数億年前、インド大陸が南からユーラシア大陸に押し寄せ、間に挟まれたテチス海が隆起して、世界の屋根ヒマラヤ山脈が出来ました。そして、遙かなる悠久の時の流れのままに、海水が干上がった古代の海水塩が地殻変動の巨大な圧力とマグマの熱を受け、古代の海水のにがり成分の上に、さらに大地のミネラルをたっぷりと吸収して、他に類を見ない奇跡の岩塩「紫塩」となりました。

　「疲れた体にはいつもの甘いミルクティー”チャ”を早く飲みたいなと、それだけを楽しみに4500ｍの山中から3200ｍのピサン村へ下山した私達を出迎えてくれたのはしょっぱいお茶でした。２度３度と甘いチャを所望するのですが、その都度しょっぱいお茶（バター茶）を勧められるのです。それは綺麗に装飾された筒状の容器の中にヤクの乳で拵えたバターと熱い紅茶と紫塩を入れ、棒状の道具で突き混ぜして作られます。ティーカップに７〜８杯はいただいたでしょうか。おかげで夕食も美味しく、ぐっすりと眠ることができました。帰国後、山で撮影した写真の自分の顔を見てびっくり、赤黒く焼けた顔がパンパンに腫れ上がっているのです。まさに片側の眼なんかは今にも潰れそうな様相なのです。ピサン村の人達は、きっと、この私達の様相を見てしきりにしょっぱいお茶を勧めたのでしょう。」
※インドでは”チャー”と呼ばれるミルクティーがネパールでは”チャ”と呼ばれています。