第5回 とくしまマラソン

〜 暴風雨の中のアクシデント 〜



2012年4月22日、第5回とくしまマラソンが開催された。

それにしても、大変な人気と言うか異常なまでの競争率だった。
まだ今回で5回目の新しいレースだけど、年々、申込者が激増しているのだ。徳島マラソンは坂がほとんど無いフラットなフルマラソンなので、人気が爆発する理由は分かる。四国でもマラソン大会は多いが、フルマラソンでフラットなコースってのは少ない。四国は山ばっかりで平坦なコースが取れない、って訳ではなく、ネックは交通規制なのだ。平坦な広い道路ってのは、たいていは幹線道路なので、そこを何時間も交通規制するってのは簡単ではない。警察がウンと言わないとマラソン大会は開催できないのだ。東京都知事や大阪府知事みたいに絶大な権力を誇る政治家なら、鶴の一声で都心のど真ん中でマラソンを開催できるけど、普通は、なかなか簡単にはいかない。交通量の少ない山間部や島なら特別の大がかりな交通規制をしなくても42kmのコースを確保するのは比較的簡単だから、多くのマラソン大会が、そういうコースで実施されるのだが、当然ながら、そういう場所では、どうしても坂が多いコースとなってしまう。我々にとって最も身近なフルマラソンである瀬戸内海タートルマラソンは、交通量の少ない小豆島の道路を走るから交通規制が簡単なため、何十年も前から開催されているけど、坂が多いと言うよりも、ほとんど坂の連続のようなコースで、かなりきつい。
なので、坂がほとんど無い徳島マラソンは、我々にとって、大変貴重なレースなのだ。なぜ徳島市の中心部でフルマラソンが可能なのか、と言えば、徳島県知事の権力が金正恩なみだから、という訳では決してなく、吉野川という真っ直ぐな大河川があるからだ。この川の堤防の上をコースにすれば、交通規制をしなくてもフラットで真っ直ぐなコースを確保できるのだ。

しかも、最近はあり得ないくらいのマラソンブームで、どのマラソンレースも参加者が激増している。今年の年賀状なんか見てても、今まで到底マラソンなんかとは縁が無かったような人から「最近はマラソンを始めてます」みたいな近況が増えてきた。

(石材店)「今までは、マラソンやってるなんて言うと、理解できない物好きっていうイメージでしたけどね」
(幹事長)「そうそう。呆れ返られながらも、むしろそれを誇りに思っていたのに、こんだけ誰も彼も味噌もクソも走り始めると、
       なんか我々の希少価値が失われていくよなあ。我々の神聖なる世界を荒らさないで欲しいよなあ」
(石材店)「そんな偉そうな事を言えるような実績はあげてないでしょ?」
(幹事長)「むしろ負けちゃうもんね」


最近、ブームに乗って始めた人たちは、トレーニングの量が我々とは違うのか、始めたばかりなのに、あっという間に我々を追い抜いて行く。3年前に始めたのに、既に遥かかなたの手の届かない世界に行ってしまったH本さんなんか典型的な例だ。

てな事で、参加希望者が激増しているんだけど、この大会は始まったばかりで、事務局が不慣れだったため、申し込みに関して第1回大会から波乱が付きまとう。

まず第1回大会定員は当初は3000人に設定され、それをオーバーした場合は抽選になると言う。今、思うと3000人の定員って少なすぎるって感じだけど、田舎のマラソン大会なら標準的なところだ。だいたいどのレースも、これくらいに設定してあり、参加者数は、それを少し下回るってところが一般的だ。ただ、徳島マラソンは超フラットなコースのフルマラソンとして貴重な存在だし、昨今の異常なまでのマラソンブームの影響で、3000人はオーバーする可能性も考えられた。とは言え、吉野川の堤防を走るんなら、多少、人が多くても問題ないから、定員オーバーしても受け付けてくれるんじゃないか、と楽観視していた。
ちょっとトリッキーなのは、抽選という点だ。競争率が10倍に達している東京マラソンなら先着順にすると大混乱になるから抽選が妥当だと思うけど、普通のレースは、定員が決められていても、それは先着順の定員だ。早く申し込めば楽勝だ。ところが徳島マラソンでは、先着順じゃなくて、取りあえず申し込み数を集計して、定員をオーバーしていれば抽選にすると言う。なんとなく、最初から波乱含みというか優柔不断というか問題を抱えたスタートであったのだ。
そして、締め切りの後、主催者側から発表された申込者数5814人だった。思ったよりは多いっていう印象だが、3000人に対して5814人なら、実際に入金する人の歩留まりを考えれば、取りあえず全員OKだろうなって感じだった。全員OKにしたって、実際にお金を払って申し込む人はせいぜい3500〜4000人くらいだろうと予想できるから、抽選はしないだろうと思ったのだ。ところが、なんとここで、主催者側は抽選を行うという予想外の行動に出た。そして、同時に、定員5000人に拡大した。歩留まりを考えると、5000人くらい当選させると最終的に3000人くらいの参加になるだろうという事で、その判断自体は妥当なところだろう。しかし、5814人の申し込みに対して5000人を当選させるのなら、あと少し増やして全員当選させればいいじゃないか、って思う。5814人全員を当選させたって、絶対に5000人は集まらないんだから。
てな事で、第1回大会から混乱の幕開けとなった。とは言え、5000/5814=86%という高確率からすると、絶対に当選するだろうと、全く不安を感じていなかった。みんな、そう思っていた。そして、実際に、しばらくして、当然のごとく当選通知が送られてきた。ところが、当選して当然と思っていたから中身を確認していなかったら、後になって支部長から「てっきり当選しただろうと思って中を見てなかったら、なんと落選通知でした」と衝撃の報告があった。それから慌てて周囲で確認したら、なんと、我々の仲間内での当選率はちょうど50%だった。あり得ない低い確率だ。絶対におかしい。地元民優先とか、実は先着順だったとか、何か裏があるに違いない。とにかく支部長は参加できなかったのだ。

この第1回目の混乱に懲りた主催者は、第2回大会は最初から先着順とした。ただ、なぜか定員4000人に減った。第1回目は緊急措置とは言え定員を5000人に増やしたのに、4000人に減らすって、あんまりだと思うけど、そんなに慌てることも無いだろうと余裕をかましていたら、大会のホームページを見ると申し込みが殺到してて、毎日1000人ずつ申込者が増えているのを発見して、慌てて申し込んで滑り込みセーフだった。結局、1週間もしない間に受付は終了してしまった。このため、予想通り、危機感の乏しいペンギンズのメンバーは、申し込めなかった人が続出した。

次の第3回大会は、定員6000人にまで増えた。ここまで増やしてくれれば、定員オーバーって事もないかなあ、なんて思いつつも、それまでのことがあるから、とにかく申し込み開始直後に素早く申し込んだけど、なんと、たった2日間で受付は打ち切られてしまった。2日目までに申し込んだ参加者は定員を上回る6617人だった。抽選とは言ってなかったため、多少、定員をオーバーしたけど、2日目までに申し込んだ人は全員が参加OKとなった。なぜ定員を多少オーバーしても許すのかと言えば、申し込みがインターネットと郵便振込みの両方を許容しているからだ。インターネットだけなら、定員に達した時点で即刻打ち切ることもできるけど、郵便振込みだと、時間がかかるから、一日の途中で打ち切ることはできないのだ。そして、相変わらず危機感の足りないペンギンズは、申し込めなかったメンバーが続出した。ほんまに学習能力が乏しいなあ。

このように第1回から第3回まで、主催者の予想を上回る申し込み殺到により混乱が続いてきたのだが、第4回大会は、さらに輪をかけるような混乱ぶりだった。
まず、主催者側は、最初は全員を抽選にすると発表した。定員7000人に拡大するという。抽選に弱い僕らは、それは困るなあ、なんて文句言いつつも、定員が7000人もあれば全員が当選するんじゃないかなあ、とも思っていた。ところが、申し込み受付直前になって、急に「5000人分は先着順にし、残りを抽選にする」という、とっても奇妙な方式に変更する事が発表された。この2段階方式の意味は、今だに全く意味不明だ。先着順で5000人を受け付けてから、残りは抽選と言う方式の理由は何なんだろうか?より熱心な人は先着順で参加できて、ちょっと熱心さが劣る人が抽選ってことか?主催者側は「県内外の皆さんから多数の御意見をいただき,このたび,参加者の決定方法を見直し,7,000人の募集定員に「先着枠」を設けることとなりました」と言ってるけど、全く意味不明であり、真相は闇の中だ。何があったんだろう?
で、申し込みの受付は11月1日だった。何時から受け付けてくれるのか分からなかったけど、先着枠も5000人もあるんだし、朝、会社に行ってから申し込めば楽勝だろうと思っていたけど、会社のパソコンは古くて調子が悪く、というか回線が弱く、インターネットがブチブチ切れる。なので、念のため、会社に行く前に寮の自分のパソコンから申し込んだ。すると、「はい。受け付けました」ってメッセージが出るかと思ったら、なぜか「抽選受付を承りました」なんてメッセージが出た。なんで、こんな早い時間に申し込んでるのに抽選なんじゃ?って思ったけど、主催者側のホームページで確認すると、

   > 今回、インターネットでお申し込み頂き、正常にエントリーが完了した方に、
   > 以下のメールを送付しています。
   >
   > 文中に「抽選受付を承りました」との標記がありますが、
   > これは、申込を頂いた全ての方に一律お知らせしている内容で、
   > 受付の順番結果を表したものではありません。
   > ご了承ください。


と書いてあったので、一安心。なんか知らんけど、リアルタイムで5000人の足切りを発表すると間違いのもとになるので、どんなに早い時間で申し込んでも、取りあえずは「抽選受付を承りました」というメッセージを出し、あとから5000人は先着順で当選させ、残りを抽選にするらしい。どう考えても、会社に行く前に申し込んだ僕が5000人枠に入らないはずがない、と確信して、一抹の不安も抱かずにルンルン気分で会社に行く。
ペンギンズのメンバーは、僕よりさらに危機感が乏しい人が大半なので、既に申し込んでいたのは矢野選手だけだった。良い子の矢野選手は、夜中の24時になった瞬間にパソコンのキーを叩いたんだけど、サーバーがパンク状態で、取りあえず整理番号が配られ、なんと既に500番目だった。30分くらい経ってから、ようやく申し込みのインプットが出来る状態になり、なんとか申し込み完了したのが1時頃だったそうだ。

(幹事長)「げげげっ、そななすごい戦いが繰り広げられていたのね!
       僕も夜中の24時に申し込もうかとも思ったんだけど、眠くて寝ちゃったのよ」
(矢野)「まだまだ甘いですねえ」


しかし、その時点では、そんな慌てて申し込んだのは矢野選手のようなマニアックな人たちだけであり、5000人もの定員からすれば、まだまだ余裕はあるだろうと思い、他のメンバーには「今日中なら大丈夫とは思うけど、どうせなら午前中には申し込んでおくように」と指示を出し、無事みんな申し込みを済ませた。「抽選受付を承りました」というメッセージに戸惑うメンバーもいたけど、「それは、どんなに早く申し込んでも出るんや。僕も出たから安心してちょ」と伝えておいた。
そして12月中旬に、当然のように当選のお知らせが来た。

   > ■抽選結果:当選
   >
   > このたびは「とくしまマラソン2011」にお申し込みいただき、誠にありがとう
   > ございました。11月1日(月)から15日(月)まで受付を行ったところ、定員を超
   > えるお申し込みがあり、厳選なる抽選の結果、当選されましたことを通知いた
   > します。


当たり前だ。僕が申し込んだのは、会社に行く前だ。そんなに朝早くから定員には達してるはずがないので、当選するのが当たり前だ。当選と言うか先着枠だ。お知らせには「厳選なる抽選の結果、当選されました」なんて書いてあるけど、わしは先着枠だろ、抽選もクソも無いだろ、白々しく形式的な嘘を付く出な、なんて思っていた。
ところが、他のメンバーからは、信じられない悲報が続々と届く。

(ゾウ坂出)「私、抽選に外れました。くすん」
(支部長)「私も抽選に外れたがな。がっくり」
(石材店)「僕も抽選に外れました」
(テニス君)「僕も抽選に外れちゃいました」
(ヤイさん)「私も外れましたね」


なんやてーっ!?あ、あり得ない。一体、何があったんだ。理解できない事態だ。僕が会社に行く前に申し込んでから、みんなが申し込むまでの間に、一気に定員に達したというのか?世間の人が、みんな、職場に出てすぐさま申し込んだのだろうか。信じがたい事態だ。
などと混乱気味に大会ホームページを確認すると、なんと、申し込みが始まった11月1日の朝5時の時点で、既に先着枠の5000人に達していたらしい。

(支部長)「じゃあ、幹事長もアウトじゃん!」
(幹事長)「え?一体どゆこと?」


我々の甘さ加減を強烈に思い知らされた一撃ですが、僕が意気揚々と申し込んだ時には、既に先着枠5000人は埋まっていたのだ。なので、僕が当選したのは、たまたま抽選に当たったというだけだったのだ。「厳選なる抽選の結果、当選されました」というのは嘘じゃなかったんだ。東京マラソンに5年連続で外れ続けている僕としては、運が良かったというか、冷や汗ものだったのだ。

そして、いよいよ今回の第5回大会の申し込みだ。今回は定員が一気に10000人に増えた。えらい増やしようだ。さすがに1万人ともなると、いくら人気急上昇の徳島マラソンと言えども、希望者は全員参加できるのではないか、というのが第一印象だ。
で、定員10000人のうち9000人分はインターネットでの先着順で、残りの1000人分が専用振替用紙での抽選になった。もう全部インターネットでもいいような気もしないでもないけど、そうなるとパソコンを使っていない少数の人が申し込みできなくなので、一応1000人分は取ってあるのだろう。でも、たった1000人分じゃあ競争率が高くなってしまうのではないか。

(支部長)「でも、今どき大半の人はインターネットで申し込むから、かえって当選しやすいんじゃない?」
(幹事長)「う〜ん、読めないなあ」


ま、インターネットの定員が9000人もあれば、楽勝だろうとは思った。申込受付開始は1月6日の0:00だ。つまり5日の夜中の24時ってことだ。近年、寝るのも起きるのも早い僕としては、ちょっと厳しい時間帯だ。

(石材店)「老人は寝るのが早いですからねえ」

定員9000人もあれば、早朝でも十分楽勝のような気もするけど、でも、前回、そう思っていたら大変な事態になったから、今年は無理しても起きて夜中の24時に申し込むことにした。当然、他のメンバーにも同じように周知した。忘れるといけないので、前日も当日も全員にメールを出して注意を喚起した。自分でも忘れるといけないので、パソコンに大きく張り紙しておいた。

(石材店)「そこまでせんと忘れるんですか?」
(幹事長)「最近、自分でも信じられんくらい物忘れが激しくてのう。げほげほ」


そこまでしておきながら、無理して起きておくためにビデオなんか見てたら、ふと気が付いたら24時5分前だ。おっと危ない。慌ててパソコンに向かう。夜中の24時ジャストに受付が始まるって書いてあるから、24時になった瞬間に申し込みできるように、取りあえず24時直前にはRunnetのトップページにアクセスし、エントリーボタンをいつでも押せる体勢にしておこうと思った。ところが、Runnetのトップページにアクセスしようとしたら、なんと、まだ24時になっていないのに「大変混雑してますから、しばらくお待ち下さい」みたいな表示が出る。一体どゆこと?まさか、同じような事を考えている人が沢山いるってこと?考えてみれば、そらそうか。当たり前か。みんな考える事は同じか。どれくらい待たされるのか分からないまま、Runnetのトップページにたどり着くことさえできないまま空しく24時が過ぎていく。ただ、いきなりの事態にちょっと焦ったけど、そんなに待たされた訳でもなく、24時5分頃には無事にRunnetのトップページが表示された。で、徳島マラソンのコーナーに行き、エントリーのボタンを押す。そしたら、あなた、目を疑うような表示がそこに!

 ・次の画面に進むのを3458名の方が待っています。

どひゃー!!24時ジャストにはエントリーできなかったとは言え、まだ5分くらいしか過ぎていない。それなのに、もう3千人以上も待ってるのか!?てっきり最初の5分待ちで、もう待たなくてもいいのかと思っていたら、ここから本格的に待つのか。そうか、これが矢野選手が言ってた整理券か。よう分からんが。
とは言え、かなり衝撃的な状況ではあるが、まあ今回はインターネットでの先着順での定員は9000人もあるから、3千人台なら、数字的には楽勝だ。気長に待つことにする。
一応、

 ・予想待ち時間は約2589秒です。

なんて表示が出るんだけど、この表示は、パソコンの設定なんかでよく出るような表示と同じで、全く信用できないというか意味が無い。数字が減ったかと思うと、また一気に増えたりするからだ。
一体、どれくらい待たされるのか見当も付かないけど、前回の例で言えば矢野選手が500人くらいの待ちで30分くらい待たされたと言ってたから、こら2〜3時間かかっても不思議ではない。なんとなくイライラして、あちこちボタンを押したくなるんだけど、「勝手に画面更新ボタンとか押したら、順番待ちの最後尾になるから、絶対に押したらいかんで」なんて警告文が表示されているので、我慢する。ブラウザを複数立ち上げて、ちょっとでも早くなるように、なんて思ったりもしたけど、それに対しても「そなな事したら情報が混乱して正常に処理されへんで」みたいな警告文があるので、それも我慢する。せっかく9000人の定員に楽勝で入っているのに、最後尾に回されたりしたら元も子もないので、気長に待つしかない。
あと2時間かかる、とか断言してくれたら、またビデオでも見ながら待っているんだけど、数時間かかるかもしれない一方で、もしかしたら早くなるかもしれない。予想がつかない。せっかく順番が回ってきたのに、ずっと応答しないとブチ切られるかもしれないので、あんまり目は離せない。他の作業をしながら、しょっちゅう確認し続けなければならない。なんちゅうても待ち時間表示は全く当てにならないし、サーバーや回線が込みすぎて、いつトラブルが発生するかも分からないし、僕のパソコンも絶対の信頼が置ける状況でもないし、いつ何が起きるか分からないから、相当な不安だ。でもヘタな事をするのはリスクが大きすぎるので、我慢して耐えて待つ。
で、20分くらい経った頃から、何人待っているかの人数が減り始めた。決してガンガン減っていく訳ではないが、着実に減っていく。少なくとも、0秒になったと思ったら、再び数字が増える意味の無い待ち時間表示に比べれば信頼できそうだ。しかも、割と一定のペースで減っていくので、自分の順番が来る時間がだいたいつかめるようになってきた。こうなると精神衛生上もよろしい。しかも、なんとなく、待ち人数が減るペースが速まったような気もする。こうなると、なんだか楽しい。

で、結局、1時間近く待った時点で、遂にエントリーのページに入ることができた。エントリーのページも何ページもあるから、新しいページに入るたびに何十分も待たされるようでは朝が来るぞ、と思っていたら、いったんエントリーのページに入れば、後は順調に進めて、のんびり入力していっても途中で待たされることはなく、一気にエントリーが終わった。受付確認のメールも届いたし、無事エントリーが終了したようだ。良かった良かった。

それにしても多い。あまりにも多い。過去の例からすれば、毎年、ぞくぞくと増えているのは分かるが、それにしても前回の矢野選手の体験と比較しても、激増と言える。去年は定員の5000人に達したのは朝の5時頃だったらしいのに、今年は24時ジャストで既に3千人を超えていたから、ものすごいペースだ。
てことで、ちょっと試しに、再びエントリー画面に入って確認してみた。もしかしたら、24時ジャストに必死に申し込むのは、そこまでするのは、どちらかと言えば少数派で、その集団が申し込んだ後は、ゆっくりと受付が流れていくのかもしれない。つまり、そんなに目の色を変えて必死で申し込まなくても、1〜2時間してから落ち着いて申し込めば待たなくても済んだかもしれない。なんて思ったのだ。
ところーが!夜中の1時頃に再度、エントリー画面を覗こうとすると、なんと待ち人数が8千人を超えていた。僕が申し込んだ順番は3千人以上のはずだから、もう既に9000人の定員をオーバーしていることになる!ひえ〜!ありえなーいっ!

もう理解できない事態に呆然としつつ、翌朝、メンバーに状況を確認する。あれだけしつこく注意喚起しておいたので、忘れていたなんていうアホはおらんやろけど、ちょっと遅れて申し込んだために危ない人もいるかもしれない。

すると真っ先に返事が返ってきたのが支部長だ。なんと、いきなり申し込めていなかった
せっかく24時3分前にパソコンの前に座ってスタンバイしていたのに、時計を見る代わりに、テレビ番組のワールドサテライトを時計代わりにして、24時に終了した瞬間にキーを叩こうとしてテレビ見てたら、なんと、その日に限って24時を過ぎても番組が継続していたらしく、それに気が付いて慌ててRunnetにアクセスしたら、まずはトップページに入るのに2千数百人待ち。散々待たされて、ようやく徳島マラソンの申込み画面に入って、いざエントリーボタンを押すと、なーんと待ち受けカウントダウン画面の表示が8千人待ちになっていた。しかも、表示されている待ち時間の長さに圧倒され、一気に諦めて布団に入ってしまったそうだ。
テレビを見ていたとは言え、そんなに何十分も過ぎていたとも思えないので、僅か数分の遅れが命とりになったのか。

続いてピッグ増田選手からも連絡があった。こちらは吉報だ。一応24時ジャストに作業を開始し、エントリーを完了できたのが24時40分頃とのことなので、僕より少し早かったわけだ。まずは、目出度しめでたし。去年も確率2/7という狭い門の抽選に通ったのは僕とピッグだけだった。なんか、徳島マラソンに限って言えば、僕とピッグは運がついている。2人揃っての出場は、これで3年連続になる。今年こそはリベンジしなくては!
で、ピッグが意外なことを言う。彼は自分の分だけでなく、友人からもエントリーを頼まれていたのだ。そう言えば、大会のホームページに「家族・友達の分も一緒にエントリーできる」って書いてあった。ちゃんと読んだわけではないけど、一緒にエントリーできるっていうくらいだから、一気に申し込めるのだと思っていた。もし、そうなら、僕らも誰かが代表で申し込めばいいんだけど、なんとなく不安もあり、みんなが自分でやった方がリスクが分散されるかと思い、今回は一緒のエントリーは手を出さなかったのだ。で、ピッグも僕と同じように、てっきり自分のと同時エントリーできるとタカをくくっていたら、なぜか再エントリーが必要となって、結局、2時20分頃までかかったそうだ。もしかしたら手順を間違えたのかもしれないけど。
でも、それにしても、24時40分を過ぎてから申し込んだとしたら、たぶん何千人も待っていたはずだから、もうアウトじゃないの、と思うのだけど、ピッグによれば友人の分もエントリーできたらしい。ううむ。よう分からん。もしかして、支部長はテレビを1時間くらい見続けていたのか?

で、再度、徳島マラソンのホームページを確認したら、申し込みが定員に達したのは6日の午前10時5分て書いてある。おや?どゆこと?
つまり、結局は、そんなに焦らなくても間に合ったという事か?朝、起きてからゆっくり申し込んでも大丈夫だったという事か?おやおや?それなら、ピッグが友人の分までエントリーできたっていうのも分かるんだけど、それなら、あの待ち人数は何を表示していたのだ?色んなパソコンで同時にエントリーをトライしていた人が多かったとか?よく分からん。

(幹事長)「はっきり断言できることは、諦めなかったら良かったのに、という事やな」
(支部長)「がび〜ん!!!」


それにしても、だ。あれだけ直前までしつこく注意喚起しておいたのに、結局、申し込みに失敗したなんて。

(幹事長)「支部長は、やる気あんの?」
(支部長)「取りあえず残りの抽選枠で申し込んでますぅ」


しかも、これは支部長一人の問題ではない。支部長はゾウさんの分も一緒に申し込むことになっていたから、ゾウさんも運命共同体なのだ

(幹事長)「ゾウさんが出られなかったら、どう責任とるんや!?」
(支部長)「抽選枠で当たりますからぁ」


もちろん、抽選枠で当たる根拠は皆無だ。抽選枠はインターネットが使えないお年寄りのために設定されているものであり、インターネットでの先着順の枠が9000人もあるのに対し、郵送での抽選枠はたった1000人だ。インターネットが使えないお年寄りが大勢いるうえ、先着順で漏れた人が殺到するから、ものすごい競争率になるのは目に見えている。もう絶対に無理だ。

それから2ヵ月後、さとやんに会った。さとやんは、去年までは発電所勤務でトレーニング時間が豊富にあったため見かけによらず高速ランナーだったが、去年、本店勤務になってからトレーニング時間が取れず失速してしまった、ええおっちゃんランナーだ。

(幹事長)「徳島マラソンは出るん?」
(さとやん)「それが抽選に落ちてしもた」


なんと、さとやんもインターネットで申し込めず、抽選に応募したけど落選したらしい。そら、そうだろう。すごい競争率だろうからなあ。で、もう結果が出ていることが分かったので、一応、期待せずに支部長にも確認してみたら、

(支部長)「やっほーいっ!私もゾウさんも敗者復活抽選会で無事当選したよーっ!
(幹事長)「なんとっ!!驚きっ!!!でも、ほんとに良かったあ!」


いやあ、本当に良かった良かった。
支部長がいないと、心の支えが無くなってしまうし。

(支部長)「他に勝てる見込みが無いから?」
(幹事長)「ま、永遠のライバルやし」
(支部長)「丸亀マラソンで私が圧勝した事を忘れんとってな」


それに、実はその後、ピッグが阿南方面に転勤になってしまったので、支部長がいなかったら、一人寂しく徳島へ向かわなければならないところだったのだ。救われた!

て言うことで、今回の大会に出場するのは、5年連続の出場となる僕と、3年連続のピッグ、そして去年からの2年連続の支部長ゾウさん、の4人となった。

一昨年、初出場していきなり優勝してしまい、地元選手の顰蹙を買いながらも、昨年も連続出場して連続優勝してしまった城武選手は、さすがに今年は奥さんから「優勝を目指して頑張っている地元の人を蹴散らして優勝するのは、失礼だからもう駄目!」と厳しく言い渡されてしまい、今年は不参加となった。



てなわけで、2012年4月22日、第5回とくしまマラソンが開催されたのだ。当日は、ものすごい暴風雨で大変なアクシデントに見舞われてしまった。
おしまい。

(石材店)「こらこらーっ!ここまでが異常に長かったのに、レースの記事が短すぎっ!」
(幹事長)「もう力尽きた」



ところで、4月からNHKの教育テレビで「3か月でフルマラソン!」なんていう番組がスタートした。丸亀マラソンでペースランナーをしていた関係で知り合った日本陸連の女子長距離マラソン強化部長である金哲彦氏が、マラソンど素人のタレントを3ヵ月鍛え上げてフルマラソンに挑戦させるっていう面白い番組で、その3ヵ月後のフルマラソンというのが、この徳島マラソンなのだ。

(ピッグ)「その番組って、いつから放送なんですか?」
(幹事長)「4月の初めから5月末までだよ」
(ピッグ)「じゃあ徳島マラソンには間に合わないってこと?」


そこが残念なところ。この番組に合わせて3ヵ月練習して終わったときには、既に徳島マラソンは終わっているのだ。収録の関係があるから、放映は実際のレースより後になるのは当たり前だが。
それでも、もし本当に、ど素人が3ヵ月でフルマラソンを完走できるようになるのなら、こんな心強いことはない。しかも、3ヵ月ガンガンにトレーニングするって訳でもなく、せいぜい週に3回くらい1〜2時間走るだけでいいらしい。

(ピッグ)「ほんまですか?」
(幹事長)「ただし目標タイムは5時間くらいだったけど」
(ピッグ)「あかんじゃないですか!」


確かに、まあ、5時間では、いかんわな。



まずは言い訳から書かねばならない。
今年の春、3年ぶりに青森勤務から高松に戻ってきた。通常、出向期間は3年と決まっていて、3月1日に戻ってくる予定だった。予定というか、そのつもりだった。ところが直前になって「もう1ヵ月お願いね」なんていきなり言われて、呆然というか、途方にくれて、泣きながら3月を過ごしていたため、本来なら4月末の徳島マラソンに備えて猛練習に励むべき時期を無為に過ごしてしまったのだ。

(石材店)「おやおや、その間に、スノボーに2回も行ったという話を聞きましたが?」
(幹事長)「それは風の噂というものじゃな」


4月の初旬に引っ越しが終わり、しかも引っ越しの直後には親族に不幸があったりしてバタバタし、ほとんど練習もできないままレースを迎えることになったのだ。フルマラソンに出る直前の練習としては、いつもなら20kmくらいは軽く走れるようになってないと本番で42kmも走ることはできないんだけど、今回は直前の練習では10kmほど走っただけでも足が重くなって、冷静に考えれば、42kmも走るのは不可能っぽい感じだ。レースが近づくにつれて焦燥感は高まる一方なんだけど、だからと言って直前に猛練習をするのは疲れを貯め込むだけで逆効果なので、もう開き直って臨むしかない。

などと覚悟を決めていたんだけど、レースの数日前の天気予報では、レース当日は強烈な暴風雨に襲われるって言い始めた。なんでこの時季にそんな強烈な暴風雨がやってくるのか分からないけど、どうせ天気予報は外れるだろうと楽観視していたら、前日になっても天気予報は「絶対に確実にものすごいんが来るで!」なんて警報を発している。
そして当日、天気予報はズバリ当たり、朝から暴風雨だ。雨の少ない香川県地方は大したことないが、高知県あたりでは大型の台風のような暴風雨になっている。その間の徳島ではどれくらいの風雨なのか予想がつかない。ただ、マラソン大会は、よっぽどの事が無い限り雨や風で中止になったりはしない。なので、行くしか選択肢は無い。



このマラソンは、受付時間がとても早い。高松からだと2時間近くかかるのに、8時までに受付をせねばならない。スタートが9時だから仕方ないのだけど、高松を6時には出なければならない。
帰りの車の運転を考えると、疲れ果てた足で運転するのは危険ですらあるので、可能ならJRで行きたいところだが、高松発の始発の特急で行っても受付時間に間に合わないのだ。なので、毎年、誰かの車で行っている。で、今年も昨年に引き続き、支部長に車を出してもらった。支部長には、最近、いつも車を出してもらってて、ほんと助かるわあ。

支部長は、まずはゾウ坂出をピックアップしてから我が家へ迎えに来てくれた。去年は出発前に色々とトラブルもあり、だいぶ出遅れてしまい、受付時間を過ぎてから現地に着いた。もちろん、多少、遅刻しても受付はしてくれるんだけど、リスクはある。しかし今年はスムースに出発できたため、時間的には楽勝っぽい感じ。ただ、高速道路を走っていると、強烈な横風で車が飛ばされそうになるのが怖い

(支部長)「これ大丈夫かなあ」
(幹事長)「いっその事、中止になってくれたらええんやけどなあ。どうせ練習できてないし」


もちろん、中止になるわけはない。去年は東北大地震のために秋まで順延になったけど、そうでもない限り、当日になっての中止はあり得ない。一昨年のオリーブマラソンで雨の中で好記録を出して以来、雨は平気というか、暑いのに比べれば雨の方が歓迎っていうスタンスに変わってきているのだけど、さすがに今日の暴風雨は論外で、不安だ。

車の中で朝食のパンをかじる。レース当日の朝食は、ゴール予想タイムの6時間前に食べるのが理想らしいので、タイミングとしては行きの車の中で食べるのが良いのだ。それから事前に送られてきている説明書なんかを読んでいると、去年までとコースが異なっているのに気づく。

(幹事長)「あれ?ちょっとだけコースが変わってるで」
(支部長)「新しい橋が出来たから、それを通るみたいやで」


新しい立派な橋が完成したもんだから、それのお披露目的な意味合いで、その橋をわざわざ通るルートに変更されたらしい。ちょっと大回りになったため、例年なら20km地点を過ぎた辺りで距離の調整のために走らされていた片道1kmほどの盲腸のような区間が無くなった。

(支部長)「あの往復2kmのコースは精神的に耐え難い部分だったから、無くなって良かったなあ」
(幹事長)「ほんとほんと。ああいう部分はウンザリするよなあ」


で、さらに良く読んでいると、おや?受付場所なんかも変わっている。

(幹事長)「おい!スタート地点も違うし、受付場所とかも全然違ってるで!」
(支部長)「え?どこ行ったらええん?」

スタートも受付も町中で駐車場は無いから臨時駐車場に車を停めて送迎バスで移動するんだけど、いつも停めている吉野川の河川敷の臨時駐車場からは、今年の受付場所は遠そうだ。なので、今回はもう1つの臨時駐車場である沖洲マリンターミナルに停めることにする。支部長は昔、徳島市内で勤務していたことがあるので、スイスイ道を選んで順調に到着した。と思うのだけど、既に大半のランナーはスタート地点に行ってるらしく、臨時駐車場は閑散としていた。

(幹事長)「まだまだ時間は余裕があるのに、みんな早いなあ」
(支部長)「むしろ、この暴風雨で、みんな出遅れてるんじゃないの?」


シャトルバスはいっぱいあって、待たずに乗って順調に出発した。と思ったのだけど、なんか様子がおかしい。地図を見る限り、普通に行けば受付場所にはすぐに到着するはずなのに、妙に遠回りして、どこを走っているのか分からなくなる。バスの運転手は、当然、道を熟知しているはずなのに、無線で連絡を取り合って、変なルートを走っているのだ。既に交通規制されていて、通常のルートは走れないのだろうか。妙に遠回りなうえに渋滞がひどく、バスはノロノロとしか進まない

(ゾウ)「これ、間に合いますかねえ?」
(幹事長)「かなり危うい状況やなあ」


ちょっと不安になって、現地集合する予定のピッグ増田に電話してみる。

(幹事長)「今、バスに乗って遅々として進まない状況なんやけど、そっちは今どこ?」
(ピッグ)「おや?僕もバスに乗ってますよ」
(幹事長)「おや?僕は最前列に乗ってるんやけど」


と言いながらバスの後ろを見渡すと、

(ピッグ)「おや?僕も最前列に座ってますよ」


なんて返ってきた。別のバスに乗ってるみたい。彼のバスの方が少しだけ早いようだけど、似たような状況だ。

ようやくバスが着いたのは、受付時間終了直前だった。慌てて受付を済ませ、ピッグとも落ち合えた。

(幹事長)「お久しぶりっ!調子はどんなん?」
(ピッグ)「悪くないですねえ」


ピッグは3月に阿南市に異動になってすぐ、阿南健康マラソンなんていう超マイナーなレースを発掘して参加し、順調に調子を上げているようだ。

(幹事長)「ランニング通勤とかはしてないの?」
(ピッグ)「考えてはいるんですけどねえ」


彼がランニング通勤なんてやりだしたら、もう到底かなわなくなるだろうなあ。

時間が無いので急いで着替えをする。何を着るかは、いつも悩みの種だが、普通の日なら暑くても寒くても、どっちにしてもそれほど影響は大きくないだろうが、今日のような暴風雨では、死活問題だ。この雨を防ぐためにビニールカッパか穴を開けたビニール袋を被らなければならない。その下に着るものも含めて、何を着るべきか悩む。この強烈な暴風雨を考えれば、本格的な雨合羽やウィンドブレーカーも魅力的だが、さすがに、そこまで着込んだランナーは見あたらない。

(支部長)「そこまで着たら中から汗びっしょりになるで」


てことで、結局、半袖Tシャツの上に長袖のランニングウェアを着て、その上に穴開きビニール袋を被った。この時季、天気が良いと、半袖1枚でも汗びっしょりになるんだけど、今日はこれだけ着ても寒い。走ればちょうど良くなるのだろうか。支部長とゾウさんも同じようにビニール袋を被る。ピッグだけは、もうちょっとしっかりしたビニール合羽を着ている。僕もビニール合羽から、もっとちゃんとした雨合羽やウィンドブレーカーまで各種取り揃えているが、走りにくそうなのでビニール袋にする。これなら、もし雨が止んだら、いつでも捨てられるからだ。

(幹事長)「もし天気が良くなると、合羽は暑くなるぞ」
(ピッグ)「絶対に天気は良くなりませんよ」
(ゾウ)「天気が良くならなくても、今日は帽子も絶対に必要ですよ!」


帽子は嫌いなんだけど、これだけ雨が降っていると、帽子が無いと鬱陶しいか。でも、風が強いから帽子も吹き飛ばされそうだ。
ゾウ坂出は、格好いいサングラスも着けている

(幹事長)「こんな天気が悪いのに、なんでサングラスなんか着けるん?」
(支部長)「何を言ってるんかなあ。無知やなあ。いくら曇ってても紫外線はバンバン降り注いでくるんやで」


見ると、なんと支部長も妙に格好いいサングラスをかけている。紫外線が目に悪いというのは僕も最近、知っている。特に年齢が高くなってくると障害になりやすいらしい。

(支部長)「ランニングする時にサングラスを着けるんは、もう常識やね」

それにしても支部長のサングラスはすごい。交換レンズが何枚も入った馬鹿でかいケースに入っている。

(幹事長)「なんで、そんなに交換レンズが着いてるん?」
(支部長)「なんやら天候とかに応じて返るらしいんやけど・・・」


支部長が使いこなせてないのは分かった。

(ゾウ)「紫外線だけじゃなく、今日は雨よけにもなりますよ」


確かに暴風雨の時こそサングラスがあった方がいいのかも。

なーんて色々悩みながら着替えをしていると、係の人が「手荷物の預かり時間が終了しますから急いでください」なんて叫んでいる。手荷物の預かり時間は、なんと8時15分だ。8時の受付時間終了直前に滑り込んだのだから、8時15分に手荷物を預けるのは難しい。て言うか、時計を見ると、既に8時15分なんて過ぎてるじゃないか!しかも地図を見ると、なんと、手荷物預かり場所まで歩いて10分くらいかかりそうだ。そもそも、僕らは順調に駐車場まで着いたのに、こんなにギリギリになったのは、シャトルバスが妙な道を遠回りして渋滞に巻き込まれてものすごく時間がかかったのが原因だ。

(ゾウ)「文句は分かりますけど、手荷物を預けられないと困るから急ぎましょう!」

ゾウさんの言う通りなので、慌てて荷物をまとめて受付会場を飛び出す。

と、ここで、妙に余裕の支部長が「ここで写真を撮ろう!」て言う。確かに、それは重要なことだ。写真が無ければ、この記事も楽しくない。て訳で、その辺の人に写真を撮ってもらう。ところが、支部長が持っているのはカメラじゃなくてスマホなので、お願いした人がうまく使えず、ちゃんと撮れるまですごく時間がかかってしまった。

取りあえず雨対策をしてレースに臨む精鋭メンバーたち
(左からピッグ、ゾウ、大王さま、支部長)

ますます時間が遅くなってしまい、ゾウさんは焦りまくって目が吊り上がっている。

(ゾウ)「早くしましょう!」
(幹事長)「へへーいっ」


暴風の中を手荷物預かり場所へ向かって走り出す。確かに、手荷物預かり場所までは遠い。しかもなぜかゼッケンの番号によって場所が違う。おまけに、あちこちにいる大会関係者に場所を聞いても、言うことがバラバラで、あっち行ったりこっち行ったりで、ますます時間がかかってしまった。大会関係者さえ混乱するようなややこしい配置は止めて欲しいぞ。

手荷物を預けてからも、スタート地点までは、まだまだ遠い。なんと受付からは1km以上も歩かなければならないのだ。天気が良ければ、ちょうどウォーミングアップと捉えることもできるけど、この超巨大台風のような暴風雨の中を歩くのはつらい。
だいぶ遅くなったとは言え、スタート時間までは、まだ少しある。スタート地点に並んでこの暴風雨にさらされるのは辛い。周囲を見ると、大勢のランナーがあちこちで雨宿りしている。なので、僕らも時間ギリギリまで雨宿りすることにした。

(幹事長)「こんな暴風雨の中、走るのやだなあ」
(支部長)「今日はゆっくり行きましょう」


去年の大会では、支部長は初めてのフルマラソンだったのでペース配分が分からず、普段のハーフマラソンと同じペースで前半を走ったため、後半に入ってあっという間に力尽きてしまったのだ。その反省から、今日はペースを抑えてスタートするつもりだ。しかし、この天候じゃあ、ゆっくりどころか、まともに走れるかどうかも怪しい。

スタート時間が近づいてきたので、渋々雨の中を歩いていく。小出監督の本によると、一般的な市民ランナーなら、体力を消費するだけなのでフルマラソンでウォーミングアップなんか全く不要との事だが、この暴風雨の中、こんなに歩かされると十分すぎるほどのウォーミングアップと言うか、無駄な体力の消費だ。
途中、仮設トイレがあり、そんなに混んでなかったので用を済ませる。着替え場所でもトイレは済ませていたんだけど、今日は冷えるせいか、妙にトイレが気になる。

スタート地点はゼッケン順に並ぶようになっている。ゼッケン順が何を意味するのかは知らない。申告タイム順なのか受付順なのか分からない。でも、どうせタイムはチップでネット計測してくれるし、こんな天候じゃあ最初からがむしゃらに走るようなレースでもないから、適当に並ぶ。密集したランナーの中にいると、多少は雨風も和らぐ。

(幹事長)「去年のレースは、絶好の天候だったのに惨敗してガッカリだったけど、今年はこの暴風雨だから、
       良いタイムが出るはずがないから、むしろ精神的には楽かも」
(支部長)「確かに、言い訳はなんぼでもできるな」
(幹事長)「僕は練習もできてないから、今日はタイムどころか、完走できれば万々歳やな」
(支部長)「私は去年よりタイムを縮めたいところやけど、この暴風雨では難しいかなあ」
(ピッグ)「さすがに去年よりはタイムを縮めたいですねえ」
(ゾウ)「私も去年より少しでもタイムを縮めたいですね」


三人とも暴風雨にもかかわらず、なんだかやる気が十分だなあ。僕の、この弱気は、暴風雨だけのせいじゃなくて、やっぱり練習不足のせいなのかなあ。ゾウさんは、2月の丸亀マラソンの後、僅か1週間後の坂出天狗マラソンに連続出場して、15kmを平均5分18秒/kmで完走している。はっきり言って、ゾウさんに負ける日が近づいているぞ。
僕は、普段なら、どんなレースに出るときでも、それなりの練習ができていようができていまいが、常に大会自己ベストは狙っている。何の根拠もなく、狙っている。さらにフルマラソンなら、口には出さないが、常にサブフォーという野望も秘めている。それに向けた練習もできていないから、野望というより、可能性がゼロの単なる妄想だけど。しかし、今日に限って言えば、完全なる練習不足に加えて、この悪天候なので、はっきり言って完走すら危うい。
タイムはどうでもいいとしても、ピッグや支部長との勝負は無視できない。過去の勝敗の数では、支部長には圧勝している。去年の徳島マラソンも、惨敗同士ではあったが、支部長には勝った。ところが、今年の丸亀マラソンでは、ハーフマラソン自己ベストを5分以上も更新した支部長に負けてしまったのだ。今回、フルマラソンでも負けるとなると、形勢逆転してしまう。ピッグとは過去の勝敗で見れば、たぶん五分五分くらいだろう。圧勝することもあれば、必死で頑張っているのに負けてしまうこともある。でも、今日はピッグには負けるだろうなあ。せめて支部長には勝ちたいところだ。

(幹事長)「このレースって、制限時間が長いためか、救護車がほとんどいないというのが不安なのよねえ」
(ゾウ)「だからレース前から救護車の心配なんかしないでください!」
(支部長)「いやいや、レース中は常に救護車の誘惑との戦いだよ」


小豆島のタートルマラソンなんかだと、制限時間が5時間と短いので、リタイヤを申し出るとすぐに救護車に乗せてくれるけど、徳島マラソンみたいに制限時間が長いマラソン大会は、基本的には「歩いてでも自分で帰って来い」というスタンスなので、足が痛くて走れなくっても、泣きながら歩いて帰ってこなければならない。4年前の第1回大会のときは、お腹を壊して25km辺りからリタイアしようと思ったのに、救護車がいないもんだから、仕方なく残りの17kmを泣きながら歩き走りした。このレースはリタイヤを許してくれない厳しいレースなのだ。

スタート時間は近づいてきているはずだけど、参加者が1万人もいるのでスタート地点は大混雑してて、前の方では、たぶん開会式なんかをやっているんだろうけど、何がどうなってるのかは全然分からない。
今日はゼリーを2つ持ってきた。ゼリーを持ってくるのは丸亀マラソンが初めてで、今日が2回目だ。僕は全然知らなかったんだけど、マラソンでゼリーを食べるのは常識らしい。

(幹事長)「サングラスと言いゼリーと言い、わしの知らん常識が多すぎる。もっと原点に帰れ!」
(石材店)「ま、タイムには、それほど関係ないですけどね」


確かに、フルマラソンの場合は、いくら事前に十分な食事を摂っていても、42kmも走るうちにエネルギーが枯渇してしまうから、絶対にエネルギー補給が必要で、そのため僕は給水所なんかにある食べ物は片っ端から食べていたんだけど、実はタイミング的には、それでは遅いようだ。どんなマラソン大会でも、食べ物が置いてあるのは20kmを過ぎてからの後半で、その辺りになるとお腹が空いてくるから、ガツガツ食べて満足はするんだけど、消化と栄養吸収の観点からは、時すでに遅いらしい。10km〜20km辺りで吸収性の良いゼリーなんかを食べるのがよろしい、て言うか、常識らしい。丸亀マラソンはハーフマラソンだからゼリーは不要だけど、試しに持っていって食べてみると、予想外に美味しくて、一気にファンになってしまったのだ。で、今回は2つも持ってきた。で、スタート前に、まず1つ目を食べてみる。やはり美味しい。ま、美味しいから食べるもんでもないけど、不味いよりは良いわな。もう1つはポケットの中に入れる。



スタート時間が来て、かろうじてスタートの合図が聞こえた。もちろん、最初は全然進まない。しばらく待って、ようやく歩き始める。チップによるネット計測だから、スタート地点が来るまでは誰も焦らない。ダラダラ歩いていくと、だんだんスタート地点が近づいてくる。それでも歩みはのろいままだ。スタートラインを超えると、ようやく少しだけ早くなるが、まだ小走りするには遅すぎる。早歩きってとこか。と、突然大歓声が聞こえる。なんと高橋尚子さまが台の上に乗って手を振ってくれているのだ。そう言えば、今日はゲストに金さんと一緒に高橋尚子さまが来ているのだった。あまりの暴風雨のために忘れていた。みんなQさまとハイタッチしようとして台に群がっている。僕も詰め寄ろうとしたけど、Qさまは「危ないから止めてください。また途中で待ってますからあ!」なんて叫んでいる。その言葉を信じて台に群がるのは自制した。

その後もしばらくはノロノロダラダラと歩いたり小走り状態だったが、だんだんと、ゆっくりだが走れるようになってきた。
去年までは国道11号線の吉野川大橋を渡っていたが、今年は新しく出来た阿波しらさぎ大橋という橋を渡って吉野川の北岸へ行く。阿波しらさぎ大橋は吉野川大橋より東側の下流にあるので、橋を目指して、まずは東向きに走る。
今日の暴風雨は太平洋にある台風のような低気圧のせいなので、風は南東から北西に向かって強烈に吹いている。なので、東向きに走ると強烈な向かい風となる。あまりに風が強くて非常に走りにくい。とは言え、スタート直後の東向きの区間は距離が短いので、なんとか乗り切った。でも、後半の20km近い東向き区間の事を考えると、絶望的な気分になる。

新しい阿波しらさぎ大橋は、新しくて気持ちの良い橋だけど、あまりの暴風雨のために楽しむ余裕は無い。橋は北向きなので、どちらかと言えば追い風なので、割と楽だけど、それでも橋の上は強烈な風が吹いているので、走りにくい。
橋を渡ると、吉野川の北岸の堤防を西向きに走り始める。風は左後ろから吹いてくるため、どちらかと言えば追い風なんだけど、横風の要素も強く、体を左に傾けないと右側に飛ばされてしまう。非常に走りにくい。
風の強烈さに比べれば、雨は大したことはない。ただ、上から降ってくるんじゃなくて横から叩きつけてくるのが鬱陶しい。被っているビニール袋は、雨に対してはあんまり効果があるようにも思えないけど、少なくとも寒さ対策には少しは役立っている。これが無ければ風が体に染み入るだろう。

5kmほど走ったところに第一関門がある。関門ってのは、制限時間を超えたランナーを失格にするために時間を計っている場所だ。関門の場所で、なぜか道路の真ん中に係員が立って何か叫んでいる。近くなると「危ないから気をつけてください!」って叫んでいるのが分かる。何が危ないのか分かんないが、「道路の真ん中に立っている係員が一番危ないぞ」と思った瞬間、足が何かに引っかかった。時間を計測しているラインを敷いたゴムが大きくめくれ上がっているのだ。それに足が引っかかり、「あっ、危ないっ!!」と思った瞬間に大きく転倒した。かなりのスピードで走っているもんだから派手に転倒し、膝や肘をかなり激しく打撲してしまった。強打した膝は激痛が走り、すぐにはまともに走れる状態ではないけど、まだ5kmしか走ってないので、とにかくレースを継続するしかない。痛みをこらえて走り始める。
こんな不手際は初めてだ。あれじゃあ躓かない方が不思議だ。って思ったけど、他に転倒している人はいなかった。ただ、係員が叫んでいたくらいだから、主催者側も危ないってことは認識しているのだろう。それなら、叫ぶんじゃなくて、何とかしろよ、と言いたい。あるいは、叫ぶにしても、もっと分かりやすく危険を教えて欲しい。単に「危ないから気をつけてください!」なんて叫んでいるだけなら、何が危ないのか分からないじゃないか。
もう腹が立って仕方ないが、立ち止まって抗議する余裕も無いから、我慢して走る。打撲した膝も痛いけど、股関節も痛い。肘も痛いけど、こちらは走りには関係ないから我慢できる。痛みのせいで、明らかにペースは落ちているが、あんまり無理して悪化させるのも怖いので仕方ない。
9km地点の手前に給水所があったので、そこで立ち止まって膝を確認すると、なんと、血まみれになっている。慌てて水をかけて血を洗い流すと、どんどん血が溢れているって訳でもない。滲んでくる程度だ。これなら、まだ走れる。てことで、ちょっと怖いながらも走りを継続する。

僕は汗かきなので、フルマラソンでも途中でトイレに行きたくなることは無い。いくら水分を補給しても、全部汗で出てしまうからだ。ところが今日は寒いせいか、スタート直前にトイレに行ったにもかかわらず、またトイレに行きたくなった。いつもなら、タイムロスも気になるからトイレは我慢するところだが、今日は早々に足を痛めて、もうタイムどころの話ではなくなっているので、あっさりとトイレに入る。
暴風雨は、低気圧が通り過ぎて弱まるのを期待していたんだけど、一向に弱まる気配はなく、相変わらず荒れ狂っている。 被っているビニール袋は、少なくとも無いよりはだいぶマシなんだけど、首や肩の隙間から容赦なく雨が入ってきて体中びしょ濡れだ。しかも、強烈な風が吹き付けてくるから、風も体を通り抜けていき、体感温度は非常に低い。

このレースの楽しい点は、沿道の応援だ。例年なら、途切れること無く付近の住民が応援してくれるほか、色んな出し物がある。バンド演奏を始め、色んな楽器の演奏があり、また徳島名物の阿波踊りなんかもある。でも今年は、暴風雨のため応援が少なくて寂しい。それでも、雨合羽を着て、風に飛ばされそうになりながら応援してくれている人が予想以上に多くて驚いてしまう。嬉しいことだ。

その後も給水所のたびに膝の血を洗い流して走り続ける。足が痛くて走りがギクシャクする。ただでさえ練習不足で足が重いのに、よけいに足に負担がかかる。
今日は最初から相当なスローペースなんだけど、転倒してからは、さらに着実にペースダウンしていっている。最初からタイムは気にしないつもりだったとは言え、ここまで遅くなるとタイムが気になってくる。

20km地点を過ぎた当たりからは、だんだん、じゃなくて、一気に激しくペースダウンし始めた。いつものレースならレース終盤に経験するようなペースダウンだ。これは転倒のせいじゃなくて、練習不足のせいかもしれない。気を紛らわせるために2つ目のゼリーを食べる。やはり美味しい。食べている間は足の痛みも忘れてホッとする。でも、食べ終わると再び足の痛みが気になる。

去年までのコースは、18km地点から20km地点までの2kmの区間は盲腸のような片道1kmの折返し区間だったため、他のメンバーとすれ違って、お互いの位置を確認できた。去年なんかは、てっきり後ろにいると思っていた支部長が2kmも先を走っていて呆然としたものだ。でも、今年は誰がどこに居るのやら皆目見当が付かない。

23kmを過ぎると西条大橋を渡って吉野川の南岸にコースが移る。橋の上からモロに向かい風になる。ここまでも追い風気味とは言え横からも強烈な風が吹き付けて走りにくかったけど、ここからは走りにくいどころか、歩くのも辛いような強烈な向かい風だ。

と思った瞬間、前方で歓声が沸き上がっている。何事かと思ってみると、なんと、高橋尚子様が道路の真ん中で声援を送ってくれている。わお!約束通り、ここで待っていてくれたんだ。もちろん駆け寄ってハイタッチしてもらう。これで一気に元気がついた。
というのは嘘で、むしろ「これでもう止めてもいいや」なんて気になる。打撲した膝はキリキリ痛むし、練習不足で足は重いし、超スローペースにペースダウンしたから体が冷えて震えがくるし。

27kmの給水所は、例年、大きなテントがあって、ソーメンなんかが振る舞われる。そこまでは、なんとかたどり着いたが、もう足が限界なので、ソーメン食べてリタイアすることにした。もちろん、救護車が居ないことは分かっているが、走れないから仕方ない。とりあえず傷の手当てをしてもらってから、「リタイアしたいんだけど」と言うと、「救護車は最終ランナーが通ってから来ます」という。

(幹事長)「あと、どれくらい?」
(係員)「2時間くらいですかねえ」


ひえ〜。2時間も待つのか!あと15kmだから、ゆっくりでも走れば楽にゴールできる時間だ。でも足が痛くて、もう走れないし、あまりに寒くて歩くのも無理だ。他の給水所では屋外で待つしかないが、ここだけは防災センターという建物があり、屋内で待つことができる。とにかく屋内へ入って暖を取ることが最優先だ。
中に入ると、既にリタイアした人が10人くらい居る。中には、嬉しいことにストーブがある。ストーブの前に座らせてもらったけど、震えが止まらない。大きなバスタオルも借りて羽織ってみるが、それでも震えは止まらない。その後は、バスタオルに身を包んでストーブにかじりついていたけど、結局、2時間近く震えは止まらなかった。やっぱりビニール袋を被っただけでは寒さを防ぐには貧弱すぎたか。せめてピッグのように、ちゃんとしたビニール合羽にすべきだったか。いや、それでも寒いような気がする。多少、走りにくくてもウィンドブレーカーくらい着込んで走れば良かった。

2時間くらい経ったところで25km地点の関門が閉まり、そこをギリギリで通過した最終ランナーが通り過ぎた後から救護車のバスががやってきた。既に手前でリタイアした人達を積んでいる。我々も乗り込んだが、バスの中が、また寒くて、再び体が震え始めた。
しかし、これでゴール地点まで行って着替えれば、楽になれる。ほっと一息。と思ったんだけど、そこからの15kmが異常に時間がかかった。マラソン大会のために交通規制している影響で渋滞が発生しており、ものすごく時間がかかった。バスの中は相変わらず寒くて、もう嫌になっちゃう。

結局、ゴール地点の陸上競技場に着いたのはスタートから6時間近く過ぎていた。相変わらず暴風雨が吹き付ける中、急いで着替えると、ようやく震えが止まった。やっぱり濡れた衣類が良くなかったようだ。携帯電話をチェックすると、ピッグや支部長から何度も電話が入っていた。なんとか支部長と連絡が取れて落ち合うことができた

(幹事長)「いやあ、すまんすまん。怪我してリタイアしたんだけど、なかなか帰ってこられなくて」
(支部長)「私はなんとか完走したよ。タイムは大したことないけど、ほとんど歩かなかったな」


この悪天候の中、タイムがどうであれ、とにかく完走したってのは驚きだ。
(幹事長)「よくまあ、この風の中を帰ってこれたなあ」
(支部長)「あまりに強い風だったから、それに立ち向かうのが必死で、むしろ気が紛れたくらいやなあ」


ううむ。よく分からん心理状況。
支部長は結局、今年も前半はハイペースで突っ込んでしまい、後半がバテたんだけど、なぜか去年のように給水所で腰を据えて休むことはせず、最後までなんとか走った事が良かったらしい。良かったというか何と言うか、最後まで走れたのが、すごい。丸亀マラソンの完敗と言い、完全に形勢が逆転してしまった。

ピッグは、と言うと、去年よりかなり良いタイムでゴールして、もう家に帰ったらしい。
そうこうしていると、ちょうどゾウさんも着替えを終えて出てきた。

(幹事長)「どうやった?完走できた?」
(ゾウ)「なんとか去年より、ほんの少しだけどタイムが良かったですよ」


ゾウさんは、タイムの向上が小幅だったのが不満げだったけど、リタイアした僕にとっては、この暴風雨の中、最後まで完走したうえ、みんな去年よりタイムが良くなっているてのが驚異だ。
(幹事長)「一体みんな、どうなってるの?」
(支部長)「それだけ去年が悪すぎたって事やけどね」


僕は、と言えば、足はズキズキ痛むし心もシクシク痛むし、惨めなレースだった。おまけに着替えて初めて分かったけど、肘も血まみれになっていた。自分にも腹立つけど、運営にも腹立つレースだった。

トボトボ歩いて、うどんコーナーへ行く。冷えた体に暖かいうどんは本当に美味しい。
それからバスに乗って臨時駐車場へ行き、停めていた車に乗り込んで高松に戻る。支部長も疲れ切っているはずだけど、完走できた歓びから、まだまだ元気が残っているようだ。僕は精神的疲労から眠り込んでしまった。

てな訳で、本当に悲惨な一日でした。シクシク。



(石材店)「大変なレースでしたねえ。その後の回復状況は?」
(幹事長)「足が故障したからと言うより、精神的にやる気沸かず、しばらくサボっていたけど、最近、ようやく練習を再開したら、
       むしろ足の調子が良くなったみたい」
(石材店)「それって、怪我は大したこと無かったってことじゃ?」


この悲惨なレースから立ち直るべき次のレースは、本来であれば5月末のオリーブマラソンの予定だったのだが、親族の法要があって参加できなくなってしまった。なので、次の予定となると10月の庵治マラソンになってしまう。それだと間が開きすぎるので、何か適当なレースを見つけなければならないなあ。


〜おしまい〜




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