのよねえ。見るからに速そうで。
さらにさとやんにも会う。さとやんは、見るからに遅そうな、ええおっちゃんなんだが、実は速い。
(幹事長)「最近、色んなレースで会うなあ。すっかりマラソンマニアやなあ」
(さとやん)「いやいや、まだまだ。今年はハーフマラソンか?」
まずい。去年は僕はフルマラソンに出たからさとやんとの直接対決を避けられたが、今年は同じレースだ。さとやんは経験年数は浅いが、発電所で毎日、お昼休みに走りまくっているから、異常にスピードアップしているのだ。
会場に着くと、すぐさまスタートだ。毎度の事だけど、前半から飛ばしていくか、前半は抑えていくか、悩む。統計的に見ると、前半は抑えて後半に余力を残した方がタイムが良いケースが多い。前半を飛ばして多少タイムが良くても、終盤で力尽きると一気にタイムが悪くなるからだ。しかし、前半から抑えていくと、当然ながら自己ベストなんかは出ない。最後まで力尽きない程度に、ちょうど良い感じで前半を飛ばせればベストタイムが出るのだが、なかなかうまくいかない。こういうとき、支部長はためらわずに最初から飛ばしていく。もちろん、大抵は終盤で力尽きて僕に負けるんだけど、時々、最後まで頑張れる時があり、そういう時は僕が惨敗してしまう。
今日は、その永遠のライバル支部長がいないから、支部長との勝負を考える必要はない。もっぱら自分との戦いだ。前回の庵治マラソンではゴールしても余力が感じられ、タイムが平凡だったこともあり、不完全燃焼感が残った。今治シティマラソンの惨敗から立ち直りつつあることだし、よし、今日は最初から飛ばしていく作戦を取る。
風は強烈だが、とりあえず最初は横風なので、そんなに辛くもなく、スタートから快調に飛ばしていく。しばらく行くと海岸線に出る。風はますます強くなるが、西よりの北風なので、小豆島の北岸を東に向かう前半はどちらかと言えば追い風か。時々、無風のように感じられる時は長袖にしたのを後悔するくらい暑くなった。
2km付近から最初の大きな坂が始まる。まだまだ元気なので坂をものともせずに同じペースで上っていく。最初からこんなに頑張ってたら、終盤で力尽きそうな不安はあるけど、今日は行けるところまで行ってみよう。
最初の5kmの距離表示で時計を見ると、まあまあのペース。なんとなく快調な感じで気持ちよく走れる。このハーフマラソンのコースは、折り返し点までに大きな坂が3つあり、4つ目を途中まで上りかけたところで折り返す。3つ目の坂も、まだまだ余裕を持って駆け上がる。
折り返し点のだいぶ前で、戻ってくる矢野選手とすれ違う。非常に早いペースで激走している。一体、あいつは、どうしたんだ?元々才能があったのか?それとも、実はすごく練習を積んでいるのか?
僕も、10kmのタイムは、若干、ペースダウンしたとはいえ、まだまだ快調で、このままいけば自己ベストが狙える。
快調に折り返して、後から来るランナーを探していると、結構いいペースでゾウ坂出が走ってくる。
(幹事長)「頑張ってーっ!」
(ゾウ坂出)「ぱお〜ん」
この坂の多いコースでのハーフマラソンデビューとなったが、元気に走っている。
なーんて良い気持ちになって人の事を慮っていたけど、予想外に早々に事態は急変する。いきなり足の動きがきつくなったのだ。おかしい。まだ12〜13kmだぞ。この筋肉の硬直振りは一体どうしたことだ?折り返して西向きに走り始めたとたん、風は向かい風になっている。しかし、それにしても、この足の重さは風のせいだけではないだろう。前半、調子の乗って飛ばした影響が早くも出てしまったのか。いくらなんでも早すぎるぞ。これじゃあ自己ベストが危うくなる。なんとか挽回しようとするのだが、絶望的にペースダウンしていく。前半は坂をものともせずに飛ばしていたけど、同じ坂が、帰りは重くのしかかる。
前半最初の大きな坂が帰りは最後の坂になるんだけど、この大きな坂を登り始めた時は絶望的な状態になる。足が重い。痛い。動かない。さすがにフルマラソンの時のように歩くほどではないけど、前半で溜めた貯金を一挙に放出する遅さだ。なんとか最後の坂を登りきって、あとは下るだけだ、と思っても、下り坂でさえ足が前に出ない。遅い。遅すぎる。風は相変わらず厳しい向かい風だ。長袖でも薄手だから寒いくらい。
今日は前半は快調だったので、給水所で給水する時間が惜しくて、ロクに給水しなかった。こういうのが実はよくない。風が強くて寒いように思えても、実はかなり汗はかいているはずで、喉は渇いていなくてもこまめに水分は補給しておかなければ足に疲労が襲ってくる。分かってはいるんだけど、前半はついつい給水をサボってしまった。後半はペースも落ちて、風も寒く、ますます給水所で給水しようという気持ちも起きなくなってくる。最後の給水所でレモン水があったので、かろうじてそれを口に含む。一口クリームパンとかもあったけど、今日は食べる気がしない。徳島マラソンでお腹を壊して以来、レース途中で物を食べるのも恐くなってしまった。
エネルギーも切れて、ますます情けなくなりつつも、さすがに最後の1kmだけは全力を振り絞ってスパートした。つもりだったけど、時計を見ると、全然早くなーい!最後まで足は動かなかった。結局、なんとか2時間を切る程度の悲しいタイムに終わってしまった。情けなーい!
(幹事長)「でも、ま、今回は総合順位で上から4割くらいのところだから、
べったんから数えて15番目だった今治シティマラソンに比べたら大健闘と言えようぞ」
(矢野)「自分の惨敗記録と比較してどないすんですか!」
記録票を受け取ると、おや?記録票の片隅に「飛賞当選」なんて書いてある。やった!賞がもらえる。景品は小豆島名産のソーメンだった。
ソーメンと言えば、この大会は暖かいソーメンが食べ放題だ。春のオリーブマラソンは冷たいソーメンが食べ放題だし、小豆島のレースはレース後が嬉しい。去年は、レースに参加していない子供やら年寄りやらが、寄ってたかってそうめんを食い散らかしたため、フルマラソンでたっぷり時間をかけてゴールした時は、既に食べつくされて残ってなかったけど、今年は当然ながら、無尽蔵に残っている。冷えた体に暖かいソーメンが嬉しい。
ソーメン食べて体が温まったら、ゾウ坂出をお出迎えだ。初めてのハーフマラソンで、しかも坂の多いコースにもかかわらず、期待通りの好タイムでゴールした。
(ゾウ坂出)「終盤は足が動かなくなりましたよ」
(幹事長)「僕ら、いつもそうだよ」
(ゾウ坂出)「呼吸は全然苦しくないんですよ。それなのに足が動かなくて」
なんだかゾウ坂出は不思議そうだ。これまでハーフマラソンを走ったことがなかったから、そういう体験が無かったらしい。距離が長くなると、気持ちでは「もっと頑張って走りたい」と思っても足が動かなくなるもんな。Qちゃんだって東京国際女子マラソンで惨敗したとき、レース後に平気な顔をしていたけど、あの場合も足にきてしまったから惨敗したのであり、体は全然疲れてなかった。逆に言えば、ゴールしてゼイゼイ苦しむようなら、全力を出し切ったとも言える。僕なんか最近、1周2kmの満濃リレー以外、そういった経験が無いぞ。
それでもゾウ坂出のタイムは好タイムだった。はっきり言って支部長が出ていたら、負けていたのではないか?
(幹事長)「初めてのハーフマラソンとは思えない好走やなあ」
(ゾウ坂出)「沿道のみなさんが励ましてくれて、すごく元気づけられましたよ」
(幹事長)「でも、あの人たち、時々嘘つくから」
(ゾウ坂出)「えっ?」
(幹事長)「去年なんか、制限時間まで45分しか残ってないのに『あと1時間15分』なんて声かけられて、
あやうく油断して制限時間をオーバーするとこやった」
(矢野)「今日もありましたよ。まだ1km近く残っているはずやのに、おばさんに『あと200m』って言われましたよ」
(ゾウ坂出)「私は、あと少しの所で言われたから嘘じゃなかったんですけど、おじさんが怪しげに近づいてきて、
妙にヒソヒソ声で『・・・あと200mっ・・・』なんて言われちゃって」
(幹事長)「うわあ、不審!」
(ゾウ坂出)「それでも最後の上り坂も歩かずに完走できたから、来年2月の丸亀マラソンもハーフマラソンに出ます」
いきなり力強い宣言が出てしまった。う〜む。これは支部長どころか、僕も危ない。ちゃんと練習しなければ。
ゾウ坂出と一緒に再び暖かいソーメンを食べる。毎度の事だけど、ソーメンを食べ過ぎて弁当が食べられなくなってしまう。
他のメンバーだが、なんと矢野選手は1時間31分という好タイムだった。この坂の多いコースでたたき出した自己ベストだ。丸亀マラソンなら楽に1時間半は切るだろう。まさに石材店と並ぶエースに成長してしまった。
(幹事長)「経験年数から言えば僕の方がはるかに長いのに、なんでそんなに早くなるの?」
(矢野)「経験年数じゃなくて、練習時間の合計で考えてくださいね」
また、小松原選手も1時間39分なんていう好タイムだ。
(幹事長)「小松原くんに比べれば練習時間の合計でだった負けてないと思うんだけど」
(小松原)「老化じゃないですか?」
おまけに、さとやんにまで惨敗してしまった。
(幹事長)「さとやんには練習時間で完敗してるから仕方ないか」
(さとやん)「でも歳は同じやで」
さらに、空手バカ一代の奥さんも初めてのマラソン大会出場で、しかも産後4ヵ月にも関わらず、快調に完走したようだ。
(空手バカ)「走る前は渋ってたけど、走り終わってみると、また出てみたいなんて言ってます」
(幹事長)「て言うか、うちの家内なんて、どんなに誘っても絶対に走らないから、
レースに出ること自体が、潜在的に素質があるのよ」
レースの後には、その筋のボランティアの方によるオイルマッサージのサービスがあり、去年、石材店やテニス君が受けていたが、今年は小松原選手とO林選手が受けた。
(幹事長)「オイルマッサージって、なんとなく魅惑的な響きだけど、そういう淫靡なサービスじゃないよね?」
(小松原)「あんな公衆の面前であり得ないでしょ!」
(幹事長)「でもオイル塗りたくって、べとべとしない?」
(小松原)「そんな事ないですよ。レース直後にマッサージ受けると筋肉の疲れが一気に解消して快適ですよ」
マッサージ受けたり弁当食べたりしても、まだ帰りの船の出航まで時間があるので、温泉に入る。マラソンの参加者はタダで温泉に入れるのだ。そんなに大きな温泉じゃないから、ランナーが殺到して当然のように大混雑だが、回転が速く、気持ちよく入れた。
一方、女性ランナーは男性ランナーより数が少ないので、女湯は男湯ほど混雑してないように見えたのだが、マラソンと無関係のおばちゃん軍団がいたらしく、女子部員はおばちゃん達にはじき飛ばされて入浴を諦めた。
温泉から出ても、フルマラソンの部に出たランナー達は、まだ大半はゴールしていないだろうから、帰りの船は空いているだろうと楽観視してのんびり港に行ったら、なぜか既にフェリーは難民収容船と化していた。仕方なく、朝の船用に持ってきたレジャーシートを広げ、みんなで車座になって腰を下ろす。ようやくビールで乾杯だ。
(矢野)「うまいですねえ」
(幹事長)「温泉にも入ったし、気持ちいいよねえ」
船の中でくつろぐ全日本選抜チーム(左からトラベル恵子、ゾウ坂出、矢野選手、小松原選手、O林選手、幹事長)
レースの翌日、急遽、参加を取りやめた石材店が血相変えてやってきた。
(石材店)「またまた僕の写真が載ってますよ!」
なんと、大会パンフレットの表紙に石材店が載っているのだ。気づかなかった。
(幹事長)「て言うか、こなな小さな写真じゃ、普通は自分でも気づかんわな。
これって、いつの写真や?」
(石材店)「このゼッケン番号を調べると、どうやら3年前の写真ですねえ」
なんでまた、そんな昔の写真を使っているのか不明だが、それにしても我々はパンフレットや新聞に写真がよく出る。中でも石材店の登場頻度は異常に高い。
(幹事長)「意識して、わざと写ってる?」
(石材店)「それは幹事長も同じでしょ?」
(幹事長)「レースを欠場しているのに掲載されるなんて、不公平だなあ。ぶつぶつぶつ・・・」
ま、なんとか今年も無事に終わり、次は新年の満濃公園動物リレーが記念すべき10回大会を迎える。1月10日だから、もうすぐだ。もちろんゾウ坂出も出るし、ペンギン中村君も復活予定だ。みんな期待してね〜っ!
〜おしまい〜
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