第31回 瀬戸内海タートルマラソン大会
2010年11月28日(日)、小豆島において第31回瀬戸内海タートルマラソン全国大会が開催された。
僕にとっては、初めて出たマラソン大会がこの瀬戸内海タートルマラソンということで、とっても愛着があるし、坂が非常に多くて決して楽なコースではないのだが、なぜか相性が良いのか妙に良いタイムが出るってことで、1995年の第16回からほぼ毎年欠かさず出ている。なので、四電ペンギンズのメンバーにも積極的に参加を働きかけてきた。
ところーがっ、
(幹事長)「庵治マラソンでなんとか復活の兆しが見えてきたし、次は瀬戸内海タートルマラソンで頑張ろうぞ、みんなっ!」
(支部長)「いや、その日は用事があって」
(石材店)「僕も用事があって出られませんねえ」
(ゾウ坂出)「私も申し込んでたんですけど、用事が出来ちゃって」
(ピッグ)「私はそもそも申し込んでもないし」
なんとかーっ!だーれも出ないのかっ!?
僕のような思い入れが無いせいか、同じ小豆島でも春のオリーブマラソンなんかに比べて、なぜかペンギンズのメンバーの参加率は異様に低い。このままでは、完全に孤独な戦いを強いられるかもしれない。
と危機感を募らせていたが、少し前の日曜日にランニングしていたら、たまたまペットショップ帰りのテニス君にばったり会い、その時、彼が久しぶりのレースとして瀬戸内海タートルマラソンに出るって言ってた事を思い出し、さっそく当たってみる。
(幹事長)「テニス君は出るんやろ?」
(テニス)「すんません。あの時は出るつもりだったんですけど、海外出張が入ったため、エントリーしませんでした」
がーん。最後の頼みのテニス君も出ないのか。なんでもインドネシア辺りに行くとか。インドネシアと言えば、僕も一昨年遊びに行ったなあ。いーなー。
おっと、待った、最近、出るレース、出るレース、軒並み優勝しまくっている驚異の新人城武選手がおった。彼が10月10日の新潟マラソンにも優勝したという話は聞いていた。
(幹事長)「わざわざ新潟まで行ったんか!?」
(城武)「実は理由がありまして。新潟マラソンに優勝すると、翌週のグアムマラソンに招待されるんですよ」
(幹事長)「なんと!そのために、わざわざ新潟まで行ったんか!?で、グアムマラソンはどうやったん?」
(城武)「もちろん優勝しましたよ」
(幹事長)「げげげげーっ!2週連続で優勝か!しかも新潟の次はグアムまで行って!」
もう、信じられない実力だ。新潟まで行くのだって遠くて疲れるのに、翌週はグアムまで行ってレースに出て、しかも2週連続優勝だなんて、もう完全にブッチギリの実力やなあ。
(幹事長)「グアムマラソンにご招待って、単に参加料がタダっちゅうだけなら、ほとんど意味ないけど、交通費も出るん?」
(城武)「もちろん出ましたけど、なんと新潟発着便なんですよ。
だからグアムに行くのに、わざわざ新潟まで行かなければならなかったんですよ」
(幹事長)「ちゅうことは、2週連続で新潟まで行ったんか。疲れそう。しかも国内交通費が結構かかってるやん」
(城武)「あっ、それはグアムマラソンの賞金で賄いました」
なんと、グアムマラソンは優勝賞金が1000ドルも出るのだそうだ。しかもコースレコードで優勝したら、プラス500ドルも出る。城武選手はブッチギリのコースレコードでの優勝だったので計1500ドルをゲットしたらしい。これで新潟までの交通費を賄ったのだ。新潟マラソンで優勝してグアムマラソンに招待してもらい、グアムマラソンでは賞金をゲットするなんて、なんだかわらしべ長者みたいやなあ。
(幹事長)「もう会社辞めてプロになったら?」
(城武)「真剣に考えてます」(嘘です)
(幹事長)「そこまで活躍してる選手を誘うのも気が引けるけど、瀬戸内海タートルマラソンで優勝する気はない?」
(城武)「その日は河口湖マラソンに出るんですよ」
河口湖マラソンはベルリン、メルボルン、ロトルア、香港、バンクーバーの各マラソンと姉妹協力提携を結んでるとのことで、なんと、成績上位者は提携大会へ派遣されるのだ。新潟マラソン→グアムマラソンで味を占めた城武選手は、次は河口湖マラソン→ベルリンマラソンを狙っているのだ。ちゅうことで、優勝したって醤油くらいしかくれない瀬戸内海タートルマラソンなんかには出ないのだ。残念だが仕方ないわなあ。
それから、海外レースと言えば、毎年このレースに出ていたさとやんも、今年は12月のホノルルマラソンに出るため、それに備えて今回は欠場だ。こっちは仕方ないでは済まされないぞ。悔しーっ!
こうなると、もう諦めて修行僧の境地で孤独に真剣に取組むしかないか。
と、しょんぼりしていると、ここに救世主現る。今年1月の満濃動物リレーでペンギンズにデビューしたトリ君だ!彼は動物リレー以降、ほとんど走ってないのだけど、久々の復帰レースとして瀬戸内海タートルマラソンに申し込んでいたのだ。
(幹事長)「うわあ、嬉しいーっ!まさかフルマラソン?」
(トリ君)「まさかまさかの10kmですよぅ」
(幹事長)「いやいや10kmの部で十分。僕もハーフマラソンだし」
(トリ君)「おや?幹事長はフルマラソンじゃないんですか?」
瀬戸内海タートルマラソンは、以前は近場で唯一のフルマラソンがあるので、時々はフルマラソンの部に出ていたんだけど、一昨年に坂が無いフラットな徳島マラソンができたので、坂が多くてきつい瀬戸内海タートルマラソンはハーフマラソンにしているのだ。それに今年は、10月始めの弘前アップルマラソンのフルマラソンで惨敗というか途中棄権と言う情けない結果に終わっているので、あんまり無理はしたくない。いずれにせよ、仲間がおって嬉しい!
と喜んでいたのだが、レースの前々日の金曜日、青森の職場から当日の集合についての打合せメールをトリ君に送ったのだけど返事が無い。おかしいなあ、と思いつつも、仕事が終わって三沢発の最終便で東京へ行こうとしていると、トリ君から電話がかかってきた。
(トリ君)「ゲホゲホ」
(幹事長)「おんや?どしたん?」
(トリ君)「風邪引いて会社休んでますぅ」
(幹事長)「げげげーっ、ほんまか〜!?」
トリ君が風邪になったっちゅうことは、まさしくトリインフルエンザやないか〜!いつの間に蔓延してたんだ?
トリ君は、奇跡的な快復をみせれば参加するとのことだが、会社を休んでいるくらいなのに、あと2日で快復するとも思えないなあ。参ったなあ。
完全に孤立無援となったため、諦めて一人寂しく出かける事にする。事前の天気予報では良い天気って言ってたわりには、レース当日、朝起きると、地面が濡れている。雨が降ったようだ。でも空は明るいので、もう雨の心配は無いかな。気温は寒くない。寒さに弱い僕としてはありがたい。
朝早く高松港に着き、フェリーに乗り込む。かつて僕は、このレースに参加するとき高速艇をよく利用していた。これだと小豆島への到着がスタート時間の直前で、着替えたら即スタートなので、待たなくても良いのだ。
(石材店)「そのスタンスが理解できませんねえ。もっと余裕を持って到着してウォーミングアップとかしてくださいよ」
(幹事長)「アマチュアランナーにとってウォーミングアップは体に毒だと小出監督も言っておるぞ」
確かに、多くのランナーは、こんなギリギリのタイミングの船は避けるようで、いつも空いている。ただし、高速艇は定員オーバーの乗客は絶対に乗せないから、もし仮に満席になってたらアウトだ。次の便ではレースには間に合わないのだ。
ただし最近は、一緒に参加するメンバーも増えてきたので、もっぱらフェリーを利用する事が多い。高速艇なら30分で着くところを、フェリーだと1時間もかかるし、乗り心地も悪い。しかも高速艇より1時間も早く出港するので早起きしなければならない。でも、時間ギリギリの高速艇はみんな嫌がるので、誰かと一緒に行くときはフェリーとなるのだ。ま、多少乗り心地が悪くて時間がかかっても、一人でなければ平気だ。ワイワイやってると、あっという間に着く。ただし、このフェリーを利用する参加者は多く、しかもフェリーは定員の何倍でも乗せるから、ものすごい混雑ぶりで、かなり早く行かなければ座席には座れない。そこまで早起きする元気は無いので、最初から座席は諦めて床にレジャーシートを敷いて座り込むことが多い。
今日は一人になっちゃったから、高速艇にしようかと思ったけど、もしもトリ君が快復して参加する事になれば、フェリーに乗ってくるので、取り合えず僕もフェリーに乗り込んだのだ。ただし、結局、トリ君は現れなかった。ま、そら、そうやわな。無理せん方がええ。
僕が乗り込んだときには既に座席はほぼ満席で、たくさんのグループが通路にシートを広げて座り込んでいる状態だったが、なんとか一人分だけ空いている座席があったため、一人寂しく固い床に座り込む事態は避けられた。
一息ついたところで、朝食のパンを食べる。以前は、レースの3時間前にはエネルギーを補給しておかないといけないって思って、朝早く起きてすぐに家で朝食を食べていた。しかも、十分にエネルギーを補給しようと思って大量に食べていた。さらに言えば、前日の夕食も大量の炭水化物を食べていた。しかし、そのせいか、レース中にお腹を壊す事が多く、もしかして普段と違って朝早く食べたり、量が多すぎるのが良くないのかなあ、などと反省し、最近は普段と同じような時間に、量も少なめに食べることにしているのだ。朝食の後はウォークマンを聴きながらウトウトする。
1時間で小豆島に着くと、港には会場までの送迎バスがいる。ただし、バスと言っても小さなマイクロバスが2〜3台あるだけで、長蛇の列はさばききれそうにないので、早々に見切りをつけて、いつものように大会会場まで歩いて行く。時間にして10分くらいのもので、僕にとっては適度なウォーミングアップになる。天気は曇りがちで、少し風があるのが気になるけど、気温は低くはない。4年前のように雨が降ると寒くて体が冷えてしまい、悲惨なレースになってしまうが、雨は降りそうにないし、悪くはないコンディションだ。
控え室で着替えていると、なーんと、小松原選手が登場。
(小松原)「おーや、幹事長、一人ですか?」
(幹事長)「そうなんよ。みんな全滅してなあ。いやあ、来てくれて嬉しい。一人でなくて良かったなあ」
小松原選手も地道に真面目にレースに出ているなあ。感心かんしん。
(幹事長)「まさかフルマラソン?」
(小松原)「いやいや、ハーフマラソンですよ。フルマラソンは走ったことがないんですよ。
ハーフマラソンをゴールした後に、もう1回走れって事でしょ?絶対無理ですよ」
(幹事長)「いやいやフルマラソン走るときは、最初からペースが遅いから大丈夫だよ。
と言いつつ、僕も今年はハーフマラソンやけどね」
真面目な小松原選手は、着替えが終わると、ウォーミングアップのために出て行った。一方、僕は、相変わらず何を着るべきか悩んでいる。去年は気温も低くないし風も無かったから、迷わず半袖のTシャツにした。一昨年は天気は良かったけど気温が低いうえ、風が強烈にきつかったため、寒さを防ぐために長袖のシャツを着た。今年は、その中間てとこか。かなり悩んだけど、最近、ますます寒さに弱くなってきたこともあり、大した風でもないけど長袖のシャツにした。
(石材店)「やっぱりウェアからして弱気ですねえ。もうちょっと真剣に走れば暑くなりますよ」
(幹事長)「いやあ、歳をとると寒さが身にしみてのう」
だんだんスタート時間が近づいてきたが、ウォーミングアップなんかで体力を消費したりはしない主義なので、外へ出ると体が冷える。ギリギリまで控え室でヌクヌクする。そういうランナーも皆無ではなく、何人かはギリギリまで粘っていた。スタートまで10分を切り、場内案内が「早くスタート地点に集合してください」なんて叫んでいるのを聞きながら、重い腰を上げる。
外に出ると、空は薄曇り状態で風もあり、ちょっとだけ寒い。
今回の目標も、例によって大会自己ベストの更新だ。この目標は、どんなレースの時も同じだ。ただし、今回は多少、意味合いが違う。まず、去年のこのレースは、自分としてはかなり良いタイムで、6年ぶりに大会自己ベストを更新した。しかも6分以上も更新したので、ここからさらに大会自己ベストを達成するのは容易ではない。おまけに今年は夏前から空前絶後の絶不調で、7月末のわかさぎマラソンではハーフマラソン自己ワースト記録を出してしまったし、10月始めの弘前アップルマラソンでは屈辱の途中棄権をしてしまっている。10月末の庵治マラソンでは立ち直りの兆しが見え始めたとは言え、まだまだ絶好調とは言えない状態だ。なので、一応、大会自己ベストを目指しながらも、決して無理をするつもりはない。最初は自然体で様子を見ていく。
(石材店)「それで、不調の根本原因だった練習不足は解消したんですか?」
(幹事長)「もちろん!解消されてない!」
今年の夏の絶不調の大きな要因は、猛暑で練習不足だったことだ。あまりに暑くて暑くて、外を走っているとすぐバテてしまい、長距離が全然走れなかったのだ。これが弘前アップルマラソンの惨敗の最大要因だろう。
(石材店)「でも青森は涼しいんでしょう?」
(幹事長)「週末は猛暑の高松に帰ってるから」
仕事は青森だけど、週末はほとんど高松に帰っているので、長距離を走れるのは高松になる。それが猛暑だったので、ほとんど長距離を走れなかったのだ。そうでなくても、帰省すると往復に時間もかかるし体も疲れるので、高松に帰った時はゆっくり休むため、あんまり走らないのだ。
その代わり、平日は青森で仕事が終わってから走る。以前は週末にしか走ってなかったけど、青森に来てからは週末の練習量が減ったため、できるだけ平日に走るようにしている。これに関しては、去年と同じくらいは走ってきた。去年は、夏場の明るい時期は、仕事が終わってすぐ寮に帰って外を走ったが、緯度が高く、しかも日本の東の方にある青森は、秋になると日暮れが早く、仕事が終わって帰れば、もう真っ暗だし、寒さも厳しくなるので、寮のトレーニング室のランニングマシーンで走っていた。ただ、これが、ほんっとにつまんなくて退屈で、イライラして発狂しそうになる。仕方ないから練習するけど、ウォークマン聴きながら気を紛らわせながらでも、やっぱりイライラして発狂しそうになる。それで今年はギリギリまで屋外を走ることにした。もちろん、11月になると高松の真冬のような寒さだけど、それでも発狂マシーンで走るよりは精神的にマシなので、雪が降って足元が滑る時以外は外を走る事にした。なので、直前の練習量は去年と同じくらいは走った。ただし、あんまり長距離を走ってないという不安が残る。
だが、このレースには苦手意識が無いので、精神的には余裕がある。このレースは坂が多く、ハーフマラソンのコースなら片道に3つ半、往復で7つの大きな坂がある。同じ小豆島で開催される5月のオリーブマラソンも坂は多いが、坂の大きさで言えば、今回のタートルマラソンの方が大きくてきつい。だけど、なぜか僕は相性が良くて、オリーブマラソンよりはタイムが良いのだ。
(支部長)「でも今年はオリーブマラソンでも良いタイムが出ましたぜ」
(幹事長)「単に気候のせいだったのよね」
今年のオリーブマラソンは雨で暑くなかったので良いタイムが出たのだ。単に、例年は5月のオリーブマラソンは暑くてタイムが悪くて、11月のタートルマラソンは気温が低いから良いタイムが出ていただけ、という事が判明したのだ。でも、マラソンは精神的な要素も大きいので、苦手意識が無いこのレースには精神的な余裕があるのが有利と言えよう。
レースの作戦としては、以前は、レース前半でどれだけ貯金できるかが勝負だと思っていた。なぜなら、前半を抑えて走っても、終盤にはそれなりにペースダウンするからだ。どうせ終盤でペースダウンするのなら、前半でできるだけ貯金しようと思っていたのだ。しかし去年辺りから、前半をかなり抑えれば終盤は必ずしもペースダウンしないレースが続いた。最初を徹底的にペースを抑えれば、最後までペースを維持できるのだ。そして結果的に、その方がタイムが良くなる場合があるのだ。
もちろん、レース前には前半を抑えようと思っていても、いざレースに臨むと、ついつい色気が出て、好タイムを狙ってしまって、前半に過度に無理をしてしまう事は多い。しかも、周囲のランナーのハイペースにつられてオーバーペースになっていても、レース本番で興奮状態にあるため無理している自覚が無くなるのだ。なので、前半は意識的にかなり抑えて、終盤までペースを維持し、あわよくば終盤でペースアップさえ試みちゃうという作戦だ。
そうは言っても、前半を抑え過ぎると平凡なタイムに終わってしまうので、良いタイムを出そうと思えば、適度に頑張る必要はある。どれくらいのペースがベストになるのか、これはその日の調子も左右するし、コースによっても異なるので、難しいところだ。
いよいよスタートだ。以前は、スタート直後は気持ちが高ぶっているうえ、ガンガン走り始める周囲のペースにつられて、ついついオーバーペースになってたけど、最近はあんまり気持ちも高ぶらないし、周囲にもつられたりしない。
(石材店)「老年期の悟りですか」
(幹事長)「無我の境地と言ってくれ」
まずは自然体で走ってみて、最初のタイムで、その日の調子を把握する。ただ、このレースは、距離表示が5kmおきにしか無いので、5km走って初めて調子が分かる。ちょっと長いが、とにかく無理せず自然体で5km走るしかない。軽く自然体で走った感じだけで言えば、そんなに体は重くない。適度に軽快な走りができているような気がする。ただし、去年ほど調子が良い訳ではないから、あんまり調子には乗らないようにする。
心配した風は、時折強くなるが、向かい風が続くって感じでもなく、さほど気にならない。決して暑くはないけど、寒くもない。2kmほど行ったところで最初の坂が現れるが、まだ序の口なので無理せず、一定のペースを維持しながら上っていく。ただし、下りは時間稼ぎに大またで駆け下りる。フルマラソンだと、下りも無理をすると終盤で足が動かなくなるけど、ハーフマラソンなので、そこまで心配する必要は無いだろう。
最初の5kmの距離表示が見えてきたのでチェックしてみると、まあまあのペースだ。去年よりは遅いけど、このままペースを維持できれば悪くはない。
しばらく行くと、後ろ姿がきれいな女性ランナーが抜いていくので、勝手にペースランナーに見立てて頑張って着いて行く。
(石材店)「一度追い抜いて顔はチェックしたんですか?」
(幹事長)「そなな事は絶対しなーい!」
なぜなら、十中八九、大はずれでガッカリするからだ。スキー場でも、ゴーグル着けてると良い感じなのに、顔が露わになるとガッカリするケースが非常に多いが、ランナーの場合も、後姿に惚れ惚れして前に回ってみるとガッカリ、というケースが極めて多い。
ただし、数少ない例外もいない事はない。例えば、H本さんがいる。彼女は最近マラソンを始め、去年の庵治マラソンからレースに出ているのだけど、去年のこのタートルマラソンでは、参加しているとは知らず、後ろから追いついて、その美しい姿に惚れ惚れした。背も高く、スラッとして、ウェアもばっちり決めているし、なんと言っても走り方がきれいだ。で、追い抜きざまに確認すると、意外にも、やはりきれいな人だったので驚いてマジマジと見ると、サングラスしててよく分からなかったけど、なんとH本さんだったのだ。彼女のように素敵な人がマラソンを始めてくれて、本当に嬉しい。周りのランナーにやる気を起こさせる。観音様のような人だ。
(石材店)「えらい褒めようですねえ。どういう下心ですか?」
(幹事長)「これだけ褒め称えてるんだから、僕より先にゴールしないでね」
去年は調子が良かったから、かろうじて勝ったけど、彼女もかなり速くて、結構、危なかった。そして、半年後の徳島マラソンでは初フルマラソンの彼女に負けてしまったのだ。
(石材店)「最近始めたばかりの女子に負けて気合も入ったでしょ?」
(幹事長)「庵治マラソンではリベンジしたぞ!」
彼女が今日のレースに来てるかどうかは不明だが、強力な仮想ライバルではある。
2つ目の坂を過ぎ、3つ目の大きな坂を終えると、10kmの距離表示がある。タイムは最初の5kmに比べ、ほんの少しだけどペースが上がっている。勝手にペースランナーに見立てた女性ランナーに着いて行ったのが良かったのだろう。非常に望ましい展開だ。去年は、ここからの後半になんとかペースアップして自己ベストを出した。今年も同じ展開に持っていければ自己ベストの更新も夢ではない。気合を入れると体に力がみなぎるような気がする。たぶん気のせいだが。
10km地点を少し過ぎるとハーフマラソンの折り返し点がある。反対側には続々とランナーが折り返してくる。誰かおらんかなあ、て思ってみてると、なんとH本さんが走ってくる。うわあ、やっぱり僕より前にいたんだ。去年は5km地点より手前で抜いたけど、今日は折り返し点でもまだリードされている。距離にして300mってとこか。取り合えずハイタッチはしたけど、追いつけるかどうか分からない。
後半は多少無理してでもペースを上げたいところだ。しかし、なんとなく足が重くなってきたような気もする。おまけに後半は風が向かい風気味になってきた。ずっと吹き続く強風っていうほどでもないけど、多少は負荷が高まる。
ここまでは距離表示が5kmおきにしかなかったけど、例年なら後半は距離表示の頻度が増えてくる。ところが、今年は後半も5kmおきにしか距離表示が無い。これは少し辛い。もっと細かくペースをチェックしたいのに、5kmも無いとダレてしまう。そのせいでもないだろうが、15km地点でタイムを見ると、がーん、明らかにペースダウンしている。なんぼなんでも、ここから可能な限りペースアップしても去年の記録を破るのは不可能だ。しかし、まだまだ力尽きてはいない。大会自己ベストは無理としても、ベスト2くらいは可能性がある。いやいや、それより何よりH本さんに追いつかねばならないのだ。
もう残り5kmだから、先の事を考える必要はなく、力の限り走るだけだ。ただ、気持ちではそう思っても、体はついていかず、思いっきり駆けてるつもりでも、客観的に見ると、あんまり足は上がっていない。それでも最後の大きな坂を登り始めた時には、H本さんのきれいな後姿が見えてきた。なんとか追いつこうと思って懸命に坂を上るけども、全然近づかない。特に、この辺りから向かい風が強くなる。他のランナーを風除けにしてなんとか上っていくけど、ペースは上がらない。
それでも、なんとか最後の坂を下りてラスト2kmになると、気持ち的にはラストスパートだ。あとはフラットな道なので全力疾走のつもりだ。ここまで来たら風も気にならない。しかし、そうは言っても大してペースは上がらず、H本さんにはなかなか追いつけない。それでも彼女と言う目標があるおかげで、少なくとも終盤で力尽きることもなく、なんとか頑張れている。いよいよあと500mくらいになった所で、なんとか彼女に手が届きそうになる。ところが彼女も、そこで猛烈なラストスパートをかける。こっちも、もう必死で着いて行く。そして最後のゴール前の直線部分で一段とペースアップして、ゴールまで10mというところでかろうじて追い越せた。
(H本)「ちょっとお。ゴール前で抜くなんてズルイですよう!!」
(石材店)「ほんとですよ。自分が作った会則に3.ゴール直前で抜き去ったりしないことと決めてあるじゃないですか!」
(幹事長)「いや、ほんと、はしたなくてごめんなさい」
ゴール直前でH本さんを抜いてしまった掟破りの筆者
顰蹙をかってしまったけど、最後の頑張りのおかげで、そんなに大したタイムではないとは言え、一応、大会自己ベスト2のタイムだったから、そんなに悪くはない。小松原選手は、さらに快走したらしく、僕には手の届かないような好タイムだった。
庵治マラソンとタートルマラソンの2レース連続して大会自己ベストを出した去年に比べると少し落ちるけど、今年も庵治マラソンとタートルマラソンの2レース連続して大会自己ベスト2を出せたから、まあまあ悪くはない。7月のわかさぎマラソンと10月始めの弘前アップルマラソンに連続して空前絶後の惨敗をした頃に比べれば完全に復活したと言えようぞ。
青森のレースで惨敗が続いたあと、香川のレースで復活した要因を考えると、もしかして香川のレースで履いているシューズが良いのかもしれない。前から履いていたシューズを青森へ持って行ったため、去年、買った新しいシューズなんだけど、とても軽くて気持ちいいのだ。
レース後は、支給された弁当は温存して、まずは暖かいそうめんを食べて落ち着く。天気も良くなって気持ちが良い。それから着替えて港へ行き、フェリーに乗ってからゆっくり弁当を食べる。タイムも良かったし、なんとなく充実したレースだった。この調子を丸亀マラソンまで維持して、久しぶりに自己ベストを狙おう!
(支部長)「あれ?丸亀マラソンはペースランナーをやらないの?」
(幹事長)「今回は女子のペースランナーを採用するらしいよ」
最近、女性ランナーが急増しているのて、ペースランナーも女子を増やそうということらしい。ま、自分が参加者の立場だったら、僕らみたいなおっさんがペースランナーで走っているより、女子のペースランナーが走っている方が楽しいというか、気持ちの支えになるわな。女性ランナーに的確なアドバイスができる実力のある陸上経験者にお願いするとのことなので、むしろ僕らもアドバイスして欲しいぞ。
てことで、好タイム続出の高速レース丸亀マラソンに3年ぶりの出場だ。ぜひ自己ベストを出したいぞ。
ところで、タートルマラソンと同日開催だった河口湖マラソンに出場した城武選手だが、惜しくも優勝は逃したらしい。
(城武)「レース運びを失敗して負けてしまいました。ぐすん。
逃げ切る予定だったのに、ラストのスプリント勝負まで持っていかれ、ラスト400mでやられてしまいました」
(幹事長)「わしなんか、ラスト10mでH本さんを抜いたぞ」
(石材店)「だから、どうした!」
(幹事長)「で、ベルリンマラソンご招待はどうなった?」
(城武)「準優勝したんで、来年のゴールデンウィークに開催されるニュージーランドのロトルアマラソンへ招待されましたよ」
げげげげーっ!ニュージーランドかあ。えーなー。速い人は、ええ事がいっぱいあるなあ。
(城武)「毎日30km走ってますから」
(幹事長)「わしも多い時は1日おきに3km走ってるぞ」
シリアスな丸亀マラソンの前に、四電ペンギンズの次のレースは1月の満濃公園リレーマラソンだが、今回は、この驚異のランナー城武選手も参加するぞ。
(支部長)「何着るん?」
(石材店)「サルが余ってるんで、おサルの格好で走ってもらいます。ええよね?」
(城武)「うきっ」
(幹事長)「じゃ21周のうち、15周くらい走ってね」
(城武)「うききっ?」
(石材店)「そなな事をしたら、優勝してしまいますよ」
〜おしまい〜
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