第6回 高松ファミリー&クォーターマラソン in 庵治
2011年10月23日(日)、高松市庵治町において第6回高松ファミリー&クォーターマラソン in 庵治が開催された。
この庵治マラソンは、今は亡き屋島一周クォーターマラソンを引き継いだもので、距離が12kmと短いため、フルマラソンやハーフマラソンと違ってプレッシャーが無いのがいいところだ。いくら練習不足だったとしても、12kmなら勢いで走りきれる。何も考えずに我武者羅に走れば良いだけだ。
(石材店)「我武者羅に走って、あのスピードですか?」
(幹事長)「50m走でも、あのスピードやな」
全力疾走てのは主観的なものだ。他人が見たら全力疾走には見えないだろうけど、僕にとっては庵治マラソンは短距離レースであり、肉体的には非常にしんどい。だがしかし、逆に精神的には気楽だ。距離が長いと、前半は抑えて後半に粘る、なんていう作戦を考える必要があるけど、距離が短いと何も考えずに単純に走るだけで、精神的に楽なレースだ。
(石材店)「ま、作戦を考えたって、それが功を奏した事もないですけどね」
(幹事長)「練習してないのに計画通り事が進む訳はないわな」
しかし、それでも、ついつい色々と作戦を考えてしまい、レース前にはナーバスになってしまう。
(支部長)「嘘ですね」
(幹事長)「嘘です」
確かに、以前はレース前にはナーバスになっていたけど、最近のレース前の緊張感の無さは目に余るものがある。もうちょっと真剣に取組まなければならない。
ま、それはいいとして、単に精神的に楽と言うだけでなく、去年と同様に、今年はスランプから脱出する好機なのだ。去年は5月末のオリーブマラソンで大会自己ベストを大幅に更新する絶好調ぶりだったのが、なぜか突然、空前絶後の絶不調を迎え、7月のわかさぎマラソン、10月初めの弘前アップルマラソンと信じられないような惨敗が続いたので、距離の短い庵治マラソンで立ち直りのきっかけを作りたかったのだ。長い距離だと簡単には復活できないかもしれないけど、短い距離ならやみくもに走って立ち直れるかもしれないからだ。で、結果は、一昨年に出した大会自己ベストには及ばなかったけど、過去5回開催された中で2番目のタイムだったから、まあ、なんとか立ち直れたと思う。
そして、今年も似たような状況だ。春のオリーブマラソンは去年よりは悪かったものの、過去13回出場した中で2番目のタイムだったから、まあまあ良かったのに、7月のわかさぎマラソン、10月初めの弘前アップルマラソンは、決して自慢できる成績ではなかった。
(石材店)「そもそも自慢できる成績なんか出したことありましたっけ」
(幹事長)「支部長には対しては自慢してるぞ」
弘前アップルマラソンは、今年はなんとか歩いてゴールしたから、途中棄権した去年よりはマシと言えるかもしれないけど、途中棄権した地点までのタイムは去年の方がはるかにマシだったから、今年の絶不調ぶりも決して去年とひけは取らない。だから、この絶不調から脱出したという気持ちは、去年同様、今年も切羽詰ったものがある。
(ピッグ)「なんちゅうても2週間後には徳島マラソンでフルマラソンを走りますからね」
(幹事長)「今年こそはピッグに勝たねばならんからなあ」
(ピッグ)「惨敗続きの原因は夏場の練習不足でしょ?立ち直るための練習は積めたんですか?」
(幹事長)「はっきり言って、イマイチやなあ」
できるだけ走ろうとはしているのだけど、弘前アップルマラソンの後も、なかなか長距離を走れない。どんなに頑張っても、10kmも走れば足が動かなくなるのだ。9月頃と同じ状況だ。この庵治マラソンは12kmだから走りきるのは可能だろうけど、そんなギリギリの状態では好タイムは期待できないだろう。
とは言え、好不調の波は、原因も分からないまま、突然やってくるので、そういう意味で絶不調から脱することを天に祈る状況だ。
今年の出場予定は、例年に比べれば少ない。まず、石材店は去年はジュニアと一緒にファミリー部門に出て9位と大健闘したが、今年はジュニアの用事で親子揃って不参加だ。
そのほかは、昨年と同様に支部長、ピッグ増田、矢野選手、ゾウ坂出、ヤイさん、福家先生なんかが出場予定だったんだけど、レースの4日前になって突然、ゾウ坂出から「レース直前なのにゼッケン番号が届かない!」なんていう緊急事態情報が寄せられた。よくよく調べてみたら、なんと彼女はネットで申し込んだ後、コンビニ決済を忘れてしまっていたらしいのだ。僕も以前はネットでカードを使うのが怖かったからコンビニ決済にしてたんだけど、面倒くさいので最近はカード払いにしている。彼女は逆に、普段はカード決済にしているのに、今回はコンビニ決済にしたため振り込みを忘れてしまったのだ。
(幹事長)「大丈夫、大丈夫。このレースって、こじんまりした大会だから、事情を話せばなんとか参加させてもらえるって」
(支部長)「そうそう。駄目もとで当たってみれば」
なんて無責任なアドバイスをしたんだけど、本人はガックリきて萎えてしまい、不参加となった。
さらに不幸は続き、ヤイさんも親戚の法要が入って不参加になった。
(支部長)「ゾウ坂出がヤイさんの参加証で参加するってのは?」
(幹事長)「男子と女子でゼッケンの色が違うからバレバレ」
てな事で、レース当日の朝は、支部長が迎えに来てくれて、その後、ピッグを拾って会場へ行く。
(幹事長)「練習はできてる?」
(支部長)「練習はボチボチだけど、昨日ゴルフがあって」
ボチボチでも練習できているのは要注意だけど、前日ゴルフは朗報だ。ゴルフは大したスポーツではないけど、我々くらいの歳になると疲労がジワジワと蓄積してきて、終盤に足を引っ張る可能性がある。特に、このレースは支部長が苦手な長い坂があるから、ゴルフ疲れが明暗を分けるかもしれない。よしよし。
(幹事長)「ピッグは?」
(ピッグ)「せいぜい週に2〜3kmですかね」
論外だ。いくらなんでも週に2〜3kmは論外だ。このレースを舐めている。いくら12kmレースとはいえ舐めきっている。そもそもピッグはどんな大会に対しても同じような舐めた態度で出ている。いつも涼しい顔をして走っている。ところが、成績はレースによって差が激しい。遅い時は大変遅いが、速い時はかなわない。去年のこのレースでは僕が圧勝したけど、去年のオリーブマラソンでは、僕が大会自己ベストを出したのに、最後まで追いつけなかった。なので、いくら練習量が少なくても侮れないのだ。
会場に着くと、まずは受付だ。
(支部長)「あっ、参加証忘れた!」
(幹事長)「んなアホな!」
致命的なミスかと思ったんだけど、このレースはこじんまりした大会だから、名前を言えば何の問題もなく手続きできた。せめて免許証くらい提示させられるかと思ったけど、それも無かった。ま、勝手に他人の名前をかたって参加するアホがいるとは思えない。参加証を持ったうえ写真付き身分証明証も求められる東京マラソンとは大違いだ。東京マラソンなら、他人の名前をかたって参加するアホがいくらでもおりそうだからな。やっぱり、この大会ならゾウ坂出も事情を話せば参加できたんじゃないかなあ。
受付では参加の記念品もくれる。この大会の前身である屋島一周クォーターマラソンの頃は、参加費が僅か1000円だったにもかかわらず、素晴らしく立派なスポーツバッグをくれたりして、そのバッグは僕も支部長も今も愛用しているけど、庵治マラソンになってから、参加費が2000円にアップしたにもかかわらず、記念品は逆にとてもセコくなっている。去年は屋外で座るための小さいマット、一昨年は小さなポーチ、その前が爪切りで、その前が小さなペットボトルケースだった。そして今年は保温マグカップだ。
(支部長)「爪切りよりはマシなのかなあ」
(幹事長)「微妙やなあ。個人的には爪切りの方が使用頻度は高いぞ」
(ピッグ)「参加費2000円ですから文句は無しにしましょう」
このレースは受付を済ませてからスタートまでの待ち時間が異常に長いのが欠点だ。2時間もある。なぜなら、まず最初に親子で走るファミリーの部があるからだ。名前がファミリー&クォーターマラソンというだけあって、まずはファミリーマラソンに力が入っているのだ。
2時間もボケっと待つのも退屈なので、取りあえずファミリーマラソンを見物する。これは親子で揃って走る3kmレースで、なかなか白熱したレースが展開される。お母さんが頑張って走っているチームもあれば、子供2人を連れて走っている親もいるし、見ていて結構、楽しい。て言うか、子どものくせに異常に速い。トップは12分くらいで戻ってくる。親子揃って3km12分で走るってのは、かなり難しいぞ。
ファミリーマラソンが終わっても、まだまだ時間がある。もちろん、ウォーミングアップなんて無駄なエネルギー消費は避けたいので、支部長とウロウロする。
すると、毎年、このレースで久しぶりに会うさとやんが現れる。今日は、取引先の企業の方と一緒だ。
(幹事長)「調子はどんなん?」
(さとやん)「あかんのや。今年、発電所勤務から本店勤務になったから練習できてないんや」
さとやんは、見るからに遅そうな、ええおっちゃんなんだけど、何を隠そう、見かけによらず大変、速い。そのパワーの源はたゆまぬ日々の練習だった。発電所勤務だと、お昼休みとかに毎日、構内をランニングできるのだ。ところが、本店勤務になったら平日は走る事は難しく、終末にちょこっと走る程度だ。そのため、去年までに比べると練習量が激減しているらしいのだ。とは言え、ここ数年、さとやんには完敗し続けているほどのレベル差を着けられている強敵なので、わずか半年の練習不足で油断するわけにはいかない。
女子部員がいない寂しい今年の参加メンバー
(左からピッグ増田、支部長、幹事長、さとやん、取引先企業のみなさま)
次に、福家先生に会う。福家先生は例によってお父上と一緒の来場だ。お父上は89歳という高齢だが、相変わらず現役を維持している。ただ、本日は、来場したものの、体調がイマイチなので参加を見合わせるとのことだ。僕らなら、せっかく申し込んでいたのなら無理してでも走るけど、悟りを開いた仙人のようなお方なので、冷静に体調管理されているのだ。なので、福家先生ご本人だけが5kmレースに参加する。
それから、強敵のH本さんに会う。思い起こせば、彼女は2年前のこのレースが初めてのマラソン大会出場だった。その時は僕は割と調子が良かったから、かろうじて勝ったんだけど、ギリギリの勝利だった。その後の瀬戸内海タートルマラソンも好調だったので勝ったんだけど、去年の春の徳島マラソンでは遂に敗北を喫した。去年の庵治マラソンや瀬戸内海タートルマラソンでは再びギリギリで逃げ切ったけど、今、最も要注意の強敵なのだ。
(支部長)「て言うか、私らキャリアだけは10数年もあるのに、マラソン始めて僅か2年の女子が強敵だなんて、情けないなあ」
(幹事長)「これは生まれ持った才能の差なのか?」
(ピッグ)「才能が関係するのは、もっと高いレベルの人たちの話であって、僕らレベルでは、単に練習量の差だと思いますよ」
さらにセミプロランナーのつっちー君も登場だ。ただし、つっちー君は今日は自分は走らず、知人の応援に来ている。
ダラダラするのも飽きてきて、少しだけウォーミングアップで小走りする。ウォーミングアップなんて無駄なエネルギー消費は、いつも極力避けているんだけど、長い距離の場合はレース序盤がウォーミングアップになるからいいとしても、さすがに最初から一生懸命走る距離の短いレースだから、少しは筋肉をほぐしておこうという考えだ。しかし、ほんの少し小走りしただけで、なんとなく足が重い。もしかして、足が軽くなるまで走るのがウォーミングアップというものかもしれないけど、そこまで走るとエネルギーをだいぶ消費しそうなので、あっさり止める。
ウォーミングアップを止めてダラダラ歩いていると、ようやく矢野選手に会う。彼は今日は5kmレースに出る。5kmなんて、もう最初から最後まで全力疾走で、筋肉が断裂しそうだけど、彼みたいに速いランナーには向いているのかもしれない。
今日は気温が高くもなく低くもなく、ちょうど良い感じ。しかも曇り空だ。気温が低くても天気が良いと、この季節はまだまだ暑くなるので、曇りはありがたい。欲を言えば、気温はもっと低い方がいいけど、このまま曇りだと悪くはない。風もないから走りやすそうだ。
(幹事長)「ここまでコンディションが良いと、言い訳はできんわな」
(支部長)「ま、言い訳の引き出しは、なんぼでもありますけどな」
天候も理想的だし、体調も悪いような気がしないので、だんだんやる気が沸いてきた。
(支部長)「で、今日の目標は?」
(幹事長)「取りあえずは、例によって1時間を切ることを目標としたいところだけど」
12kmレースなので1時間を切るには1km5分を切るペースとなる。そんなに早いペースとも言えないけど、坂が非常に厳しい庵治マラソンでは容易ではなく、僕や支部長にとっては、かなり高いハードルだ。去年や一昨年は、あと少しのところで1時間を切れなかったので、1時間を切るためには、もう少しペースを上げる必要がある。終盤で大きくペースアップするのは難しいので、序盤からもう少し速く走らないといけない。ただ、序盤を速めのペースで入ってタイムを稼いでも、終盤に大きくペースダウンしたら意味が無いから、あんまりハイペースで入るのは危険だ。最初から最後まで、ほーんの少しだけペースアップできれば理想だけど、そんなにうまくいくかどうか分からない。キャリアだけは長いから、この点については、教訓が得られる失敗事例に事欠かない。
(ピッグ)「て言うか、成功事例ってあるんですか?」
(幹事長)「あと少しで惜しかった事例は、ある」
失敗事例の大半は、調子に乗って前半で飛ばしすぎて後半に潰れるパターンだ。僕に限らず、この失敗事例は山ほどある。
(幹事長)「あるよな?」
(支部長)「山ほどある!」
あと少しで惜しかった事例としては、序盤を抑制したペースで入ったおかげで終盤でも潰れず、そこそこのタイムでゴールしたパターンだ。ただ、胸を張って成功と言えないのは、常に「あともう少し頑張っていれば、もう少し良いタイムだったろうに」という後悔と言うか不完全燃焼感が残るからだ。ゴールまで失速せず、しかもゴールと同時に全てのエネルギーを使い果たして完全燃焼するというパターンは記憶に無い。これが悔しい。
(石材店)「足を引きずりながら泣きながらゴールしたレースでも、ゴールした後はケロッと立ち直ってますからね」
(幹事長)「やっぱり精神力が弱いのかなあ」
精神力が弱いから、体力の限界のはるか前に心が折れてしまうのよねえ。
それはさておき、現実的な目標としては、どのレースでもそうだけど、ピッグと支部長に勝つことは最優先課題だ。さとやんやH本さんには負けそうな気がするけど、ピッグと支部長には勝たなければならないのだ。
まあ、しかし、忘れてはいけない本日の最優先課題は絶不調からの脱出だ。
最近は、前半を出来るだけ抑えて後半もペースを維持するという作戦を徹底させて好記録を出しているレースが多いんだけど、3週間前の弘前アップルマラソンでは、特に無理して抑制した訳でもなく、自然体で走り始めた割には、出だしから異常に遅かった。そして、そのまま、さらにどんどん遅くなっていき、最後はボロボロで歩いた。もしかして、調子が悪いときは、最初にハイペースで入ろうが抑制しようが、結局は終盤では潰れるのかもしれない。あるいは、あんまり抑制しすぎると気持ちと体が怠けてしまって駄目なのかもしれない。絶不調の今、前半を抑えて走ったら、そのまま最後までズルズルと遅いペースのまま終始する恐れが強い。バカみたいに無茶して飛び出すのは抑制しなけりゃいけないだろうけど、自分に気合を入れるためには、ある程度のスピードでスタートする必要もあるのかもしれない。そもそも距離は12kmの短いレースだし、ペース配分の事は考えず、取りあえずは適度に一生懸命走ってみる作戦にした。
スタート時間が近づいてきたのでスタートラインに集合する。色々と目標はありつつも、基本的には最後までペースダウンすることなく完走して絶不調を脱したいだけなので、それほど気負うところもなく、プレッシャーを感じずに気楽にスタートを待つ。そんなに速い訳でもないので、あんまり前の方からスタートするのも憚られるところなんだけど、ふと見ると、H本さんがかなり前の方にポジション取りしているので、僕もこそっと、彼女の少し後ろに位置取りする。
スタートのピストルと共に一斉に飛び出す。今日のコンディションを見るためにも、作戦通り、あまり何も考えずに適度に一生懸命走ってみる。前の方からスタートしたため、周囲のランナーは速い人が多く、結構ハイペースのような気もするが、つられて一緒に走っていく。ちょっと速い気もしないでもないが、気持ちが高ぶっているせいか、特に無理しているような気もしない。
しばらくするとH本さんを発見する。てっきり最初からハイペースで飛び出すのかと思ったら、意外にスローペースだ。彼女に着いて行くのがベストのような気もしたけど、一瞬の迷いの後、あえて抑えるのは止めて自然体で追い抜いていく。後から聞くと、支部長はここでH本さんの後ろからぴったり着いていったそうだ。
弘前アップルマラソンの時と違い、最初からハイペースで入ったからか、なんだか足が軽いような気がする。結構、速いペースのような気がするのに、全然、平気だ。自然体で走っているつもりだけど、ガンガン飛ばせている。隣を走っている速そうなランナーの二人連れが「ちょっとペースが速すぎるかなあ」なんて話しながら走っているのが聞こえる。おや、そうなのか?いくなんでも速すぎるのか?で、最初の1km地点で時計を見ると、確かに異常に速いペースだ。さすがに速すぎる。いくら12kmなんて短距離走だ、なんて思ってはいるものの、ほんまに短距離走のペースだ。これじゃあ絶対に潰れる。思わず「いかん、速すぎる」って独り言を叫びながら慌ててペースダウンする。
とは言え、心の奥では、もしかしてもしかしたら、「今日は奇跡的になぜか絶好調のため、適当に走っているのに速いのかもしれない」っていう色気が捨てきれず、ペースダウンと言っても、それほど大きく落としたわけではない。
(石材店)「それって、結局、山ほど築いてきた失敗事例そのものですねえ」
(幹事長)「自分ながら、ほんとに懲りないのねえ」
2km地点、3km地点と着実にペースダウンしていくが、それでも去年、一昨年よりはまだ速い。4km地点でようやく本来あるべきペースに戻る。ここからペースを維持できれば、最初の貯金があるので、目標の1時間も切れるだろう。ところが、やっぱり最初のハイペースがたたって、終盤どころか、中盤で早くも悪影響が出てきて、その後も着実にどんどんとペースダウンしていく。ペースを維持しようと、かなり頑張ってみるんだけど、だんだん足が出なくなっていく。早くも失敗事例の再現だ。
この大会のコースは、最初の5kmまでに中規模の坂が3つある。大した坂ではないから、調子が良いときはそんなに気にならず、「あれっ、坂って、こんなものだったっけ?」なんて思いながら通り過ぎるんだけど、今日は「あれっ、坂って、こんなに急勾配だったっけ?」なんて感じて、心臓も苦しくなってくる。しかも、坂また坂で、ほとんど平坦な部分が無いっていう印象すら感じ、まだまだ序盤なのに「早くレースを終えて休みたーい!」なんて情けない気持ちが沸いてくる。
おまけに、この辺りになってくると、暑さも堪えてくる。風が無いのは走りやすいと思ったんだけど、そんなに気温が高い訳ではないのに、風が全く無い状態だと、Tシャツがすごく暑苦しい。ランニングシャツにすれば良かったなあと後悔するが、遅い。12kmレースなので、いつもなら給水所で水を取ったりしないんだけど、今日は我慢できずに水を取る。でも、なんとなく生温い水であんまり気持ちよくない。
4km地点辺りでは、早くもH本さんに抜き返されてしまう。後から支部長に聞くと、3kmまではややスローペースだったからH本さんにぴったり着いていったけど、そこから一気にペースアップして支部長はあっさり振り切られたそうだ。確かに、僕を抜いていくH本さんのペースは、後を追って行こうという気力が全く沸かないような着実なハイペースだった。H本さんには、レース前から負けそうな気がしていたので、そんなに落ち込むこともなかったんだけど、序盤のハイペースのせいで、その後も着実にペースダウンしていく。
5km地点から折り返しの6km地点までは、長い長い急な坂が1kmも続く。前を見て走っていると、いつまで走っても坂が終わらないから気が遠くなるので、ひたすら足下を見て前を見ないようにして走るんだけど、それでも長い。坂の途中では、香川県のレースではお馴染みのラジカセおじさんに追い抜かれる。以前はキャンディーズやちびまる子ちゃんの曲が多かったけど、なぜか今日は演歌をガンガンかけながら追い抜いていく。聴いていて気が抜けるような選曲だったため、ますますペースが落ちていき、ようやく折り返し点が見えた頃には、惨敗ペースになってしまった。結局、この区間は去年、一昨年どころか、過去、自己最悪のペースになってしまった。もうこのまま潰れてしまうんだろうか。
折り返しながら他のメンバーを確認すると、僕より2分くらい遅れてさとやんが来る。声を掛けたけど表情は虚ろで僕以上に疲労感が激しい。やっぱり練習不足なのか。さとやんに逆転される可能性は低そうで、ちょっと一安心だけど、ますます緊張感が無くなる。
さらに僕より4分くらい遅れてピッグが来る。だいぶ差があるとは言え、彼の場合、例によって相変わらず涼しい顔をしているので、もしかしたら終盤で抜かれるかもしれないという不安は拭い去れない。
後は支部長を探すんだけど、これが見つからない。恐らくピッグより少し後だろうと思っていたんだけど、全然、見つからない。もしかして途中棄権かも、なんて思ったりもするけど、見落としたのかもしれない。そう言えば、去年も支部長に対しては油断していたら、折り返し点ですぐ後を着いてきているのを発見して恐怖を感じた。以前は支部長は坂が多いコースでは力尽きる事が多いから油断してたけど、最近は近くの丘を登る道を練習コースにしているので坂にも強くなっているのかもしれない。もしかして今日もすぐ後ろを走っていたのかもしれない。
折り返しの6km地点から7km地点は逆に1kmの長い下り坂で、毎年、ここを転がるように突っ走って遅れたタイムを取り返すんだけど、今日はもう足が出ない。一生懸命走れない。なので、この区間のタイムもイマイチ。その後の小さい上り坂でも足が止まってしまう。1時間切りは完全に不可能になったし、目標も無くなり、ズルズルとタイムは落ちていく。
このまま不本意なレースになるのか、と思ってトボトボ走っていたとき、ジワジワと後ろから追い抜いていく爺さんがいる。どうでもいいんだけど、何故かこの爺さんに妙に腹が立ったので、多少無理して抜き返す。ところが、この爺さん、しぶとくて、抜き返したのに後ろをピッタリ着いてくる。すぐ後ろから息づかいが聞こえてくるので分かる。ちょっとでも油断するとすぐに抜き返されてしまう。なんとなく怖くなって必死で力を振り絞って差を広げて、なんとか息づかいが聞こえなくなるまで頑張る。この爺さんのおかげでペースはだいぶ持ち直した。精神力さえあれば、まだまだ余力は残っているようだ。それに、ほんの少しだけど、時折風が吹いてきて、そんな時は少し涼しくなる。なんだか力が沸いてきた。
なーんて、ボロボロになりかけたペースをいったんは立て直したけど、さすがに精神力だけでハイペースが維持できる訳はないので、再びだんだんペースは落ちていく。余力がある時なら、最後の3kmくらいはラストスパートって感じだけど、全然ペースを上げられない。
それでも、残り2kmを切ってから待ち受ける最後の坂を乗り切れば残りはフラットな区間だ。なんとか気持ちを切らさずに坂を乗り切り、最後の1kmに突入する。ここでラストスパートしようと思っていたのだけど、もう力が出なくて、ダラダラと走る。目標も無くなっているので、最後に無理してもなんの収穫も無いからだ。
と、ここでいきなり後ろから息づかいが聞こえてきたかと思うと、例の爺さんが追い抜こうとする。ひえ〜。爺さん、まだ生きていたのか!ゾンビみたいな奴。この爺さんだけには負ける訳にいかないので、もう必死で最後の力を振り絞ってギアアップする。こうなると、まだまだ余力は残っているもので、一気にペースを上げて爺さんを振り切ってゴールした。精神力って偉大なのねえ。
結果は、去年や一昨年よりは悪かったけど、終盤の爺さんのプレッシャーのおかげで、なんとか持ち直し、第1回〜第3回のタイムよりはマシだった。順位も、壮年男子の部で上から1/3くらいの順位だから、まあ良しとしよう。
ゴールして、一休みしようと腰を下ろす場所を探そうとしていると、いきなり支部長が現れる。
(幹事長)「え?もうゴールしたん?早っ!」
(支部長)「あと少しで抜けたんやけどなあ」
なんと、支部長は、去年と同様、僕のすぐ後を走っていたらしい。3km地点でH本さんに振り切られたものの、例年なら一気にペースダウンする5km地点からの上り坂でも大崩れすることなく頑張り、折り返しも僕のすぐ後ろにいたらしい。その後も僕を抜くチャンスを狙って後を着いてきてたんだけど、終盤に僕がペースアップしたため抜けなかったらしい。僕が爺さん相手に頑張っていなければ支部長にも負けていたという事だ。爺さん様様だ。ありがとう爺さん!
(支部長)「惜しかったなあ」
(幹事長)「危なかったなあ」
それでも支部長は、大会自己ベストを更新したとのことで、坂に対する苦手意識は払拭したようだ。僕も、大したタイムではないけど、取り合えず弘前アップルマラソンの絶不調の暗い影は拭い去ったと言えるかも。
(支部長)「ところで、こないだヤイさんが、幹事長って好不調の差が激しいなあって言うてたで」
(幹事長)「え?どゆこと?」
(支部長)「一緒にレースに出たときはいつも不調やのに、よく優勝もしてるって」
なんとヤイさんは、上の写真のように「不調のどん底から不死鳥のように蘇って復活優勝を遂げた幹事長」なんて嘘っぱち書いてるキャプションを本当だと信じているらしい。確かに、この戦績の記事の写真のキャプションは、ほとんど全てが「優勝した」なんていう嘘っぱちばっかりだけど、本文を読めば嘘ってのは分かる。て言うか、優勝なんてするはずないんだから、本文を読まなくても嘘っぱちで分かると思うんだけど、一体なぜヤイさんは、こんなん信じてしまったのだろうか。そんなに純朴な人だったっけ?て言うか、ちゃんと本文を読んで下さい!
その後、折り返し点で既に虚ろになっていたさとやんが、去年より10分以上遅くゴールした。彼の実績からするとあり得ないほどの遅さだ。レース前の宣言どおり、完全な練習不足のためだろう。
(幹事長)「練習不足って、ここまで如実に現れるもんなんかあ」
(サトやん)「職場環境って大事やなあ」
さらにピッグも、恐ろしく遅かった。こちらも、レース前の宣言どおり、完全な練習不足だ。
(幹事長)「遅い割には、相変わらず涼しい顔してるなあ。少しは反省しろよ」
(ピッグ)「まあ、こんなもんですね」
(幹事長)「相変わらず淡々としてるなあ」
(ピッグ)「あんまりマラソンには気合いを入れてませんからね」
気合いを入れずにマラソン走れるのもすごいけど、そのピッグに時々負けるのも悔しいぞ。
(ピッグ)「幹事長だって偉そうに言ってますけど、あんまり気合いが入ってるとは言えませんよ」
(幹事長)「弘前アップルマラソンの絶不調からは脱したような気がするので、満足しちゃうよ〜」
(ピッグ)「去年と全く同じコメントですねえ。デジャブ?」
気になるH元さんは、なんと壮年女子の部で9位に入った。
(幹事長)「すごいなあ。やっぱり後ろから着いていけば良かったなあ」
(支部長)「いやいや、途中で振り切られるんやって」
今年もレースの後は、うどん屋で反省会だ。肉うどんが美味しい。例によって大食漢の支部長は、うどんだけでは満足できず、巻きずしなんかも食べている。
(幹事長)「久しぶりに最初から積極的なレース展開をしたら、中盤から一気にペースダウンしたなあ。難しいなあ」
(支部長)「後から見てたけど、いくらなんでも最初のハイペースは異常だったよ。
H本さんに着いていった私でさえ、かなりハイペースだったのに」
ほんと、レース展開は難しい。プロでも失敗の繰り返しだ。永遠の課題やなあ。
しかし、今日の真の目標は徳島マラソンに向けての絶不調脱出だから、なんとか達成できたと言えよう。これでなんとかフルマラソンを戦えるような気がしてきた。弘前アップルマラソンのリベンジをせねばならないのだ。
てな訳で、次回は半年以上延期になった徳島マラソンのフルマラソンだ。去年はピッグとの一騎打ちだったけど、今年はピッグの他、支部長やゾウ坂出やヤイさんも出る。あと僅か2週間しかないから、今さら練習したって悪あがきだが、今日の勢いで行けば、なんとか完走はできるかも。
〜おしまい〜
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